尾島 諒

インターンシップビザ(特定活動ビザ)の取得方法,メリット,条件,必要手続きなどを解説

研究や開発などで,海外の大学と産学連携を結んでいる企業は多く存在しています。
また,海外の大学とインターンシップの契約を結ぶことで,優秀な人材の確保や社員教育にも役立つ可能性もあります。
このようなことから,海外の大学との連携や,インターンシップの制度を利用したいという企業も増加傾向にあります。

そこで今回は,インターンシップビザで海外の大学生を招くために必要な書類や手続きについて解説します。

下記のような悩みを解決できる内容になっていますので,ぜひ参考にしてください。

  • 企業にとってインターンシップビザで海外の大学生を招くメリットがあるのか知りたい
  • 海外の大学生をインターンシップビザで招く際に必要な書類や手続きがわからない
  • 海外の大学生のインターンシップビザの申請には,どのぐらい時間がかかるのか知りたい
  • インターンシップビザの入管の審査基準が知りたい

Index

1.海外の大学生が対象となる「インターンシップ」とは?

インターンシップとは,実際に大学生が仕事を体験する制度のことです。「就労体験」や「就業体験」と言われることもあります。
6月頃から始まる「サマーインターンシップ」と,10月頃から始まる「秋冬インターンシップ」が一般的ですが,開催時期は企業によって異なります。

海外の大学生が行うインターンシップについては,入管のガイドラインで以下のように定義されています。

インターンシップとは,一般的に,学生が在学中に企業等において自らの専攻及び将来のキャリアに関連した実習・研修的な就業体験を行うものであることから,インターンシップ生を受け入れる企業等においては,産学連携による人材育成の観点を見据えた広い見地からの対応が求められるとともに,適正な体制を整備した上で,インターンシップ生が所属する大学とも連携しながら,教育・訓練の目的や方法を明確化するなど,効果的なインターンシップ計画を立案することが重要です。

参考:出入国在留管理庁「外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン」

海外の大学生にとってのインターンシップ制度は,仕事の内容や自身の適正を理解することが目的です。
インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる企業は,きちんとした教育体制・実習計画の元,目的に沿った対応が求められます。

2. インターンシップビザを取得して海外の大学生を受け入れるメリット

海外の大学生におけるインターンシップには,学生側にも企業側にもメリットがあります。

①学生側のメリット

  • インターンシップ先の企業が,将来の就職先になる可能性がある
  • 日本の文化や生活,働き方を体感できる
  • 大学生のうちから,社会人としての教養や常識を身につけることができる

インターンシップビザを取得すれば,報酬を得ながらアルバイトではできない社会経験を積むこともできます。
大学以外での社会活動を通して,日本の文化や生活などにも触れられるという点でも,インターンシップのメリットは大きいです。

②企業側のメリット

  • 海外の人材を受け入れる企業の体制作りや,社員の育成に役立つ
  • 在学中の優秀な海外の大学生などに自社をアピールできる
  • 部下のマネジメント能力,多言語での語学力など,社員教育の一環として役立つ

インターンシップビザを取得して,多くの海外の大学生を受け入れることで,優秀な人材を将来雇用できる可能性が高まります。
また,インターンシップビザを取得するための準備を通じて,外国人の受入れ体制を整えたり,学ぶことができるのは,今後増加が予想される外国人雇用について,企業の大きな強みになるはずです。

3. インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる条件を確認

インターンシップビザで海外の大学生を招く場合,インターンシップの法令上の条件を満たしている必要があります。

インターンシップを労働力の確保として利用したり,不十分な指導体制にも関わらず多数の学生をインターンシップビザで受け入れたりという事例が発生しているため,厳格に審査が行われています。

しかし,恐れる必要はありません。
適切な受け入れ体制を準備すれば,インターンシップ制度を有効活用することはできます。
ここからは,インターンシップビザの入管の審査基準を見ていきましょう。

