仲野 翔悟

特定技能1号への移行準備のための特定活動ビザとは?

在留資格「技能実習」や「留学」などで在留している外国人が,在留期間満了後も引き続き在留するために,在留資格を「特定技能1号」に変更することを希望するケースがあります。
しかし,在留資格「特定技能1号」を申請するためには,外国人本人や受け入れ機関双方で様々な書類を準備しなければなりません。
また,在留資格「特定技能1号」は,他の就労ビザと比べても申請までの準備に時間がかかるのが一般的です。
そのため,書類の提出が間に合わず,在留期間中に「特定技能1号」への変更申請ができないこともあるのです。
このような場合の特例措置として,「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)への在留資格の変更申請を行うことができます。
今回は,この「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)への在留資格の変更申請について,詳しく見ていきます。

1.在留資格「特定技能」とは?

在留資格「特定技能」とは,2018年に成立した改正出入国管理法により創設され,2019年から受け入れ可能となった外国人労働者向けの在留資格です。
具体的には,人材が不足している産業などに即戦力となり得る外国人労働者を受け入れることを目的とした在留資格のことです。
在留資格「特定技能」は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格に分かれていて,それぞれ特定の分野が受け入れ対象となっています。

1-1.特定技能1号

「特定技能1号」とは,「特定産業分野に属するために特相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人」向けの在留資格です。

「特定技能1号」の特徴は,以下になります。

在留期間:通算で上限5年(1年,6か月または4か月ごとの更新)
技能水準:各特定分野の試験などで確認(技能実習2号を修了した外国人や,資格更新時には試験などが免除される)
日本語能力水準:日本語能力を試験などで確認(技能実習2号を修了した外国人や,在留期間更新時には試験などが免除される)
家族の帯同:海外在住の家族の帯同は基本的に認められない

特定技能1号の受け入れ対象特定産業分野は,以下12分野です。

  • 介護
  • ビルクリーニング業
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

1-2.特定技能1号と2号との比較

特定技能1号と特定技能2号とは,在留期間,技能水準,家族の帯同,日本語能力水準試験の有無などが異なります。
特定技能2号を取得するためには,特定技能1号から移行しなければなりません。
また,特定技能2号の分野は現状「建設業」と「造船・舶用工業」の2分野しかありませんが,今後拡大予定です。
特定技能1号と2号との違いの詳細について,もっと詳しく知りたい方は以下のコラムをご参照ください。
>>特定技能1号と2号の違いは?

2.在留資格「特定技能1号」に変更申請をする場合の必要書類

在留資格「技能実習」や「留学」などから在留資格「特定技能1号」に変更するには,申請までの準備に時間がかかると言われています。
実際に必要な提出書類は,申請人に関する必要書類,所属機関に関する必要書類,特定産業分野に関する必要書類に分かれます。

申請人に関する必要書類は以下です。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 特定技能外国人の報酬に関する説明書
    (賃金規定に基づき報酬を決定した場合は賃金規定も添付要)
  • 特定技能雇用契約書の写し
  • 雇用条件書の写し
  • 賃金の支払
  • 雇用の経緯に係る説明書
  • 徴収費用の説明書
  • 健康診断個人票
  • 受診者の申告書
  • 申請人の直近1年分の個人住民税の課税証明書
  • 申請人の全ての納期が経過している直近1年度の住民税の納税証明書
  • 申請人の給与所得の源泉徴収票の写し
  • 申請人の国民健康保険被保険者証の写し
  • 申請人の直近1年分の国民健康保険料(税)納付証明書
  • 申請人の国民年金保険料領収書の写し,または申請人の被保険者記録照会(納付Ⅱ)(被保険者記録照会回答票を含む)
  • 前回申請時に履行すべきであった公的義務に係る書類
  • 公的義務履行に関する誓約書
  • 1号特定技能外国人支援計画書
  • 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
  • ニ国間取決において定められた遵守すべき手続に係る書類

所属機関(法人の場合)に関する必要書類は以下になります。

  • 特定技能所属機関概要書
  • 登記事項証明書
  • 業務執行に関与する役員の住民票の写し
  • 特定技能所属機関の役員に関する誓約書
  • 労働保険料等納付証明書(初めての受入れの場合)
  • 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(事業主控)の写し及び申告書に対応する領収証書(口座振替結果通知ハガキ)の写し(受入れ中の場合(労働保険事務組合に事務委託していない場合))
  • 労働保険事務組合が発行した直近2年分の労働保険料等納入通知書の写し及び通知書に対応する領収証(口座振替結果通知ハガキ)の写し(受入れ中の場合(労働保険事務組合に事務委託している場合))
  • 社会保険料納入状況回投票または健康保険・厚生年金保険料領収書の写し
  • 税務署発行の納税証明書(その3)
  • 直近1年度分の法人住民税の市町村発行の納税証明書(初めての受入れの場合)
  • 直近2年度分の法人住民税の市町村発行の納税証明書(受入れ中の場合)
  • 公的業務履行に関する説明書

