行政書士法人第一綜合事務所

タイ人との国際結婚手続きを専門行政書士が解説!

タイは以前から親日国として知られており,日本人との国際結婚も相当数あります。
しかしながら,タイ人との国際結婚手続きは,他国と比べると複雑で,時間を要する手続きです。
そこで本ページでは,日本人とタイ人との国際結婚手続きについて,国際業務専門の行政書士がこれまでの経験をもとに,その手順,注意すべき事項について記載しています。
これからタイ人との国際結婚を考えられている方は,ぜひ参考にしてください。

1.国際結婚手続きの用語解説

本チャプターでは,国際結婚手続きにおける専門用語を解説していきます。
以降の内容をご参照いただくにあたり必要となる前提知識ですので,ご一読の上,次のチャプターに進んでください。

①国際結婚の成立とは?

国際結婚が有効に成立するには,双方(本事例でいうと日本とタイ)の国籍国において,法的に有効な婚姻関係にあることが原則必要とされています。
日本で先に結婚手続きを行うことを日本方式と言い,タイで先に結婚手続きを行うことをタイ方式と言います。

②婚姻要件具備証明書とは?

外国人が日本方式の婚姻を有効に成立させるためには,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)を満たしていることが必要とされています。
もっとも,日本の市区町村役場で,外国人の国籍国の法律を全て審査することは現実的ではありません。
そのため,国際結婚においては,婚姻要件具備証明書を提出することによって,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていると判断することにしています。

なお,発行国によっては,独身証明書などと言われることがありますが,独身であることのみならず,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。

2.タイ人との国際結婚手続きで注意すること

タイ人と日本人との国際結婚手続きの際,ご注意いただきたい事項を下記に記載いたします。

①婚姻要件具備証明書について

タイは,婚姻要件具備証明書を発行しない国です。
そのため,婚姻要件具備証明書に代わる書類によって,タイ人の婚姻要件充足を証明することになります。

②婚姻可能な年齢について

タイ人の婚姻可能な年齢は,男女ともに17歳以上です。
ただし,裁判所の婚姻許可があれば,17歳未満であっても婚姻することは可能です。
また,20歳未満の場合は,父母の同意を得なければなりません。

③再婚禁止期間について

女性は,前婚終了から310日を経過しないと再婚することができません。
ただし,①子がその期間内に出生した場合,②離婚した夫婦が再婚する場合,③法律に定められた内科診療の資格医師により発行された妊娠をしていないことを証する証明書がある場合,④婚姻の許可する裁判所の命令がある場合は,前婚終了から310日を経過していなくても婚姻することができます。
なお,タイ法の再婚禁止期間の規定は,タイ人男性と日本人女性が婚姻する場合にも適用されます。

④婚姻後の氏について

タイは,選択的夫婦別姓制度です。婚姻によって相手方配偶者の氏に変更することもできますし,従来の氏を婚姻後も使用することも可能です。
もっとも,タイ人女性は婚姻によって夫の氏に変更することが一般的で,日本人との国際結婚においても日本人男性の氏に変更する方がほとんどです。

3.国際結婚手続きにおける必要書類(日本方式)

本題の国際結婚手続きについて解説していきます。
ここからは,日本人とタイ人が日本方式で婚姻をおこなう場合の必要書類を記載します。
なお,市区町村役場によって若干の相違があるため,事前に役所照会することをお勧めいたします。

①日本の市区町村役場において必要となる書類

<日本人の方にご準備いただく書類>
・婚姻届書(日本人同士の場合と同様のものです)
・本人確認資料(運転免許証又はパスポート等)
・戸籍謄本(本籍地以外に婚姻届を提出する場合)

<タイ人の方にご準備いただく書類>
・婚姻状況証明書(日本語訳を添付)
※タイ外務省の認証が必要です。
・出生証明書(日本語訳を添付)
・住居登録証(タビアンバーン)の役場認証印のある謄本
・パスポート
※タイ人が在外にいる場合は,パスポートのコピーで代替可能です。
・申述書

②タイへの婚姻登録について

タイでは婚姻登録制度があります。日本の役所に婚姻届を提出した後,タイの郡役場で婚姻登録手続きを行ってください。

<ご準備いただく書類>
・婚姻後の戸籍謄本及びタイ語訳文
※在日タイ公館にて認証を受けた後,タイ外務省の認証が必要になります。
在日タイ公館で認証を受ける際には,タイ語訳文の確認があり,形式が厳しくチェックされます。
・タイ人配偶者の身分証明書及びパスポート

なお,日本人配偶者がタイ国郡役場に出頭することができない場合には,在日タイ公館が発行する「委任状」の提出が別途必要になります。
また,タイ人が婚姻後に日本人の姓を名乗る場合には,在日タイ公館が発行する「称する氏に関する同意証明書」を提出しなければなりません。

婚姻登録が完了すると,タイ国郡役場から家族状況登録簿(結婚証明書)が発行されます。

4.国際結婚手続きにおける必要書類(タイ方式)

次は,日本人とタイ人がタイ方式で婚姻をする場合についてです。
タイ方式で婚姻手続きをする場合は,日本人がタイに渡航する必要があります。
当事者二人揃って,現地の役場で婚姻登録を行います。

①タイの日本大使館にて婚姻資格宣言書と婚姻要件具備証明書を取得

タイ方式の婚姻手続きは,在タイ日本大使館にて婚姻資格宣言書と婚姻要件具備証明書を取得することから始まります。
<日本人の方にご用意いただく書類>
・戸籍謄本
・住民票
・在職証明書
・所得証明書
・パスポート原本およびIDページのコピー
・質問書(日本大使館の書式に記入)

<タイ人の方にご用意いただく書類>
・身分証(原本)およびコピー
・住居登録証(タビアンバーン)およびコピー
・パスポート原本およびIDページのコピー
※未取得の場合は不要

②タイの郡役場において必要となる書類

<日本人の方にご用意いただく書類>
・婚姻資格宣言書
・婚姻要件具備証明書
・パスポート原本

タイの郡役場に婚姻届を提出すると,家族状況登録簿(結婚証明書)が交付されます。

③日本への婚姻報告について

タイで婚姻登記された後,在タイ日本大使館または日本の市区町村役場で,婚姻届(報告的届出)を提出してください。

<日本人の方にご用意いただく書類>
・家族状況登録簿(結婚証明書)および日本語訳文
・本人確認資料(運転免許証又はパスポート等)
・戸籍謄本(本籍地以外に婚姻届を提出する場合)

<タイ人の方にご用意いただく書類>
・出生証明書および日本語訳文

5.タイ人との国際結婚手続きのまとめ

本ページでは,日本人とタイ人の国際結婚手続きをご紹介しました。

タイ人との婚姻では,書類の認証に時間を要する傾向にあります。
特に,日本側で婚姻が成立した後に在日タイ公館に戸籍謄本の認証をするのですが,その際に提出するタイ語訳文をかなり細かくチェックされ,再提出を求められることも頻繁にあります。
そのため,ある程度余裕をもったスケジュールで手続を進められることをお勧めします。

本ページが,タイ人との国際結婚をご検討されている方々のご参考になれば幸いです。