①対象となるインターンシップの条件

(1)海外の大学の学生であること

インターンシップビザを取得するためには,海外の大学に在籍している大学生であることが大前提です。
学位の授与される教育課程であれば,「短期大学」「大学院」の学生も対象になります。
また,日本入国時に18歳以上であることも必要です。
注意が必要なのは,通信教育を行う大学に在籍している場合はインターンシップビザの対象とはなりません。
この点,誤解が多いのでご注意ください。

(2)インターンシップの業務内容が大学の専攻に関係していること

インターンシップは,あくまで大学の教育課程の一部です。
そのため,業務内容が大学の専攻に関連していることが必要になります。
基本的には,一定の知識・技術等を身につけることが可能な活動が必要であるとされており,工場での軽作業や清掃などの単純作業は認められていません。

また,インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる企業は,大学と契約を結ばなければなりません。

出入国在留管理庁のガイドラインでは,「インターンシップ契約書」に明記する内容が以下のとおり定められています。

1. インターンシップの目的
2. 大学における単位科目及び取得単位数
3. インターンシップの期間
4. 報酬及び支払方法
5. 控除費目及び控除額
6. 保険内容及び負担者
7. 旅費負担者
8. 大学に対する報告
9. 契約の解除
10. 当該機関の業務に従事する活動

参考:出入国在留管理庁「外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン」

②受入企業の条件

海外の大学生を受け入れるために,適切な体制が整っているかがインターンシップビザを取得するための重要なポイントです。
また,インターンシップを充実させるためにも必要な事項も多数ありますので,ぜひチェックしてみてください。

(1)受け入れ及び指導体制のポイント

1. 労働力確保の手段として受け入れるものではないことを十分に認識していること
2. 以下の事項を統括管理するインターンシップ責任者を選任していること
①外国の大学との間の契約に関すること
②インターンシップの実施計画の作成及び評価に関すること
③インターンシップ生の受入れの準備に関すること
④インターンシップ生の生活支援及び保護に関すること
⑤インターンシップ生の労働条件,安全及び衛生に関すること
⑥インターンシップ生からの相談・苦情への対応に関すること
⑦地方出入国在留管理官署及びその他関係機関との連絡調整に関すること
⑧その他適切な支援に関すること
3. 下記の条件に適した指導員を選定していること
①常勤の役員または職員
②インターンシップを受ける学生が従事する業務について1年以上の経験を有している
4. 受け入れ期間・役員において下記の条件を満たしていること
①外国人の受け入れに対して,過去に人権を著しく侵害する行為を行っていない
②過去5年以内に出入国又は労働に関する法令の規定に違反していない
②インターンシップを受ける学生との間で,海外の大学との間の契約に反する内容の取決めをしていない
5. 国外及び国内における費用について,インターンシップを受ける学生に明示し,費用負担者及び負担金額等について合意している
6. 活動に係る諸条件や報酬額等をインターンシップを受ける学生に明示し,合意している
7. 過去のインターンシップが適切に実施されたものである(過去にインターンシップの学生を受け入れている場合)
8. 地方出入国在留管理官署による実地調査等が行われる場合は,これに協力すること
9. インターンシップ実施状況や評価結果に関する報告書を作成し,最低でも3年間保存すること

参考:出入国在留管理庁「外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン」

(2)適正な受け入れの人数

常勤職員数 学生の受け入れ人数
301人以上 常勤職員数×20分の1
201人以上300人以下 15人
101人以上200人以下 10人
100人以下 5人

※技能実習生は常勤職員数に含まれないため注意しましょう。

上記の(1)(2)に加えて,「目標」「指導体制」「評価」が明記されたインターンシップの実施計画を作成する必要があります。

行政書士法人第一綜合事務所では,インターンシップの学生を受け入れるために必要な条件の確認だけでなく,企業側の受け入れ体制構築のお手伝いも行っております。
無料相談も承っていますので,ご希望の場合には下記フォームからお問い合わせください。

無料相談のお問い合わせ先

06-6226-8120
03-6275-6038

4.海外の大学生をインターンシップで受け入れるための必要な手続きについて

海外の大学生をインターンシップで受け入れる場合,ビザが必要になります。
しかし,「報酬」や「インターンシップ期間」によって必要なビザの種類が異なるので注意が必要です。

