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経営管理ビザから経営者用の高度専門職ビザがあるのをご存じでしょうか?

1.高度専門職とは? 高度専門職とは,特に優れた知識や技能を持っている外国人向けに用意されているビザで,在留期間や活動内容,家族の帯同などでさまざまな優遇措置があります。 優秀な外国人材(=高度外国人材)を積極的に日本へ受け入れることを目的に導入された制度で,学歴や職歴,年収,資格など一定の項目ごとにポイントを設定して,その合計ポイント数が70点以上あると「高度外国人材」として認定され,優遇措置が受けられるようになります。 (1)3つの分類 活動する内容によって,ビザの種類がイ・ロ・ハの3つに分類されています。 3つの活動類型 このビザが該当する活動 ①高度学術研究活動 「高度専門職1号(イ)」 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究,研究の指導又は教育をする活動 ⇒研究所の研究員,大学の教授,専門的な教師など ②高度専門・技術活動 「高度専門職1号(ロ)」 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動 ⇒エンジニア,技術者など一般企業に努めるホワイトカラー層 ③高度経営・管理活動 「高度専門職1号(ハ)」 本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動 ⇒会社経営者など この3つの中で,経営管理ビザと同じく事業の経営や管理を行うものは,「高度専門職1号(ハ)」です。 (2)高度外国人材とは? 平成21年5月に行われた高度人材受入推進会議で,高度外国人について次のように定義づけられました。 『国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することができない良質な人材』であり,『我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材』が,高度外国人材ということです。 ざっくりイメージで言い換えると,『日本人を巻き込んで日本経済発展のためにアクティブに働いてくれる優秀な外国人』といったところです。 (3)優遇措置がある 高度専門職には,他のビザと比べて優遇措置が主に7つ用意されています。 【7つの優遇措置】 ①永住許可要件の緩和 ②親の帯同の許容 ③家事使用人の帯同の許容 ④在留期間「5年」の付与 ⑤配偶者の就労 ⑥複合的な在留活動の許容 ⑦入国・在留手続の優先処理 高度専門職ビザについては,別コラム「高度専門職ビザの取得条件とは?」でも解説していますので,ぜひお読みください。 2.経営管理ビザと高度専門職(1号ハ)ビザの違い 経営管理ビザと高度専門職(1号ハ)ビザの違いで最も大きなものは,前述した「優遇措置」の有無です。 比較表にまとめましたのでご覧ください。   経営管理ビザ…

高度専門職ビザの取得条件とは?ポイント制度,優遇措置,1号と2号の違いを解説!

