今井 幸大

【技術人文知識国際業務ビザ】人事担当者向けコラム

就労ビザの代表格は,本コラムのタイトルにある「技術人文知識国際業務ビザ」です。
技術人文知識国際業務のビザを持つ外国人は,令和2年10月9日に入管が公表した資料によれば,28万8995人となっており,在留資格別の構成比で4位となっています(1位永住者,2位技能実習,3位特別永住者)。
我が国の生産年齢人口が減少する中,技術人文知識国際業務ビザの増加は今後も見込まれます。
そのため,企業の人事の方においても,技術人文知識国際業務ビザの知識は不可欠となりつつあります。
本ページでは,技術人文知識国際業務ビザについて,専門行政書士が解説していきます。

1.技術人文知識国際業務ビザで従事できる具体的な業務とは?

技術人文知識国際業務ビザで従事できる具体的な業務を理解するためのヒントは,入管法にあります。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)。

上記を分解して読むと,

  • 技術分野…理学,工学その他の自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務
  • 人文知識分野…法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務
  • 国際分野…外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務

ということになります。

しかし,入管法を読むだけでは,技術人文知識国際業務ビザの具体的な業務内容は,イメージしづらいですね。
そこで,もう少し具体的に技術人文知識国際業務ビザの中身を見ていきましょう。

まずは,技術分野からです。
技術分野は,理系の仕事をイメージしてください。
例えば,システムエンジニア,プログラマー,精密機械等の設計・開発,CAD・CAEを使用する業務,機械工学の知識を使う技術開発,情報処理の知識を使うデータベース構築などの業務があげられます。

次に,人文知識分野です。
人文知識分野は,文系の仕事をイメージしてください。
具体的には,会計業務,営業,企画業務,総務,貿易事務,コンサルティング業務,マーケティング支援業務などです。

最後は,国際業務分野です。
国際業務は,その名のとおり国際的な業務です。
具体的には,通訳業務,翻訳業務,語学教師,海外取引業務,商品開発などがあげられます。

いかがでしょうか。
技術人文知識国際業務ビザで従事できる具体的な業務のイメージは,掴んでいただけましたか。

それでは,次のチャプターで,技術人文知識国際業務ビザの要件を具体的に見ていきましょう。

2.技術人文知識国際業務ビザの要件

日本で就労を希望する外国人は,あらかじめ入管法に定められている活動内容に該当している必要があります。
言い換えると,入管法で規定していない活動では,技術人文知識国際業務ビザを取得することはできないということです。
たとえ人柄も良く,優秀な外国人留学生であったとしても,取得できません。

では,入管法であらかじめ規定している活動は何かというと,上記1で見た「技術分野」,「人文知識分野」,「国際業務分野」の内容です。
入管法で規定している活動に該当することを“在留資格該当性あり”と言い,反対に入管法で規定していない活動に従事する場合には,“在留資格該当性なし”と言います。

次に,“在留資格該当性があり”と判断されると,技術人文知識国際業務ビザは取得できるかというと,そういうわけではありません。

在留資格該当性以外に,上陸許可基準省令を満たさないと技術人文知識国際業務ビザは取得できません。
上陸許可基準省令には,入管政策上の観点から調整を要する外国人の活動について,在留資格該当性に加えて,法務省令で定められている要件に適合していることを求めるものと定義されます。
具体的には,学歴,経験,資格などです。

それではなぜ,技術人文知識国際業務ビザでは,学歴や経験などを求めているのでしょうか。

それは,在留資格該当性を有するだけで技術人文知識国際業務ビザを取得できるのであれば,国際業務の分野に該当する通訳業務に従事する場合,誰でも技術人文知識国際業務ビザを取得できることになります。
また,技術分野に該当するプログラマーに従事する場合も同様に誰でもビザを取得できることになってしまいます。

つまり,活動内容の制限に加え,学歴や経験の要件を加えることで絞りをかけ,外国人労働者数の調整や日本人の雇用確保との調整を図っているのです。

次に,技術人文知識国際業務ビザにおける上陸許可基準省令の要件を見ていきましょう。
下記の図にまとめておりますので,ご覧ください。

就労ビザに必要な学歴・経験・資格

※クリックで拡大画像が開きます。

最後は,「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」という要件です。

これは端的にいうと,外国人であることを理由として低賃金や報酬面で差別をしてはいけないということです。
近時の傾向では,会社の賃金規定や賃金表を求める入管もある程,外国人の報酬は入管審査で重視されています。

