コラム

COLUMN

ベトナム人との国際結婚|手続きの流れ,要件,注意点を専門家が解説

1.国際結婚とは? 国際結婚とは,その人が国籍を持つ国(日本人であれば日本ですね)以外の国(本稿ではベトナム)での結婚手続きが発生する結婚のことを言います。 ざっくり言うと,日本で日本人同士がする結婚以外の婚姻はすべて国際結婚なのです。 日本とベトナムのように国籍が違う人同士の結婚のほか,例えば日本人同士が海外で結婚すること,外国人同士が日本で結婚することも国際結婚の一類型です。 ①国際結婚の成立のために必要なこと 国際結婚の成立には,原則として各当事者の国籍国の法律で結婚が有効であることが必要です。 結婚に関する法律(婚姻条件)は世界各国で異なります。 ですから,ある国の法律で結婚が認められても,別の国の法律では認められないということも起こってしまうのです。 日本人同士が日本で結婚する時には,日本の役所は双方の戸籍に記載された情報から「双方が日本の法律上婚姻要件を満たしているか否か?」が判断できます。 しかし,例えば日本人とベトナム人が結婚する場合,あるいは日本で外国人同士が結婚手続きをする場合など,日本の役所では「あなたは婚姻要件を満たしていますか?」と確認をすることができません。 外国籍の方の婚姻届が提出されるたびに,日本の役所がその国の法律を調べて婚姻条件を満たしているか審査するなどということは現実的ではありませんよね? そこで必要になるのが,その国の政府が発効する「婚姻要件具備証明書」です。 簡単に言えば,ある国の法的な婚姻条件に照らし「この人は結婚できますよ」(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)と証明する書類です。 発行国によっては「独身証明書」などと言われることもありますが,独身であるだけでなく,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。 国際結婚手続きのポイントは,結婚手続きをする国が自分の国籍国ではない方が,この婚姻要件具備証明書を取得しなければならないことです。 もっとも,婚姻要件具備証明書が発行されない国もありますので,国際結婚手続きを進める場合,婚姻要件具備証明書の発行可否は事前に確認することをおすすめいたします。 もう一点,日本人同士が日本で結婚する場合は,婚姻届が受理されれば自動的に双方の戸籍に「二人は結婚した」ということが記載され,法的に婚姻関係にあることが証明されます。 しかし国際結婚の場合,日本で結婚が法的に成立したとしても,日本の役所がそのことを外国の役所に通知して法的に処理されることはありません。逆も同じです。 ですから,特に国際結婚を考えている二人の片方もしくは両方が,結婚後は手続きをした国以外で暮らすことを考えているのであれば,ある国で国際結婚手続きをしたら,もう一方の国に「私達は結婚しました」と届け出る必要があります。 これが国際結婚手続きのもう一つのポイントです。 ②日本,ベトナム 婚姻要件の違い では,ベトナム人の婚姻要件はどうなっているのか? ベトナムの婚姻要件は 婚姻可能な年齢=男性満20歳以上,女性が満18歳以上。年齢によって父母の同意が求められることはありません 結婚の目的が問われます。ベトナム出国などを目的とした偽装結婚は禁止です 同性婚・既婚者との結婚はできません 再婚禁止期間の定めはありません などです。 日本と異なる点もありますので,参考にしてください。 例えば,ベトナムの法律には再婚禁止期間の定めはありません。 ただし,日本で婚姻手続きを行う場合は,日本の民法の再婚禁止期間が適用され,前婚の解消又は取消の日から100日を経過していることが要件とされています。 もっとも,ベトナム人女性が妊娠していないという医師の診断書を提出することによって100日を経過していない場合でも結婚することができます。 ③日本,ベトナム どちらを先にするべき? 日本人とベトナム人が結婚を考えている場合,日本とベトナム,どちらの国で先に手続きをすればよいのか? それが国際結婚を考えるお二人の関心事でしょう。 基本的には, 配偶者となるベトナム人がすでに日本で生活している場合先に日本→ベトナムで手続き 配偶者となるベトナム人がベトナムで生活している場合先にベトナム→日本で手続き…

配偶者ビザの申請で必要になる収入はいくら?

