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家族滞在ビザの要件や取得方法を解説! 外国人が家族を呼ぶには?

1.家族滞在ビザとは? 家族滞在ビザは,家族関係にあれば誰でも取得できるわけではありません。 以下の要件を満たした場合に認められる在留資格です。 (1)認められるのは「配偶者と子」のみ 家族滞在ビザとは,「教授」,「芸術」,「宗教」,「報道」,「経営・経営管理」,「法律・会計業務」,「医療」,「研究」,「教育」,「技術・人文知識・国際業務」,「企業内転勤」,「興行」,「技能」,「文化活動」,「留学」,「高度専門職」,「介護」,「特定技能2号」のいずれかの在留資格を取得した方の扶養を受ける配偶者又は子に付与される在留資格です。 「家族滞在」という言葉から,親を本国から呼びたいというご相談をよくいただきますが,家族滞在ビザを取得できるのは,配偶者とお子様に限定されています。そのため,親を本国から呼び寄せたい場合には,家族滞在ビザの射程外となってしまいます。 扶養者の両親を本国から呼ぶことができる可能性のあるビザは,扶養者が「高度専門職」の在留資格を取得している場合,もしくは例外的な措置として告示外の特定活動の在留資格で呼ぶ場合(老親扶養ビザ)に限定されています。 >>老親扶養ビザ の詳細についてはこちら 高度専門職で親を呼び寄せる以外には,残念ながら親を呼ぶためのビザは原則として日本に存在しないとご理解下さい。 (2)家族滞在ビザ取得の要件 配偶者やお子様を家族滞在ビザで呼び寄せるには,以下の取得要件を満たす必要があります。 ① 扶養者が扶養の意思と扶養能力を有すること ② 扶養を受ける側の配偶者または子が扶養を受ける必要があり,又は現に扶養を受けていること ここでいう配偶者には,夫婦間の婚姻が日本の法律上有効に存続している必要があり,いわゆる内縁関係や外国で有効に成立した同性婚,パートナーシップは含まれません。 そして,ここでいう子には,実子の他に養子も含みます。また,未成年者に限られず,成人に達した子も対象になります。とはいえ,子が成人している場合には注意を要します。その理由として,子が成人している,あるいは成人年齢に近接している場合には,扶養を受ける必要性が薄弱と判断されてしまう可能性があるからです。 そのため,18歳以上の稼働年齢に達した子の家族滞在ビザの申請の場合は,来日の目的や扶養を受ける必要性を明確にする資料を提出するのが好ましいと言えるでしょう。 2.家族滞在ビザでは働けない? 家族滞在ビザは,就労活動が原則禁止されています。 例外として,資格外活動許可(いわゆるアルバイトの許可のことです。)を取得することによって,18歳以上で週28時間以内での就労活動が認められています。 資格外活動許可を取得せずに,家族滞在ビザで就労をしてしまうと資格外活動罪(入管法第24条4号イ,入管法第73条)に問われる可能性がありますので,就労活動をする場合には,必ず資格外活動許可を取得するようにしてください。 家族滞在ビザの資格外活動許可は,留学ビザと同様に,包括的なアルバイトの許可です。そのため,特定の就労先が決まっていない段階でも取得することができます。アルバイトやパートで働きたい場合は,就業先が決まってから資格外活動の許可を取得するのではなく,うっかり忘れを防止するためにも,あらかじめ資格外活動許可を取得しておくことをお勧めします。 3.家族滞在ビザで在留中の子どもが大きくなったら? 子どもが成長し,独立した生計を立てることができるようになれば,親の扶養を受ける必要がなくなるため,家族滞在ビザには該当しなくなります。しかし,幼い頃に来日し,日本で教育を受け,長年日本で暮らしてきた子が,本国への帰国を余儀なくされるのは人道的な観点から好ましくありません。 そこで,日本で義務教育の大半を受け,日本の高校を卒業している場合(おおむね高校卒業までの10年以上の在学歴が必要となります。)には,日本への定着性の高さに鑑み,定住者ビザへの変更許可がされるケースがあります。 この定住者ビザは,あらかじめ法務省告示で定められているものではありませんが,近時の法務省の傾向としては,比較的容易に取得できる傾向にあります。 4.家族滞在ビザの扶養者が在留資格該当性を喪失した場合はどうなる? 家族滞在ビザの扶養者が離職などの事情で在留資格を喪失した場合には,家族滞在ビザで在留する配偶者やお子様も,その在留資格に該当しなくなります。なぜなら,家族滞在ビザは,本体者である扶養者が在留資格を有することを前提とするからです。 また,家族滞在ビザの扶養者が永住許可を受けた場合にも,その配偶者やお子様は家族滞在ビザの在留資格該当性を喪失することになります。その理由は,家族滞在ビザの対象となる扶養者の在留資格の種別には,1(1)の通り永住者の在留資格は含まれていないからです。この場合,配偶者の方は永住者の配偶者等のビザとなり,お子様は永住者の配偶者等のビザもしくは定住者ビザへの変更申請を速やかに行う必要があります。 家族滞在ビザの扶養者が永住許可を取得したい場合には,速やかにご家族の在留資格変更許可申請を入管で行うようにして下さい。 5.家族滞在ビザを取得するメリット 日本で就労する外国人が,家族を呼び寄せてその家族が家族滞在ビザを取得すると,職場に定着しやすくなるメリットがあります。 現在,日本の就労ビザを取得している外国人で国籍で多いのは,ベトナム,フィリピン,インドネシアなどの出身者です。これらの国は,家族重視の国民性であるため,家族が一緒に暮らすことを希望しています。 したがって,日本で働く外国人は,いずれは本国から家族を呼び寄せたいと考えている方が多い傾向です。 企業の人事担当の方は,外国人従業員から「家族を呼びたい」という希望を聞いた場合には,ぜひ積極的に協力をしてあげてください。 6.家族滞在ビザ取得のための必要書類 家族滞在ビザを取得する際に,原則として必要となる書類は以下の通りです。…