1.高度専門職ビザとは? 1-1.高度専門職ビザとは? 高度専門職ビザは,経済成長や新たな需要と雇用の創造に資することが期待される高度な能力や資質を有する外国人(高度外国人材)の受入れを促進するために2015年に創設されました。 高度外国人材を積極的に受け入れるために,高度専門職ビザには,在留期間「5年」(高度専門職2号に該当すると「無期限」)の付与や複合的な在留活動が許容されるなどの優遇措置があります。 また,高度専門職ビザの入国・在留手続は優先的に処理されるため,受入れ企業側にとってもメリットがあります。 以下の表をご覧ください。 出入国在留管理庁が発表した報道資料によると,令和4年6月末末時点で3万4,726人の外国人が高度専門職ビザで在留しているとされています。 高度専門職ビザを保有する外国人数の動向は,我が国の経済的発展の観点からも注目すべき指標と言っても過言ではありません。 1-2.高度専門職1号 高度専門職ビザは,「高度専門職1号」と「高度専門職2号」に大別されます。 そして,高度専門職1号は活動内容に応じて,さらにイ・ロ・ハに分類されます。 高度専門職1号に該当する職種と具体例は,以下の通りです。 高度専門職1号イ 高度学術研究と呼ばれ,日本の公的機関や民間企業等との契約に基づいて行う研究,研究の指導または教育をする活動が該当します。 具体的には,大学等の教育機関で教育をする活動や,民間企業の研究所で研究をする活動がこれに当たります。 また,これらの活動と併せて,教育や研究の成果を活かして事業を立ち上げ自ら事業経営をすることも可能です。 高度専門職1号ロ 高度専門・技術と呼ばれ,日本の公的機関や民間企業等との契約に基づいて行う自然科学または人文科学の分野に属する知識または技術を要する業務に従事する活動が該当します。 具体的には,所属する企業において,技術者として製品開発業務に従事する活動,企画立案業務,ITエンジニアとしての活動などの専門的な職種がこれに当たります。 また,これらの活動と併せて,関連する事業を立ち上げ自ら事業経営をすることも可能です。 技術・人文知識・国際業務ビザの活動内容と重なる部分が多いですが,技術・人文知識・国際業務ビザのうち国際業務に該当する活動は高度専門職1号ロには該当しないため注意が必要です。 高度専門職1号ハ 高度経営・管理と呼ばれ,日本の公的機関や民間企業等において事業の経営を行いまたは管理に従事する活動が該当します。 具体的には,会社の経営や,弁護士事務所・税理士事務所などを経営・管理する活動がこれに当たります。 また,これらの活動と併せて,活動内容と関連する会社や事業所を立ち上げ,自ら事業経営することも可能です。 上記のように,高度専門職1号は他のビザとは異なり,複合的な在留活動が許容されている点に特徴があります。 また,在留期間は現行の制度で最長の「5年」が一律に付与されます。 これは安定的に高度外国人材を雇用する企業側にとってもメリットとなります。 1-3.高度専門職2号 高度専門職2号は,高度専門職1号で3年以上活動を行っていた方が対象になります。 高度専門職1号の活動と併せてほとんどすべての就労活動を行うことができます。 具体的には,高度専門職1号イ・ロ・ハのいずれか,またはこれらの複数の活動と併せて以下のビザで認められる活動も行うことができます。 ※「教授」,「芸術」,「宗教」,「報道」,「法律・会計業務」,「医療」,「教育」,「技術・人文知識・国際業務」,「介護」,「興行」,「技能」,「特定技能2号」のビザに対応する活動 高度専門職2号のビザの在留期間は,高度専門職ビザに該当する活動を行っている限りにおいて「無期限」です。 また,複数のビザにまたがる活動ができる点に特徴があります。 1-4.高度専門職ビザの1号と2号の違い 高度専門職1号の場合,在留期間は「5年」です。 一方,高度専門職2号の在留期間は「無期限」となります。 在留期間が無期限となる結果,以降の在留期間の更新許可を受ける必要がなくなります。 また,高度専門職1号の場合,主となる活動と併せて,これと関連する事業の経営活動を自ら行うことが認められます。…

