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【特定技能ビザ】「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」分野統合後の変更点と注意点

1.「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」統合の背景 従来は,3分野に分かれていた素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野は,受入れ上限数に達した統合前分野での受入れ再実現や,手続きの簡素化を主な理由として統合されました。 特定技能外国人の受入れが認められている12分野では,それぞれ受入れ上限数が設定されており,統合前にあった「産業機械製造業分野」で設定されていた特定技能外国人の受入れ上限数(5,250人)が,2022年2月末時点で人数超過しました。 人数超過の結果として,産業機械製造業分野では,一時的に,国外にいる外国人に対しての特定技能ビザ交付が停止される措置がとられました。 加えて,統合前の製造業3分野では,同じ就業場所でも複数の分野で特定技能外国人の受入れをする場合には,分野ごとに協議会加入手続きが必要であった点や,協議会加入手続きが煩雑であるなどの意見もあり,分野統合の実現を後押しする要因となりました。 元々は,3つの分野に分かれていた「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」を統合することで,製造業3分野それぞれの受入れ上限数も合算され,現在では,統合前に産業機械製造業分野に該当していた受入れ機関でも,再度,特定技能外国人の受け入れが可能となりました。 2.「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」統合後の変更点 製造業3分野の分野統合後の主な変更点について紹介します。 2-1.受入れ分野と業務の対応関係 統合前には,製造業3分野のそれぞれで,受入れ可能な特定技能外国人の業務区分が設定されていました。 他方で,統合後の現在では業務区分についても統合されたため,結果として,統合前には受入れが認められなかった業務区分の技能をもつ,特定技能外国人の受入れが可能となった受入れ機関もあることになります。 統合後に,素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野で受入れ可能となった業務区分は次の表の通りです。 受入れ可能となった業務区分 鋳造 鍛造 ダイカスト 機械加工 金属プレス加工 鉄工 工場板金 めっき アルミニウム陽極酸化処理 仕上げ 機械検査 機械保全 電子機器組立 プリント配線板製造 プラスチック成形 電気機器組立て 溶接 工業包装 塗装     それぞれの業務区分の技能要件を満たす特定技能外国人であれば,受入れが可能です。 また,統合前には,特定技能外国人が就労する分野を変更する場合には,仮に就労先に変更が無かった場合でも,新たに特定技能ビザの切り替えをする必要があったため,複数の分野に該当していた製造業の受入れ機関は,手続き上の手間が大幅に削減されています。 2-2.特定技能外国人の受入れ上限数 統合前には,製造業3分野での特定技能外国人の受入れ上限数は,次の通りに設定されていました。 素形材産業分野 産業機械製造業分野…