インターンシップビザ(特定活動ビザ)の取得方法,メリット,条件,必要手続きなどを解説

1.海外の大学生が対象となる「インターンシップ」とは? インターンシップとは,実際に大学生が仕事を体験する制度のことです。「就労体験」や「就業体験」と言われることもあります。 6月頃から始まる「サマーインターンシップ」と,10月頃から始まる「秋冬インターンシップ」が一般的ですが,開催時期は企業によって異なります。 海外の大学生が行うインターンシップについては,入管のガイドラインで以下のように定義されています。 インターンシップとは,一般的に,学生が在学中に企業等において自らの専攻及び将来のキャリアに関連した実習・研修的な就業体験を行うものであることから,インターンシップ生を受け入れる企業等においては,産学連携による人材育成の観点を見据えた広い見地からの対応が求められるとともに,適正な体制を整備した上で,インターンシップ生が所属する大学とも連携しながら,教育・訓練の目的や方法を明確化するなど,効果的なインターンシップ計画を立案することが重要です。 参考:出入国在留管理庁「外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン」 海外の大学生にとってのインターンシップ制度は,仕事の内容や自身の適正を理解することが目的です。 インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる企業は,きちんとした教育体制・実習計画の元,目的に沿った対応が求められます。 2. インターンシップビザを取得して海外の大学生を受け入れるメリット 海外の大学生におけるインターンシップには,学生側にも企業側にもメリットがあります。 ①学生側のメリット インターンシップ先の企業が,将来の就職先になる可能性がある 日本の文化や生活,働き方を体感できる 大学生のうちから,社会人としての教養や常識を身につけることができる インターンシップビザを取得すれば,報酬を得ながらアルバイトではできない社会経験を積むこともできます。 大学以外での社会活動を通して,日本の文化や生活などにも触れられるという点でも,インターンシップのメリットは大きいです。 ②企業側のメリット 海外の人材を受け入れる企業の体制作りや,社員の育成に役立つ 在学中の優秀な海外の大学生などに自社をアピールできる 部下のマネジメント能力,多言語での語学力など,社員教育の一環として役立つ インターンシップビザを取得して,多くの海外の大学生を受け入れることで,優秀な人材を将来雇用できる可能性が高まります。 また,インターンシップビザを取得するための準備を通じて,外国人の受入れ体制を整えたり,学ぶことができるのは,今後増加が予想される外国人雇用について,企業の大きな強みになるはずです。 3. インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる条件を確認 インターンシップビザで海外の大学生を招く場合,インターンシップの法令上の条件を満たしている必要があります。 インターンシップを労働力の確保として利用したり,不十分な指導体制にも関わらず多数の学生をインターンシップビザで受け入れたりという事例が発生しているため,厳格に審査が行われています。 しかし,恐れる必要はありません。 適切な受け入れ体制を準備すれば,インターンシップ制度を有効活用することはできます。 ここからは,インターンシップビザの入管の審査基準を見ていきましょう。 ①対象となるインターンシップの条件 (1)海外の大学の学生であること インターンシップビザを取得するためには,海外の大学に在籍している大学生であることが大前提です。 学位の授与される教育課程であれば,「短期大学」「大学院」の学生も対象になります。 また,日本入国時に18歳以上であることも必要です。 注意が必要なのは,通信教育を行う大学に在籍している場合はインターンシップビザの対象とはなりません。 この点,誤解が多いのでご注意ください。 (2)インターンシップの業務内容が大学の専攻に関係していること インターンシップは,あくまで大学の教育課程の一部です。 そのため,業務内容が大学の専攻に関連していることが必要になります。…

