行政書士法人第一綜合事務所

外国人の会社設立の流れ

中国で輸入品販売会社を経営しているAさんは,日本に貿易拠点を設けるために会社設立をして,事業を行いたいと考えています。
しかし,外国人の会社設立はハードルが高いと耳にすることもあり,また会社設立の方法,経営管理ビザの申請方法が分かりません。
何から手をつければ良いか困ったAさんは,会社設立及び経営管理ビザについて,当社へ相談にお見えになりました。

1.経営管理ビザは個人事業主より会社設立がおすすめ!?

外国人の方が経営管理ビザを申請する場合,多くの方は個人事業主ではなく,会社設立を選択します。
その理由は,個人事業主として経営管理ビザを取得するためには,会社設立の場合にはない苦労があるからです。
詳しくは,個人事業主として経営管理ビザを取得する方法 に記載していますのでご参照ください。

とはいえ,外国人の方が経営管理ビザの取得を目指し,いざ会社設立をしようと考えたときに,何から始めたらいいのかわからないという方がほとんどです。
そこで,今回は外国人の方が日本で会社設立する方法を具体的に見ていきます。

2.外国人起業家に人気の会社設立(会社の種類)とは?

外国人起業家が経営管理ビザの取得を目指し会社設立する場合,多くの方は株式会社をイメージされるのではないでしょうか。
しかし,実は日本には100を超える法人の種類があります。

中でも代表的な法人は,株式会社,合同会社,社団法人(一般・公益),財団法人(一般・公益),NPO法人の5つがあげられます。
もっとも,会社設立の難易度,会社設立後の運営を考え,大多数の外国人起業家は,経営管理ビザの取得を目指す際,株式会社か合同会社を選択されます。

そこで,次のチャプターでは,株式会社と合同会社の違いについて解説していきます。

3.株式会社設立と合同会社設立の違い

本チャプターでは,外国人起業家に人気の株式会社設立,合同会社設立の違いを解説していきます。
まずは,下記の表をご覧ください。

株式会社 合同会社
商号 会社名に必ず「株式会社」を入れなければなりません。 会社名に必ず「合同会社」を入れなければなりません。
会社設立時の定款認証 会社設立時には必ず定款認証を受けなければなりません。 会社設立時の定款認証は不要です。
最低資本金の額 1円以上 1円以上
資本金の出資者の地位 発起人が出資額に応じて株主となるが,経営者になる必要はない。 出資者全員が経営者となる。
議決権 1株1議決権 1人1議決権
会社設立時の登録免許税 資本金の額の1000分の7(15万円に満たない場合は15万円) 資本金の額の1000分の7(6万円に満たない場合は6万円)
代表者 代表取締役 代表社員
役員の任期 2年。ただし,株式に譲渡制限を付けている場合は,最大10年。 任期なし
重要事項の決定機関 株主総会 社員総会
決算の公告義務 あり なし
社会的な認知度 高い 株式会社には劣る

下記,順に株式会社と合同会社の重要な相違点を解説していきます。

〇会社設立時の定款認証

会社設立する際には,定款を作成しなければなりません。
定款とは,法人の根本的な規則や決まり事を記載した書類の事を言います。
株式会社設立をする場合には,公証人役場で定款認証を受けることによって,作成した定款が法律的に効力発生することになります。
他方,合同会社設立をする場合には,定款を作成することは必要ですが,公証人役場での定款認証は不要です。

〇最低資本金の額

過去には,株式会社設立をする場合には,1000万円以上の資本金を必要とする最低資本金制度がありました。
最低資本金制度は,債権者保護を目的として,会社規模に応じた財産確保を求めていたのです。
しかし,会社法が改正されたことにより,最低資本金制度は撤廃され,株式会社,合同会社のいずれにおいても,資本金は1円以上であれば良いと考えられるようになったのです。
なお,外国人起業家の方が経営管理ビザの取得を目指す場合には,資本金はとても重要な論点となります。
詳細は,経営管理ビザの資本金500万円の考え方 にまとめていますので,ご参照ください。

〇出資者の地位

少し難しい論点になるので嚙み砕いて説明すると,株式会社の場合,出資をした人は株主になりますが,実際に業務執行するのは,取締役などの役員という建付けになっています。
つまり,原則として出資をした人=経営者ではないということです。
一方,合同会社の場合には,出資した人と経営者は同じになります。
まとめると,株式会社は出資者(株主)と経営者(代表取締役や取締役)が分離する仕組みになっており,合同会社は出資者と経営者が分離しない仕組みになっているのです。

〇議決権

議決権の考え方も,株式会社と合同会社で異なります。
株式会社は1株1議決権とされており,株式という均等な単位によって議決権がカウントされます。一方で,合同会社は1人1議決権とされており,頭数でカウントするのが大きな特徴です。

〇会社設立時の登録免許税

会社設立時の登録免許税についても,株式会社と合同会社は大きな違いがあります。
株式会社は資本金の額の1000分の7(15万円に満たない場合は15万円),合同会社は資本金の額の1000分の7(6万円に満たない場合は6万円)です。
例えば,経営管理ビザで資本金500万円の会社設立する場合を例にあげると,株式会社は15万円,合同会社は6万円の登録免許税が掛かります。

