依田 隼弥

就労ビザの種類を専門行政書士が解説

日本のビザは細分化すると200種類程度も存在していると言われています。
そのうち,就労ビザは大別すると19種類存在します。
しかし,横断的に就労ビザを紹介しているページは,実はあまり多くはありません。
そこで,本ページでは就労ビザ19種類について,どのような趣旨で創設されたのか。
また,どのような職種が該当するのかという点に注目し,国際業務専門の行政書士が解説していきます。
簡潔に記載することを優先していますので,それぞれのビザの詳細については,リンク先のページにてご確認ください。
それでは,19種類の就労ビザについてそれぞれ見ていきましょう。

1.日本の就労ビザの種類

就労ビザとは,外国人が日本で働くことを目的とした在留資格の総称です。
そのため,就労ビザというビザがあるわけではありません。
どの就労ビザに該当するかは,それぞれの活動内容に応じて判断する必要があります。
就労ビザの該当性を判断する際には,活動内容が極めて重要です。
本チャプターでは,就労ビザの種類と該当職種,在留期間をそれぞれ記載していきますので,就労ビザの該当性の判断にお役立てください。

では,19種類の就労ビザを解説していきます。

(1)外交ビザ

外交ビザは,日本と諸外国の外交関係を維持・発展するために設けられた就労ビザの一種です。
一般的にはあまり馴染みはないビザかと思いますが,外国政府の大使,公使,総領事,代表団構成員等及びその家族の方などが該当します。
また,外交は通常の就労ビザのように,1年や3年といった在留期間が具体的に定められているわけではありません。
外交活動を行う期間は,日本滞在が認められているのが大きな特徴です。

(2)公用ビザ

公用ビザは,日本と諸外国との友好関係を維持・発展させることを目的に設けられた就労ビザです。
(1)の外交同様,一般的にはあまり馴染みはないと思います。
外国政府の大使館・領事館の職員,国際機関等から公の用務で派遣される方及びその家族の方などが該当します。

在留期間は,5年,3年,1年,3月,30日又は15日と定められています。

(3)教授ビザ

教授ビザは,学術研究の向上発展を目的に,大学の教授などを外国から受け入れるために設けられた就労ビザです。
大学の教員等を対象とする就労ビザで,大学の教授,准教授,講師,助手などの方が該当します。
もっとも,教授ビザは就労ビザの一種と位置づけられていますので,たとえ教授職にあったとしても,収入を得ずに大学等で研究や教育活動をする場合には,教授ビザには該当しません。
この場合には,文化活動ビザに該当することになるので,間違わないように注意が必要です。

在留期間は,5年,3年,1年,3月と定められています。

(4)芸術ビザ

芸術ビザは,芸術分野を通じて,国際交流を図ることを目的に設けられた就労ビザです。
その名のとおり芸術家を対象とする就労ビザで,作曲家,作詞家,画家,彫刻家,工芸家,写真家などの方が該当します。
芸術ビザは就労ビザの一種であるため,収入を伴わない芸術活動をおこなう場合には,芸術ビザではなく文化活動ビザに該当することになります。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。

(5)宗教ビザ

宗教ビザは,外国の宗教団体から派遣される宗教家を受け入れるために設けられた就労ビザです。
僧侶,司教,宣教師等の宗教家の方が該当します。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。

(6)報道ビザ

報道ビザは,外国の報道機関から派遣される特派員等を受け入れるために設けられた就労ビザです。
新聞記者,雑誌記者,編集者,報道カメラマン,アナウンサーの方などが該当します。
なお,日本の報道機関との契約に基づき報道活動をおこなう場合には,報道ビザではありませんので注意が必要です。
この場合には,技術・人文知識・国際業務ビザに該当することになります。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。

(7)高度専門職ビザ

高度専門職ビザは,高度外国人材の受入れを促進するため,高度外国人材に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずるために設けられた就労ビザの一種です。
「高度学術研究活動」,「高度専門・技術活動」,「高度経営・管理活動」の3つに分類し,それぞれの特性に応じて,「学歴」,「職歴」,「年収」などの項目ごとにポイントを設けています。
そのポイントの合計が一定点数以上に達した場合,出入国管理上の優遇措置を受けることが出来るというメリットがあります。

具体的な高度専門職1号の優遇措置として,ポイントが70点以上に達した場合には,

①複合的な在留活動の許容
②在留期間「5年」の付与
③在留歴に係る永住許可要件の緩和
④配偶者の就労
⑤一定の条件の下での親の帯同
⑥一定の条件の下での家事使用人の帯同
⑦入国・在留手続の優先処理
を受けることができます。

