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「第二次出入国在留管理基本計画」を行政書士が解説〜外国人政策の厳格化が外国人と企業に与える影響〜

1.データで見る現状:413万人時代に突入した在留外国人 新計画の文書では、近年の在留外国人数の大幅な増加が具体的なデータで示されています。 外国人入国者数の急増:2025年の外国人入国者数は約4,243万人に達し、過去最高を記録しました。 在留外国人の現状:2025年末時点での在留外国人数は約413万人(日本の総人口の3.35%、前年から0.31%増)に達しました。国籍・地域別では中国(約93万人)が全体の22.6%を占め、次いでベトナム、韓国、フィリピン、ネパールと続きます。 就労目的の在留資格の増加:専門的・技術的分野で就労する中長期在留者は増加傾向にあり、2025年末時点で「技術・人文知識・国際業務」が約47.6万人、「特定技能」が約39.0万人に達しています。 永住者の増加:一定の要件を満たした「永住者」の数も一貫して増加しており、2025年末時点で約94.7万人と、在留外国人全体の23.0%を占めています。 急増する申請に対する「迅速な審査」と、実態に即した「適正な管理」の重要性が、かつてないほど高まっています。 2.第二次出入国在留管理基本計画の「5つの重要ポイント」 新計画に盛り込まれた数多くの施策の中から、企業や外国人の皆様の実務に直結する変更点を5つに絞って詳しく解説します。 ポイント1:在留管理のDX推進とマイナンバー情報の連携 入管は「入管DX(デジタルトランスフォーメーション)」を強力に推し進めています。その目玉として、2026年6月から在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード等」の運用が開始されました(詳しくは【2026年6月】特定在留カードで在留更新の「二度手間」を解消!入管のあとに市役所へ行く必要がなくなる本当のメリットをご参照ください)。 さらに、2027年からは「公共サービスメッシュ」(行政機関同士がデータを安全にやり取りするためのネットワークシステム)を活用した、マイナンバーによる情報連携がスタートする予定です。これにより、国民健康保険料、国民年金保険料、地方税などの納付情報が入管に提供され、在留審査に活用されます。各種手続きのオンライン化や手数料のキャッシュレス決済も進められており、優良な企業・外国人にとっては利便性が大きく向上します。 ポイント2:永住許可制度の「適正化(厳格化)」 永住許可を受けた後でも、公租公課(税金や社会保険料)の支払いなどの義務を適正に履行しない事案が確認されたため、2024年の法改正でルールが厳格化されました(詳しくは【2027年4月法改正】永住権取り消しの新基準とは?対処法を行政書士が解説をご参照ください)。故意に公租公課を支払っていないと判断されると永住資格が取り消される可能性があります。 ただ、永住資格の取り消しについては、対象者や家族に与える影響が大きいため、今後、具体的な取消事例などを示したガイドラインが作成・周知され、予見可能性と透明性が高められます。 また、これから永住審査はより厳格に運用される方針です。永住者が社会に適応して安定した生活を送れるよう、一定水準以上の日本語能力を有していることや、日本のルールを学ぶ学習プログラムの受講を条件とすることも含め、永住ガイドライン上の独立生計要件や国益要件等の見直しが検討される予定です(詳しくは永住許可要件が厳格化へ!年収・厚生年金30年水準・遡及適用のポイントと対策を行政書士が解説をご参照ください)。 ポイント3:「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」「留学」の実態調査と審査適正化 これらの在留資格において、制度の趣旨と異なる活動を行う事案への対策として、実態把握の強化と厳格な審査が行われます。 「経営・管理」ビザ:事業実態のない事案を防ぐため、2025年10月に上陸許可基準等が見直されました。資本金・出資総額の要件が改められたほか、経営者の経歴(職歴・学歴)や常勤職員の雇用義務などが新設されています(詳しくは【2025.10.16~】経営管理ビザの許可基準が厳格化!資本金3,000万円に|行政書士が解説をご参照ください)。今後は実態調査等を通じた、より厳格な審査・処分が行われます。 「技術・人文知識・国際業務」ビザ:専門的な知識を要しない現場の単純業務に従事させるといった不適切な事案に対し、実態を把握した上で、受入れ機関(企業)の責任や指導の在り方を含めて厳正な措置が講じられます。また、従事可能な業務範囲に係る案内の充実を含めた運用の改善もなされる予定です。 留学生のアルバイト(資格外活動):週28時間の上限違反を防ぐため、2026年4月から日本語教育機関と連携した実態把握・指導が開始されています。マイナンバーの情報連携に合わせて所得情報も活用し、複数のアルバイト先を掛け持ちしているケースも正確に把握されるようになります。 さらに、ワーキングホリデーやインターンシップなど多様な活動が含まれる「特定活動」ビザ(詳しくは在留資格「特定活動」とは?種類一覧から要件・最新動向まで行政書士が徹底解説!をご参照ください)についても、運用状況を精査した上で制度の在り方が再検討される予定です。自社の従業員が「特定活動」で在留している場合、今後の制度変更の動向を注視しておく必要があります。 ポイント4:育成就労制度の運用開始(2027年4月〜) 「技能実習制度」が発展的に解消され、人材育成と人材確保を目的とする「育成就労制度」に切り替わります(2027年4月運用開始に向け準備中、詳しくは育成就労の外部監査人は誰に頼む?外部役員廃止の注意点と第一綜合グループを選ぶメリットをご参照ください)。 悪質な送出機関や監理支援機関の排除を徹底するための二国間取決め(MOC)の作成や、外国人育成就労機構を含む支援・保護体制の整備が進められます。今後は地域協議会の設置・活用や地方公共団体の関与が促され、地方の受入れ企業に対する配慮施策も実施される予定です。 また、外国人の受入れ状況や転籍状況等を国が継続的かつ的確に把握し、特定の分野や地域への過度な集中を防ぐため、必要に応じて受入れの停止や受入れ見込数の再設定などを不断に検討し、適正な運用が確保されるとしています。 ポイント5:水際対策・不法滞在者対策の強化と難民等への適切な保護・支援 新計画では、「2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人」という政府目標を見据え、安全・安心な社会を実現するため、入国前(水際)から出国・送還に至る各段階での対策を抜本的に強化することが示されています。…

