仲野 翔悟

特定技能1号と2号の違いは?

2019年4月に施行された特定技能ビザは,人手不足と認定された14分野の業種を対象として,労働力を補うために創設されました。
2021年6月末時点で,2万9144人の外国人が特定技能のビザで就労しています。
特定技能ビザには,1号と2号がありますが,現在,日本にいる特定技能外国人は全員が特定技能1号です。
本記事では,特定技能ビザについて,未だ申請が始まっていない特定技能2号,および特定技能1号と2号の違いについて紹介します。

1.特定技能ビザについて

特定技能ビザには,1号と2号があり,一定の要件のもと,将来的に特定技能2号ビザが交付開始される予定です。
現時点で交付されている特定技能ビザは,特定技能1号のみです。

1-1 特定技能1号

特定技能1号とは,日本政府が人手不足であると認定した14分野の業種にて,一定の専門性・技能を持つ即戦力が見込める外国人を雇用することができる就労ビザの一種です。

従来は,技能実習ビザにて,外国人を雇用し,技能実習計画で定めた作業のみに従事させていました。
しかし,特定技能1号を活用することで,技能実習生としてではなく,外国人労働者として外国人を雇用することができます。

特定技能1号で認められている14業種のほとんどは,技能実習で認められている業種です。
一方で,外食業分野や飲食料品製造業分野などの一部職種については,技能実習にはない,特定技能1号で初めて追加された業種・職種もあるのです。

特定技能1号を取得の際には,それぞれの分野で定められた一定の技能・日本語能力基準を満たす必要がありますが,期間更新のために必要な試験などはなく,転職も可能です。
転職可能範囲は,試験などで技能を認められた分野や職種の範囲内のみとはなりますが,受入れ可能人数についても,介護分野と建設分野以外は制限がなく,今後,特定技能1号を活用する企業は増加することが見込まれます。

1-2 特定技能2号

特定技能2号とは,建設分野,造船・舶用工業分野において,特定技能1号よりも高い技能をもつ外国人が取得できる就労ビザです。
そのため,特定技能1号にて5年間就労すれば,自動的に特定技能2号へ移行できるわけではなく,それぞれの分野で定められた一定の技能基準を満たした外国人が,特定技能2号を取得できます。
また,技能基準さえ満たしていれば,特定技能1号を経なくても特定技能2号を取得することができます。

2.特定技能1号と特定技能2号の違い

特定技能1号 特定技能2号
① 在留期間 最長で5年間 上限設定なし
② 家族帯同 不可 可能
③ 日本語能力基準 日本語能力を証明するための一定の基準あり
※介護分野のみ基準が異なります。
なし
④ 技能基準 技能試験に合格が必要 技能試験の合格と監督者としての実務経験が必要
⑤ 対象分野 14分野 2分野
⑥ 登録支援機関の要否 必要
※支援業務の全てを自社で対応できる場合は不要
不要
⑦ 永住ビザ申請 不可 可能
⑧ ビザ交付状況 交付中 交付が始まっていない

① 在留期間について
特定技能1号にて,日本に在留可能な期間は最長で5年間で,付与された在留期間によって,1年,6月,または4月ごとのビザ更新が必要となります。
特定技能1号では転職は可能ですが,在留可能期間は,特定技能1号の期間で通算5年以内と定められています。

そのため,特定技能1号の転職者を雇用する際には,日本で就労することのできる残りの期間を確認する必要があります。
また,特定技能1号ビザを保持したまま帰国した場合でも,帰国期間は特定技能1号の期間として計算される点にも注意が必要です。

なお,特定技能1号への移行手続きが間に合わない外国人を対象として,特定活動(4月)ビザが交付されておりますが,このビザをもつ期間も特定技能1号の期間として計算されますのでご注意ください。

次に,特定技能2号についてです。
在留期間の無期限更新が可能で,ビザ更新時には,特定技能1号より長期の3年,1年,または6月のビザが交付されます。
ビザ取り消し事由に該当するようなことが無ければ,永続的に日本に在留することも可能です。

② 家族帯同について
特定技能1号は,家族を日本に呼び寄せることはできません。

これに対し,特定技能2号は,母国の家族を家族滞在ビザで,呼び寄せることができます。
呼び寄せが可能な家族は,配偶者と子どものみで,親や親戚を呼び寄せることはできません。また,特定技能2号の外国人が呼び寄せた家族は,資格外活動という許可を得ることで,週に28時間まで日本で就労することができますので,この点もあわせてご理解ください。

➂ 日本語能力基準
特定技能1号を取得するためには,日本語能力試験N4以上,または国際交流基金日本語基礎テストの結果のいずれかで日本語能力を証明する必要があります。
また,介護分野については,上記とは別に介護日本語評価試験の合格が必要となっています。

