【解決事例】事例で見る!国際結婚手続き
日本人Aさん(19歳・会社員)は,ベトナム人留学生Bさん(21歳)が妊娠をしたのを機に国際結婚しようと考えています。Aさんは,Bさんの両親から結婚の承諾を得るためにBさんと共にベトナムに渡りました。Bさんの両親から,無事結婚の承諾を得ることが出来ました。
AさんはBさんとともに日本へ戻った後,さっそく国際結婚手続きについて調べました。しかし,手続きが複雑すぎて容易に理解することが出来ません。そこで,国際結婚手続きとビザ申請の専門家である行政書士に相談しようと思い,当社へご相談に来られました。
Index
1.はじめに
近年の国際化に伴い日本人と外国人の国際結婚は,珍しくはないものになりつつあります。私たち日本人はビザがなくても短期間であれば簡単に海外に行くことができますし,最近では多くの外国人の方が日本に住んだり,観光に来たり,外国人と出会う機会は増加の一途をたどっています。また,インターネットを通じて世界中の人々と簡単につながることができるようにもなりました。その中で運命的な出会いをされ,国際結婚に至るカップルが増えています。
日本人の配偶者等のビザ(以下「配偶者ビザ」といいます。)を申請するためには,ビザ申請の前に,原則としてお互いの国で国際結婚手続きを済ませておく必要があります。しかし,いざ国際結婚の手続きをしようと思い至ったとき,どのように結婚をするのか?どのような手順で結婚手続きを進めていけばいいのか?といった問題に直面します。
日本人同士の結婚は,婚姻届に名前,住所,本籍地,証人などを記載すれば簡単に認められますが,国際結婚手続はこのような簡単な手続きで完了するものではありません。そこで,今回は,配偶者ビザを申請する前に必要となる国際結婚の手続きについてご説明したいと思います。
2.国際結婚手続とは?
国際結婚手続は,その成立要件として①婚姻年齢や再婚禁止期間などの「婚姻の実質的成立要件」と②公的機関への婚姻届や宗教婚などの婚姻のための手続きに関する「婚姻の形式的成立要件(方式)」の双方を満たす必要があります。
そこで,以下において「実質的成立要件」と「形式的成立要件」についてご説明いたします。
3.婚姻の実質的成立要件
婚姻の実質的成立要件とは何なのでしょうか?
婚姻の実質的成立要件とは,婚姻適齢をはじめ,重婚の可否,再婚禁止期間など,婚姻をするにあたって各当事者が満たさなければならない要件のことをいいます。
国際的な私法生活関係に対して,どこの国の法律を適用するかという問題を解決する国内法である「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」といいます。)第24条第1項において,婚姻の実質的成立要件につき,夫となる者,妻となる者それぞれが,各自の本国法上の要件を満たす必要があるとしています。
そして婚姻の実質的成立要件には,①一方当事者のみ満たす必要がある一方的要件と,②双方の当事者について満たす必要がある双方的要件とがあります。
一方的要件については,それぞれの当事者に自らの本国法上の要件のみが適用されます。他方,双方的要件については,当事者双方の本国法上の要件が各当事者に適用されます。
さて,具体的に婚姻するにあたり,その要件が一方的要件あるいは双方的要件にあたるかは,各国の法律によって異なるといわれています。ただ多くは,婚姻適齢や未成年者の婚姻の場合における保護者などによる第三者の同意は,一方的要件とされています。また,重婚,再婚禁止期間,近親婚の禁止は双方的要件とされています。
上記の事例において考えてみましょう。
日本における婚姻適齢は,男性は18歳以上,女性は16歳以上です。他方,ベトナムにおける婚姻適齢は,男性は20歳以上,女性は18歳以上とベトナムの婚姻家族法で定められています。
婚姻適齢は一方的要件と考えられているので,Bさんはベトナム法上の女性の婚姻適齢の要件を満たしていれば足り,またAさんは日本法上の男性の婚姻年齢の要件を満たしていれば足りるので,日本においてAさんとBさんの婚姻は認められることになります。
次に,国際結婚手続きをする際に必要書類として挙げられる婚姻要件具備証明書について簡単にご説明したいと思います。
婚姻要件具備証明書とは,母国の法律で規定された婚姻要件(婚姻適齢など)を満たしていること,つまり婚姻の実質的成立要件を満たしていることを証明する書類です。
日本で先に国際結婚手続きを行う場合には,お相手の外国人の方が婚姻要件具備証明書を準備します。逆に,お相手の方の国で先に国際結婚手続きを行う場合には,日本人が婚姻要件具備証明書を用意することになります。
日本人の場合,婚姻要件具備証明書は,市区町村役場,法務局・地方法務局,在外公館(外国にある日本大使館・領事館)において発行されます。場合によっては,法務局が発行する婚姻要件具備証明書が必要となる場合があるため,事前に外国の提出先に確認することをお勧めいたします。また,婚姻要件具備証明書を発行するにあたり必要な書類も異なりますので,事前確認は必須です。