就労ビザの取得要件|企業の注意点や必要書類,審査期間を解説

1.就労ビザとは? 就労ビザとは,正式には「就労できる在留資格」の事を意味しており,外国人が日本で働くために入管が許可する資格の事を言います。 ビザ(査証)とは別のもので,ビザ(査証)は,日本が発行する入国許可証で,在留資格を意味するビザは,日本に滞在することを許可する資格です。 「就労できる在留資格」すなわち就労ビザは,日本で就労を希望する外国人は取得する必要があります。 一方,文化活動や研修,短期滞在や留学,家族滞在等を目的とした外国人は,就労不可のビザに該当します。 就労系の在留資格は,外国人が日本で行う活動内容によって19種類に分類されています。 >>就労ビザ 種類 はこちらをご覧ください。 2.就労ビザの取得要件 就労ビザの取得要件は,簡単に説明すると,以下のとおりです。 ビザの種類に適合するような業務に就く 業務に関連のある学部や学科を卒業している 日本人と同等以上の報酬を得られる 就労先の企業に継続性や安定性がある 就労ビザの代表格となる技術人文知識国際業務ビザでは、理学,工学その他の自然科学に関する業務、法律学,経済学,社会学その他の人文科学に関する業務、’国際的な分野に関する業務などに従事することが可能です。 技術人文知識国際業務ビザの要件には学歴要件、実務経験、資格などがそれぞれ必要となりますので、申請の際は、事前に確認しましょう。 詳しくは,技術人文知識国際業務ビザ に記載しておりますので,ぜひあわせてご覧ください。 3.就労ビザを取得するための必要書類 就労ビザの取得には,多くの書類が必要になります。 また,必要な書類は,勤務する会社の属するカテゴリーによって変わります。 提出書類は、勤務する会社の事業概要や職務を証明する書類、外国人の学歴や実務経験を証明する書類になります。 以下は主な書類です。 申請書 申請人の写真(4×3センチ) 返信用封筒または返信ハガキ 採用・招へい理由書・職務内容説明書 申請人の履歴書 最終学歴の証明書(卒業証書) 職歴を証明する文書 などになります。 勤務する会社の属するカテゴリーの詳細については,以下の記事をご覧ください。 >>就労ビザ カテゴリーはこちら 4.海外から外国人を呼び寄せて採用する場合の就労ビザの取得方法…

興行ビザのポイントを徹底解説!