【令和8年熊本地震】被災された外国人の方へ:在留諸申請の特例措置を解説

1.令和8年熊本地震に伴う在留諸申請の特例措置について 今回の令和8年熊本地震に際して、出入国在留管理庁から「令和8年熊本地震に伴う在留諸申請の取扱いについて」という公式な案内が発表されました。これは、地震の影響により、本来定められている期間や手続きで入管への申請を行うことができない、あるいはできなかった方々を救済するためのお知らせです。主なポイントを3つに分けて解説いたします。 (1)個別対応の実施 通常、在留手続きは定められた期間内に行う必要があります。しかし、今回の地震で被災したことにより、在留期間内に申請ができなかった方については、入管は、当面の間、在留期間を経過した場合であっても個別に手続きを行うとしています。「期限が切れてしまったから不法滞在になってしまうのではないか」とご不安に思われるかもしれませんが、慌てる必要はありません。災害というやむを得ない事情が考慮されますので、まずは身の安全を確保し、お近くの入管に申請のための相談を行ってください。 (2)申請先についての特例 通常の手続きでは、ご自身の住居地を管轄する地方出入国在留管理局で申請を行うのが原則です。しかし、被災したことにより、本来の住居地から一時的に移動や避難をされている方については、現在の滞在先を管轄する入管で申請を行うことが特例として認められています。手続きのために、交通機関が麻痺している中を無理に元の住所地の入管へ戻る必要はありません。上記取扱いに関してご不明な点がある場合は、お近くの地方出入国在留管理局にお問合せいただくことで、皆様の事情に寄り添った対応を受けることができます。 (3)熊本出張所の窓口状況と最新情報の確認方法 地震発生に伴い、安全確保のため一時窓口業務を中止していた「福岡出入国在留管理局 熊本出張所」では、7月29日13時より窓口業務が再開されています。 ただし、今後の余震の状況やインフラの復旧状況等によっては、開庁時間や窓口業務の運用が急遽変更・調整される可能性があります。手続きのために窓口へ向かわれる際は、無理な移動を避け、事前に福岡出入国在留管理局の公式X:@immi_fukuoka(外部リンク)などで最新の開庁・受付状況をご確認のうえ、安全を第一に行動してください。 2.【参考】令和6年能登半島地震の際の入管対応 入管は大規模な自然災害が発生した際、被災した外国人の方や雇用企業に対し、柔軟な特例措置を実施してきました。参考に、令和6年能登半島地震で実際に講じられた主な入管対応をご紹介します。 (1)避難先での在留手続きおよび個別対応 今回の熊本県での地震と同様に、被災し、本来の住居地から一時的に避難・移動した方について、避難先の滞在先を管轄する地方出入国在留管理局での申請受付が認められました。また、被災により在留期間内に申請を行えなかった場合でも、期限経過後に個別の事情に応じた柔軟な手続き対応が行われました。 (2)会社被災に伴う「資格外活動許可」の特例付与 地震の影響で勤務先事業所が被災し、本来の在留資格に基づく就労活動が一時的に困難となった外国人(就労ビザ保持者)に対し、復旧までの期間(3ヶ月以内等)に他社で働くことができる「資格外活動許可」の付与措置が取られました。郵送やFAXでの申請も認められるなど、就労機会と生活維持のための柔軟な救済策が実施されています。 (3)技能実習生による事業所の復旧作業 被災した実習実施者(企業等)の事業所や周辺道路等の復旧・瓦礫撤去作業について、技能実習生が作業に従事する場合、当面の間、別途「資格外活動許可」を取得することなく当該復旧作業を行える特例対応が認められました。 3.地域社会に定着する外国人への支援 災害時にこのような柔軟な特例措置が迅速に取られる背景には、地域社会において外国人の方々が重要な一員として深く定着している実態があります。この章では、熊本県に定着する外国人についての現状と、今回の地震を受けての支援について触れます。 (1)熊本県における在留外国人の現状 入管が公表した「令和7年末現在における在留外国人数について」によりますと、2025年末時点での日本全国の在留外国人数は総数4,125,395人に達しており、前年末から9.5%もの増加を記録しています。今回の被災地である熊本県においても、令和7年末時点での在留外国人数は32,372人となっており、対前年末増減率は10.2%増と、全国平均を上回るペースで増加しています。熊本県内で生活されている外国人の方々の在留資格別の内訳を詳しく見てみますと、特に目立つのが「技能実習」の10,007人と「特定技能」の8,151人で、県内の在留外国人全体の半数以上を占めています。 そのほかにも、「永住者」が3,612人、「技術・人文知識・国際業務」が2,801人、「留学」が1,892人、「定住者」が478人となっており、多様な背景を持つ方々が地域社会に根付いて生活されています。 近年の熊本県での外国人材増加の背景 熊本県への世界的半導体製造大手・TSMCの進出と、それを契機とした九州各県での半導体関連産業の急速な集積が挙げられます。この産業集積は外国人材の増加に直接的に寄与しており、熊本県の資料によれば、2023年の時点ですでに、製造業において「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「高度専門職」、「経営・管理」等の専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者は、2022年の816人から約2倍(1,660人)へと急増しています。 なお、今回の地震を受けてTSMCは7月29日、「工場内の水や電力供給システムは正常に稼働している」と発表しました。製造装置に関わる検査や調整作業を続けていますが、地震の揺れが大きかったため、調整には一定の時間を要する見込みとしています。 (2)外国人向け避難所の開設 このような地域のパートナーである外国人の方が安心して避難できるよう、支援の輪も広がっています。 熊本市中央区の熊本市国際交流会館では、今回の地震を受けて、外国人向けの避難所を開設しました。 災害時には言葉の壁が大きな不安要素となりますが、同館では日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語を用いて、「地震で被害を受けた方、不安で自宅にいたくない方などが避難することができる」と案内を行っています。 避難の際は、着替えなどを各自で持参するよう呼びかけています。企業の皆様におかれましても、従業員の方々にこうした多言語対応の避難所情報があることをぜひお伝えいただき、安全確保にお役立てください。 (3)被災時に役立つ多言語ツールと公式相談窓口 避難生活中の情報収集や在留手続きに関する疑問については、以下の公的ツール・窓口を活用できます。 遠隔医療通訳サービス「mediPhone」の無料提供 被災した外国人、および対応にあたる熊本県内の医療機関、救護施設・避難所(運営自治体)と企業に対し、32言語対応の遠隔医療通訳サービスmediPhoneを無料で利用できる支援が開始されています(2026年8月31日まで、状況に応じて延長判断)。 専用Webサイト(外部リンク)または電話(050-3196-8719)で利用可能です。避難先や救護所、病院で外国人が体調を崩した際、言葉の壁を解消する手段として活用できます。 対応言語:英語、中国語、台湾語、ベトナム語、インドネシア語、タガログ語、韓国語、ネパール語、ポルトガル語、スペイン語、ミャンマー語、フランス語、ロシア語、タイ語、ヒンディー語、モンゴル語、ペルシャ語、広東語、アラビア語、ウルドゥー語、ラオス語、ベンガル語、イタリア語、クメール語、ダリー語、ドイツ語、パシュトー語、シンハラ語、トルコ語、タミル語、マレー語、ウクライナ語…