また,高度専門職1号を取得している方が3年以上日本に滞在し,素行が善良であり,かつ 日本国の利益に合致しているなどの要件を満たした場合,高度専門職2号を取得することが出来ます。

高度専門職2号を取得すると,

①「高度専門職1号」の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことが可能
②在留期間が無期限となる
③上記③から⑥までの優遇措置を受けることが可能

在留期間は,高度専門職1号は5年,高度専門職2号は無期限です。

(8)経営・管理ビザ

経営・管理ビザは,企業の経営者や管理者,また外国人起業家を受け入れるために設けられた就労ビザです。
会社経営者・管理者の方などが該当します。
しかし,単に会社を設立し,会社経営者になれば経営管理ビザを取得できるわけではありません。
事業が安定的かつ継続的に営まれることや事業所の要件など,ビザ取得のためには様々な要件をクリアする必要があります。
そのため,経営管理ビザは他の就労ビザと比較すると難易度の高いビザと考えられており,行政書士への依頼が多いのも特徴と言えるでしょう。
当社でも経営管理ビザのご依頼数は多く,様々なケースにご対応しております。
詳細は,経営管理ビザ申請 のページをご覧ください。

なお,経営管理ビザの在留期間は,5年,3年,1年,4月又は3月です。

(9)法律・会計業務ビザ

法律・会計業務ビザは,法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計の業務を行うために設けられた就労ビザの一つです。
法律上資格を有する者が行うこととされている業務とは,法律上,その業務に従事するために一定の資格を有することが必要とされている業務を指しています。
私たち行政書士,その他に弁護士,司法書士,公認会計士,税理士,社会保険労務士などの資格が該当します。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月です。

(10)医療ビザ

医療ビザは,医療関係業務に従事する専門家を外国から受け入れるために設けられた就労ビザです。
医療関係業務に従事する専門家という文言からもわかるとおり,医療関係の資格を取得し,資格を有することが法律上必要とされている業務に従事する外国人を対象とした就労ビザです。
医療ビザに該当するのは,医師,歯科医師,薬剤師,看護師,准看護師,保健師,助産師,歯科衛生士,診療放射線技師,理学療法士,作業療法士,視能訓練士,作業療法士,臨床工学技士,理学療法士,義肢装具士の方です。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月です。

(11)研究ビザ

研究ビザは,研究者を外国から受け入れるために設けられた就労ビザです。
政府関係機関や企業などで,研究の業務を行う方が該当します。
研究ビザとの比較として,収入を伴わない研究活動は,文化活動ビザとなる点には注意が必要です。
また,大学などでの研究活動は,教授ビザになる点にも注意が必要です。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月です。

(12)教育ビザ

教育ビザは,教育分野の国際化進展に対応するため,小・中・高等学校,中等教育学校,特別支援学校,専修学校または各種学校もしくはそれに準ずる教育機関の語学・その他の教育を行う教師の方を受け入れるために設けられた就労ビザです。
小学校・中学校・高等学校等の語学教師の方などが該当します。
大学や大学に準じる機関,また高等専門学校で教育活動をおこなう場合には,教育ビザではなく,教授ビザとなるので注意を要します。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月です。

(13)技術・人文知識・国際業務ビザ

就労ビザの代表格とされているのが,技術・人文知識・国際業務ビザです。
技術・人文知識・国際業務ビザは,自然科学分野の専門技術者,人文科学分野の専門職従事者,外国人の思考,感受性を活かして国際業務に従事する方を受け入れるために設けられた就労ビザです。
2018年6月末の総務省が公表したデータによると,就労ビザの中で技術・人文知識・国際業務ビザを保有している外国人は技能実習ビザに次いで多く,21万2403人に上ります。
実に,日本に滞在する外国人全体の約8%が技術・人文知識・国際業務ビザを保有している計算です。
機械工学等の技術者,設計者,企画,財務,マーケティング,営業,通訳・翻訳,語学学校の講師,海外取引業務, 服飾のデザイナーなどの方が該当します。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月です。

(14)企業内転勤ビザ

企業内転勤ビザは,外国の親会社・子会社・孫会社、関連会社にあたる事業所から期間を定めて派遣される転勤者を受け入れるために設けられた就労ビザです。
近年の企業活動の国際的展開の加速に伴い,問い合わせが増加しているビザの一種です。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月です。

(15)介護ビザ

介護ビザは,深刻な介護職の人出不足に対応するため,2016年11月18日の参院本会議で法案が成立した比較的新しい就労ビザの一つです。
これまで介護福祉士資格を取得するためには,「実務経験ルート」,「福祉系高校ルート」,「養成施設ルート(専門学校等)」の3つのルートがあり,介護ビザを取得するには「養成施設ルート(専門学校等)」によって介護福祉士を取得する必要がありました。
他のルートから介護福祉士の資格を取得したとしても介護ビザは取得することが出来ませんでした。
しかし,2020年4月1日に介護ビザの基準省令が改正され,介護福祉士の資格を取得したルートに限らず「介護」の在留資格が認められることとなりました。
したがって,実務経験ルート及び福祉系高校ルートから介護福祉士の資格を取得した場合も介護ビザを取得できることになっています。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月です。

