依田 隼弥

ミャンマー人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

ミャンマー人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

日本に中長期的に在留するミャンマー人は2020年12月末の政府統計では約35,000人,年々増加している国の一つとして挙げられます。数年前までは留学生が多くを占めていましたが,近年では技能実習等の就労資格で在留する方が増えており,日本人と接する機会も増えていると言えるでしょう。それに伴い,ミャンマー人と日本人の婚姻事例も増加の傾向にあります。
そこで本ページでは,日本人とミャンマー人との国際結婚手続きについて,国際業務専門の行政書士がこれまでの経験をもとに,その手順,注意すべき事項について記載しています。
これからミャンマー人との国際結婚を考えられている方は,ぜひ参考にしてください。

1.国際結婚手続きの用語解説

本チャプターでは,国際結婚手続きにおける専門用語を解説していきます。
以降の内容をご参照いただくにあたり必要となる前提知識ですので,ご一読の上,次のチャプターに進んでください。

①国際結婚の成立とは?

国際結婚が有効に成立するには,双方(本事例でいうと日本とミャンマー)の国籍国において,法的に有効な婚姻関係にあることが原則必要とされています。
日本で先に結婚手続きを行うことを日本方式と言い,ミャンマーで先に結婚手続きを行うことをミャンマー方式と言います。

②婚姻要件具備証明書とは?

外国人が日本方式の婚姻を有効に成立させるためには,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)を満たしていることが必要とされています。
もっとも,日本の市区町村役場で,外国人の国籍国の法律を全て審査することは現実的ではありません。
そのため,国際結婚においては,国籍国の公的機関が発行する婚姻要件具備証明書を提出することによって,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていると判断することにしています。

なお,発行国によっては,独身証明書などと言われることがありますが,独身であることのみならず,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。

2.ミャンマー人との国際結婚手続きで注意すること

ミャンマー人と日本人との国際結婚手続きの際,ご注意いただきたい事項を下記に記載いたします。

①宗教によって適用法が異なる

ミャンマーは信仰する宗教によって婚姻の際に適用される法律が異なり,法律ではなく慣習によって決まっているものもあります。ただし,ミャンマー人の90%が仏教を信仰しており,ここでは仏教徒に適用される法律に従って婚姻手続きを解説していきます。

②婚姻要件具備証明書について

ミャンマーには,婚姻要件具備証明書という名称の書類は存在しません。ただし,裁判所指定の公証弁護士が作成したファミリーリスト(戸主を中心とした居住関係を示すものですが,婚姻状況等の身分事項も記載されています。)及び独身証明書が,日本では婚姻要件具備証明書に相当する書類として扱われています。

③婚姻可能な年齢について

以前は,「身体的に婚姻可能な年齢」が婚姻可能な年齢と定められ,裁判例によって男性は18歳以上,女性は16歳以上とされていましたが,2019年に法改正され,男女ともに18歳以上と定められることになりました。

④再婚禁止期間について

ミャンマーの法律には再婚禁止期間は定められていませんが,再婚禁止期間についてはミャンマー人女性についても日本民法が適用されることになります。すなわち,離婚したミャンマー人女性は,離婚後100日間は原則として再婚することができません。

3.国際結婚手続きにおける必要書類(日本方式)

本題の国際結婚手続きについて解説していきます。
ここからは,日本人とミャンマー人が日本方式で婚姻をおこなう場合の必要書類を記載します。
なお,提出先の市区町村役場によって若干の相違があるため,事前に役所照会することをお勧めいたします。

①日本の市区町村役場において必要となる書類

<日本人の方にご準備いただく書類>
・婚姻届書(日本人同士の場合と同様のものです)
・本人確認資料(運転免許証又はパスポート等)
・戸籍謄本(本籍地以外に婚姻届を提出する場合)

<ミャンマー人の方にご準備いただく書類>
・裁判所指定の公証弁護士が作成した独身証明書(日本語訳を添付)
 ※ミャンマー外務省の認証が必要です。
・裁判所指定の公証弁護士が作成したファミリーリスト(日本語訳を添付)
 ※ミャンマー外務省の認証が必要です。
・パスポート
 ※ミャンマー人が在外にいる場合は,パスポートのコピーで代替可能です。

②ミャンマーへの婚姻報告について

ミャンマー側に婚姻の成立を報告していなくても,婚姻の効力が否定されるわけではありませんが,報告の制度は存在します。なお,日本にあるミャンマー大使館では手続きができませんので,夫婦そろってミャンマーに行く必要があります。手続きはミャンマー人配偶者の住所地を管轄する裁判所で行い,判事の面前で夫婦が宣言・署名した結婚宣言書が結婚証明書として扱われています。

4.国際結婚手続きにおける必要書類(ミャンマー方式)

次は,日本人とミャンマー人がミャンマー方式で婚姻をする場合についてです。
ミャンマー方式で婚姻手続きをする場合は,日本人がミャンマーに渡航する必要があります。
当事者が1部ずつ結婚誓約書を購入し,二人揃って現地の裁判所で婚姻登録を行います。

①結婚誓約書を準備する

ミャンマー方式の婚姻手続きは,まず各当事者が結婚誓約書を用意しなければなりません。結婚誓約書は定型の書式が現地で販売されているようです。結婚宣言書には,弁護士や公職者の保証人のサインが必要になります。

②ミャンマー人の居住地を管轄する裁判所で結婚誓約書の交換

<日本人の方にご用意いただく書類>
・結婚誓約書
・婚姻要件具備証明書(日本人が女性の場合は求められることが多い)
・パスポート

<ミャンマー人の方にご用意いただく書類>
・結婚宣言書
・国民登録証

判事の面前にて結婚誓約書を交換し,判事が署名することによって,結婚証明書が発行されます。

③日本への婚姻報告について

ミャンマーで婚姻登録された後,在ミャンマー日本大使館または日本の市区町村役場で,婚姻届(報告的届出)を提出してください。

<日本人の方にご用意いただく書類>
・結婚証明書および日本語訳文
・本人確認資料(運転免許証又はパスポート等)
・戸籍謄本(本籍地以外に婚姻届を提出する場合)

<ミャンマー人の方にご用意いただく書類>
・国民登録証および日本語訳文

5.ミャンマー人との国際結婚手続きのまとめ

本ページでは,日本人とミャンマー人との国際結婚手続きをご紹介しました。

ミャンマー人と日本人の婚姻は,他国と比較して特殊な手続きがあるわけではありませんが,事例がそれほど多いわけではなく,提出先の役所もミャンマー人との婚姻を取り扱ったことがない所が多いと思います。何度も書類の取り直しにならないように,まずはしっかりと情報を集めて事前に準備をして進めていきましょう。

本ページが,ミャンマー人との国際結婚をご検討されている方々のご参考になれば幸いです。

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この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 依田 隼弥

・日本行政書士会連合会(登録番号第24081844号)
・東京都行政書士会(会員番号第15335号)
山梨県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,国際結婚手続き,永住権取得など国際業務を専門としている。

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