各条件ごとに必要なビザは以下の通りです。

在留資格の種類 報酬 インターンシップ期間
特定活動ビザ 発生する 1年を超えない
文化活動ビザ 発生しない 90日以上
短期滞在ビザ 発生しない 90日以内

それぞれのビザの特徴と,手続きについて解説していきます。

①【特定活動ビザ】報酬が発生し,期間が「1年を超えない期間」の場合

本ページ記載しているインターンシップビザを指します。
インターンシップビザの正式名称は特定活動ビザ(9号)と言います。
特定活動ビザ(9号)の対象は,インターンシップにおいて報酬が発生し,1年を超えない期間で,かつ,通算して当該大学の修業年限の2分の1を超えない期間であることです。
サマージョブや国際文化交流なども特定活動ビザに当てはまります。

②【文化活動ビザ】報酬が発生せず,期間が「90日以上」の場合

インターンシップにおいて報酬が発生しないこと,期間が90日以上であることが「文化活動ビザ」の対象です。
活動内容は,大学や研究機関等に拠点を置いて行う学問の研究や研究の指導などの活動,日本建築など日本特有の文化又は技芸についての活動や研究が該当します。

③【短期滞在ビザ】報酬が発生せず,期間が「90日以内」の場合

「短期滞在」は,90日以内のインターンシップ期間で,報酬が発生しない学生が対象です。
手続きに必要な申請は,在外公館(日本大使館又は領事館)で行います。
ただし,査証免除国の学生は上記の申請は不要です。

5. インターンシップビザで海外の大学生を招くための入管への申請について

海外の大学に在籍中のインターンシップ生を招くためには,入管へのビザ申請が必要です。
ここでは,インターンシップビザを申請するにあたって必要となる下記の内容を解説します。

①インターンシップビザの申請に必要な書類一覧
②「在留資格認定証明書」とは?
③「在留資格認定証明書交付申請」の手続きについて

①インターンシップビザの申請に必要な書類一覧

インターンシップビザで海外大学生を招くために必要となる書類をご紹介します。

【特定活動(9号)】

在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請書:1通
海外大学生の証明写真:1葉(縦4cm×横3cm)
返信用封筒(定形封筒に宛先を明記。404円分の切手(簡易書留用)を貼付)
海外大学生の在学証明書:1通
海外大学と企業のインターンシップに係る契約書の写し:1通
大学からのインターンシップ実施に係る承認書,推薦状
日本での活動内容,期間,報酬等の待遇を記載した資料:1通
インターンシップ実施計画書:1通
インターンシップでの過去の在留歴を明らかにする資料
※過去にインターンシップで日本に在留したことがない場合は,その旨を文書(書式自由)にして提出
在籍する海外大学の修業年限を明らかにする資料
その他,ガイドラインに規定する項目に係る説明書

②「在留資格認定証明書」とは?

海外の大学生をインターンシップビザで招く場合には,「在留資格認定証明書」が必要になります。
インターンシップビザを申請するにあたり,「在留資格認定証明書」とはそもそも何なのか理解しておきましょう。

法律に適した形で日本に在留するためには,「在留資格」と「上陸許可」の2つの許可が必要になります。
在留資格」は上陸後の身分や活動内容が適法であるかを表すもので,「上陸許可」とはそもそも日本に入国をさせても良いのかを許可するものです。
日本に上陸し,在留資格をスムーズに取得するために事前に入管から交付されるものが「在留資格認定証明書」です。

③「在留資格認定証明書交付申請」の手続きについて

「在留資格認定証明書交付申請」の手続きは,海外の大学と日本の企業がインターンシップ契約を締結し,受け入れる学生が確定した後に行います。

インターンシップビザの申請は,基本的にインターンシップ受入側の企業の職員の方が行いますが,通常の就労ビザと異なり,受け入れ体制を整えたり,インターンシップ概要書面や計画表,評価項目等を作成する必要があることから,専門家を入れないで準備するのは難しいビザの一つと言えるでしょう。