1.配偶者ビザ申請で収入が審査される理由 入管が配偶者ビザで審査する項目は,大きく分けると①婚姻の実体と②夫婦生活を送るための収入の有無の2つと言われています。 ①については,夫婦が結婚するまでの経緯や,結婚後の生活などを総合的に判断し,夫婦として同居し助け合いながら生活しているかの信憑性が判断されます。 詳しくは,配偶者ビザが不許可になる理由で解説していますので,ご覧ください。 ②については,ご夫婦の収入や資産状況を総合的に判断し,申請人(外国人配偶者)が日本に上陸後,公共の負担になることなく生活できるかということが判断されます。 なぜ,このような点が審査されるのかというと,配偶者ビザは日本に長期間在留するためのビザですので,その間,日本で生活するだけの収入(経済力)があるかを確認する必要があるからです。 そのため,「年収○○万円以上じゃないとダメ」という明確な基準はなく,各家庭の生活状況に即して判断されます。 なお,一概に収入と言っても給与や年金,不動産収入など種類があります。 収入面以外の配偶者ビザの申請方法については,配偶者ビザ申請 で詳しく記載していますので参考にしてみてください。 2.配偶者ビザ申請で収入として見てもらえるものは? それでは,入管が配偶者ビザの審査において,収入として見てくれるものを詳しく見てみましょう。 ① 給与収入・営業所得 給与は,皆さんが思うように勤務先から支給されるお給料のことです。 会社役員の方であれば役員報酬を指しますし,個人事業主の方であれば確定申告書B第一表の営業等利益を指します。 こちらを証明するには,一般的に直近年度の所得課税証明書を使用しますが,時期によっては源泉徴収票などで代用することもあります。 この給与収入について重要なことは,外国の給与であっても,外国で申告し,証明書等が取得できるのであれば入管は配偶者ビザの審査において収入として見てくれるということです。 例えば,外国にある会社でのリモートワークにより給与が支給されるのであれば,配偶者ビザで必要となる収入の基準をクリアする可能性は十分あります。 ② 預金 預金についても,日本だけに限定はされずに,海外でお持ちのものも含まれます。 預金を証明するためには,ひと昔前であれば銀行から残高証明書などを発行してもらっていました。 しかし,現在はネットバンク等が普及し,インターネット上で口座情報を確認出来るようになったため,口座情報が表示されている画面のスクリーンショットなどでも証明できるようになっています。 ③ その他 ①②の他には,年金や不動産収入のような定期的な収入や持ち家や有価証券などの資産も,生計基盤を形成する1つの要素として考慮してもらえます。 しかし,資産の中でも株式などの証券は上がり下がりがあるものなので,不安定な資産ということで,給与収入や預金に比べると評価はされません。 このように,入管は様々なものを収入として見てくれますが,実は審査するうえで,優先順位が存在します。 その優先順位は,先程紹介した順番(①→②→③)になります。 なぜ,このような優先順位が存在するかというと,中長期的に日本で生活するためには,預金などのように目減りするものではなく,定期的な収入がある方が良いと考えられているからです。 そのため,配偶者ビザの取得を考えられる方は,まずは,給与を始めとする定期的な収入があるか確認することをお勧めします。 3.配偶者ビザ申請における収入の判断方法 それでは,上記のように数多くある収入を,入管はどのように取り扱っているのでしょうか。 結論からいうと,配偶者ビザの審査において入管は申請人と同居する世帯構成員全員の合計収入で判断しています。 そのため,極端な話をしてしまえば,夫婦共に無職で収入がない場合でも,日本人配偶者の両親に収入があり,同居出来るのであれば,配偶者ビザ申請における収入要件を満たす可能性はあります。 ただし,世帯全員の合計収入を見たときに,世帯全員を養うことが出来ないような収入額では,配偶者ビザ申請を取得することが出来ない可能性が高まるということです。…

