【令和8年熊本地震】被災された外国人の方へ:在留諸申請の特例措置を解説

被災された皆様への心よりのお見舞い
2026年(令和8年)7月28日午後4時27分ごろ、熊本県を震源とする最大震度7の大きな地震が発生いたしました。この度の地震により被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。数日が経過した現在も余震や生活への不安が続く中、特に外国人の方々やその支援者・雇用主の皆様におかれましては、被災地での在留について多大なご不安を抱えていらっしゃることとお察しいたします。
本コラムでは、出入国在留管理庁から公式に発表された在留諸申請に関する特例措置をいち早くお伝えします。さらに、過去の災害(令和6年能登半島地震)において講じられた入管の対応事例や、被災地で活用できる多言語支援ツール、現地のインフラ状況と安全確保について詳しく解説いたします。
Index
1.令和8年熊本地震に伴う在留諸申請の特例措置について
今回の令和8年熊本地震に際して、出入国在留管理庁から「令和8年熊本地震に伴う在留諸申請の取扱いについて」という公式な案内が発表されました。これは、地震の影響により、本来定められている期間や手続きで入管への申請を行うことができない、あるいはできなかった方々を救済するためのお知らせです。主なポイントを3つに分けて解説いたします。
(1)個別対応の実施
通常、在留手続きは定められた期間内に行う必要があります。しかし、今回の地震で被災したことにより、在留期間内に申請ができなかった方については、入管は、当面の間、在留期間を経過した場合であっても個別に手続きを行うとしています。「期限が切れてしまったから不法滞在になってしまうのではないか」とご不安に思われるかもしれませんが、慌てる必要はありません。災害というやむを得ない事情が考慮されますので、まずは身の安全を確保し、お近くの入管に申請のための相談を行ってください。
(2)申請先についての特例
通常の手続きでは、ご自身の住居地を管轄する地方出入国在留管理局で申請を行うのが原則です。しかし、被災したことにより、本来の住居地から一時的に移動や避難をされている方については、現在の滞在先を管轄する入管で申請を行うことが特例として認められています。手続きのために、交通機関が麻痺している中を無理に元の住所地の入管へ戻る必要はありません。上記取扱いに関してご不明な点がある場合は、お近くの地方出入国在留管理局にお問合せいただくことで、皆様の事情に寄り添った対応を受けることができます。
(3)熊本出張所の窓口状況と最新情報の確認方法
地震発生に伴い、安全確保のため一時窓口業務を中止していた「福岡出入国在留管理局 熊本出張所」では、7月29日13時より窓口業務が再開されています。
ただし、今後の余震の状況やインフラの復旧状況等によっては、開庁時間や窓口業務の運用が急遽変更・調整される可能性があります。手続きのために窓口へ向かわれる際は、無理な移動を避け、事前に福岡出入国在留管理局の公式X:@immi_fukuoka(外部リンク)などで最新の開庁・受付状況をご確認のうえ、安全を第一に行動してください。
2.【参考】令和6年能登半島地震の際の入管対応
入管は大規模な自然災害が発生した際、被災した外国人の方や雇用企業に対し、柔軟な特例措置を実施してきました。参考に、令和6年能登半島地震で実際に講じられた主な入管対応をご紹介します。
(1)避難先での在留手続きおよび個別対応
今回の熊本県での地震と同様に、被災し、本来の住居地から一時的に避難・移動した方について、避難先の滞在先を管轄する地方出入国在留管理局での申請受付が認められました。また、被災により在留期間内に申請を行えなかった場合でも、期限経過後に個別の事情に応じた柔軟な手続き対応が行われました。
(2)会社被災に伴う「資格外活動許可」の特例付与
地震の影響で勤務先事業所が被災し、本来の在留資格に基づく就労活動が一時的に困難となった外国人(就労ビザ保持者)に対し、復旧までの期間(3ヶ月以内等)に他社で働くことができる「資格外活動許可」の付与措置が取られました。郵送やFAXでの申請も認められるなど、就労機会と生活維持のための柔軟な救済策が実施されています。
(3)技能実習生による事業所の復旧作業
被災した実習実施者(企業等)の事業所や周辺道路等の復旧・瓦礫撤去作業について、技能実習生が作業に従事する場合、当面の間、別途「資格外活動許可」を取得することなく当該復旧作業を行える特例対応が認められました。
3.地域社会に定着する外国人への支援
災害時にこのような柔軟な特例措置が迅速に取られる背景には、地域社会において外国人の方々が重要な一員として深く定着している実態があります。この章では、熊本県に定着する外国人についての現状と、今回の地震を受けての支援について触れます。
(1)熊本県における在留外国人の現状
入管が公表した「令和7年末現在における在留外国人数について」によりますと、2025年末時点での日本全国の在留外国人数は総数4,125,395人に達しており、前年末から9.5%もの増加を記録しています。今回の被災地である熊本県においても、令和7年末時点での在留外国人数は32,372人となっており、対前年末増減率は10.2%増と、全国平均を上回るペースで増加しています。熊本県内で生活されている外国人の方々の在留資格別の内訳を詳しく見てみますと、特に目立つのが「技能実習」の10,007人と「特定技能」の8,151人で、県内の在留外国人全体の半数以上を占めています。
そのほかにも、「永住者」が3,612人、「技術・人文知識・国際業務」が2,801人、「留学」が1,892人、「定住者」が478人となっており、多様な背景を持つ方々が地域社会に根付いて生活されています。