「短期滞在ビザ」の基礎知識と「日単位指定」法改正を行政書士が解説

1.そもそも「短期滞在ビザ」とは? 一般的に「観光ビザ」や「親族訪問ビザ」「ビジネス出張ビザ」などと呼ばれているものは、すべて法律上の正式名称である「短期滞在」という一つの在留資格に含まれています 。日本の入管法において「観光ビザ」という独立した資格は存在しません 。 短期滞在ビザの対象となる主な来日目的は以下の通りです。 観光・保養・スポーツ: いわゆる一般的な観光旅行など 親族訪問・知人訪問: 海外の家族や婚約者に会いに来る、冠婚葬祭への出席など 短期の商用(ビジネス): 出張、商談、市場調査、アフターサービスなど パスポートに「Temporary Visitor」とスタンプが押されている場合や、オンラインで申請する電子ビザシステム「JAPAN eVISA」を利用して入国した場合も、すべて法律上は一括して「短期滞在ビザ」として扱われます 。また、短期滞在ビザの対象者は「中長期在留者」から除外されるため、空港等で在留カードが交付されません。 在留カードが交付されないことに伴い、短期滞在ビザの外国人は日本滞在中に「常にパスポートを携帯する義務」が課せられます。これを怠ると処罰の対象となるため、注意が必要です。 2.2026年9月施行:短期滞在ビザ「在留期間」の法改正内容 改正の概要 規則別表第2を改正し、短期滞在の在留資格に伴う在留期間を「90日、30日 又は15日(法務大臣が個々の外国人について90日を超えない範囲内で日を単位 とする期間を指定する場合にあつては、当該指定する期間)」に改める。 今回、e-Govで公開されたこちらのパブリックコメント(出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案)により、2026年9月上旬に短期滞在ビザの在留期間の決定方法が大きく変わります。 これまでのルールと、法改正によって導入される新しいルールを比較してみてみましょう。 項目 改正前(従来の運用) 改正後(2026年9月上旬施行) 在留期間のパターン 原則として「15日」「30日」「90日」の3種類のみ 従来の期間に加え、「法務大臣が個々の外国人について90日を超えない範囲内で、日を単位とする期間を指定する」ことが可能に 期間の決まり方 画一的に「15日」「30日」「90日」のいずれかが付与される 来日目的や個別の事情に合わせて、「45日」「60日」など柔軟な日数が指定される 今回の規則改正(規則別表第2「短期滞在」の項の改正)により、一律の期間設定だけでなく「個々の外国人ごとに日単位で期間を指定できる仕組み」へと移行します。これは、より柔軟な出入国管理を行うための審査適正化の一環と言えます。 3.法改正がもたらす盲点と実務上の注意点 今回の「日単位での期間指定」が可能になる改正は、一見すると柔軟で便利に思えますが、実務においては非常にシビアなタイムリミット管理を迫られる盲点となります。 これまでのように「とりあえず一番長い90日をもらえるだろう」という安易な予測が通用しなくなるため、以下の2点に強く留意する必要があります。 注意点①:「特例期間」が適用されないリスクが高まる 日本に短期滞在ビザで入国した後に、別の在留資格(配偶者ビザや就労ビザなど)へ国内で変更申請を行う場合、審査中に在留期限が到来しても最長2ヶ月間は日本に滞在できる「特例期間」という救済制度があります 。 しかし、この特例期間は「短期滞在ビザの在留期間が30日以下」の場合には法律上、適用されません…