経営管理ビザから永住ビザへの申請で重要になるポイントを解説

永住ビザを取得するための要件とは? はじめに,永住ビザを取得するための原則的な要件を確認しておきましょう。 【要件1】素行が善良であること 1つ目の要件は「素行善良要件」と呼ばれ,日常生活において法律を守り,社会的に非難されることのない生活を営んでいることが必要です。身近なものでは「交通違反」がありますが,1~2回程度の軽微なものであれば影響しませんが,繰り返し違反を行っている場合は「素行不良」となってしまうので注意が必要です。 【要件2】独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること 2つ目の要件は「独立生計要件」と呼ばれ,永住ビザの申請する方が自分で生計を立てるための収入源を持っていること,または,その方と同居している家族が世帯全体の生活を支えられるほどの収入源を持っていることが必要になります。 【要件3】その者の永住が日本国の利益に合すると認められること 3つ目の要件は「国益適合要件」と呼ばれ,永住ビザを申請する方が日本に永住することで,日本にとってプラスになるかということです。 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。 現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。 などがあります。 永住ビザについては,永住ビザ 要件 で詳しく解説しています。ぜひお読みください。 経営管理ビザから永住ビザを取得するための4つのポイント 続いて,経営管理ビザならではのポイントを4つに解説します。永住許可申請をする直前のタイミングでは準備できないものもありますので,今から準備するつもりでご確認ください。 (1)役員報酬が年間300万円以上あること 年収について明確な金額の基準はありませんが,就労系の在留資格からの永住申請の場合は,最低でも年収300万円は必要だと言われています。経営管理ビザで会社を経営している方の場合は,役員報酬が収入源となりますので,役員報酬を年間300万円以上(月間25万円以上)に設定しておくことが望ましいでしょう。 役員報酬はいつでも変更できるわけではありません。会社の決算状況にもよりますが,ゆくゆく永住ビザを希望されているのであれば,永住ビザ申請が可能な時期(原則,在留10年以上,かつ,就労資格または居住資格を取得した日から5年以上)の5年以上前から役員報酬を年間300万円以上に設定しておいたほうが良いでしょう。 (2)経常損益が黒字であること 会社には法人格があり,法律上は経営者=会社ではありません。そのため,経営者である申請人個人が永住ビザ申請を行う際に,会社の経営状況の良し悪しは本来関係がないはずです。しかし,経営者の役員報酬は,会社の財務状況によって大きく左右されるのが一般的です。財務状況が悪くなれば,役員報酬を引き下げて欠損を圧縮することがあり得ます。最悪の場合,役員を解任されることもあり得るわけです。 そこで,経営管理ビザからの永住ビザ申請の場合は,安定した収入を確保できているかどうかという観点から,申請人が経営する会社の安定性・継続性も審査対象とされています。 会社の財務状況が債務超過(負債が資産を超えていること)にある場合には,経営者である申請人個人が安定した収入を確保できているとは言えません。また,債務超過にはなくとも,欠損が連続している場合には,これも役員報酬を引き下げられる可能性が高いため,安定収入の確保の観点から問題視される傾向にあります。直近2事業年度は経常損益が黒字で回っていることが望ましいでしょう。 (3)会社として社会保険に正しく加入していること 申請人である経営者個人の納税状況は当然ですが,永住ビザの審査においては会社の納税状況も審査対象になります。特に近年は,社会保険の加入の有無,社会保険料の適正納付は厳格に審査されています。 会社は社会保険(厚生年金保険および健康保険)の強制適用事業所とされ,役員一人だけの従業員がいない会社でも社会保険に加入する義務があります。また,社会保険料は労使折半とされ,会社が保険料の半分を負担しなければなりません。 経営者が永住ビザ申請を行う際には,年金事務所が発行する社会保険料納入証明書を提出しなければなりません。社会保険に加入していない場合や,社会保険料を納付していない,あるいは納期遅滞がある場合には,永住ビザの審査において大きなマイナス要因になります。必ず社会保険に加入し,社会保険料を適正に納付するようにしてください。 (4)1年間のうち出国日数が半分を超えていないこと 日本で経営者として活動している外国人の方には,日本以外の海外でも事業を展開し,グローバルに活躍されている方が沢山います。そういった方は,必然的に出国日数が多くなる傾向にあります。 永住ビザ申請においては出国状況も審査対象になり,その頻度や日数からみて日本に活動の本拠がないと評価されるような場合には,永住許可はされません。概ね1年の半分以上(=183日以上)を出国している場合には,永住許可の可能性は大きく下がります。 ただし,出国理由が合理的なものであり,かつ,出国の頻度や期間が相当と言える場合には,出国日数が多くても活動の本拠が日本にあると評価されるケースもあります。海外出国が多い場合には,海外での事業活動や出国理由を示す他,たとえば本社機能を日本に集中させているなど事業活動の本拠が日本にあることを積極的にアピールするようにしましょう。 永住ビザ申請の必要書類 ここからは,永住ビザ申請で提出が必要になる書類についてご紹介します。 【共通の必要書類】と【在留資格別の必要書類】に分けてご紹介します。 【共通の必要書類】 永住許可申請書 写真(縦4cm×横3cm)…

経営管理ビザが不許可になる理由とは?更新や再申請のポイントも解説!