台湾人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

1.国際結婚手続きの用語解説 本稿では,国際結婚手続きにおける専門用語を解説していきます。 以降の内容をご参照いただくにあたり必要となる前提知識ですので,ご一読の上,次の稿に進んでください。 ①国際結婚の成立とは? 国際結婚が有効に成立するには,双方の国籍国(本事例でいうと日本と台湾)において,法的に有効な婚姻関係にあることが原則必要とされています。 日本で先に結婚手続きを行うことを日本方式と言い,台湾で先に結婚手続きを行うことを台湾方式と言います。 ②婚姻要件具備証明書とは? 外国人が,日本方式の婚姻を有効に成立させるためには,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)を満たしていることが必要とされています。 もっとも,日本の市区町村役場で,外国人配偶者の国籍国の法律を全て審査することは現実的ではありません。 そこで,国際結婚実務においては,相手国が発給した婚姻要件具備証明書を提出することによって,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていると判断することにしているのです。発行国によっては,独身証明書などと言われることがありますが,独身であることのみならず,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。 なお,婚姻要件具備証明書を発行する条件や必要書類は,国によって異なり,そもそも婚姻要件具備証明書を発行していない国もあります。婚姻要件具備証明書を発行していない国の方との国際結婚においては,他の書類によって外国人配偶者が国籍国の法律に従って婚姻の成立要件を満たしていることを疎明することになります。比較的事例の多い国であれば,先例に従って判断されるのが戸籍実務ですが,事例の少ない国や先例のない国になると,相手国の法律から調査しなければならないこともあり,そうなると婚姻届を提出してから正式に受理されるまでに時間を要することもあります。 2.台湾人との国際結婚手続きで注意すること 台湾人と日本人との国際結婚手続きの際,ご注意いただきたい事項を下記に記載いたします。 ①婚姻要件具備証明書について 台湾は婚姻要件具備証明書が発行される国です。 日本方式で婚姻する際には,市区町村役場に婚姻要件具備証明書を原則提出しなければなりません。 ②台湾の領事事務について 1972年に日本国政府が中華人民共和国との国交を成立させましたが,台湾(中華民国)とは国としての国交を行っていないため,日本に台湾の大使館や領事館は存在しません。 もっとも,在日台湾人の領事事務を取り扱う機関が存在し,台北駐日経済文化弁事処という機関が在日台湾人の領事事務を取り扱っており,婚姻に際して在日台湾人の婚姻要件具備証明書の発行手続きを行っています。 また同様に,台湾に日本の大使館や領事館も存在しません。 在台湾日本人の領事事務は,日本台湾交流協会という機関が取り扱っています。 ③婚姻可能な年齢について 台湾人の婚姻可能な年齢は,男性は18歳以上,女性は16歳以上と法定されています。 ただし,未成年者(20歳未満)が婚姻をするには,法定代理人の同意を得なければならないとされています。 もっとも,法改正により2023年1月1日以降は,成人年齢が18歳に引き下げられ,婚姻可能な年齢も男女とも18歳になります。 ④再婚禁止期間について 台湾の民法には,再婚禁止期間は定められていません。 もっとも,日本法では女性は離婚後100日間の再婚禁止期間があり(妊娠していないことの医師の証明書を提出すれば離婚後100日未満でも禁止されません),この規定は台湾人女性との婚姻にも適用されます。 3.国際結婚手続きにおける必要書類(日本方式) 本題の国際結婚手続きについて解説していきます。 ここからは,日本人と台湾人が日本方式で婚姻をおこなう場合の必要書類を記載します。 ①台湾人配偶者の婚姻要件具備証明書の取得 まずは,日本にある台北駐日経済文化弁事処にて,台湾人配偶者の婚姻要件具備証明書を取得しましょう。 東京の本部の他に,札幌,横浜,大阪,福岡,那覇に分処があります。 <台湾人の方にご準備いただく書類> ・台湾の戸籍謄本 ・パスポート ・証明写真 なお,この後の手続きで必要になりますので,台湾の戸籍謄本を3通は用意しておきましょう。 ②日本の市区町村役場への婚姻届提出…