外国人のペット同伴入国手続き完全ガイド|ビザ申請と並行すべき理由と検疫の注意点

1. 日本の犬・猫輸入は厳しい? 日本は、世界でも数少ない「狂犬病が発生していない国」です。しかし、周辺国を含む世界のほとんどの地域で依然として発生しており、日本は常に侵入の脅威に晒されています。そのため、海外から狂犬病ウイルスが侵入することを防ぐため、農林水産省(動物検疫所)によって極めて厳しい水際対策が敷かれています。 出発国による2つの区分:指定地域と指定地域外 犬・猫の入国手続きは、来日前に滞在していた国が「指定地域」か「指定地域外」かによって難易度が劇的に変わります。世界のほとんどの国は「指定地域外」に該当するため、高度な準備が求められます。 区分 対象となる主な国・地域 必要な主な手続き(犬・猫の場合) 指定地域外 上記以外のすべての国・地域(アメリカ本土、欧州、アジア諸国など) マイクロチップ装着、狂犬病予防接種(2回)、抗体検査、180日間の待機等 指定地域 アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム マイクロチップ装着、指定地域での在住証明等※抗体検査やその後の180日待機は不要ですが、指定地域に180日以上滞在している等の条件があります 2. 【犬・猫】ペットを日本に連れてくるためのステップ 犬や猫を日本に輸入するための手続きは、出発国が「指定地域」か「指定地域外」かによって大きく異なります。それぞれのルートにおける公式なステップを解説します。 (1) 「指定地域外」から連れてくる場合の7つのステップ 「指定地域外」から犬や猫を連れてくる場合、以下の7つのステップを必ず順番通りに進める必要があります。一つでも順序を間違えると、大幅なスケジュールの遅れや追加の検査・接種が発生し、最悪の場合は最初からやり直しになるリスクもあるため注意が必要です。 順番を間違えてマイクロチップ装着前にワクチンを打ってしまった場合の救済措置(条件付き受け入れ)などの例外も存在しますが、この原則の順番通りに進めることが最も確実で安全です。 マイクロチップの装着国際規格(ISO 11784/11785)に適合するチップを、現地の動物病院の獣医師に埋め込んでもらいます。この時に発行される識別番号が、今後のすべての申請書類の「身分証明」となります。 狂犬病予防接種(計2回)チップ装着が完了したら、次に同じ現地の動物病院で「狂犬病の予防接種」を合計2回受けます。1回目を接種した後、30日以上の間隔を空け、かつ1回目の有効期限内に2回目を接種しなければなりません。接種後、担当獣医師からワクチン名や製造元、有効期限が明記された「狂犬病予防注射済証」を必ず受け取って保管してください。 狂犬病抗体価検査民間病院ではなく「日本の農林水産大臣が指定する検査機関」に対して「狂犬病抗体価検査」を申請します。現地の獣医師にペットの血液(血清)を採血してもらい、獣医師が記入した検査申請書とともに指定の検査機関へ郵送します。後日、この機関から「抗体価検査結果証明書」が返送され、基準値(0.5 IU/ml 以上)をクリアします。 180日間の現地待機前ステップの採血日を「0日」として、現地で180日間待機します。 事前届出日本到着の40日前までに、到着予定の空港・港を管轄する動物検疫所に「輸入届出」を行います。 出国直前の臨床検査と政府証明書出発直前に獣医師の健診を受け、現地の政府機関(米国のUSDAなど)から裏書き(エンドースメント)を取得します。 日本到着時の輸入検査日本に到着した際、税関の手前にある「動物検疫所カウンター」にて輸入検査を受けます。ここで、現地政府から取得した「エンドースメント完備の証明書原本」、事前に取得した「届出受理書」、そして機内で記入する「携帯品・別送品申告書」のすべてを検疫官に提出します。空港で書類とチップの照合を行います(問題がなければ通常は数時間、遅くとも12時間以内には一緒に帰宅できます)。 (2) 「指定地域」から連れてくる場合の7つのステップ 農林水産大臣が指定する狂犬病清浄国・地域(アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム)からの輸入です。指定地域外の場合に課されるワクチン接種や抗体検査、180日の待機といったハードルの高い手続きは免除されますが、代わりに「指定地域での厳格な滞在歴」と「安全な輸送」が厳しく問われます。 特に注意すべきなのが「180日」ルールです。指定地域からの特例として認められるには、その地域に「出生以来」または「輸出前180日間以上」滞在している必要があります。この180日の滞在期間を満たしていない場合は「指定地域外」からの輸入扱いとなります。 公式には以下の7つの手順を踏む必要があります。 マイクロチップの装着国際規格(ISO 11784/11785)に適合するチップを、現地の動物病院の獣医師に埋め込んでもらいます。この時に発行される識別番号が、今後のすべての申請書類の「身分証明」となります。 滞在証明「出生以来」「輸出前180日間以上」「日本から輸入して以来」のいずれかの期間、指定地域のみに在住していたことの証明が必要です。 事前届出日本への渡航日が決まったら、日本到着の40日前までに日本で到着予定の空港・港を管轄する「動物検疫所」へ「輸入届出」を行います。これはインターネット上の「動物検疫システム(NACCS)」、またはFAXや郵送を使って「犬・猫の輸入の届出書」を提出する手続きです。内容に問題がなければ、日本の動物検疫所から「届出受理書」がデータ等で発行されるため、必ず印刷して手元に用意しておきます。…