永住ビザの身元保証人とは

1.永住ビザの身元保証の内容 永住ビザの申請の際には,身元保証書に身元保証人の署名をして出入国在留管理庁(いわゆる入管のことです。)に提出しなければなりません。 身元保証書には,次のように記載されています。 私は上記の者の永住許可申請に当たり,本人が本邦に在留中,本邦の法令を遵守し,公的義務を適正に履行するため,必要な支援を行うことを保証いたします。 このように身元保証人は,申請人がこれからも日本で生活するにあたって,日本の法令遵守や公的義務の履行に関する必要な支援を行うことを保証することになります。 以前は,身元保証人は以下の事項を保証することとなっていましたが,2022年6月1日から書式が変わり,身元保証の内容が変更されました。 ①滞在費(永住ビザの申請人が日本で滞在するために必要となる経費全般) ②帰国旅費(申請人が万が一,帰国しなければならない際の,帰国のための経費全般) ③法令の遵守(申請人が日本に滞在するにあたり,法律や命令などの社会的規範に違反しないこと) このように,費用面の保証と法令遵守という以前の内容とは異なり,日本の法律や公的義務に詳しいとは限らない申請人に対して,必要な支援を行うことが保証の内容となりました。 2.永住ビザの身元保証人の責任 「保証人」と聞くと,借金の保証人と同じように捉えられ,身構える方が多いのではないでしょうか。 実は,永住ビザの身元保証人は,想像されるような保証人とは全く性質を異にします。 一般に民事上の保証人は,債務者が債務を履行しない場合に,保証人が債務者に代わって債務を履行する責任を負います。 債権者は保証人に対して債務を履行するように請求権を有し,保証人が任意に履行に応じない場合は,裁判所に訴えて強制的に履行を実現することができます。 いわゆる「肩代わり」のようなイメージをもってもらうとわかりやすいです。 これに対して,永住ビザの身元保証人は,上記のような責任を負いません。 例えば,申請人が住民税を払わない場合において,申請人が身元保証人に対して代わりに払うように請求することはできないことは当然として,出入国在留管理庁や市区町村役場からも身元保証人に対してそのような請求は一切できません。 また,申請人が法律に違反して他人に損害を与えた場合に,裁判所に訴えて強制的に賠償をさせることもできません。 このように,永住ビザの身元保証は,民事上の保証とは大きく性質を異にします。 永住ビザの身元保証は道義的責任といわれており,万が一申請人が困ったときには手助けしますよという約束のようなもので,約束を果たさなかったからといって身元保証人は法的なペナルティは受けないのです。 3.永住ビザの身元保証人になれる人 永住ビザの身元保証人は誰でも良いというわけではなく,いくつかの条件があります。 永住ビザの身元保証人になれるのは,日本人,又は既に永住ビザを取得している外国人(特別永住者の方も含みます。)に限られます。 これは,永住ビザの申請人よりも日本に滞在できる期間が短い場合には,身元保証の内容を果たせない可能性があるため,身元保証人になれる方を申請人よりも長く日本に滞在できる資格がある人物に限定していることがその理由です。 次に,身元保証人には安定的な収入がなければなりません。 もっとも,いくら以上の年収が必要とか,申請人よりも収入が高いことは要件とはされていません。実務上は,かなり緩やかに審査されており,定期的な収入があれば収入の多寡は問題になっていません。 そして,身元保証人についても,納税義務を果たしていることが求められます。 実務上は全ての税種目をチェックしているわけではなく,住民税の滞納が無い限り,納税義務を果たしているものと扱われています。 このように,身元保証人にはいくつかの条件がありますが,それほど高い基準を設定しているものではなく,日本人か永住者の方で,働いている方であれば,特に問題視されることはないと言っていいでしょう。 4.永住ビザにおける身元保証人に関する必要書類 永住ビザを希望するご友人や同僚の方から身元保証人になってほしいとお願いをされた場合において,身元保証人の責任の内容のほかに,どのような書類を用意する必要があるか知りたい方が多いと思います。 身元保証人となる方にご用意いただくのは,身元保証書のほか,身分証のコピーのみです。 身分証のコピーについては,永住者の方であれば,在留カードのコピー,日本人の方であれば,運転免許証等の公的な身分証のコピーで問題ありません。 顔写真付きのものがベストですが,保険証のコピーでも大丈夫です。 必要書類の少なさに拍子抜けされる方もいらっしゃるかもしれませんが,実はこの点も,2022年6月1日に運用が変更された点です。 以前は,身元保証人となる方の①職業を証明する資料(在職証明書等・会社の登記簿謄本など),②住民票,③直近1年分の所得を証明する資料(課税証明書・源泉徴収票の写しなど)が求められていました。 特に所得を証明する資料については,友人や同僚に年収を知られたくない人も多いため,身元保証人を引き受ける足枷になっていたかと思います。 今回の運用変更によって,身元保証人の収入や納税義務は審査対象から除外されたわけではないものの,書類が簡素化されたことから,身元保証人への就任ハードルは少し下がりました。 この点をしっかりご認識いただければ,身元保証のご依頼もスムーズに進むと思います。…

永住ビザの不許可事例と再申請の方法とは?