経営管理ビザとは?基本的な要件をチェック まずは「経営管理ビザ」がどのようなビザなのか,基本的な要件を確認しておきましょう。 経営管理ビザは,就労ビザのひとつで,日本でビジネスを行う外国人向けに設定されているビザです。 入管法では以下のように規定されています。 【入管法で定められている活動の内容】 本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動 ※外国法事務弁護士、外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る事業の経営又は管理に従事する活動を除く。 技術・人文知識・国際業務ビザで会社員として働いている方が退職してフリーランスになる場合や,留学生が卒業後に会社を立ち上げて起業する場合は,経営管理ビザに変更する必要があります。 経営管理ビザを取得するには,大きく4つの要件があります。 【経営管理ビザの取得要件】 事業所が日本国内にあること 資本金500万円以上(または従業員が2名以上)であること 必要な各種届出を済ませていること 事業の安定性と継続性があること これらの要件を全てクリアしているだけでなく,クリアしていることを立証する必要があります。ここが,ほかのビザと比べて経営管理ビザが難しいとされているところです。 経営管理ビザが不許可になる理由5つ ここからは,本題である「経営管理ビザが不許可になってしまう理由」について解説していきます。主な理由を解説していきます。 【理由1】立証が十分にできていない 経営管理ビザの申請では,要件をクリアしていることを自身で立証していく必要があります。 【立証の例】 資本金500万円をどのように集めたのかを,資料とともに説明。 事務所が実際に存在することを,賃貸借契約書や図面,写真とともに説明。 事業を安定して継続できる見通しを,事業計画書とともに説明。 これらの立証がしっかりできないと,許可を取ることはできません。 【理由2】ビザの要件を満たしていない 前述のとおり,経営管理ビザには大きく4つの要件があります。このうちひとつでも満たしていない場合は,許可を取ることはできません。 人材紹介業など許認可が必要な業種であれば,ビザ申請前に許認可を取っておかないといけません。 【理由3】事業の安定性・継続性が認められない 経営管理ビザで最も重要になるのがこの「安定性」と「継続性」です。事業が継続しなければ,事業の経営・管理を行う活動も継続することができないからです。 新規に経営管理ビザを取得する場合,「事業計画書」で安定性と継続性を立証していきます。この事業計画書には,ビジネスモデルの説明だけでなく,市場調査のレポート,売上の予測,原価や人件費など経費の予測,利益率の予測など細かく策定する必要があります。 【理由4】事業所の確保が認められない 経営管理ビザでは,事業所として認められる要件があり,それ以外では不許可になってしまいます。 【事業所として認められないもの】 賃貸の場合は「事業所用」自宅をそのまま事業所としている 事業所として借りた物件が契約書上で「居宅用」になっている シェアオフィスやバーチャルオフィスで区画が明確に分かれていない どのような事務所であればいいのか?については,別コラム「経営管理ビザが認められる事務所の条件とは?」もぜひお読みください。 【理由5】事業内容が認められない これは,事業内容がそもそも違法である場合です。完全に違法でなくても,審査部門で違法の疑いがあると判断されてしまえば,許可は取れません。 更新では「事業の継続性」が重視される…

技術・人文知識・国際業務ビザ申請の必要書類を徹底解説【認定・更新・変更】

就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」とは? 技術・人文知識・国際業務ビザは,就労ビザのなかでも最も代表的なものです。 いわゆる「ホワイトカラー」と呼ばれる仕事を行うための就労ビザです。名称が長いので,「技人国(ギジンコク)」と省略して呼ばれることもあります。 この技術・人文知識・国際業務ビザを取得するには,大きく分けて「本人」「会社」「職務内容」の3つに関する要件を満たす必要があります。 本人側の要件 原則として,大学を卒業し学士の学位があること。 もしくは日本の専門学校を卒業し,専門士の学位を取得していること。会社側の要件 事業の安定性,継続性があること。職務内容の要件 自然科学や人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務,又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務であること。 技術・人文知識・国際業務の詳細については,別コラム「【技術人文知識国際業務ビザ】人事担当者向けコラム」もお読みください。 技術・人文知識・国際業務ビザの申請手続きについて 技術・人文知識・国際業務ビザの申請ができるのは, 本人 本人を採用する企業や団体 取次資格のある行政書士など です。 申請からビザの取得までにかかる期間は,認定申請では約1か月~3か月,変更・更新申請では約2週間~1か月です。申請が増える1~2月あたりでは,審査期間がこれよりも長くなる場合もあります。 また,申請内容によって,手続きの流れや審査のポイントが異なります。 ここからは,申請手続きごとにポイントを解説していきます。 【認定】在留資格認定証明書交付申請 認定申請は,以下の手順でおこないます。 ①仕事の内容の照合 ②雇用契約書の作成と締結 ③就労ビザの申請 まず,日本で行う仕事が,技術・人文知識・国際業務に該当する仕事内容なのかどうかを確認します。 また,自身の学歴や職歴が,日本で行う仕事内容と関連するかどうかの検証も忘れてはいけません。 続いて,入社予定の日本の企業と雇用契約を締結します。 入管は雇用契約の内容も確認します。 業務内容の記載や報酬額が,労働関係法令から見て問題がないか検証する必要があります。 そして,上記で示した必要書類を集め,就労ビザの申請をします。 1~3か月程度待てば,就労ビザが取得できます。 【変更】在留資格変更許可申請 技術・人文知識・国際業務ビザへの変更申請で,一番多いケースとしては留学生からの変更です。 留学生からの変更申請の場合,技術・人文知識・国際業務ビザの要件を確認することだけでなく,留学生として在学していた学校での成績や,アルバイトに従事していた時間も審査対象になりますので,ご注意ください。 【更新】在留期間更新許可申請 ビザの更新手続きは,在留期間が満了する3か月前から行うことができます。 転職せず,職種も変わらない場合は,他に素行等の問題がなければ基本的に更新が可能です。 転職をした場合は,入管法第19条の16に定めるとおり,14日以内に入管へ転職の届出を行う必要があります。…