【行政書士法改正】「報酬」規定を徹底解説!無資格業者が陥る「3つの違法類型」や「グレーゾーン」と対策

1.「報酬」規定の厳格化と理由 (業務の制限) 第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。 改正行政書士法第19条第1項において、資格を持たない者が他人の依頼を受けて「官公署に提出する書類」を作成すること(第一条の三で規定)は原則として禁止されています。この規制が適用されるには、「業として」かつ「報酬を得て」という2つの要件を満たす必要があります。 今回の法改正の背景と、それぞれの要件が実務上どう解釈されるのかを整理しておきましょう。「報酬を得て」の部分に関しては第2章以降で詳述します。 (1) ビジネスに組み込んだ時点で該当する「業として」とは 法的な解釈における「業として」とは、「反復継続して、または反復継続する意思を持って行為を行うこと」を指します。 「1回しかやっていないから業ではない」という論理は通用しません。自社のサービスメニューや規約に「書類作成をサポートします」と組み込んでいる時点で、それは「反復継続する意思がある」とみなされ、自動的に「業として」の要件を満たすことになります。 (2) 改正の背景:横行する「申請代行コンサル」への規制強化 近年の深刻な社会問題として、民間コンサルティング会社やITベンダーなどが「補助金申請代行」や「各種許認可の取得サポート」を謳い、実質的な書類作成を無資格で行うケースが多発していました。これに伴い、不適切な申請や高額な手数料トラブルが相次いだことが、今回の法改正の直接的な契機となっています。 こうした「抜け穴」を利用した違法ビジネスを根絶するため、今回の改正では条文内に「いかなる名目によるかを問わず」という文言が明記されるに至りました。これにより、行政や警察側は「名目(建前)ではなく、実態としてお金が動いているか」だけで違法性を判断できるようになりました。 2.「報酬」に該当する3つの典型類型 前提として、行政書士の独占業務は「建設業許可」「宅建業免許」「飲食店営業許可」などの許認可申請や、「補助金申請」に伴う事業計画書等の官公署提出書類が該当します。以下に改正法において違反とみなされる主な3つのパターンを解説します。 (1)手数料型 「手数料型」は、事業者が顧客に代わって書類作成を行い、その対価として「書類作成料」とは明示せずに、「事務手数料」や「代行料」といった名目で費用を徴収するケースです。 (例) 「申請書作成は無料ですが、事務手数料として1万円いただきます」 「システム利用料(または代行料)として費用を頂戴します」 名目が何であれ、実質的に書類作成の対価として金銭を徴収していると判断されるため、明確な違法行為となります。 (2)本来業務対価一体型 「本来業務対価一体型」に該当するのは、コンサルティング会社、不動産業者、設備機器業者などが、自社のメインサービスの一環として書類作成を行うケースです。 書類作成自体を「無償」と謳っていても、以下のような名目で金銭を受け取っていれば、業務全体の対価として「報酬を得て」いるとみなされます。 業種 受け取っている名目例 なぜ違法とみなされるか コンサルティング会社 コンサルタント料、顧問料 顧問契約の中に書類作成業務が実質的に含まれているため 不動産業者 仲介手数料、業務委託費 仲介という本来業務と書類作成が一体化し、利益を得ているため 設備機器・工事業者 設置工事費、システム導入費 工事や導入の対価として実質的に書類作成費用が内包されているため 以上のような該当事業者は、顧客に対し、「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成は、行政書士の法定独占業務なので所要の官公署提出書類その他権利義務・事実証明書類作成業務については、顧客自らが行政書士に依頼しなければならない」ということを説明する必要があります。 (3) 会費(サブスクリプション)型…