1.興行ビザとは? 「興行」とは,特定の施設において公衆に対して演劇,演芸,演奏,スポーツ,サーカス,その他のショー等を見せ又は聞かせることをいい,バー,キャバレー,クラブ等に出演する歌手等としての活動もこれに含まれます。 興行ビザは,外国の文化に接する機会を提供し,文化交流を促進することにより,国際理解を増進し,また,日本の文化,スポーツの振興・向上等に寄与するために設けられたビザです。 興行ビザは就労ビザの一つで,エンターテイメントビザや芸能ビザと呼ばれることもあります。 テレビなどのメディアで目にする俳優やモデル,歌手,プロスポーツ選手の多くが興行ビザで活躍しています。 興行ビザは,これらの職業の外国人が,コンサート講演やテレビ出演,映画の撮影や音楽のレコーディング,宣伝活動などを報酬を得て行う場合に必要となるビザです。 2.興行ビザに該当する職種 以下に,興行ビザに該当する代表的な職種をご紹介します。 ミュージシャン 俳優,モデル 演奏家,オーケストラ プロスポーツ選手,e-スポーツ選手 振付師,演出家 出演者が興行を行うために必要不可欠な補助員 (舞台の演劇の照明係,カメラマン,マネージャー,サーカスの動物飼育係,スポーツ選手のトレーナーなど) 幅広い活動で,興行ビザが認められています。 3.興行ビザは3つのカテゴリー どのような活動を行うかにより,興行ビザは以下の3つのカテゴリーに分類されます。 どのカテゴリーに該当するかにより,興行ビザの取得の要件や必要書類も異なります。 3-1.興行ビザ1号 演劇,演芸,歌謡,舞踊,演奏等の興行活動が「興行ビザ1号」に該当します。 興行ビザ1号に分類される例として,小規模なライブハウスやクラブなどで行われる興行のほか,規模が大きく,かつ,短期間で行われるコンサートやフェスなどの興行も該当します。 また,テーマパークで行われる演劇等も興行ビザ1号に含まれます。 ※飲食の提供を伴う施設で興行活動を行う場合や,実際に飲食の提供を伴わなくても,提供できる設備で興行活動を行う場合には,興行ビザ1号に該当する可能性があります。 3-2.興行ビザ2号 プロスポーツや格闘技の大会,サーカスなどが該当します。 また,監督,コーチ,トレーナーなど選手と一体不可分な関係にある者の活動も,興行ビザ2号に該当します。 3-3.興行ビザ3号 ファッション・ショーに参加するファッション・モデルとしての活動,番組・映画に出演する芸能人,俳優,歌手等の活動が該当します。 興行ビザ3号は,興行ビザ1号及び2号と異なり,興行の形態で行われない芸能活動を規定しています。 4.興行ビザを取得するための要件を解説 興行ビザは上記のように3つのカテゴリーの活動内容に分類されます。 今回の改正により,「興行ビザ1号」の要件が大幅に変更されました。 以下では,興行ビザ1号を中心に,それぞれの要件についてご説明いたします。 4-1.興行ビザ1号 興行ビザ1号は,演劇等の興行活動に従事しようとする場合が対象となります。 かねてから演劇等の興行活動は,その性格上生じうる不法就労や金銭的な搾取が問題とされていました。 そのため,今般の改正では, (1)適正に実施している実績がある招へい機関が受け入れる場合, (2)新たに受け入れる場合であっても問題が生じるおそれが少ない場合…

特定技能1号への移行準備のための特定活動ビザとは?

1.在留資格「特定技能」とは? 在留資格「特定技能」とは,2018年に成立した改正出入国管理法により創設され,2019年から受け入れ可能となった外国人労働者向けの在留資格です。 具体的には,人材が不足している産業などに即戦力となり得る外国人労働者を受け入れることを目的とした在留資格のことです。 在留資格「特定技能」は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格に分かれていて,それぞれ特定の分野が受け入れ対象となっています。 1-1.特定技能1号 「特定技能1号」とは,「特定産業分野に属するために特相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人」向けの在留資格です。 「特定技能1号」の特徴は,以下になります。 在留期間:通算で上限5年(1年,6か月または4か月ごとの更新) 技能水準:各特定分野の試験などで確認(技能実習2号を修了した外国人や,資格更新時には試験などが免除される) 日本語能力水準:日本語能力を試験などで確認(技能実習2号を修了した外国人や,在留期間更新時には試験などが免除される) 家族の帯同:海外在住の家族の帯同は基本的に認められない 特定技能1号の受け入れ対象特定産業分野は,以下12分野です。 介護 ビルクリーニング業 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 建設業 造船・舶用工業 自動車整備業 航空業 宿泊業 農業 漁業 飲食料品製造業 外食業 1-2.特定技能1号と2号との比較 特定技能1号と特定技能2号とは,在留期間,技能水準,家族の帯同,日本語能力水準試験の有無などが異なります。 特定技能2号を取得するためには,特定技能1号から移行しなければなりません。 また,特定技能2号の分野は現状「建設業」と「造船・舶用工業」の2分野しかありませんが,今後拡大予定です。 特定技能1号と2号との違いの詳細について,もっと詳しく知りたい方は以下のコラムをご参照ください。 >>特定技能1号と2号の違いは? 2.在留資格「特定技能1号」に変更申請をする場合の必要書類 在留資格「技能実習」や「留学」などから在留資格「特定技能1号」に変更するには,申請までの準備に時間がかかると言われています。 実際に必要な提出書類は,申請人に関する必要書類,所属機関に関する必要書類,特定産業分野に関する必要書類に分かれます。 申請人に関する必要書類は以下です。 在留資格変更許可申請書 特定技能外国人の報酬に関する説明書 (賃金規定に基づき報酬を決定した場合は賃金規定も添付要) 特定技能雇用契約書の写し 雇用条件書の写し…