他方,在日外国人の場合,国によって異なりますが,婚姻要件具備証明書は基本的に日本にある本国の大使館・領事館で取得することができます。しかし,国によって婚姻要件具備証明書を取得するために必要な書類は異なるため,あらかじめ日本にある本国の大使館・領事館への照会は必須です。
ここで認識をしておくべき事項が一つあります。それは,婚姻要件具備証明書がそもそも発行されない国があるということです。この場合,結婚届を提出する市役所の担当者にその旨を伝え,婚姻要件具備証明書に代わる書類を明確に聞くことが重要です。この点,行政交渉に精通ししている行政書士に依頼すれば,婚姻手続きがストレスなくスムーズに進むと思われます。婚姻手続きが行き詰っている場合,配偶者ビザなど国際業務に特化している行政書士に相談されることをお勧めします。
4.婚姻の形式的成立要件(方式)
次に婚姻の形式的成立要件(方式)についてご説明いたします。
そもそも婚姻の形式的成立要件(方式)とは,婚姻を有効に成立させるために当事者がとるべき手続きのことをいいます。具体的には,役所への婚姻届けの提出,宗教婚,儀式婚などがこれにあたります。
通則法第24条第2項・3項において,どこの国の婚姻の方式で行うかを規定しています。婚姻の方式は,結婚をする場所の国の法律に従うか,婚姻当事者の国の法律に従うと定められていますが,当事者の一方が日本人で,日本で結婚をする場合は,必ず日本法の方式(婚姻届の提出)によらなければなりません。
上記の事例において考えてみましょう。
AさんとBさんは,日本で結婚をしようと考えています。また,Aさんが日本人であることから,Bさんと婚姻をするにあたり婚姻届を提出することになります。
5.婚姻後の手続き
日本で婚姻が成立したら,お相手の国でも結婚を有効にする必要があるため,相手国の在日大使館,領事館,又はお相手の国の公的機関に婚姻報告をする必要があります。また,外国で国際結婚が成立したら,日本の本籍地の市区町村役場へ婚姻をした旨を届け出る必要があります。この手続きを報告的届出といいます。
例えば,婚姻の実質的成立要件を満たしている日本人男性Jさんと中国人女性Cさんが中国の方式で国際結婚した場合を考えてみましょう。
JさんとCさんが2人揃って,Jさんの婚姻要件具備証明書など必要な書類を持参し,婚姻登記処に婚姻の登記申請を行い,結婚証が発行されました。
中国ではJさんとCさんは結婚しているということになりますが,日本では何の手続きも行っていないため,Jさんの戸籍はまだ独身のままです。そこで,JさんとCさんが中国の方式により結婚したことを結婚証(訳文付き)や婚姻届など必要書類を添付して市区町村役場に対して届け出る必要があります。
6.国際結婚手続きと配偶者ビザとの関係
上記5でご説明したとおり,国際結婚を成立させるためには,原則として日本とお相手の方の国籍国の両国で婚姻を成立させなければなりません(お相手の方の母国における婚姻の実質的成立要件や形式的成立要件(方式)を満たさなければなりません。)。
アメリカ,カナダ等の一部の国では,日本での婚姻手続きが完了すれば,相手の方の国での国際手続きが完了しているものと取り扱ってくれますが,このような一部の国以外の国は,日本とお相手の方の国の両国での婚姻成立は必須です。
原則として両国での婚姻手続きが完了すれば,ようやく配偶者ビザの申請を行うことになります。
配偶者ビザを取得するためには,2つの審査ポイントをおさえる必要があります。
① 交際実体・婚姻実体(出会いから結婚に至るまでの経緯及び実体が真実なものかどうか)
② 生計基盤(外国人配偶者が日本で婚姻生活を送るにあたり安定した経済基盤があるかどうか)
また,今回の事例のように,既に日本に在留している外国人の場合には,現在の在留状況も重要な審査ポイントになります。
上記の審査ポイントを満たして,初めて配偶者ビザが認められるのです。
7.今回の事例
今回の事例を見てみましょう。
Aさん・Bさんは,当社での面談を経て,先ずは日本で国際結婚手続きをとることになりました。日本で先に婚姻した場合には,その後,在日ベトナム大使館又は領事館において婚姻の報告をする必要があります。なぜなら,この手続きをとらなければ,Bさんはベトナムでは未婚のままとなっているからです。
AさんとBさんは,無事に日本とベトナムでの手続きを終え,留学ビザから配偶者ビザに変更申請を行いました。現在,Bさんは,配偶者ビザを取得し,Aさんと生まれてきた子どもと共に仲良く日本で暮らされております。
8.まとめ
このように国際結婚手続きは複雑ですが,必要な要件と書類さえ整えれば結婚することはできます。もっとも,両国で結婚することができたからといって,必ずしも配偶者ビザを取得できるというわけではありません。
配偶者ビザを審査する入管は,交際・婚姻の実体や生計の安定性を非常に厳しい目を持って審査するため,むしろ婚姻後の配偶者ビザ申請が最大の難点になります。
私たち行政書士は,国際結婚手続き,配偶者ビザの申請の専門家です。常に国際結婚手続き,配偶者ビザ申請の動向についての情報収集に努め,多くの国際結婚手続き・配偶者ビザ申請に携わっております。複雑な国際結婚手続き,その後の配偶者ビザ申請を確実に進めていきたい方は,お気軽に当社にお問い合わせください。