(16)興行ビザ

興行ビザは,芸能人,プロスポーツ選手などを受け入れるために設けられた就労ビザです。
歌手,ダンサー,俳優,ファッションモデル,プロスポーツ選手,サーカスの動物飼育員,スポーツ選手のトレーナー,振付師,演出家などの方が該当します。

多くの就労ビザと異なり,在留期間が3年,1年,6月,3月又は15日となっているのが特徴です。

(17)技能ビザ

技能ビザは,熟練技能労働者を外国から受け入れるために設けられた就労ビザです。
外国料理の調理師,貴金属加工職人,パイロット,外国に特有の建築士・土木技師,外国製品の修理技能士,動物の調教師,スポーツの指導者,ソムリエなど産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する方が該当します。

在留期間は,5年,3年,1年又は3月となっています。

(18)特定技能ビザ

日本の深刻な人出不足に対応するために,2019年4月からスタートしたのが特定技能ビザです。
日本で十分な人出を確保することが難しい,介護,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気・電子情報関連産業,建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食料品製造業,外食業の14分野について,一定の要件を満たすことで就労資格(特定技能1号)を得ることが可能になりました。
建設及び造船・舶用工業分野に属する熟練した技能を要する業務従事者の方については,特定技能2号が認められることになっていますが,特定技能2号に関しては未だ制度運用が始まっておらず,(実際の)受入れが開始されるには法律が施行されてから1~2年程度かかる見通しです。

在留期間は,特定技能1号については,1年,6月,4月とし,通算5年を上限としています。特定技能2号については,3年,1年,6月となっており,通算年数に制限を設けていません。

(19)技能実習ビザ

技能実習ビザは,先進国としての役割を果たしつつ,国際社会との調和ある発展を図っていくため,技能,技術又は知識の開発途上国等への移転を図り,開発途上国等の経済発展を担うことを目的として創設されました。目的から考えると就労ビザと言えるかという点には,疑問もありますが,雇用契約を基礎とする活動をしていることから,今回は就労ビザの一つとして記載をしています。
日本に滞在する技能実習生は,2018年6月末の総務公表のデータによれば,28万5776人と就労ビザの中で最も多く,在日外国人の11%に上ります。
技能実習ビザは,入国1年目(技能実習1号),入国2年・3年目(技能実習2号),入国4年・5年目(技能実習3号)に区分され,技能実習1号から技能実習2号へ,技能実習2号から技能実習3号へ移行するためには,所定の技能評価試験に合格することが必要となります。

在留期間は,技能実習1号は法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)とされ,技能実習2号,技能実習3号は,法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲)とされています。

2.就労ビザ19種類のまとめ

本ページでは,19種類の就労ビザを見てきました。
19種類の就労ビザについて,それぞれの特徴は掴んでいただけたでしょうか。
就労ビザと一言にいっても,様々な種類,特徴があることをご理解いただけたかと思います。

厚生労働省の外国人雇用についての届出状況の取りまとめによると,令和2年10月末現在,外国人労働者数は約172万人とされ,過去最高を記録しています。
コロナ禍の影響により,在留外国人数は減少していますが,外国人労働者数は予想に反し,前年比で4%増加している状況です。

コロナ禍でも外国人労働者が増加している背景には,日本の生産年齢人口の減少が要因として考えられます。
我が国の生産年齢人口は,1995年をピークに減少に転じており,今のところ回復の見込みもないのが現状です。
そのため,外国人労働者の増加は今後も加速するものと予想され,それに伴い,就労ビザの知識を習得する必要性は高まると予想されます。
外国人労働者に関する就労ビザの知識は,外国人本人だけではなく,外国人労働者を受け入れる企業にも求められます。

行政書士法人第一綜合事務所では,就労ビザの申請のみならず,既に外国人材を雇用している企業様は,適性を図るための業務監査を行い,また新たに外国人材を雇用される企業様においては,体制構築のご支援を行っております。
きちんとした採用,管理を実現することで,就労ビザは難しいものではなくなります。
私共では,いかに就労ビザの申請を難しくしないかという点に主眼を置き,日々業務しております。

就労ビザ,外国人材の雇用に関するご相談がございましたら,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

依田 隼弥

・令和3年度行政書士試験合格
山梨県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,国際結婚手続き,永住権取得など国際業務を専門としている。

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