冨田 祐貴

「第二次出入国在留管理基本計画」を行政書士が解説〜外国人政策の厳格化が外国人と企業に与える影響〜

「第二次出入国在留管理基本計画」を行政書士が解説〜外国人政策の厳格化が外国人と企業に与える影響〜

2026年7月31日、出入国在留管理庁より今後の入国・在留管理の指針となる「第二次出入国在留管理基本計画」が公表されました(以降は「新計画」と表記します)。
 
本格的な少子高齢化と人口減少時代を迎え、全国的な人手不足が深刻化する中、我が国の経済社会の活力を維持・発展させるために、外国人材の受け入れは不可欠となっています。また、観光に関しても政府は「2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人」という目標を掲げています。
しかし一方で、ルールを逸脱する不法滞在者などの社会問題も生じており、急増する外国人の数にこれまでの制度が追いついていない実態があります。
 
そこで今回の新計画では、入管の使命として「ルールを守る外国人を積極的に受け入れる一方で、安全・安心を脅かす外国人の入国・在留を阻止し、確実に退去させる」ことを明記しました。「厳格化」という言葉に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは適正なルールの下で、日本社会と外国人材が共に発展できる「秩序ある共生社会の実現」を目指すポジティブな変化のプロセスであるとされています。
 
このコラムでは、「第二次出入国在留管理基本計画」に基づき、その詳細な内容と実務への影響を、国際業務専門の行政書士が網羅的に解説します。

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1.データで見る現状:413万人時代に突入した在留外国人

新計画の文書では、近年の在留外国人数の大幅な増加が具体的なデータで示されています。

  • 外国人入国者数の急増:2025年の外国人入国者数は約4,243万人に達し、過去最高を記録しました。
  • 在留外国人の現状:2025年末時点での在留外国人数は約413万人(日本の総人口の3.35%、前年から0.31%増)に達しました。国籍・地域別では中国(約93万人)が全体の22.6%を占め、次いでベトナム、韓国、フィリピン、ネパールと続きます。
  • 就労目的の在留資格の増加:専門的・技術的分野で就労する中長期在留者は増加傾向にあり、2025年末時点で「技術・人文知識・国際業務」が約47.6万人、「特定技能」が約39.0万人に達しています。
  • 永住者の増加:一定の要件を満たした「永住者」の数も一貫して増加しており、2025年末時点で約94.7万人と、在留外国人全体の23.0%を占めています。

急増する申請に対する「迅速な審査」と、実態に即した「適正な管理」の重要性が、かつてないほど高まっています。

2.第二次出入国在留管理基本計画の「5つの重要ポイント」

新計画に盛り込まれた数多くの施策の中から、企業や外国人の皆様の実務に直結する変更点を5つに絞って詳しく解説します。

ポイント1:在留管理のDX推進とマイナンバー情報の連携

入管は「入管DX(デジタルトランスフォーメーション)」を強力に推し進めています。その目玉として、2026年6月から在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード等」の運用が開始されました(詳しくは【2026年6月】特定在留カードで在留更新の「二度手間」を解消!入管のあとに市役所へ行く必要がなくなる本当のメリットをご参照ください)。

さらに、2027年からは「公共サービスメッシュ」(行政機関同士がデータを安全にやり取りするためのネットワークシステム)を活用した、マイナンバーによる情報連携がスタートする予定です。これにより、国民健康保険料、国民年金保険料、地方税などの納付情報が入管に提供され、在留審査に活用されます。各種手続きのオンライン化や手数料のキャッシュレス決済も進められており、優良な企業・外国人にとっては利便性が大きく向上します。

ポイント2:永住許可制度の「適正化(厳格化)」

永住許可を受けた後でも、公租公課(税金や社会保険料)の支払いなどの義務を適正に履行しない事案が確認されたため、2024年の法改正でルールが厳格化されました(詳しくは【2027年4月法改正】永住権取り消しの新基準とは?対処法を行政書士が解説をご参照ください)。故意に公租公課を支払っていないと判断されると永住資格が取り消される可能性があります。

ただ、永住資格の取り消しについては、対象者や家族に与える影響が大きいため、今後、具体的な取消事例などを示したガイドラインが作成・周知され、予見可能性と透明性が高められます。

また、これから永住審査はより厳格に運用される方針です。永住者が社会に適応して安定した生活を送れるよう、一定水準以上の日本語能力を有していることや、日本のルールを学ぶ学習プログラムの受講を条件とすることも含め、永住ガイドライン上の独立生計要件や国益要件等の見直しが検討される予定です(詳しくは永住許可要件が厳格化へ!年収・厚生年金30年水準・遡及適用のポイントと対策を行政書士が解説をご参照ください)。