特定技能1号と2号の違いとは?行政書士が解説

1.特定技能ビザとは? 前述の通り,特定技能ビザは人手不足が深刻な「建設」「農業」「介護」など12分野(14業種)の労働力を確保するために創設されたものです。 就労ビザには他にも種類がありますが,特定技能ビザは就労できる業務内容の範囲が他の就労ビザよりも広く,単純労働を含めることができる点が大きな特徴です。 特定技能2号ビザは,1号よりも高度な技能を持っていることが認められた方向けのビザです。1号にはない,いわゆる「特典」があることが特徴です。 特定技能ビザの対象となる12分野を表にまとめました。 特定技能1号(12分野) 特定技能2号(11分野)【改正版】 介護 (2号ではなく,「介護」ビザへ移行) 外食業 外食業 宿泊 宿泊 飲食料品製造業 飲食料品製造業 自動車整備 自動車整備 航空 航空 農業 農業 ビルクリーニング ビルクリーニング 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 建設 建設 造船・船用工業 造船・船用工業 漁業 漁業 これまで,特定技能2号は「建設」と「造船・船用工業分野の溶接区分」のみが対象でしたが,2023年6月9日に他の分野にも拡大されることが閣議決定されました。現在,改正法案成立に向けて進んでいます。 なお,「介護」分野については,特定技能2号ではなく既存の「介護」ビザへ移行できることにしました。 このコラムでは,改正後の内容で解説しています。 2.特定技能1号と特定技能2号の違い ここからは,特定技能1号と2号の違いについて解説していきます。 まずは,主な違いを表にまとめましたので見比べてみてください。   特定技能1号…

N1特定活動ビザ(特定活動46号)の解決事例をご紹介します!

1.N1特定活動ビザでどんな仕事ができるの? そもそも,N1特定活動ビザでは,具体的にどのような仕事ができるのでしょうか? 結論から言うと,N1特定活動ビザでは,今まで「技術・人文知識・国際業務」で認められてこなかった,現業メインでのフルタイム就業が可能になります。 これは,N1特定活動ビザの最大のメリットであると言えます。 では,具体的にはどのような業務に従事することが出来るのか。 詳細な説明に先立ち,まずはN1特定活動ビザで従事可能な活動の大枠を捉えましょう。 N1特定活動ビザで従事可能な業務について,出入国在留管理庁公表のガイドラインでは次のように記載されています。 「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」 「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とは,単に雇用主等からの作業指示を理解し,自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず,いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や,自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ,他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であることを意味します。 つまり,高い日本語能力を用いて他者とコミュニケーションをすることを基礎にして成り立つ業務であり,代表的なものとして接客業が挙げられます。 これによって,これまで技術・人文知識・国際業務の在留資格では従事困難であった接客業や小売業の現場での在留資格取得が可能になりました。 ただし,N1特定活動ビザであれば,無制限に現業に従事できるという訳ではありません。N1特定活動ビザの業務には,大学や専門学校などで修得した広い知識と応用的な能力などを活用するものでなければいけません。 これは,従事しようとする業務内容に,技術・人文知識・国際業務の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること,又は,今後そのような業務に従事することが見込まれることを意味します。 したがって,技術・人文知識・国際業務のように一定水準以上の業務をメイン業務とする必要はないものの,全くの単純作業のみに従事することはN1特定活動ビザでも認められず,業務の一部は一定の専門性を要する業務でなければならないということです。 もっとも,今後一定水準以上の業務に従事することが見込まれる場合でも良いとなっていますので,例えば,入社当初はレストランのホールスタッフとして採用し,ゆくゆくはお店の経理も任せるようにするといった場合も可能になります。 上記の前提を踏まえて,ガイドラインに記載の具体例をご紹介します。 ア 飲食店に採用され,店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行う もの(それに併せて,日本人に対する接客を行うことを含む。)。 ※ 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。イ 工場のラインにおいて,日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外 国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ,自らもラインに入って業務を行うもの。 ※ ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。ウ 小売店において,仕入れや商品企画等と併せ,通訳を兼ねた外国人客に対する接 客販売業務を行うもの(それに併せて,日本人に対する接客販売業務を行うことを含む。)。 ※ 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。 エ ホテルや旅館において,翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設,更新作業を行うものや,外国人客への通訳(案内),他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(それに併せて,日本人に対する接客を行うことを含む。)。 ※ 客室の清掃にのみ従事することは認められません。 オ タクシー会社に採用され,観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ,自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(それに併せて,通常のタクシードライバーとして乗務することを含む。)。 ※ 車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。 カ 介護施設において,外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら,外国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り,介護業務に従事するもの。 ※…