比較として,技能実習2号を良好に修了した外国人については,上記,日本語試験の受験なしで,無条件に日本語能力を認められます。

なお,特定技能2号を取得するためには,必要な日本語能力基準は定められていません。

④ 技能基準
特定技能1号では,それぞれの分野で職種ごとに定められた特定技能1号評価試験に合格,または技能実習2号を良好に修了することで,技能基準を満たすことができます。

特定技能2号では,それぞれの分野で職種ごとに定められた特定技能2号評価試験に合格し,監督者として一定の実務経験を積むことで,基準を満たすことができます。
また,建設分野の一部職種については,技能検定1級に合格すれば,特定技能2号評価試験の合格と同等以上の技能を有していると認められます。

建設分野では,複数名の建設技能者を指導しながらの作業経験、及び工程管理者としての実務経験があること。
造船・舶用工業分野では,複数名の作業員を監督した実務経験が2年以上あることが,監督者としての実務要件となっています。

⑤ 対象分野
特定技能ビザの対象となる分野はそれぞれ,特定技能1号が14分野で,特定技能2号が2分野です。

特定技能1号(14分野) 特定技能2号(2分野)
建設 建設
造船・舶用工業 造船・舶用工業
素形材産業
産業機械製造業
電気・電子情報関連産業
宿泊
航空
自動車整備
漁業
農業
飲食料品製造業
外食
介護
ビルクリーニング

➅ 登録支援機関の要否
特定技能1号の外国人を雇用する際には,1号特定技能外国人支援計画を作成し,雇用期間中,計画に基づいて,外国人の職業生活や日常生活の支援をする必要があります。
この支援について,受入れ企業で支援体制を準備することのできない場合には,登録支援機関に支援業務の委託をする必要があります。
義務・任意的支援を含め,多くの支援業務を実施する必要があるため,特定技能外国人を受け入れているほとんどの企業では,登録支援機関へ支援業務の委託をしています。

これに対し,特定技能2号の外国人を雇用する際には,支援計画の作成は不要です。
そのため,登録支援機関を介さずに,受入れ企業のみで,特定技能2号の外国人を雇用することができます。

➆ 永住ビザ申請
日本の永住ビザ申請要件のひとつに,「原則として引き続き10年以上,日本に在留しており,期間中,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)または居住資格をもって,引き続き5年以上在留していること」という規定があります。
上記のとおり,特定技能1号で日本に在留する期間は,就労資格に該当しないため,たとえば,技能実習3号修了と特定技能1号を合計して,10年以上日本に在留した場合でも永住ビザの申請はできません。

一方で,特定技能2号で日本に在留する期間は,就労資格に該当するため,上記の例の場合,さらに特定技能2号で5年間以上,日本に在留することで永住申請が可能となります。

⑧ ビザ交付状況
冒頭でも紹介したとおり,2019年4月より特定技能ビザが施行され,2021年6月末時点で2万9,144人が日本で就労していますが,その全てが特定技能1号を取得しています。

特定技能2号については,現状,特定技能2号評価試験も実施されておらず,申請手続きなどについても,詳しいガイドラインが定められておりません。
2021年から運用が開始される予定とされておりましたが,新型コロナウイルス感染症の影響などもあり,開始時期が不透明であるため,今後の展開については,入管庁の発表待ちとなっています。

3.まとめ:特定技能1号と2号の違いは?

特定技能1号と2号にはご紹介したとおり,多くの相違点があります。

特に,特定技能2号については,ガイドラインについても未だ不明確な点が多く,該当の分野も2分野のみに限られているのですが,該当分野の企業は,入管庁からの最新の情報を入手することで,外国人と企業の双方にメリットの高い特定技能2号への移行を実現できるように準備することも可能です。

また,以前は技能実習ビザを活用して,最長5年しか外国人を雇用できなかった企業でも,特定技能1号ビザを使うことにより,最長10年の雇用が可能となりました。

現在,特定技能1号のビザで就労している外国人のほとんどが,「特定技能の技能試験や日本語試験に合格」ではなく,「技能実習2号を良好に修了」して特定技能1号になる要件を満たしています。
そのことからも,技能実習中に優秀な人材を選抜して,特定技能1号ビザを活用して,さらに5年間雇用するというビザの活用方法が多いように感じます。

そして,10年間という長期の日本在留中に,日本人との結婚や技能実習・特定技能で身につけた高い日本語能力,知識・経験などが認められれば,居住資格や就労資格を取得できる可能性もあります。
そのため,特定技能2号の該当外分野で就労している外国人にも永住ビザを目指せるようなキャリアパスの可能性も残っているのです。

特定技能ビザの申請のみならず,外国人雇用の人事設計構築も労働人口減少時代には重要になってきます。
行政書士法人第一綜合事務所は,国際業務の専門事務所として,企業様の外国人雇用のお手伝いをしております。
ご相談は無料で承っていますので,お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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