〇社会的な認知度

合同会社の会社形態がスタートした当初は,株式会社に比べると社会的認知度の観点から敬遠する外国人起業家の方も多かった印象ですが,あの有名なアップルジャパンやアマゾンジャパンも合同会社ということもあり,認知度は鰻上りの状況です。
そのため,株式会社と合同会社の選択において,認知度だけで判断するのではなく,今後の機関設計などを考慮の上,会社設立の法人の種類を検討されることをお勧めします。

長くなってしまいましたが,株式会社の設立と合同会社の設立の違いについて,ご理解いただけましたでしょうか。
なお,株式会社も合同会社も事業内容に制限はなく,また法人税,消費税,社会保険等について差異はありませんので,その旨もぜひ押さえてください。

4.外国人起業家の会社設立の手続きの流れ

本チャプターでは,会社設立の大まかな設立手続の流れを説明していきます。

(1)基本的事項の決定及び定款の作成

会社設立をしようとする人を発起人と呼びます。発起人は一人でも複数でも構いません。
発起人は会社の形態,会社の商号,本店所在場所,事業の目的,資本金の額など,設立しようとする会社の基本的な事項を決定します。
そして,発起人が決定した事項をもとに,定款を作成します。

(2)公証人による定款認証

株式会社設立をする場合は,(1)で作成した定款を公証人に認証してもらう必要があります。
他方,上記で記載したとおり,合同会社設立をする場合は,公証人による定款の認証は不要です。

(3)出資金の払い込み

会社を運営するにはお金が必要です。
会社に出資する人は,定款で定めた出資金払込口座に出資金を払い込みます。

ここで多くの外国人が問題に直面します。

出資金の払込口座は,発起人名義の日本にある口座に限定されています(日本の金融機関だけではなく,海外の金融機関の日本支店を含みます。)。
多くの金融機関において,口座を開設するには,日本に住所を有していることが条件とされています。

しかし,日本で住所を持つには,3ヶ月を超える在留期間を付与されて在留しなければならず,いわゆる観光ビザは対象になりません。
つまり,観光ビザで来日しても銀行口座を開設することはできないため,既に日本に住んでいる方や以前に日本に住んでいたことがある方を除き,ほとんどの外国人は日本に銀行口座を持っていないのが実状です。

では,外国人が日本で会社設立する場合,どのようにすればよいのでしょうか。

一つの方法は,日本に口座をもっている方に協力してもらって一緒に発起人になってもらい,協力者の口座に出資金を払い込む方法です。
この場合,発起人は必ず出資金の一部を負担しなければならないというルールがありますので,最低でも一株以上は協力者に引き受けてもらわなければなりません。

それでは,日本に口座がなく,発起人として協力してもらえるような人もいない場合,会社設立はあきらめなければならないのでしょうか。

答えはNOです。
現行制度上,以下の方法で資本金の払い込みをすることができることになっています。

  • 設立時取締役や設立時代表取締役が日本の銀行口座を有している場合は,その銀行口座に払い込むことができる。
  • 発起人,設立時取締役・代表取締役(合同会社の場合は社員)の全員が海外在住の場合は,委任を受けた第三者の口座に払い込むことができる。

また,会社設立前に来日して事業の準備がしたいと希望する外国人のために,在留期間が4ヶ月の経営管理の在留資格が用意されています。
この場合は,どのような事業を計画しているかを示して入管に申請し,経営管理の在留資格で来日して住所を得たうえで,銀行口座を開設し,これを出資金払込口座として利用することになります。

(4)会社設立の登記

必要書類を揃えた上で,本店所在地(会社の住所のこと)を管轄する法務局に会社設立の登記申請をします。
この会社設立の登記によって会社は法律上,成立することになります。
なお,会社設立の登記が完了するまで,1週間から10日ほどかかります。

5.外国人の会社設立のまとめ

様々な選択肢がある中で,どの会社形態を選択するかは,メリット・デメリットを押さえて判断する必要があります。

本ページでご紹介した事例のAさんは,中国で経営している輸入販売会社の仕入れ拠点として日本に会社設立したいと考えていました。
Aさんは,将来的に日本で事業を大々的に拡大したい,上場したいといった希望まではありませんでした。

他方,Aさんは初期費用を抑えたい,また会社設立後の維持費用もできる限り抑えたいとの要望があったため,Aさんには合同会社設立をお勧めしました。
また,会社設立にあたっては,永住者として日本に居住している友人が協力してくれるとのことでしたので,その方の口座を出資金の振込口座として利用することになりました。

Aさんは必要書類を集めて会社設立し,その後,経営管理ビザを取得して,日本で経営者として活動を始めました。
今では,日本と中国を行き来して,多忙な毎日を過ごされています。

経営管理ビザを取得するには,まずは会社設立からスタートすることになります。
スタートで躓かないように,正しい知識をもって準備を開始してください。

行政書士法人第一綜合事務所では,外国人の方の会社設立業務,入管への経営管理ビザ申請に関するご相談を随時承っています。
英語,中国語,ベトナム語にも対応していますので,お気軽にお問い合わせください。