1.永住ビザの取得条件 まずは,永住ビザを取得するための条件をご紹介します。 永住ビザを取得するためには,大きく以下の3つの条件を満たす必要があります。 ① 法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること(素行善良要件) ② 日常生活において公共の負担にならず,その有する資産または技能から見て将来において安定した生活が見込まれること(独立生計要件) ③ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件) ア. 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること ※ この期間のうち,就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)または居住資格(配偶者ビザなど)をもって引き続き5年以上在留していることが必要です。 イ. 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと ウ. 公的義務を履行していること ※ 納税,公的年金及び公的医療保険の納付に加え,入管法に定める届出等の義務を適正に履行していることが求められます。 エ. 現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。 ※ 当面の間は,在留期間「3年」を有する場合は,「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。 オ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと これらの条件を満たさないことが,そのまま永住ビザが不許可となる原因となります。 以下では,永住ビザの不許可事例について,より具体的にご説明いたします。 2.永住ビザが不許可となる場合 2-1.永住ビザの不許可率 不許可事例を検討する前に,永住ビザの不許可率はどのくらいなのでしょうか。 永住ビザ申請の許可率・不許可率!の記事に詳細がありますのでご覧ください。 こうして見ると,実に2人に1人は永住ビザ申請が不許可となっている計算となります。 これを見て永住ビザ申請は厳しいものという印象を持たれた方もいるかもしれません。 もっとも,不許可と言ってもその理由は様々です。 不許可の事例を知ることで,ご自身の永住ビザ申請や不許可の場合の再申請に役立てることができるはずです。 そこで,以下では実際に永住ビザが不許可になりやすい代表的な例をご紹介します。 2-2.永住ビザの不許可の類型 (1)年収について 永住ビザ申請においては,年収が許可・不許可を分ける大きな要因と言っても過言ではありません。…

就職活動のための特定活動ビザ(留学生向け)

1.卒業しているのに「留学」ビザのままって大丈夫? 「留学生が学校を卒業した後,留学ビザのまま在留し続けることはできますか」というご質問をよく受けます。 まず,外国人は在留期間の満了日まで適法に日本に在留することができるというのが,理解の前提です。 これは,在籍していた学校を卒業した後も同じです。 しかし,外国人は,永住者と定住者を除き,在留資格に対応する活動をしていなければ在留資格を取り消される可能性があるのです。 この点には,特に注意が必要です。 留学生についていえば,正当な理由がある場合を除き,学校を卒業後,大学等で教育を受ける活動を行うことなく3ヶ月を経過すれば,在留資格を取り消される可能性があります。 また,在留資格は取り消されないまでも,在留資格の取消事由があることは,他の在留資格(例えば,技術・人文知識・国際業務)に変更する際のネガティブな事情となります。 2.就職活動のための特定活動ビザとは? 卒業後に留学ビザのままでいれば上記のようなリスクがあるため,卒業前から続けていた就職活動を卒業後も継続する場合には,留学ビザから就職活動のための特定活動ビザに変更する必要があります。 留学ビザと同様に,就職活動のための特定活動ビザにも許可を受けるための要件があります。 このチャプチャーでは,就職活動のための特定活動ビザの対象と要件を簡単に整理します。 ① 就職活動のための特定活動ビザの対象 まず,就職活動のための特定活動ビザの対象は,卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的とする以下の留学生です。 a.継続就職活動大学生 日本の大学(短期大学及び大学院を含みます。)を卒業した外国人であれば,これに当たります。 b.継続就職活動専門学校生 専修学校専門課程(いわゆる専門学校)において専門士の称号を取得し,同課程を卒業した外国人が,これに当たります。 ただし,当該専門学校における専門課程の修得内容が,「技術・人文知識・国際業務」を代表とする就労ビザの在留活動と関連している必要があるので,その点には注意が必要です。 c.継続就職活動日本語教育機関留学生(海外大卒者のみ) 海外の大学又は大学院を卒業又は修了した後に(学士以上の学位の取得が必要です。),日本の日本語教育機関を卒業した外国人が,これに当たります。 なお,日本語教育機関側についても,いくつか要件が定められています。 詳細については,下記のページからご確認ください。 ※出入国在留管理庁サイトより https://www.moj.go.jp/isa/content/930004793.pdf ② 就職活動のための特定活動ビザの要件 次に,就職活動のための特定活動ビザの要件は,以下の通りとなります。 ① 留学ビザをもって在留していること ② 卒業後1年未満であること ③ 卒業前から引き続き行っている就職活動を継続することを希望する者 ④ 在留中の一切の経費を支弁する能力を有すること ⑤ 卒業した学校から推薦を受けていること ⑥…