3.技術人文知識国際業務ビザについてよくあるご質問

本チャプターでは,技術人文知識国際業務ビザについて,企業の人事ご担当者の方からよくあるご質問をまとめています。

Q1 技術人文知識国際業務ビザを入管に申請したいのですが,必要書類を教えてください。


A1 自社でビザ申請を行う際は,入管が公表しているページを参考にするのが得策です。
下記に入管ホームページのリンクを記載していますので,ご参照ください。

(在留資格認定証明書交付申請)
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00089.html
(在留資格変更許可申請)
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00093.html
(在留期間更新許可申請)
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00095.html

Q2 技術人文知識国際業務ビザのカテゴリーは,どのように決まっているのですか。


A2 カテゴリーは,受入企業の規模,要件によって定められています。
技術人文知識国際業務ビザのカテゴリーによって,入管への申請書類が変わるため注意が必要です。
詳細は,就労ビザのカテゴリーによって提出書類が変わる!? において記載をしていますので,ご確認ください。

Q3 留学ビザから技術人文知識国際業務ビザに変更する際,注意すべきことがあれば教えてください。


A3 留学生を新たに雇用する場合は,技術人文知識国際業務ビザの在留資格該当性,上陸許可基準省令について,それぞれの適合性が求められるのは上述のとおりです。
その他,企業の人事担当者の方が注意すべき代表例は,留学生のこれまでの素行です。
入管法で定められたアルバイト時間などを超過している場合などは,受入企業に問題がない場合であって,技術人文知識国際業務ビザが不許可になってしまう可能性があります。
詳細は,留学ビザから就労ビザへの変更手続き に記載していますのでご参照ください。

Q4 学校で学んだ内容と従事する業務の関連性がない場合には,技術人文知識国際業務ビザは取得できませんか。


A4 入管が公表している資料によれば,最高学歴が大学であれば,大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については,柔軟に判断するとの記載があります。
また,海外の大学も日本の大学に準じた判断を行うとしています。
他方,専門学校については,専門学校における専攻科目と従事しようとする業務について,相当程度の関連性を要するとしています。
そのため,学校で学んだ内容と従事する業務の関連性を判断する場合には,申請される外国人の最高学歴を考慮の上,判断することが肝要です。

Q5 実務研修という名目があれば,現場で研修しても問題ないのでしょうか。


A5 企業の人事担当者の方からご質問の多い内容です。
上記で見たとおり,技術人文知識国際業務ビザで定められた業務以外はできないのが原則です。
しかし,入社当初は企業での研修があるのは決して珍しいことではありません。
この場合の実務研修について,入管から指針が公表されています。
詳細な解説は,就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)で許容される実務研修とは? に記載していますので,ご覧ください。

Q6 外国人雇用でエラーした場合,企業はどのような責任に問われますか。


A6 代表的なものでいえば,不法就労助長罪というものがあります。
入管法上,最も厳しい罰則が科されています。
知らなかったでは通用しない不法就労助長罪とは? に記載していますので,ご覧ください。

Q7 技術人文知識国際業務ビザの具体的な許可事例,不許可事例を教えてください。


A7 技術人文知識国際業務ビザの具体的な許可事例,不許可事例は,入管から公表されています。
これらの事例をもとに,行政書士が解説する就労ビザの許可事例・不許可事例の徹底検証! ページをご準備しておりますので,ぜひご活用ください。

4.まとめ:【技術人文知識国際業務ビザがわかる】人事担当者向けコラム

就労ビザの代表格である技術人文知識国際業務ビザ。
なかなか取っ付き難い内容であったかと思いますが,ご理解いただけましたでしょうか。

“この業務で技術人文知識国際業務ビザは取得できるのだろうか?”
このような疑問を持たれたことのある人事担当者の方は多いかと思います。

一口に技術人文知識国際業務ビザといっても,在留資格該当性の判断が難しいことがままあります。
この判断を誤れば,在留資格該当性のない外国人を働かせたということで,企業が責任に問われるリスクがあります。

では,外国人を受け入れる企業はどうすれば良いのでしょうか。
理解の入り口となるのは,在留資格該当性です。
自社での業務内容が問題ないことを正確に把握する必要があるのです。

日本の生産年齢人口の減少を見れば,今後はより一層,外国人材の雇用が進むことは想像に難くありません。
今後,益々増加するであろう外国人材の雇用を考えると,技術人文知識国際業務ビザの知識は不可欠です。

行政書士法人第一綜合事務所では,技術人文知識国際業務ビザの申請業務のみならず,外国人材の採用フローの構築,受入体制の整備をはじめ,既に外国人材を雇用している企業様へは,課題を洗い出し適正雇用を実現するための業務監査等をおこなっております。

企業の人事担当者の方からのご相談は無料で承っております。
ご質問等がございましたら,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

特定行政書士 今井 幸大

・日本行政書士会連合会(登録番号第18080677号)
・東京都行政書士会(会員番号第11843号)
東京都出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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