所属機関(個人事業主の場合)に関する必要書類は以下になります。

  • 特定技能所属機関概要書
  • 個人事業主の住民票の写し
  • 労働保険料等納付証明書(初めての受入れの場合)
  • 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(事業主控)の写し及び申告書に対応する領収証書(口座振替結果通知ハガキ)の写し(受入れ中の場合(労働保険事務組合に事務委託していない場合))
  • 労働保険事務組合が発行した直近2年分の労働保険料等納入通知書の写し及び通知書に対応する領収証(口座振替結果通知ハガキ)の写し(受入れ中の場合(労働保険事務組合に事務委託している場合))
  • 社会保険料納入状況回答票又は健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し(健康保険・厚生年金保険の適用事業所の場合)
  • 個人事業主の国民健康保険被保険者証の写し(健康保険・厚生年金保険の適用事業所でない場合)
  • 個人事業主の国民健康保険料(税)納付証明書(健康保険・厚生年金保険の適用事業所でない場合)
  • 個人事業主の国民年金保険料領収証書の写し又は被保険者記録照会(納付Ⅱ)(被保険者記録照会回答票含む。)(健康保険・厚生年金保険の適用事業所でない場合)
  • 個人事業主の税務署発行の納税証明書(その3)
  • 直近1年度分の個人事業主の個人住民税の市町村発行の納税証明書(初めての受入れの場合)
  • 直近2年度分の個人事業主の個人住民税の市町村発行の納税証明書(受入れ中の場合)
  • 公的業務履行に関する説明書

その他にも,特定分野ごとに特有の書類が求められます。

3.在留資格「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)への特例措置

このように,在留資格「特定技能1号」への変更申請には数多くの書類の準備が必要であるため,変更申請をするまでに多くの時間を費やすことになります。
また,審査にも約1か月~2か月かかるため,申請準備と審査結果がでるまでに保有している在留資格の期間が満了してしまう可能性もあるのです。
そのため,保有している在留資格の期間が満了するまでに在留資格「特定技能1号」への変更が困難な場合には,移行準備のための特例措置を受けることができます。
この特例措置とは,特定技能制度で予定している就労先に就労しながら特定技能への変更申請の準備を行うことができるように,在留資格「特定活動(4か月・就労可)」へ変更許可申請を行うことです。

この特例措置を受けることにより,在留資格の期間が満了するまでに「特定技能1号」への変更ができない場合であっても,就労予定先で働きながら特定技能への申請準備を行うことができます。
ここでは,特定技能1号への移行準備への特例措置である在留資格「特定活動(4か月・就労可)」について見ていきます。

3-1.「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)への特例措置の要件

在留資格「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)への変更申請を行うためには,以下の一定の要件を満たす必要があります。

  • 申請人の在留期間の満了日までに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行うことが困難である合理的な理由があること
  • 申請に係る受入れ機関において特定技能外国人として在留資格「特定技能1号」に該当する業務に従事するために 同在留資格への在留資格変更許可申請を予定していること
  • 申請人が申請に係る受入れ機関との契約に基づいて在留資格「特定技能1号」で従事する予定の業務と同様の業務に従事すること
  • 申請人が特定技能外国人として就労する場合に支払われる予定の報酬と同額であり, 且つ日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること
  • 申請人が特定技能外国人として業務に従事するために必要な技能試験及び日本語試験に合格していること(技能実習2号良好修了者等として試験免除となる場合も含む。)
  • 申請に係る受入れ機関又は支援委託予定先が申請人の在留中の日常生活等に係る支援を適切に行うことが見込まれること
  • 申請に係る受入れ機関が,申請人を適正に受け入れることが見込まれること

3-2.「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)への特例措置の必要書類

要件を満たした外国人は,在留資格「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)への変更申請を行うことができます。

変更申請を行うためには,以下の書類が必要です。

  • 在留資格変更許可申請書(顔写真要)
  • 受入れ機関が作成した説明書
  • 雇用契約書及び雇用条件書等の写し
  • 特定技能外国人として業務に従事するために必要な技能試験および日本語試験に合格していること,または技能実習2号良好修了者等の試験免除であることを証明する資料

3-3.「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)の在留期間

「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)の在留期間は4か月で,在留期は原則として更新はできません。
そのため,「特定活動(4か月・就労可)」の在留資格で4か月間働きながら,「特定技能1号」への移行準備を進めて行くことになります。

また,「特定活動(4か月・就労可)」で在留した期間は,在留資格「特定技能1号」の通算で上限5年の在留期間に含まれますので注意が必要です。

4.「特定活動(4か月・就労可)」(特定技能1号への移行準備)のまとめ

在留資格を「特定技能1号」に変更するためには,数多くの書類の準備が必要です。
また,審査にも約1か月~2か月かかるため,在留資格の変更には多くの時間を費やすことになります。

在留資格「特定技能1号」への移行準備が在留期間の満了日までに間に合わない場合には,特例措置として在留資格「特定活動(4か月・就労可)」への変更申請が可能です。
※画像は,実際に弊社で取得した特定活動ビザの写真です。

特定活動ビザの写真

在留資格「特定技能1号」への変更申請を考えている方は,行政書士法人第一綜合事務所の無料相談をご利用ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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