フィリピン人の帰化申請で必要な本国書類の特殊性

1. フィリピン人の帰化申請で必要となる書類 先に述べた通り,帰化申請は「戸籍」を作成する手続きであり,「戸籍」を作成するためには,申請人の親族関係を確定させる必要があります。 そして,親族関係を確定させるためには,必ず本国書類が必要となります。 では,どのような本国書類に基づいて親族関係を確定させるのでしょうか。 日本であれば,戸籍制度を採用しているため,「戸籍謄本」を取得すれば,親族関係を一度に確認することが出来ます。 しかし,世界中を見渡した場合,戸籍制度を採用している国は,現在は日本と台湾のみであり,その他の国では,複数の本国書類を収集し,総合的に判断することにより親族関係を確定させることになります。 そして,国籍に関係なく,親族関係を確定するためには一般的に次のような本国書類が必要となります。 なお,各法務局(の担当者)によって考え方が異なるので,場合によっては必要と言われる本国書類が増えるケースがあるので,ご注意下さい。 申請人自身が独身(未婚)のケース 国籍証明書(申請人自身の分) 出生証明書(申請人+兄弟姉妹の分) 両親の結婚証明書 家族関係証明書 もっとも,フィリピン人の場合,上記のうち国籍証明書と家族関係証明書が存在しません。 そのため,他の国籍者とは違う証明書が必要となり,具体的には,次の本国書類が必要になります。 申請人自身が独身(未婚)のケース 有効期限の残っているパスポート 出生証明書(申請人+兄弟姉妹の分) ※申請人分はアポスティーユ認証済のもの 両親の結婚証明書 では,詳しくは次章にて説明していきます。 2. フィリピン人の帰化申請で必要となる本国書類の特殊性 フィリピン人が帰化申請をするうえで諸外国の方と違う点は,大きく分けて2つあります。 1つは,フィリピンの本国書類は,よほど古い書類でない限り,原則として,特定の行政機関が発行した書類が求められるということ。もう1つは,国籍証明書が存在しないということです。 以下,それぞれの点について解説します。 ①フィリピン人の帰化申請で必要となる本国書類が発行される行政機関 一般的に,外国人の方が帰化申請をする場合,国籍証明書のように大使館や領事館から発行されるものを除き,日本でいうところの県や市から発行された証明書を提出することで足ります。 しかし,フィリピン人が帰化申請をする場合,基本的には,特定の行政機関から発行された書類の提出を求められます。 ここでいう特定の行政機関とは,フィリピン統計局=PSA(Philippine Statistics Authority)のことです。 PSAは,2013年9月よりフィリピン人の各証明書を発行する正当な権限を有する行政機関としての役割を担っています。 過去に,配偶者ビザ申請のために,PSA発行の結婚証明書を取得した方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。 一部のPSA発行の書類は,オンラインでも申請することが可能なので,諸外国に比べ,本国にいらっしゃる親族に書類取得を手伝ってもらう機会を減らすことも出来ます。 ※PSAデリバリーサービス参照:https://www.psaserbilis.com.ph/#! ちなみに,帰化申請では原則的に,先に述べたPSA発行の書類が必要です。 しかし,場合によってはPSA設立以前に別の行政機関から発行された本国書類をお持ち方いらっしゃることと思います。…

ネパールの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

1.特定技能の二国間協定とは ネパールと日本の間で締結された特定技能の二国間協定は,特定技能外国人の保護や特定技能制度の適正な運用を実現するために締結されました。 2.二国間で共有される主な情報内容 二国間協定で共有される内容は次の通りです。 特定技能外国人や家族・親族の金銭や財産の管理 契約不履行時などの違約金に関する約束 特定技能外国人に対する人権侵害 特定技能ビザ取得時の不正な手続き 特定技能外国人からの不当な手数料の徴収 特定技能外国人を保護するための事項を中心に,特定技能ビザを取得する際の手続き上の不正についても情報共有されます。 また,特定技能外国人の受入れ後は,受入れ機関が四半期ごとに賃金台帳などを添付した報告書を入管へ提出する義務があるなど,労働法についても日本人従業員以上に保護されています。 そのため,入管法やその他の法律に違反する行為が発覚した場合は,二国間で情報共有され特定技能外国人の受入れができなくなる可能性もある点には注意して下さい。 3.二国間で協議される主な内容 二国間協定では,次の内容について協議されることが誓約されています。 二国間の政策実施・変更に関する事項 採用プロセスや費用負担に関する事項 特定技能制度の手続きに関する審査 特定技能制度に関わる機関に関する事項 特定技能試験の実施に関する事項 特定技能制度の適正な運用を継続して実現するために,上記の内容を中心に随時協議されることが誓約されています。 協議される内容については,採用プロセスや手続きに関する事項から,特定技能試験に関する事項まで特定技能制度全般にかかわる内容が協議されます。 4.二国間の特定技能試験に関する誓約 二国間協定で誓約された特定技能試験についての誓約事項は次の通りです。 日本政府からの各種要請に可能な限り応じる 技能・日本語試験の適正な実施 試験などの不正を行った情報を共有 ネパール国内での特定技能の技能試験や日本語試験の実施に関して,日本政府からの要請などがあった場合の協力や,両国内で実施される試験での不正を防止するための情報共有をすることが誓約されています。 なお,ネパール国内では介護を含む4業種の技能試験の技能試験が実施されています。 5.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ) 特定技能外国人を呼び寄せする際の,受入れフローは次の通りです。 ①採用する人材の選定 ②雇用契約の締結 ③特定技能ビザの取得 ④在ネパール日本大使館での手続き ⑤健康診断・オリエンテーション受講 ⑥海外労働保険等への加入手続き ⑦海外労働許可証の取得 ⑧日本へ入国・就労開始 ①採用する人材の選定 技能実習2号以上を良好に修了した人材や,特定技能の技能試験や日本語試験に合格した人材の中から採用する人材の選定をします。…