Column for understanding entertainment visas

1. What is an Entertainer visa? An Entertainer visa is a visa established to promote international understanding by providing opportunities to encounter foreign cultures and promoting cultural exchange, and to contribute to the promotion and improvement of Japanese culture and…

未来創造人材制度(J-Find)がわかるコラム

1.未来創造人材とは? 未来創造人材とは,「海外のトップクラスの大学・大学院を卒業し,優秀かつ将来日本で活躍するポテンシャルを秘めた若い外国人材」です。 優秀であることの基準は,海外で「世界大学ランキング」の上位に入るような大学・大学院を卒業(修了)した若者ということです。 これらの若者たちは当然,「どの国で働けば自分の培って来た知識や技術を生かせるか」,あるいは「どの国で暮らせば自分も含めた『家族』が幸せに生きられるか」を考え,世界各国で就職・起業先を探しています。 一方,日本の企業等は,その生き残りと発展のため,常に日本人学生のみならず海外にも優秀な人材を求めています。 こうした学生側・企業側のニーズがあるにもかかわらず,従来は海外の若者が日本で就職活動をしたり起業をしたりする上で,日本に滞在するための資格(在留資格)がネックになっていました。 外国人の在留資格は通常,「何をするために日本に居るのか」によって細かく分かれています。 例えば日本で働くなら,「技能」「技術・人文知識・国際業務」「教育」など就労の内容によって細分化されていますし,日本で学ぶなら「留学」ビザです。 認められた活動内容と実際の活動内容が合わないと,在留資格が取り消される可能性もあります。 このため,従来は海外の優秀な若者が「日本で就職活動をしてみたい」「お試しで日本企業において働いてみたい」と思ったとしても,実現するには大きなハードルがありました。 つまり,優秀な外国人材が日本で余裕をもって自身の将来の進路選択をするには就職活動をすること,起業準備をすることに柔軟に対応できていない状況がありました。 そこで創設されたのが,今回ご紹介する未来創造人材制度です。 日本政府はこの度,特定活動の中に「未来創造人材」を新たに加えました。 未来創造人材と認められると,最長で2年間の在留が可能となります。 2.未来創造人材制度ができた背景 AI(人工知能)など,デジタル化の急速な発展,あるいは地球温暖化に対応するための脱炭素化が世界の潮流です。 将来はこれまで当たり前だった働き方や産業構造が大きく変わるでしょう。 世界ではこのことを踏まえて最先端の知識・技術を持った人材の「取り合い」が起こっています。 優秀な人材獲得のネックになっているのは1でも書いた通り,入国審査や在留資格であることはどの国も同じで,すでにフランス等の国々では在留資格を取得しやすくしたり,「我が国に来てくれるならその他の優遇措置もしましょう」という政策が取られています。 一方,日本では少子化高齢化が進んでいるのに,優秀な若者の海外流出が増えています。 これに危機感を覚えた日本政府が打ち出したのが未来創造人材制度です。 経済産業省は2022年5月に発表した「未来人材ビジョン」で,2030年,2050年を見据えた人材育成が必要だと示しました。 岸田首相は2022年9月の「教育未来創造会議」で,留学生を含む外国人の高度人材の受け入れに向けて,年度内に新たな制度の具体策をまとめるよう指示しました。 これを受けて創設されたのが未来創造人材制度です。 同時期に「特別高度人材制度」も創設されました。 特別高度人材制度(J-Skip) のご説明はコチラ 特別高度人材がすでに世界で活躍している優秀な大人だとしたら,未来創造人材は「未知の可能性を秘めたこれからが楽しみな若者」だとお考え下さい。 その両方の人材にどんどん日本に来てもらわなければ,これから大変なことになるという考え方が日本政府にはあるのです。 3.未来創造人材と認められる要件 未来創造人材だと判断されるためには,下記の3つの要件を全て満たす必要があります。 (1)3つの世界大学ランキング(クアクアレリ・シモンズ社公表の「QS・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス」,タイムズ社公表の「ワールド・ユニバーシティ・ランキングス」,シャンハイ・ランキング・コンサルタンシー公表の「アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ」)の中で,2つ以上で100位以内にランキングしている大学を卒業。又はその大学の大学院の課程を修了して,学位又は専門職学位を授与されていること。 要するに海外のいろんな機関が間違いなく優秀な大学・大学院だと判断した学校を卒業して学位を得た人だということです。 対象となる大学は現在のところ以下です。 https://www.moj.go.jp/isa/content/001394994.pdf (出入国在留管理庁HPより引用) (2)上記の対象大学・大学院を卒業し,学位を授与されてから5年以内であること。 日本が求めているのは,旧来の発想では全く思いつかないような斬新さと今後の可能性を持った人材ですから,大学で学んだ最新の知識や技術を持っていることが前提です。「 高学歴だけど大学を卒業してずいぶん経つ」ような人は未来創造人材とはしないということです。 ただし,一つの大学で学んでから別の大学でMBA(経営学修士)を取るなど,学びを重ねることもあるでしょうから,年齢制限はありません。…