2026年5月29日成立の改正入管法による「在留手数料の大幅値上げ」の影響を専門家が解説

1. 2026年5月29日成立の改正入管法による「手数料引き上げ」の全貌 今回の法改正における最大の変更点は、入管手続きの際に入国管理局へ支払う「手数料」の見直しです。法律で定められた「上限額」が大幅に引き上げられるとともに、法務省から「実際の金額の目安」もあわせて公表されました。 特に永住許可については、現行の1万円から30倍となる「30万円」まで法定上限が引き上げられ、実際の負担額も跳ね上がる見込みです。 具体的にいくら変わるのか、2026年現行の改正前の手数料、法改正後の「上限額」、そしてケアすべき「7月3日に公表された手数料案」を以下の表にまとめました。 手続きの種類 現行の手数料(窓口) 改正後の「法定上限額」 7月3日公表の手数料案(窓口)※ 7月3日公表の手数料案(オンライン)※ 在留資格変更許可 6,000円 10万円 75,000円 65,000円 在留期間更新許可 6,000円 10万円 75,000円 65,000円 永住許可 10,000円 30万円 20万円 (窓口申請のみ) ※これらはあくまで政府が公表した「政令の案」であり、2026年7月時点でこの金額に確定したわけではありません。広く意見を募るパブリックコメントの段階ですが、政府は2026年10月1日からの施行を目指して方針を固めています。また、経済的に困難な世帯や難民申請者などを対象とした、手数料の減額・免除措置に関するガイドライン案の策定も並行して進められています。 実務上の注意点一律料金から「期間に応じた負担」へ 今回の改正により、実際の金額は許可される「在留期間」が長くなるほど高くなる見込みです。 在留期間が3か月以下:1万円程度 在留期間が5年:7万円程度 永住許可:20万円程度 これまでは一律だった手数料が、今後は「長く日本にいる権利を得る人ほど、相応のコストを負担する(受益者負担)」という形へシフトします。 2026年7月3日公表の手数料案(確定ではありません)でも、 在留期間が3か月以下:1万円 在留期間が3か月超6か月未満:窓口18,000円・オンライン15,000円 在留期間が6か月超1年未満:窓口25,000円・オンライン21,000円 在留期間が1年:窓口33,000円・オンライン27,000円 在留期間が1年超3年未満:窓口48,000円・オンライン42,000円 在留期間が3年超5年未満:窓口64,000円・オンライン56,000円 在留期間が5年以上:窓口75,000円・オンライン65,000円…

入管への「出頭申告」とは?オーバーステイ(不法滞在)で自首するメリットと手続きの流れを解説

1.入管への「出頭申告」とは? 「出頭申告」とは、在留資格の期限が切れた「オーバーステイ(不法残留)」や、有効なパスポート等を持たずに入国した「不法入国・不法上陸」などの不法滞在状態にある外国人が、自発的に入管(出入国在留管理局)へ赴き、自らの違反事実を申し出る手続きのことを指します。 日本に在留する外国人は、法律によって在留期間が定められており、その期限内で活動することが義務付けられています。「うっかり期限を忘れていた」「忙しくて手続きを怠っていた」など、どのような事情があったとしても、在留期間を1日でも過ぎて日本に留まり続ければ、入管法上は自動的に「不法残留(オーバーステイ)」という違法状態が成立します。 不法滞在(不法残留・不法入国)は、日本では明確な法令違反(犯罪行為)として扱われます。そのため、刑事罰や強制送還の対象となります。(なお、不法滞在全般における法律上のペナルティや、会社・雇用主側が問われるリスクなどの全体像について詳しく知りたい方は、オーバーステイ(不法滞在)とは?罰則や強制送還のリスク、解決策を専門家が解説のコラムをご確認ください。) しかし、この違法状態を放置せず、自らの意思で正して解決へと向かうために用意されている唯一の自発的な窓口が「出頭申告」です。自ら違反を申告するという誠意ある行動を起こすことで、その後に科されるペナルティの程度を大きく変え、安全かつ合法的に次のステップ(帰国、または日本への在留)へ進むための重要な制度です。 2.出頭申告の「4つの大きなメリット」 不法滞在が発覚するのを恐れて隠し続けるのではなく、自ら出頭申告を行うことには、具体的にはこの表のようなメリットがあります。 項目 自ら「出頭申告」をした場合 放置して「摘発」された場合 刑事罰(拘禁刑・罰金) 軽減 科されるリスクが高い 日本への上陸拒否期間 1年(出国命令制度) 原則5年〜10年(退去強制処分) 身柄の収容 違反調査が在宅で行われることが大半 原則入管施設へ収容 日本に残る手続きへの影響 プラス評価 マイナス評価(逃亡の恐れあり) それぞれ説明していきます。 (1)身柄の逮捕や刑事罰(拘禁刑・罰金)の免除・軽減 不法滞在は入管法第70条に定められた明確な犯罪行為であり、警察や入管に摘発されて裁判にかけられた場合、本来であれば「3年以下の拘禁刑(※従来の懲役刑・禁錮刑が一本化されたものです)もしくは300万円以下の罰金(またはその両方)」という非常に重い刑事罰が科されるリスクがあります。 しかし、警察に捕まる前に自ら入管に出頭申告をした場合は、原則として身柄を逮捕されて刑事裁判にかけられることはなく、これらの重い刑事罰は事実上「免除」または「軽減」されます。 前科がつくような刑事手続ではなく、入管法上の行政手続(出国命令手続きや退去強制手続き)のみで処理されるため、心理的・社会的なリスクを最小限に抑えて、安全に解決へ進むことができるのは出頭申告の非常に大きなメリットです。 (2)【帰国前提】「出国命令制度」の適用により、日本への上陸拒否期間が「1年」に短縮 一度母国へ帰国することを前提として出頭申告を行う場合、「出国命令制度」という救済措置の対象となります。 もし放置して摘発されてしまった場合は「退去強制処分(強制送還)」となり、原則として5年間(過去に違反歴がある場合は10年間)は日本へ再入国することができなくなります。 しかし、自ら出頭申告を行い、以下の条件を満たして「出国命令」を受けた場合は、日本への上陸拒否期間がわずか「1年間」へと大幅に短縮されます。 出国命令の条件 自ら入管に出頭し、速やかに日本から出国する意思を表明したこと 速やかに日本から出国することが確実と見込まれること 過去に退去強制の対象になったり、出国命令の対象になったりしたことがないこと 特定の罪で拘禁刑に処せられたことがないこと 不法就労助長などのその他の重大な入管法違反に該当しないこと かつては摘発されると即座に退去強制の手続きに進んでいましたが、2024年6月の入管法改正により、万が一摘発された後であっても、早い段階で自ら速やかに帰国する意思を示し、かつ上記の出頭以外の条件を満たしていれば、出国命令制度の対象となり、退去強制による送還を回避できる運用となりました。とはいえ、摘発される前に「自ら出頭申告する」のが最も安全であることに変わりはありません。…