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の内容と変更点

1. 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)とは 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)とは,新型コロナウイルスの影響で,元々保持していたビザの期限内に帰国困難な外国人や,受入れ機関が倒産したなどの理由で解雇された外国人を対象に発給されているビザです。 なお,「特定活動ビザ」とは新型コロナウイルスの影響を受けた外国人を救済するためだけのビザではなく,現行あるビザでは対応できない活動に対して,法務大臣の権限で発給することができるビザです。 そのため,今回は新型コロナウイルスの影響を受けて帰国困難などに直面している外国人を救済する目的で特定活動ビザが使われていますが,実際には本記事で紹介する事例以外でも,さまざまな用途で特定活動ビザが使われています。 2. 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の変更点 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)は,外国人の往来が実質的に再開されている現在においても,帰国困難な合理的な理由が説明できれば,入管での審査を経てビザを取得することができます。 これまでは,ビザ申請の際に提出された帰国が困難である理由書などの資料から,各入管にてビザ発給の可否が判断されていました。 そのため,同じ条件下の外国人でも,管轄の入管や審査を担当する審査官によって,ビザ申請の審査結果が異なるような事例も散見されました。 一方で,今回の発表により,今後の特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の発給に関わるルールが明確にされました。 まずは,今回発表された変更点について解説して行きます。 なお,本記事では特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)と併せて,多くの帰国困難な外国人が取得をしている「短期滞在ビザ」についてもご紹介します。 2-1.対象者 新たな発表では,現在,特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援),短期滞在ビザで在留している外国人または2022年11月1日までに現在保持しているビザの期限が満了する外国人に限り,今後の特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援),短期滞在ビザへの変更や更新が認められることになりました。 2-2.許可される在留期間と変更・更新の可否 今後,許可される在留期間や変更・更新の可否は,ビザ申請する外国人のビザの状況によって,次の➀~➂の何れかのルールに則り決定されます。 ➀現在保持している特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザの在留期限が6月29日までの外国人 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザで在留している外国人で,在留期限が6月29日までの外国人は,下記のルールでビザの更新が認められます。 現在のビザ 更新で取得できる在留期間 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援) 4ヶ月 短期滞在ビザ 90日 なお,ビザ更新をした後も,引き続き帰国困難な状況が認められることで,再度のビザ更新が認められる可能性がありますが,その際には6月30日以降の更新として②の取扱いになりますので、再度のビザ更新は「今回限り」のものになり、それ以降の更新は認められません。 ②現在保持している特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザの在留期限が6月30日以降の外国人 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザで在留している外国人で,在留期限が6月30日以降の外国人は,下記のルールでビザ更新が認められます。 現在のビザ 更新で取得できる在留期間 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援) 4ヶ月 短期滞在ビザ 90日 なお,ビザ更新が認められるのは「今回限り」とされているため,ビザ更新をした後は在留期限が満了する前に,母国へ帰国する必要があります。 ➂新たに特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザの取得を希望する外国人 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザ以外のビザで在留する外国人で,11月1日までに在留期限を迎える外国人については,下記のルールでビザの取得が認められます。 希望するビザ 取得できる在留期間 特定活動ビザ(帰国困難)…

