行政書士法人第一綜合事務所

【解決事例】外国人の親の呼び寄せ(老親扶養特定活動ビザ)

Aさんは日本に来日して15年目の中国人女性。すでに永住権を取得し,10年前に結婚した日本人男性との間に子供が一人います。順風満帆のAさんですが,ひとつ心配ごとが…。Aさんには中国で暮らす75歳の母親がいるのですが,父親が数年前に他界して以来,母親はAさんからの仕送りを受けながら中国で一人暮らしをしていました。もともと心臓が弱く,最近は入退院を繰り返しています。Aさんは一人っ子で,母親が頼れるのはAさんしかいません。母親と日本で一緒に暮らすことはできないかと,Aさんは相談に来られました。

日本に住んでいる外国人の方は,子どもの頃から日本に住んでいるといった事情がない限り,本国の親と離れて暮らしている方が多いと思います。親族訪問の短期滞在ビザで親を呼ぶことはできますが,それも長くて90日間です。短期滞在ビザを毎回申請するのも大変ですし,ずっと日本に残れるわけでもありません。

では,Aさんが母親と一緒に暮らすには,Aさん自身が中国に帰るしかないのでしょうか。以下では,外国人の親の呼び寄せ(老親扶養特定活動ビザ)についてAさんの解決事例に沿って,解説していきたいと思います。

1. 外国人の親は家族滞在ビザでは呼べないのか?

家族滞在ビザで親を呼べると考えられている方は多く,当社にも実際に多くのお問い合わせがあります。しかし,家族滞在ビザの対象は,配偶者と子どもに限定されています。

そのため,家族滞在ビザでは親を呼ぶことはできません。

2.法律に定められていないビザがある!?

では,日本に住む外国人が親を呼ぶためには,短期滞在ビザ以外に方法はないのでしょうか。

入管法に定められているビザを俯瞰すると,親を呼ぶためのビザは定められていません。
高度専門職1号または2号の在留資格で在留する方は,7歳未満のお子さんの世話をみてもらうために親を帯同することができるという優遇措置がありますが,その他の在留資格ではそのような措置はありません。親を呼ぶための在留資格は,現在のところ入管法には定められていないのです。

一方,入管実務では,あらかじめ法律に定められていないビザも存在するのです。日本の入管制度は,あらかじめ法律で定めた類型(在留資格)に該当する外国人だけを,日本での在留を認めるという制度を採用しています。しかし,日本での在留を認めるべき外国人のすべてを,あらかじめ類型化するのは実際上は不可能です。

そこで入管法は,個々の外国人の事情に鑑みて個別救済を図るために,「特定活動」という在留資格を設けています。入管法には以下のように定められています。

別表一

在留資格 本邦において行うことができる活動
特定活動 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動

他の在留資格と異なって,特定活動の在留資格は,その活動内容を法務大臣の指定に委ねており,法務大臣の判断で在留を認めるかどうかを決定できることになっています。

この特定活動の在留資格の中でも,法務大臣が告示という形式で類型化したものがあります。例えば,ワーキングホリデーやインターンシップなどがそれに該当します。

しかし,親の呼び寄せについては,この法務大臣告示にも規定されていません。もっとも,告示に規定されていないケースであっても,実務上認められているものがあります。それが告示外特定活動といわれるもので,親を呼び寄せるケース(実務上は,「老親扶養特定活動」や「高齢扶養特定活動」と呼ばれます。)もこれに含まれます。

3.老親扶養特定活動ビザの実務上の要件

では,老親扶養特定活動ビザはどのようなケースで認められているのでしょうか。

入管法にも法務大臣告示にも定められていないため,明確な要件は実は存在しません。
ただし,実務の積み重ねによって,おおむね以下の要件を満たす必要があると考えられています。

① 親に自活能力がないこと
② 本国および第三国に身寄りがないこと
③ 子どもが本国で生活することが困難であること
④ 扶養する子の世帯に扶養能力があること

①から③は,日本で生活する必要性と言い換えることができます。

本人に自活能力があるのであれば,子が日本に呼んで親の面倒を見る必要はないと判断されます。また,本国や第三国に身寄りがある場合や,子が本国に帰国できる状況である場合も同様のことが言えます。

ここで重要となるポイントが,外国人親の年齢です。現在の実務では,70歳未満の場合は,病を抱えていて働くことができないなどの特別な事情がない限り,許可の可能性は厳しいと言わざるを得ません。以前は65歳未満と言われていましたが,高齢化が進み,65歳以上になっても働く方が多くなるにつれて,基準年齢が上がってきました。

④は日本で生活する許容性と言い換えることができます。

親に自活能力がないことが条件になるわけですから,親が日本に住むことになった場合,その生活費は当然子の世帯が負担しなければなりません。現在の世帯人数に一人増えた場合に,生計を維持できる収入がなければなりません。

4.外国人の親の呼び寄せ(老親扶養特定活動ビザ)の解決までの道のり

Aさんの事例に戻って,解決策を振り返ります。

一般に,外国人が日本に長期在留しようとする場合,出入国在留管理局に対して在留資格認定証明書交付申請を行ったうえで,在外の日本公館で査証申請を行います。

しかし,老親扶養特定活動ビザのような告示外の特定活動は,在留資格認定証明書の申請対象にはなっていません。在外の日本公館で直接査証申請を行うこともできるのですが,その場合かなりの時間がかかります。そこで,通常はまず短期滞在ビザで日本に呼び,来日後に出入国在留管理局で特定活動への在留資格の変更許可申請を行います。

Aさんの場合も,まずは母親を短期滞在ビザで招聘してもらいました。ここで注意が必要なのは,90日の査証を得ることです。短期滞在には15日,30日,90日の期間がありますが,90日でなければ来日後の在留資格変更許可申請で特例期間がないからです。

母親の来日後,いよいよ老親扶養特定活動ビザを申請します。
Aさんの母親は75歳で,稼働年齢にはないので,年齢はクリアしそうです。母親にはAさんのほかに身寄りがないことを証明するために,父親の死亡証明,Aさんと母親との親子関係証明,Aさんの独生子証明を提出しました。また,日本で生活する必要性を積極的に証明するために,母親の診断書や入退院の記録も提出しました。

次に,Aさん家族が母親を扶養することができることを証明する資料として,Aさん夫婦の収入・貯蓄を証明する資料のほか,これまで生活費を送金してきた記録も提出しました。

結果,Aさんの母親は無事に老親扶養特定活動ビザへの在留資格変更許可を得ることができました。

5.外国人の親の呼び寄せ(老親扶養特定活動ビザ)のまとめ

老親扶養特定活動ビザは,入管法や法務大臣告示には定めがなく,実務上認められてきたものです。許可事例はそれほど多くはなく,国際業務を専門とする行政書士でも取り扱っていないところもあり,インターネットで検索しても確かな情報はそう多くありません。

日本で生活する外国人が飛躍的に増加している一方で,外国人が活躍するためにはその家族のケアも欠かせません。老親扶養特定活動ビザについて,何らかの明確な基準が示されることを私たちも期待したいと思います。