ウクライナ人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

1.国際結婚手続きの用語解説 本稿では,国際結婚手続きにおける専門用語を解説していきます。 以降の内容をご参照いただくにあたり必要となる前提知識ですので,ご一読の上,次の稿に進んでください。 ①国際結婚の成立とは? 国際結婚が有効に成立するには,双方の国籍国(本事例でいうと日本とウクライナ)において,法的に有効な婚姻関係にあることが原則必要とされています。 日本で先に結婚手続きを行うことを日本方式と言い,ウクライナで先に結婚手続きを行うことをウクライナ方式と言います。 ②婚姻要件具備証明書とは? 外国人が,日本方式の婚姻を有効に成立させるためには,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)を満たしていることが必要とされています。 もっとも,日本の市区町村役場で,外国人配偶者の国籍国の法律を全て審査することは現実的ではありません。 そこで,国際結婚においては,相手国が発給した婚姻要件具備証明書を提出することによって,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていると判断することにしているのです。 なお,発行国によっては,独身証明書などと言われることがありますが,独身であることのみならず,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。 2.ウクライナ人との国際結婚手続きで注意すること ウクライナ人と日本人との国際結婚手続きの際,ご注意いただきたい事項を下記に記載いたします。 ①婚姻要件具備証明書について ウクライナは婚姻要件具備証明書が発行される国です。日本方式で婚姻する場合は,在日ウクライナ大使館に婚姻両当事者が出頭して婚姻要件具備証明書を取得することになるため,ウクライナ人配偶者の来日が必要になります。 ②婚姻可能な年齢について ウクライナ人の婚姻可能な年齢は,男性は18歳以上,女性は17歳以上と法定されています。 14歳以上の未成年者が婚姻することも可能ですが,その場合は裁判所の許可が必要になります。 ③再婚禁止期間について ウクライナの家族法には,再婚禁止期間は定められていません。もっとも,日本法では女性は離婚後100日間の再婚禁止期間があり(妊娠していないことの医師の証明書を提出すれば離婚後100日未満でも禁止されません),この規定はウクライナ人との婚姻にも適用されます。 3.国際結婚手続きにおける必要書類(日本方式) 本題の国際結婚手続きについて解説していきます。 ここからは,日本人とウクライナ人が日本方式で婚姻をおこなう場合の必要書類を記載します。 なお,提出先の市区町村役場によって若干の相違があるため,事前に役所照会することをお勧めいたします。 ①日本の市区町村役場において必要となる書類 <日本人の方にご準備いただく書類> ・婚姻届書(日本人同士の場合と同様のものです) ・本人確認資料(運転免許証又はパスポート等) ・戸籍謄本(本籍地以外に婚姻届を提出する場合) <ウクライナ人の方にご準備いただく書類> ・婚姻要件具備証明書※(日本語訳を添付) ・出生証明書(日本語訳を添付) ・パスポート ※ 在日ウクライナ大使館で取得が可能です。取得するには,ウクライナ人配偶者の出生証明書,独身証明書が必要になります。 ②ウクライナへの婚姻報告について 日本の市区町村役場で婚姻届が受理された後,戸籍謄本(婚姻事項が記載されたもの)と婚姻届受理証明書を外務省でアポスティーユ認証してもらい,夫婦揃って在日ウクライナ大使館に出頭し,婚姻の登録手続を行います。婚姻が登録されることにより,婚姻登録証明書が発行されます。通常はこの書類を入国管理局への申請の際に提出することになります。 4.国際結婚手続きにおける必要書類(ウクライナ方式) 次は,日本人とウクライナ人がウクライナ方式で婚姻をする場合についてです。 ウクライナ方式で婚姻手続きを行う際には,まず,日本人配偶者の書類の準備から始めます。…