ポイント3:「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」「留学」の実態調査と審査適正化

これらの在留資格において、制度の趣旨と異なる活動を行う事案への対策として、実態把握の強化と厳格な審査が行われます。

  • 「経営・管理」ビザ:事業実態のない事案を防ぐため、2025年10月に上陸許可基準等が見直されました。資本金・出資総額の要件が改められたほか、経営者の経歴(職歴・学歴)や常勤職員の雇用義務などが新設されています(詳しくは【2025.10.16~】経営管理ビザの許可基準が厳格化!資本金3,000万円に|行政書士が解説をご参照ください)。今後は実態調査等を通じた、より厳格な審査・処分が行われます。
  • 「技術・人文知識・国際業務」ビザ:専門的な知識を要しない現場の単純業務に従事させるといった不適切な事案に対し、実態を把握した上で、受入れ機関(企業)の責任や指導の在り方を含めて厳正な措置が講じられます。また、従事可能な業務範囲に係る案内の充実を含めた運用の改善もなされる予定です。
  • 留学生のアルバイト(資格外活動):週28時間の上限違反を防ぐため、2026年4月から日本語教育機関と連携した実態把握・指導が開始されています。マイナンバーの情報連携に合わせて所得情報も活用し、複数のアルバイト先を掛け持ちしているケースも正確に把握されるようになります

さらに、ワーキングホリデーやインターンシップなど多様な活動が含まれる「特定活動」ビザ(詳しくは在留資格「特定活動」とは?種類一覧から要件・最新動向まで行政書士が徹底解説!をご参照ください)についても、運用状況を精査した上で制度の在り方が再検討される予定です。自社の従業員が「特定活動」で在留している場合、今後の制度変更の動向を注視しておく必要があります。

ポイント4:育成就労制度の運用開始(2027年4月〜)

「技能実習制度」が発展的に解消され、人材育成と人材確保を目的とする「育成就労制度」に切り替わります(2027年4月運用開始に向け準備中、詳しくは育成就労の外部監査人は誰に頼む?外部役員廃止の注意点と第一綜合グループを選ぶメリットをご参照ください)。

悪質な送出機関や監理支援機関の排除を徹底するための二国間取決め(MOC)の作成や、外国人育成就労機構を含む支援・保護体制の整備が進められます。今後は地域協議会の設置・活用や地方公共団体の関与が促され、地方の受入れ企業に対する配慮施策も実施される予定です。

また、外国人の受入れ状況や転籍状況等を国が継続的かつ的確に把握し、特定の分野や地域への過度な集中を防ぐため、必要に応じて受入れの停止や受入れ見込数の再設定などを不断に検討し、適正な運用が確保されるとしています。

ポイント5:水際対策・不法滞在者対策の強化と難民等への適切な保護・支援

新計画では、「2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人」という政府目標を見据え、安全・安心な社会を実現するため、入国前(水際)から出国・送還に至る各段階での対策を抜本的に強化することが示されています。

  • JESTA(電子渡航認証制度)の導入による水際対策の高度化:ビザ免除国からの観光客等が増加する中、テロの未然防止や不法滞在を水際で防ぐため、2028年度中のJESTA導入に向けたシステム開発が進められています。
  • 不法滞在・不法就労への厳正対処:不法残留者(約6.8万人)や不法就労者に対し、デジタル技術を活用した摘発強化を行うとともに、不法就労を助長した悪質な雇用主に対しては、刑事処分に至らない場合でも退去強制手続を積極的に活用し、各業法(建設業法や運送関連法等)の欠格事由の見直しも含めた厳正な対応が検討されます。また、企業側が偽造カードを防止できるよう、リアルタイムで失効情報を照会できる「在留カード等読取アプリケーション」の機能拡張と普及促進を進めつつ、計画的かつ着実な国費での送還を実施します。
  • 人権配慮と保護を必要とする人々への適切な支援:厳格化を進める一方で、真に保護を必要とする対象者への配慮も、新計画では明確に位置づけられています。難民認定制度や人道的な配慮に基づく補完的保護対象者制度の適切な運用のほか、人身取引の被害者やDV(配偶者等からの暴力)被害者など、人権上の配慮が必要な外国人に対する適切な保護・支援体制の充実が図られます。一方で、難民認定制度を誤用・濫用する再申請を制限するなどの見直しも検討されており、真に保護すべき者を守るためのメリハリのある運用が強化されます。