在留資格取消しが不安な方へ。日本で暮らし続けるための具体的な対策

1.在留資格の取消しは増加傾向?2026年最新の入管動向 2024年の入管法改正、そして2025年からの本格運用を経て、日本政府の姿勢は明確になりました。それは、「ルールを守る外国人は手厚く保護し、守らない外国人は速やかに排除する」という方針です。 (1)実数で見る、在留資格取消件数の推移 出入国在留管理庁が公表している「在留資格取消し件数」の統計をみると、2024年に1184件だった在留資格取り消し件数は2025年には1446件と22.1%の増加となっています。特に「技能実習」、次いで「留学」「技術・人文知識・国際業務」の3つで全体の多くを占めており、身近な在留資格ほど厳しくチェックされていることがわかります。 (2)2024年改正法の影響 かつては「よほど悪質なケース」でなければ取り消されないという空気感もありましたが、2026年の現在は違います。デジタル庁とのシステム連携により、外国人の居住実態や納税状況が各種行政データとの連携が進み把握が容易になり、「バレないだろう」という考えは通用しなくなっています。 2.なぜ在留資格が取り消されるのか?在留資格の取消事由5選 入管庁の公式資料に基づき、実務上、特によく見られる5つのケースを整理しました。 取消事由(入管法第22条の4) 具体的な内容 1.偽りその他不正の手段 学歴・職歴の詐称、偽造書類の提出(経歴詐称)。 2.活動の不継続 正当な理由なく、3か月以上仕事をしていなかったり、学校に通わないでいる。(原則は3か月以上です。ただし高度専門職の一部や「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格の場合は6か月以上となります。) 3.居住地の届出不履行 引越し後90日以内に住所を届け出ない、または嘘の住所。 (届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。) 4.虚偽の在留申請 実体のない会社での就労(偽装就労)や、実態のない結婚(偽装結婚)。 5上陸拒否事由の隠蔽・虚偽 過去の犯罪歴や退去強制歴を隠して、嘘の手段で入国した。 入管庁が公表している実際の取消事例 事例A:「留学」の在留資格を持つ者が、学校から除籍された後も、正当な理由なく3ヶ月以上日本に留まり続け、実際にはアルバイトばかりしていたケース。 →入管法第22条の4第1項第5号 「入管法別表第1の在留資格をもって在留する者が、正当な理由なく在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること」に該当します。 事例B:「技術・人文知識・国際業務」の者が、申請時に提出した職歴が全くの虚偽であることが判明したケース。 →入管法第22条の4第1項第3号 「第1号及び第2号に掲げるもののほか、不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示 により、上陸許可等を受けたこと」に該当します。 事例C:在留資格「日本人の配偶者等」をもって在留している者が、日本人配偶者と離婚した後も引き続き、6か月以上本邦に在留していた。 →入管法第22条の4第1項第7号 『「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」の在留資格を有する者が、正当な理由なく在留資格に応じた活動を6月以上行わないで在留していること』に該当します。 3.「在留資格取消し」と「退去強制」 (1)取消しから退去強制までの流れ 1. 取消しの通知 入管から、取消しの原因となる事実や意見聴取の期日・場所が記載された「意見聴取通知書」が送達されます(※急を要する場合は口頭で通知されることもあります)。 2. 意見聴取 入管がいきなり資格を消すことは、原則としてありません。事前に「意見聴取」という手続きが行われます。これは、対象者の言い分を聞く、取り消し前の最後のチャンスです。…