ロシア人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

1.国際結婚手続きの用語解説 本稿では,国際結婚手続きにおける専門用語を解説していきます。 以降の内容をご参照いただくにあたり必要となる前提知識ですので,ご一読の上,次の稿に進んでください。 ①国際結婚の成立とは? 国際結婚が有効に成立するには,双方の国籍国(本事例でいうと日本とロシア)において,法的に有効な婚姻関係にあることが原則必要とされています。 日本で先に結婚手続きを行うことを日本方式と言い,ロシアで先に結婚手続きを行うことをロシア方式と言います。 ②婚姻要件具備証明書とは? 外国人が,日本方式の婚姻を有効に成立させるためには,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)を満たしていることが必要とされています。 もっとも,日本の市区町村役場で,外国人配偶者の国籍国の法律を全て審査することは現実的ではありません。 そこで,国際結婚においては,相手国が発給した婚姻要件具備証明書を提出することによって,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていると判断することにしているのです。 なお,発行国によっては,独身証明書などと言われることがありますが,独身であることのみならず,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。 2.ロシア人との国際結婚手続きで注意すること ロシア人と日本人との国際結婚手続きの際,ご注意いただきたい事項を下記に記載いたします。 ①適用法について ロシアは連邦制を採用しておりますが,婚姻に関する事項は,政府が定める家族法に従うことになっています。もっとも,一部の婚姻要件については,地方自治体の立法により特別条項を設けることができるとされているため,ロシア方式に従った婚姻手続きを行う場合は,婚姻挙行地になる自治体の制度にも注意を払う必要があります。 ②婚姻要件具備証明書について ロシアは婚姻要件具備証明書が発行される国です。日本方式で婚姻する場合は,在日ロシア大使館に婚姻両当事者が出頭して婚姻要件具備証明書を取得することになるため,ロシア人配偶者の来日が必要になります。 ③婚姻可能な年齢について ロシア人の婚姻可能な年齢は,男女ともに18歳以上と法定されています。 なお,婚姻締結地の立法によって,女子の妊娠など特別事情がある場合は婚姻を許可することができるとされている場合もあります。 ④再婚禁止期間について ロシアの家族法には,再婚禁止期間は定められていません。 もっとも,日本法では女性は離婚後100日間の再婚禁止期間があり(妊娠していないことの医師の証明書を提出すれば離婚後100日未満でも禁止されません),この規定はロシア人との婚姻にも適用されます。 3.国際結婚手続きにおける必要書類(日本方式) 本題の国際結婚手続きについて解説していきます。 ここからは,日本人とロシア人が日本方式で婚姻をおこなう場合の必要書類を記載します。 なお,提出先の市区町村役場によって若干の相違があるため,事前に役所照会することをお勧めいたします。 ①日本の市区町村役場において必要となる書類 <日本人の方にご準備いただく書類> ・婚姻届書(日本人同士の場合と同様のものです) ・本人確認資料(運転免許証又はパスポート等) ・戸籍謄本(本籍地以外に婚姻届を提出する場合) <ロシア人の方にご準備いただく書類> ・婚姻要件具備証明書※(日本語訳を添付) ・国外パスポート ※ 在日ロシア大使館または領事館で取得が可能です。取得するには,ロシア人配偶者の国外パスポートと国内パスポートが必要になります。 ②ロシアへの婚姻報告について ロシアでは,外国の法律に則って行われた婚姻手続きは,ロシア国内でも法的に有効とみなされており,日本で成立した婚姻をロシア側に届ける制度が存在しません。そのため,日本で成立した婚姻を大使館・領事館に届ける必要はありません。したがって,日本方式で婚姻した場合は,ロシアの婚姻証明書は発行されません。 もっとも,日本で婚姻が成立した旨の証明書(婚姻届受理証明書)を大使館・領事館に提出すれば,婚姻を確認した旨の書類を発行してもらうことができ,通常はこの書類を入国管理局への申請の際に提出することになります。…