3. 今後の展望:国が進める「外国人の受入れの基本的な在り方」の中長期的検討

新計画では、当面の手続きの厳格化・適正化だけでなく、中長期的な視点での検討事項も示されています。

我が国では少子高齢化に伴う人口減少が急速に進んでおり、就労資格を中心に外国人が増加していることから、今後、日本の総人口における外国人の割合が一定程度上昇することが予測されています。これを見据え、将来的な在留外国人数の更なる増加の可能性も視野に入れ、政府全体で「外国人の受入れに関する基本的な考え方」を整理するための中長期的な検討が進められる方針です。

具体的には、持続的な経済成長に寄与するかどうかという点に加え、国内の労働市場や社会的コスト、教育、治安といった国民生活への影響なども総合的に考慮し、新たな受入れの在り方が議論されます。外国人材の受け入れは、もはや企業の一時的な人手不足解消の手段ではなく、日本社会の根幹を支えるテーマとして国を挙げて取り組まれることになります。

4.企業と外国人が今すぐ取るべき対策とは?

前章で述べたような中長期的な国の動向を踏まえつつも、企業や外国人の方々が現場で直面する最大の課題は、足元で進む「在留管理の厳格化」への対応です。

マイナンバー等を活用した情報連携の高度化により、「隠していても発覚する」時代に入ります。外国人を雇用する際は、社会保険の加入や適正な労働時間の管理(留学生の週28時間制限など)といったコンプライアンスの遵守が不可欠です。

また、不法就労を助長した企業に対しては、刑事処分に至らなくても、各業法の欠格事由の見直し等を含めた厳正な対応が検討されています。専門家のサポートを入れながら、社内の労務管理体制を早急に見直すことをお勧めします。

また永住者や今後永住を目指す方は、税金・年金・健康保険等の公租公課を期日通りに完全に納付することが絶対条件となります。また、社会の構成員として円滑に生活していくために、日本語能力の向上に努めることが、今後の安定した在留資格維持の鍵となるでしょう。

5.このコラムに関するQ&A

Q1. 「高度専門職」などの高度外国人材の受入れ基準は変わりますか?


A1. 現時点ですぐに基準が変わるわけではありませんが、制度の導入から長期間が経過したことを踏まえ、見直しの時期に差し掛かっています。今後、ポイント加算項目の妥当性や、年収基準の引き上げ等の見直しが検討される予定です。

Q2. 日本に住む外国人が生活の相談をできるサポート体制はどうなりますか?


A2. 外国人との共生社会の実現に向け、地方公共団体における「一元的相談窓口」の機能強化が進められています。また、「外国人在留支援センター(FRESC)」の活用や、「外国人生活支援ポータルサイト」を通じた多言語での情報提供がより積極的に行われます。

Q3. 入管での各種手続き(ビザの更新・変更など)の手数料は上がりますか?


A3. はい。各種施策の強化・拡充の財源等とするため、在留許可手数料の引上げが実施される方針です(詳しくは2026年5月29日成立の改正入管法による「在留手数料の大幅値上げ」の影響を専門家が解説をご参照ください)。また、前述のJESTAについても、適切な手数料が設定される予定です。

Q4. 外国人従業員が日本の生活ルールや日本語を学ぶための新たな支援は始まりますか?


A4. はい、入国前や在留中の外国人を対象に、国が主導して日本のルールや制度を直接説明する双方向型の「対話型オリエンテーション」が新たに実施されます。また、地域社会への円滑な定着を促すため、日本語や我が国のルールを学ぶ学習プログラムの試行的な導入も視野に検討が進められており、外国人がより積極的に受講したくなるような仕組み(インセンティブ)づくりが行われる予定です。

6.まとめ:複雑化・厳格化する入管手続きは、行政書士法人第一綜合事務所にお任せください

「第二次出入国在留管理基本計画」の策定により、日本は「ルールを守る外国人や企業」を歓迎する一方、違反者にはDXや機関連携を駆使して厳格に対処する姿勢を明確にしました。

マイナンバー連携などにより在留審査と労務・社会保険が直結する中、企業にはこれまで以上のコンプライアンス管理が求められます。

行政書士法人第一綜合事務所は、同グループ内の社労士法人と連携し、入管手続きから労務・社会保険対応までワンストップでの支援が可能です。

「自社の労務管理が新ルールの調査に耐えられるか不安」
「自分の永住ビザが取り消されないか心配」

という方は、ご自身で悩まれる前に、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。専門家に任せていただければ、複雑な手続きの不安から解放され、安心・安全に日本での生活を継続していただけます。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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