在留資格認定証明書の審査は,1ヶ月から3ヶ月の時間を要しますので,インターンシップ計画に遅れない様,計画的に準備する必要があります。

6.海外の大学生をインターンシップビザで受け入れる際の注意点

海外から招いたインターンシップの学生であっても,報酬が発生する場合には,社会保険に加入する必要があります。
適用事業所の場合は,必ず「労災保険」に加入しましょう。

「雇用保険」に関しては,学生の加入義務がありません。
しかし,雇用保険の手続きをしない場合は,「外国人雇用状況届出書」の提出が必要です。
ハローワークに対して,雇用時と退職時に「外国人雇用状況届出書」を忘れない様に提出してください。

7. インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる際によくある質問

インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる際に,よくあるご質問の代表例を記載しています。

①大学との協定はどのように結ぶのですか?

インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる場合は,産学連携(産学協定)を結ぶ必要があります。
産学連携とは,主に企業と大学などの教育・研究機関が連携する取り組みのことで,大学と企業の共同研究・開発などが挙げられます。
連携可能な大学を探し,商談を行い,書面を交わしての成約となるのがおおよその流れになります。

もっとも,海外の大学に直接アプローチするのは,ハードルが高く,関係性のない仲介業者等を挟んでインターンシップの協定を締結した結果,日本の企業がトラブルに巻き込まれてしまうことも珍しくはありません。

行政書士法人第一綜合事務所では,企業と海外大学とのインターンシップ協定締結のご支援も行っておりますので,まずはご希望の条件等を無料相談でお知らせください。

②インターンシップビザの対象となる海外の学生への報酬はいくらくらいが妥当ですか?

基本的に,業種や企業の所在地である地区で定められている最低賃金を下回らなければ問題はありません。
インターンシップビザは,最低賃金からスタートし,学生の能力に応じて昇給されることが多い印象です。

③住居費,食費,交通費などの実費を負担する予定ですが,これらは報酬とみなされるのでしょうか?

住居費,食費,交通費などは「実費弁償」に該当するため,報酬には含まれません。
実費弁償とは,仕事の処理に当たってかかった費用を支給してもらうことです。
就労の対価として,企業からインターンシップの活動を行う学生に対して支払われる金銭が「報酬」になります。

④インターンシップの期限を延長することは可能ですか?

インターンシップビザ(特定活動9号)の場合,インターンシップ期間の上限に抵触しない限りは一旦帰国し,再度呼びよせることで,インターンシップを延長することが可能です。

⑤インターンシップビザの在留カードと指定書は通常の就労ビザと異なるのでしょうか?

インターンシップビザの在留カード,パスポートに貼付される指定書は,ご存知の方が少ない印象です。
弊社で取得したインターンシップビザの在留カード,指定書の画像を添付していますのでご覧ください。

8. インターンシップビザの取得方法のまとめ

インターンシップビザの申請に関しては,単なる労働力として受け入れていた企業があったことから,入管審査は厳格化されています。
入管からインターンシップビザのガイドラインが発表されたものの,まだまだ不透明な部分も多くあり,自社の受け入れ体制が整っているのか,申請の時期をいつ頃にした方が良いのかなど不安や悩みをお持ちの企業様も多いのではないでしょうか。

海外大学とのインターンシップ協定書,実習計画書,評価体制に関する書類,受け入れ体制・管理体制に関する説明書など,通常の就労ビザとは異なる検討項目が多数ございます。

「スムーズにインターンシップのビザ申請をしたい」「はじめてのインターンの受け入れだから申請の方法がわからない」などといった場合は,ぜひ行政書士法人第一綜合事務所の無料相談をご利用ください。

インターンシップビザに必要となる受入れ体制構築は,難しい印象をお持ちの企業様も多いと思いますが,一度作ってしまうと汎用性があり,次年度以降の受け入れはスムーズに進めることができるため,貴社の強みとすることもできます。

弊社では,海外の大学生のインターンの受け入れ体制作りから,ビザ申請,そして受け入れ後の管理方法までご対応が可能です。
英語,中国語,ベトナム語での対応も可能ですので,ご希望の企業様はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 尾島 諒

・日本行政書士会連合会(登録番号第24260162号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8842号)
愛知県出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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