フランス人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

1.国際結婚手続きの用語解説 本ページでは,国際結婚手続きにおける専門用語を解説していきます。 以降の内容をご参照いただくにあたり必要となる前提知識ですので,ご一読の上,次の項目に進んでください。 ①国際結婚の成立とは? 国際結婚が有効に成立するには,双方の国籍国(本事例でいうと日本とフランス)において,法的に有効な婚姻関係にあることが原則必要とされています。 日本で先に結婚手続きを行うことを日本方式と言い,フランスで先に結婚手続きを行うことをフランス方式と言います。 ②婚姻要件具備証明書とは? 外国人が,日本方式の婚姻を有効に成立させるためには,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)を満たしていることが必要とされています。 もっとも,日本の市区町村役場で,外国人配偶者の国籍国の法律を全て審査することは現実的ではありません。 そこで,国際結婚においては,相手国が発給した婚姻要件具備証明書を提出することによって,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていると判断することにしているのです。 なお,発行国によっては,独身証明書などと言われることがありますが,独身であることのみならず,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。 2.フランス人との国際結婚手続きで注意すること フランス人と日本人との国際結婚手続きの際,ご注意いただきたい事項を下記に記載いたします。 ①婚姻要件具備証明書について フランスは婚姻要件具備証明書が発行される国ですので,日本方式で婚姻を行う場合は,在日フランス大使館発行の婚姻要件具備証明書が必要になります。 ②婚姻可能な年齢について フランス人の婚姻可能な年齢は,男女ともに18歳です。 なお,女子が妊娠しているなど重大な理由がある場合は,検事の承認と父母の同意により,18歳未満の者でも婚姻が可能になる場合があります。 ③再婚禁止期間について フランスでは,再婚禁止期間は定められていません。 もっとも,日本法では女性は離婚後100日間の再婚禁止期間があり(妊娠していないことの医師の証明書を提出すれば離婚後100日未満でも禁止されません),この規定はフランス人との婚姻にも適用されます。 3.国際結婚手続きにおける必要書類(日本方式) 本題の国際結婚手続きについて解説していきます。 ここからは,日本人とフランス人が日本方式で婚姻をおこなう場合の必要書類を記載します。 なお,提出先の市区町村役場によって若干の相違があるため,事前に役所照会することをお勧めいたします。 ①フランス人の婚姻要件具備証明書の申請における必要書類 まずは,在日フランス大使館または領事館にて婚姻要件具備証明書(Certificat de Capacité à Mariage)を取得する必要があります。 大使館に当事者二人で出頭し,申請してください。申請から4~6週間ほどで婚姻要件具備証明書が発行されます(郵送受取可)。 <フランス人の方にご準備いただく書類> ・パスポートのコピー ・在留カードのコピー(在留カードをお持ちの場合) ・住所証明書(在留カードをお持ちでない場合) ・出生証明書 ・国籍証明書 <日本人の方にご準備いただく書類> ・パスポートのコピー…