熊本県への世界的半導体製造大手・TSMCの進出と、それを契機とした九州各県での半導体関連産業の急速な集積が挙げられます。この産業集積は外国人材の増加に直接的に寄与しており、熊本県の資料によれば、2023年の時点ですでに、製造業において「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「高度専門職」、「経営・管理」等の専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者は、2022年の816人から約2倍(1,660人)へと急増しています。
なお、今回の地震を受けてTSMCは7月29日、「工場内の水や電力供給システムは正常に稼働している」と発表しました。製造装置に関わる検査や調整作業を続けていますが、地震の揺れが大きかったため、調整には一定の時間を要する見込みとしています。
(2)外国人向け避難所の開設
このような地域のパートナーである外国人の方が安心して避難できるよう、支援の輪も広がっています。 熊本市中央区の熊本市国際交流会館では、今回の地震を受けて、外国人向けの避難所を開設しました。
災害時には言葉の壁が大きな不安要素となりますが、同館では日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語を用いて、「地震で被害を受けた方、不安で自宅にいたくない方などが避難することができる」と案内を行っています。
避難の際は、着替えなどを各自で持参するよう呼びかけています。企業の皆様におかれましても、従業員の方々にこうした多言語対応の避難所情報があることをぜひお伝えいただき、安全確保にお役立てください。
(3)被災時に役立つ多言語ツールと公式相談窓口
避難生活中の情報収集や在留手続きに関する疑問については、以下の公的ツール・窓口を活用できます。
遠隔医療通訳サービス「mediPhone」の無料提供
被災した外国人、および対応にあたる熊本県内の医療機関、救護施設・避難所(運営自治体)と企業に対し、32言語対応の遠隔医療通訳サービスmediPhoneを無料で利用できる支援が開始されています(2026年8月31日まで、状況に応じて延長判断)。
専用Webサイト(外部リンク)または電話(050-3196-8719)で利用可能です。避難先や救護所、病院で外国人が体調を崩した際、言葉の壁を解消する手段として活用できます。
多言語生活・医療サポートアプリ「GTN Assistants for Biz」の無料提供
熊本県内で外国人を雇用する企業および留学生・外国人研究者を受け入れる教育機関を対象に、多言語生活・医療サポートアプリ「GTN Assistants for Biz」を無料で利用できる支援が開始されています(2026年8月31日まで)。
災害情報(緊急地震速報・避難情報等)のプッシュ通知や避難・生活情報の提供のほか、医療機関の案内・医療通訳、専門コンシェルジュやAIチャットによる多言語での生活相談に対応しており、被災地での安心安全な生活支援および企業の外国人対応サポートとして活用できます。前述した「mediPhone」とも連携しています。
防災アプリ「Safety tips(外部リンク)」(観光庁監修)
日本国内での緊急地震速報や避難情報、災害時に役立つコミュニケーションカードなどを15言語で確認できる外国人向けの無料防災アプリです。
外国人在留支援センター(FRESC / フレスク)
出入国在留管理庁をはじめとする公的機関が集約された相談窓口です。
ナビダイヤル(0570-011000)にて、在留資格や手続きに関する相談に対応しています。
(以下タブレット端末使用のうえ対応)韓国語、ポルトガル語、 スペイン語、タガログ語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、 ネパール語
4.「命と安全」を最優先に
地震発生からまだ数日の現在、被災地では生活インフラや交通網に深刻な被害が発生しており、大変厳しい状況が続いています。
報道によりますと、県内で約3万4880戸が停電し、8886人が避難所での生活を余儀なくされています。また、九州自動車道など計110.8キロに及ぶ通行止めや、九州新幹線等の運転見合わせなど、交通インフラにも甚大な被害が出ています。さらに、八代市の工場や嘉島町の商業施設での事故等により、これまでに12名の方が亡くなられる大変痛ましい事態となっています。
このような非常事態において最も大切なのは、皆様の「命と安全」です。「ビザの更新期限が迫っているから」と無理をして危険な道のりを移動したりすることは、絶対に避けてください。第1章で解説した通り、入管は被災された外国人の方々に対して、期限が過ぎた後でも個別に柔軟な対応を行うことを公式にお知らせしています。
まずは安全な場所にとどまり、熱中症等を防ぐためにも体調管理に努めてください。生活の安全が確保されることが、何よりも最優先されるべき事項です。
5.行政書士法人第一綜合事務所でのサポート
行政書士法人第一綜合事務所では、地域社会の重要な一員である外国人の方々や、その方々を受け入れてともに働く企業の皆様を全力で支援しております。
被災地や避難先での在留についてお悩みやご不安があれば、当事務所までご相談ください。特例措置の活用方法から、具体的な入管への事情説明に至るまで、専門家として皆様に寄り添い、サポートさせていただきます。
被災された皆様が一日も早く穏やかな日常を取り戻せますよう、心よりお祈り申し上げます。