【2026年6月】特定在留カードで在留更新の「二度手間」を解消!入管のあとに市役所へ行く必要がなくなる本当のメリット

1.30秒でわかる!特定在留カードで変わること 忙しい方のために,まず結論をまとめました。 項目 これまでの仕組み 特定在留カードの仕組み カードの枚数 2枚(在留カード+マイナンバーカード) 1枚に集約 更新の手続き 2段階(入管の後に役所へ行く) 1段階(入管だけで完了) 役所への訪問 マイナンバーの更新のために必要 原則不要 2.「物理的な軽さ」より「手続きの軽さ」 専門家として断言できるのは,このカードの価値は「財布が軽くなること」だけではありません。「行政手続きの『はしご』が不要になること」にあります。 これまで多くの中長期在留者の方が,ビザ(在留資格)の更新のたびに「入管の手続きが終わった足で,役所の窓口にも並ばなければならない」という精神的・時間的な負担を強いられてきました。 特定在留カードへ切り替えると,入管でカードを受け取った時点でマイナンバー機能も自動的に更新されるため,「役所に行くためだけに会社を休む」必要がなくなります。 3.特定在留カードの概要と「物理的メリット」 「特定在留カード」は,簡単に言うと「在留カードにマイナンバー機能をインストールした新しいカード」です。まずは基本情報を整理しましょう。 (1)基本情報:いつから?誰が対象? 基本情報をまとめました。 運用開始日 2026年6月14日(この日は日曜日なので実際に交付されるのは15日からでしょう) 取得の義務 なし(任意)。これまで通り「2枚別々」に持つことも可能です。 対象者 中長期在留者(永住者,配偶者,高度専門職,技術・人文知識・国際業務など)や特別永住者。 (2)見た目の変化:カードの表面はどうなる? 1枚に統合されることで,券面(表面)のデザインも整理されます。 情報の集約 表面に在留資格情報(氏名,国籍,在留期間の満了日など),裏面にマイナンバー(個人番号)が記載されます。 ICチップ化の促進 プライバシー保護のため,これまで印字されていた「許可年月日」や「在留期間(○年などの長さ)」などの一部情報は,券面から消えてICチップ内のみの記録となります。 4.最大の利点:手続きの「はしご」を解消 特定在留カードを持つことで,これまでの手続きがどのように変わるのか,具体的に見てみましょう。 (1)これまでの不便:避けて通れなかった「2段階の手続き」 現在,多くの方が経験している流れは以下の通りです。 1. 【ステップ1】出入国在留管理局(入管)へ行く…

【日本の書類を海外へ】アポスティーユと領事認証の違いとは?基本構造から私文書の認証フローまで徹底解説

1.アポスティーユ・領事認証とは?(書類に信頼を与える手続き) 日本の書類を海外へ提出する場合,現地の受け入れ機関は「この書類は本当に日本の公的機関が発行した本物なのか?」「偽造ではないか?」を確認する術がありません。 そこで,日本の外務省という国の機関が「間違いなく本物です」という証明(お墨付き)を与えます。これにより,海外でも公的な書類として通用するようになります。 2.【原則】基本は「外務省の公印確認」+「駐日大使館での領事認証」 まず,認証手続きの本来の形(基本原則)から解説します。 通常,国をまたいで書類を有効にするには,以下の2段階の認証が必要です。 ステップ1:日本の外務省での「公印確認」 まず,日本の外務省が「この書類の公印は本物です」という証明(公印確認)を行います。 ▼ ステップ2:駐日大使館(領事館)での「領事認証」 次に,提出先国の駐日大使館(領事担当官)が,「外務省の印鑑は本物です」という確認(領事認証)を行います。 つまり,「日本側(外務省)の公印確認」を経て,さらに「相手国側(大使館)の領事認証」を受けるというダブルチェックを経て,初めて現地で使える書類になります。 一般的にはこの手続き全体を指して「領事認証を取得する」と表現されることが多いですが,正確には最後の大使館で行う手続きのことを「領事認証」と呼びます。 3.【特例】ハーグ条約加盟国なら「アポスティーユ」で領事認証が省略できる すべての書類で毎回ダブルチェック(領事認証)を行うのは,申請者にとっても大使館にとっても大変な手間です。 そこで,国際的なルール作りを行う「ハーグ国際私法会議」において,認証手続きを簡略化するための条約(外国公文書の認証を不要とする条約)が締結されました。認証の実務においては,この条約を指して単に「ハーグ条約」と呼ぶことが一般的です。 外務省のアポスティーユだけで完了する仕組み 提出先の国がこの「ハーグ条約」に加盟している場合(アメリカ,イギリス,韓国,中国,スペインなど)は特例が適用されます。 日本の外務省で「アポスティーユ(Apostille)」という特定の証明を受ける。 → これさえあれば,駐日大使館での領事認証は不要(省略)となる。 つまり,アポスティーユとは「大使館に行かなくて済む,スピードアップのための特例認証」のことなのです。 中国もアポスティーユ加盟国になりました(2023年11月〜) 以前は領事認証が必要な国の代表格であった「中国」ですが、2023年11月7日よりハーグ条約が発効されました。 これにより,現在は中国向けの書類も、原則として「アポスティーユ」だけで手続きが完了します(駐日中国大使館での領事認証は不要になりました)。 4.「私文書」の場合は,まず公証役場で公証してもらう ここまでは「公文書(戸籍謄本や登記簿謄本など)」の話でした。 注意が必要なのは,会社定款,委任状,契約書,卒業証明書などの「私文書」の場合です。 私文書はそのままでは外務省に出せません 日本の外務省は,公文書(公務員が発行した書類)の印鑑証明はできますが,私人が作成した書類(私文書)には直接認証を与えることができません。 そのため,私文書の場合は以下のステップを踏んで,書類を「公的な性質を持つもの」にする必要があります。 ステップ1:公証役場 公証人の面前で「この文書は真正に成立した」等の認証(公証)を受けます。 ▼ ステップ2:地方法務局 公証人の印鑑証明を受けます。 ▼ ステップ3:外務省(公印確認またはアポスティーユ): ここでようやく外務省の手続きに入れます。 ▼…