ミャンマー人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

1.国際結婚手続きの用語解説 本チャプターでは,国際結婚手続きにおける専門用語を解説していきます。 以降の内容をご参照いただくにあたり必要となる前提知識ですので,ご一読の上,次のチャプターに進んでください。 ①国際結婚の成立とは? 国際結婚が有効に成立するには,双方(本事例でいうと日本とミャンマー)の国籍国において,法的に有効な婚姻関係にあることが原則必要とされています。 日本で先に結婚手続きを行うことを日本方式と言い,ミャンマーで先に結婚手続きを行うことをミャンマー方式と言います。 ②婚姻要件具備証明書とは? 外国人が日本方式の婚姻を有効に成立させるためには,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)を満たしていることが必要とされています。 もっとも,日本の市区町村役場で,外国人の国籍国の法律を全て審査することは現実的ではありません。 そのため,国際結婚においては,国籍国の公的機関が発行する婚姻要件具備証明書を提出することによって,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていると判断することにしています。 なお,発行国によっては,独身証明書などと言われることがありますが,独身であることのみならず,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。 2.ミャンマー人との国際結婚手続きで注意すること ミャンマー人と日本人との国際結婚手続きの際,ご注意いただきたい事項を下記に記載いたします。 ①宗教によって適用法が異なる ミャンマーは信仰する宗教によって婚姻の際に適用される法律が異なり,法律ではなく慣習によって決まっているものもあります。ただし,ミャンマー人の90%が仏教を信仰しており,ここでは仏教徒に適用される法律に従って婚姻手続きを解説していきます。 ②婚姻要件具備証明書について ミャンマーには,婚姻要件具備証明書という名称の書類は存在しません。ただし,裁判所指定の公証弁護士が作成したファミリーリスト(戸主を中心とした居住関係を示すものですが,婚姻状況等の身分事項も記載されています。)及び独身証明書が,日本では婚姻要件具備証明書に相当する書類として扱われています。 ③婚姻可能な年齢について 以前は,「身体的に婚姻可能な年齢」が婚姻可能な年齢と定められ,裁判例によって男性は18歳以上,女性は16歳以上とされていましたが,2019年に法改正され,男女ともに18歳以上と定められることになりました。 ④再婚禁止期間について ミャンマーの法律には再婚禁止期間は定められていませんが,再婚禁止期間についてはミャンマー人女性についても日本民法が適用されることになります。すなわち,離婚したミャンマー人女性は,離婚後100日間は原則として再婚することができません。 3.国際結婚手続きにおける必要書類(日本方式) 本題の国際結婚手続きについて解説していきます。 ここからは,日本人とミャンマー人が日本方式で婚姻をおこなう場合の必要書類を記載します。 なお,提出先の市区町村役場によって若干の相違があるため,事前に役所照会することをお勧めいたします。 ①日本の市区町村役場において必要となる書類 <日本人の方にご準備いただく書類> ・婚姻届書(日本人同士の場合と同様のものです) ・本人確認資料(運転免許証又はパスポート等) ・戸籍謄本(本籍地以外に婚姻届を提出する場合) <ミャンマー人の方にご準備いただく書類> ・裁判所指定の公証弁護士が作成した独身証明書(日本語訳を添付)  ※ミャンマー外務省の認証が必要です。 ・裁判所指定の公証弁護士が作成したファミリーリスト(日本語訳を添付)  ※ミャンマー外務省の認証が必要です。 ・パスポート  ※ミャンマー人が在外にいる場合は,パスポートのコピーで代替可能です。 ②ミャンマーへの婚姻報告について ミャンマー側に婚姻の成立を報告していなくても,婚姻の効力が否定されるわけではありませんが,報告の制度は存在します。なお,日本にあるミャンマー大使館では手続きができませんので,夫婦そろってミャンマーに行く必要があります。手続きはミャンマー人配偶者の住所地を管轄する裁判所で行い,判事の面前で夫婦が宣言・署名した結婚宣言書が結婚証明書として扱われています。 4.国際結婚手続きにおける必要書類(ミャンマー方式)…

特定技能ビザから配偶者ビザに変更はできる?