スリランカの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

1.特定技能の二国間協定とは 日本とスリランカの間の二国間協定は,特定技能制度でのそれぞれの国の役割を明確にして,制度の適正な運用や特定技能外国人の保護を目的としています。 2.両国の連絡窓口 二国間協定では,次の機関がそれぞれの政府の連絡窓口として定められています。 日本 法務省出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課 スリランカ 通信・海外雇用・スポーツ省スリランカ海外雇用局求人課 3.二国間で共有される主な情報内容 二国間協定では,次の内容について情報共有されることが誓約されています。 特定技能外国人やその家族からの金銭や財産管理 契約不履行時の違約金などに関する契約有無 人権侵害に関する事項 特定技能ビザ取得時の不正な手続き 不当な手数料の徴収 二国間協定では,特定技能制度の適正な運用に必要または有益な情報を共有することが定められています。 共有される情報の内容からも分かるように,特に求人・求職に関わる仲介機関の不正を防止する内容の情報共有がなされます。 4.二国間で協議される主な内容 二国間協定で,定められている協議内容は次の通りです。 二国間の政策実施・変更に関する事項 仲介機関の適正に関する事項 受入れ機関や送出し機関に関する事項 技能・日本語試験に関する事項 二国間協定では,特定技能制度の適正な運用実現のために,上記の内容について定期または随時協議を行うことが誓約されています。 特定技能制度の運用にあたり,問題となる事象などがあれば,協定内容も随時更新される可能性があります。 5.二国間の特定技能試験に関する誓約 二国間協定では,特定技能試験に関する事項も次の通り誓約されています。 日本政府からの要請に可能な限り対応 技能・日本語試験の不正を防止・情報共有 〇日本政府からの要請に可能な限り対応 スリランカで実施される特定技能の技能試験や日本語試験の実施などに関して,協力を要請された場合はそれに応じることが誓約されています。 〇技能・日本語試験の不正を防止・情報共有 実施した試験に関して,替え玉受験や合格証の偽装などが発覚した場合は,両国間で迅速に情報共有することが誓約されています。 6.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ) スリランカから特定技能外国人を呼び寄せする際の,受入れフローは次の通りです。 ①採用する人材の選定 ②雇用契約の締結 ③特定技能ビザの取得 ④在スリランカ日本大使館での手続き ⑤海外労働者登録…

ミャンマーの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

1.特定技能の二国間協定とは ミャンマーと日本との間で二国間協定が締結された目的は,特定技能制度を運用する上での2国間の役割を明確にし,適正な制度運用を実現することで,特定技能外国人の保護をするためです。 2.ミャンマー政府が誓約した重要事項 二国間協定で,ミャンマー政府が誓約した重要事項は次の通りです。 送出し機関の審査・認定の実施 送出し機関情報を日本政府へ報告 日本政府からの情報に応じて送出し機関の調査などを実施 指導などを受けた受入れ機関情報の公表 日本政府からの依頼に応じて情報提供 〇送出し機関の審査・認定の実施 送出し機関について十分な審査を行い,基準を満たした機関のみを許可することが誓約されています。 なお,ミャンマーにいる人材を採用する場合は送出し機関を仲介することが必須となっています。 〇送出し機関情報を日本政府へ報告 送出し機関の許可を出した場合は,日本政府へ情報共有することが誓約されています。 〇日本政府からの情報に応じて送出し機関の調査などを実施 送出し機関の不正な活動について,日本政府より情報提供を受けた場合は,該当する送出し機関の調査・指導などを行うことが誓約されています。 〇指導などを受けた受入れ機関情報の公表 日本政府が受入れ機関などに対して改善命令などを行った場合は,ミャンマー政府にも情報共有され,ミャンマー国内でも公表することが誓約されています。 そのため,不正を行った受入れ機関は,今後ミャンマー人の受入れを希望する場合も人材獲得が難しくなることが想定されます。 〇日本政府からの依頼に応じて情報提供 ミャンマーの送出し機関などに関する情報照会を日本政府より受けた場合は,必要な情報を調査して日本政府へ提供することが誓約されています。 3.日本政府が誓約した重要事項 日本政府が誓約した重要事項は次の通りです。 ミャンマー政府からの送出し機関情報を日本国内で公表 ミャンマー政府からの依頼に応じて情報提供 〇ミャンマー政府からの送出し機関情報を日本国内で公表 送出し機関に関する情報や,認定取り消しなどが行われた情報について,ミャンマー政府より情報提供を受けた場合は,日本国内にて公表することが誓約されています。 〇ミャンマー政府からの依頼に応じて情報提供 ミャンマー政府より,特定技能外国人受入れに関する情報の照会を受けた場合は,必要な情報を共有することが誓約されています。 4.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ) ミャンマーにいる特定技能外国人を呼び寄せする際の手続きは次の通りです。 ①送出し機関との契約 ②求人票の承認 ③採用する人材の選定 ④雇用契約の締結 ⑤特定技能の在留資格認定証明書の取得 ⑥ミャンマー労働省よりOWIC取得 ⑦在ミャンマー日本大使館での手続き ⑧日本へ入国・就労開始 ①送出し機関との契約…