特別高度人材制度(J-Skip)を徹底解説

1.特別高度人材とは? 特別高度人材とは,極めて優秀な外国人のことです。 この制度の前提となるのが「高度専門職」という在留資格です。 >>高度専門職 条件 はコチラ 高度専門職は,日本の経済成長を促すために2015年に創設されました。 我が国の産業に新たなイノベーションをもたらす 日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促す 日本の労働市場の効率性を高めることが期待される 高度専門職のイメージは上記のような人材です。 要するに日本的な働き方や研究の仕方や企業活動に風穴を開ける存在として,優秀な外国人に日本に来てもらいたいということです。 今回の新制度創設は,これまでの高度専門職の制度とは異なり,「学歴または職歴」と「年収が一定の水準以上」であれば「高度専門職」の在留資格が付与されるようになったのが大きな特徴です。 2.特別高度人材制度創設の背景 2015年の高度専門職創設から8年で特別高度人材制度が創設された背景には,岸田首相をはじめ現政権が「新しい資本主義」への適応と,「コロナ後の新しい社会を見据えた人材への投資」を喫緊の課題として捉えていることが挙げられます。 世界最先端の知識・技能を持った優秀な人材は「世界中で取り合い」になります。 岸田首相は2022年,「シンガポール,インドネシア,ニュージーランドなどの国々ではより高度な人材を取り込むため,在留資格制度(の見直し)、優遇する制度を取り入れている。(中略)日本も高度な人材を集めようという努力は続けてきましたが,世界の状況を見る限り,まだまだ足りない」という趣旨の発言をしています。 (出入国在留管理庁ホームページより部分的に引用) そして「教育未来創造会議」において,関係閣僚に対し,「世界各国で人材獲得競争が進む中,留学生に限らず,高度人材受入れについて,世界に伍する水準の新たな制度の創設を含め,改革を進めていく必要があります。本会議と『新しい資本主義実現会議』及び『外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議』が連携して,年度内に具体化してください」と指示しました。(教育未来創造会議議事録より引用) これを受けて誕生したのが特別高度人材制度です。 3.特別高度人材と認められる要件 「高度専門職」制度は,活動内容を,「高度学術研究活動」(大学教授や研究者等),「高度専門・技術活動」(企業で働く技術者等),「高度経営・管理活動」(企業の経営者等)の3つに分類。その特性に応じて「学歴」,「職歴」,「年収」などの項目ごとにポイントを設け,ポイントの合計が70点以上であれば,高度外国人材と認められ,高度専門職ビザを付与する仕組みでした。 特別高度人材制度では,ポイント制とは別に,学歴または職歴と,年収が一定以上であれば,「特別高度人材」として高度専門職ビザが取得できるように要件を拡充したのです。 求められる職歴や年収は,「高度学術研究活動」の従事者(大学教授や研究者等),もしくは「高度専門・技術活動」の従事者(企業で新製品開発をする技術者,国際弁護士等)は, 学歴が修士号以上取得しており年収2,000万円以上 従事しようとする業務等の実務経験10年以上で年収2,000万円以上 のいずれかの条件を満たすことが必要です。 また,「高度経営・管理活動」の従事者(グローバルな事業展開を行う企業等の経営者等) であれば 事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上で年収4,000万円以上 であることが条件です。 (出入国在留管理庁ホームページより) 4.特別高度人材に対する優遇措置とは 上記の表にある通り,特別高度人材と認められると,その人だけでなく家族にも優遇措置があります。 特別高度人材に最初に付与される在留資格は,原則として「高度専門職1号」です。 高度専門職1号の在留資格があると, 複合的な在留活動の許容 5年間の在留 永住許可要件の緩和(通常の在留資格では「引き続き」10年間の日本在留が必要だが,最短で1年に短縮される)…