1.特定技能ビザとは? 特定技能ビザは,日本の人手不足に対応するため,2019年4月に創設されました。 2021年3月の出入国在留管理庁公表資料によれば,特定技能ビザを保有する外国人数は,うなぎのぼりに増加している状態です。 2020年3月末に3987人だった特定技能ビザを保有する外国人は,2021年3月には,2万2567人まで上昇し,コロナ禍にありながら1年間で566%の増加率となっています。 日本の人手不足も相まって今後も増加が見込まれる特定技能ビザですが,仕事の種類が酷似する技能実習ビザとしばしば比較されます。 最大の違いは,技能実習ビザと特定技能ビザでは,その目的が大きく異なっていることです。 技能実習ビザは,日本の技能・技術・知識を学んでもらい,日本で学んだ技能等を母国に持ち帰って,母国の経済発展を担ってもらうことが目的です。 これに対し,特定技能ビザは,日本の生産年齢人口の減少によって深刻化する人材不足に対応することが目的とされています。 似通った業務に就く技能実習ビザ,特定技能ビザですが,それぞれの目的の違いによって,配偶者ビザへの変更の考え方は大きく異なります。 次のチャプターで,その点を詳しく見ていきましょう。 2.特定技能ビザから配偶者ビザへの変更 技能実習ビザについては,結婚するには制限はないものの,当然に配偶者ビザへの変更が許可されるわけではありません。 なぜかと言うと,技能実習制度は日本で学んだ技能等を母国へ移転することを目的としているため,そのまま日本で生活することを想定していないからです。 この点については,【解決事例】技能実習生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法 に記載していますのでご覧ください。 これに対して,特定技能ビザは,日本の人手不足に対応することを目的とするビザです。 技能実習ビザのように技術移転等の目的がないため,特定技能ビザを保有する外国人が日本人や永住者,定住者と結婚した場合,配偶者ビザへ変更することについて,入管法上の制限はありません。 もちろん,特定技能ビザから配偶者ビザへの変更についても,一般的な許可要件は網羅する必要があります。 日本人,永住者,定住者と結婚したからといって,必ず配偶者ビザが許可されるわけではありませんので,誤解の無いようにしてください。 まとめると,技能実習ビザから配偶者ビザへの変更については,その制度趣旨から様々な規制はあるが,特定技能ビザから配偶者ビザへの変更については,入管法上の制限はないとご理解ください。 3.特定技能ビザから配偶者ビザへ変更するメリット 特定技能ビザを保有する外国人の方が,日本人や永住者,定住者と結婚した場合であっても,必ず配偶者ビザへ変更する必要はなく,特定技能ビザのままでも入管法上は問題ありません。 しかし,特定技能ビザと配偶者ビザを比較すると,配偶者ビザへ変更する方が多くのメリットがあるため,配偶者ビザへ変更することをお勧めしています。 本チャプターでは,特定技能ビザから配偶者ビザへ変更するメリットを解説します。 なお,特定技能ビザは,1号,2号で在留期間や技能水準など様々な内容が異なります。 そのため,いずれの表記かを明確にするために,1号は特定技能ビザ(1号)と表記し,2号については特定技能ビザ(2号)と表記しています。 特定技能ビザという表記の場合には,1号,2号共通事項としてご理解ください。 ①在留期間の上限制限がなくなる 特定技能ビザ(2号)(建設分野,造船・舶用工業)は在留年数の上限はありません。 一方,特定技能ビザ(1号)で在留できる年数は,5年間が上限であることが入管法で定められています。 つまり,特定技能ビザ(1号)を保有する外国人は,5年を上限として本国へ帰国しなければならないのです。 そのため,たとえ日本人や永住者,定住者と結婚した場合であっても,特定技能ビザ(1号)のままでは,5年以上は日本で生活することはできません。 これに対して,配偶者ビザは在留年数の上限がありません。 5年,3年,1年,6ヶ月のいずれかの在留期間の付与を受け,以後ビザ更新をすることで,引き続き日本で生活することができます。 そのため,特定技能ビザ(1号)を保有する外国人の方が,配偶者ビザへ変更することによって,在留年数の制限を受けなくなるのです。 配偶者ビザへ変更することで,在留期間の上限制限がなくなるというのが1つ目のメリットです。 ②就労制限がなくなる 特定技能ビザは,転職することはできるのですが,入管法で定められた仕事でしか働くことができません。 そのため,仕事を選ぶ場合には,常に入管法を意識しながら転職活動を行う必要があります。…