マレーシア人の帰化申請で必要な国籍証明書の特殊性について

1.マレーシア人の帰化申請で必要となる本国書類 ①マレーシア人の帰化申請で一般的に必要となる本国書類の種類 先に述べたように,帰化申請をするためには,申請人がどのような人物であるかとうパーソナル情報を確定させる必要があります。 そして,このパーソナル情報を確定するために本国書類が必要となります。 では,どのような本国書類によってパーソナル情報を確定するのでしょうか。 実は,この本国書類は,戸籍制度を採用しているかどうかで種類が変わってきます。 現在,戸籍制度を採用している国は,日本と台湾です。 台湾を例にすると,台湾人が帰化申請するときは,基本的には「戸籍全部謄本」の1種類で足ります。 なぜなら,この書類の中に,帰化申請で必要となる国籍や出生の事実,両親や家族構成など,帰化申請で必要となるパーソナル情報が全て含まれているからです。 しかし,戸籍制度を採用していない国では,国籍証明書や出生証明書,結婚証明書などのそれぞれの事柄を証明する書類を収集し,総合的に判断することにより帰化申請で必要となるパーソナル情報を確定させることになります。 そして,マレーシアは戸籍制度を採用している国ではありません。 そのため,マレーシア人が帰化申請をするためには,数種類の本国書類が必要となります。 必要となる本国書類の種類は,申請人の事情によって異なるので,ここでは,マレーシア人が帰化申請するうえで必要となる一般的な本国書類についてご紹介します。 申請人自身が独身(未婚)のケース 国籍証明書 出生証明書 両親の結婚証明書 申述書 ②それぞれの書類の内容 上述した書類の内容について,簡単にご説明します。 〇国籍証明書 国籍証明書は,申請人がマレーシア人であることを証明する証明書のことです。 こちらは東京にある駐日マレーシア大使館にて取得可能です。 詳しくは後述しますが,正確にはマレーシアでは国籍証明書という名の証明書は発行されておらず,また,諸外国のように「申請人が国籍国の国籍を有している」という内容の文言はありません。 〇出生証明書 出生証明書は,申請人の出生を証明する証明書のことで,申請人本人だけでなく,兄弟姉妹がいらっしゃる場合は,その全ての方の分も必要となります。 こちらは,マレーシア本国にある出生及び死亡登記庁にて取得可能です。 〇両親の結婚証明書 両親の結婚証明書は,その名の通り,両親の結婚を証明する証明書のことです。 こちらも,マレーシア本国にある結婚登記庁にて取得可能です。 なお,申請人自身が結婚している場合,申請人自身の結婚証明書が必要となります。 また,両親が離婚している場合や,死亡している場合は,それらの事実を証明する証明書も追加で求められます。 〇申述書 申述書は,申請人が申請人の両親の子どもで間違いない,ということを両親が手書きで作成する書類を言います。 また,申述書の内容は各法務局で若干違うため,事前に確認する必要がありますが,どの法務局でも,申述書が送られてきたときに使用された国際郵送の封筒を申述書と併せて提出するように案内されます。 そのため,申述書そのものがあれば良いのではなく,国際郵送の封筒とセットで初めて申述書として有効となるということを覚えておいてください。 2.マレーシア人の帰化申請で必要となる国籍証明書の特殊性 ①マレーシア人には国籍証明書がない!? 国籍証明書は,申請人の国籍を確定する上で重要な書類です。 書類の名称は各国によって違いますが(例えば,中国は「領事証明」と言います。),マレーシア周辺のベトナムやタイでは,国籍証明書というタイトルで証明書の取得が出来ます。…