【中国人の帰化申請】条件や必要書類など手続きのポイントを解説

帰化申請とは? 帰化申請とは,一言でいうと「日本人になる手続き」を言います。帰化申請が許可されると日本人となるため,日本の戸籍(帰化許可者の生年月日やご両親,婚姻日などのパーソナル情報のこと)が作成されます。 また,日本人なので,ビザの申請をすることなく日本で安定的に生活できるようになりますし,世界でも信頼度の高い日本のパスポートを持つことになるため,海外旅行の際にビザ申請をすることなく行ける国が増えます。 一方で,日本は二重国籍を認めていません。このため,中国人が日本への帰化を許可されると,自動的に中国国籍は喪失することになります。 中国人の帰化申請について 法務省が発表した国籍別帰化許可者数を見てみると,中国人の方は毎年2,000人以上が帰化していることになります。下の表は,過去5年間の帰化した方の人数です。 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 中国人 2,374人 2,881人 2,526人 2,262人 2,651人 全体 8,453人 9.079人 8,167人 7,059人 8,800人 国別にみると,1位が韓国・朝鮮,2位中国,3位ベトナム,4位ブラジル,5位フィリピンとなっています。 1位の韓国・朝鮮は歴史的な背景もあるため特別だとしても,2位の中国と3位のベトナムでは帰化許可者数が4倍以上もの差が生じています。(2023年のベトナムの帰化許可者数は625人)。 この数字からわかることは,他の国と比較して,中国人の多くが日本人として日本に長く住みたいと思ってくれているということです。 日本人としては,国籍という自身のアイデンティティを変えてまで日本人となりたいと思ってもらえていることを嬉しく感じますが,法務局との関係で考えると,帰化許可者数が多いということは,中国人の帰化申請について多く審査をしているということの裏返しであり,どこの法務局も中国人の帰化申請の審査に慣れているということです。 そのため,書類の不備があると法務局から「ここが違う」「この書類は取得できるはずだ」と,その都度指摘が入り,帰化申請の準備に時間がかかる可能性があります。 だからこそ,中国人の方が帰化申請を円滑に,かつ,早急に進めるためには,書類に不備がないよう正しい知識を持って帰化申請に臨むことが大切になります。 中国人の帰化申請を成功させるポイントとは? 帰化許可を取るためにはいくつかクリアしなければいけない条件がありますが,その中でも,中国人の方が特にポイントになるものが2つあります。 【ポイント1】中国側の必要書類を正確に把握して集めること 【ポイント2】小学校3年生レベルの日本語能力があること それぞれ解説していきます。 【ポイント1】中国側の必要書類を正確に把握して集めること 帰化申請で提出が必要になる書類について,法務局では申請人から話を聞いて判断します。このため,法務局での初回相談の際に曖昧な情報を伝えてしまうと,本来は取得できないはず書類を集めるように案内され,帰化申請が進められない事態に陥るかもしれません。 中国は,最初に届出をした行政機関がどこなのかによって,その後,証明書類が発行できる役所が変わることがあります。 【例:ご両親がどちらも中国国籍である独身の中国人の方】 この方が日本国籍を取るために帰化申請をする場合,ご両親の結婚を証明するための証明書が必要となります。 ご両親が中国本土で結婚手続きをした…

帰化申請中に転職しても大丈夫?不許可リスクについて専門行政書士が解説!

帰化申請の審査中に転職をした場合 帰化申請後,審査中に転職をした場合は,申請した法務局の担当事務官へ必ず報告してください。 転職先に関する書類など,法務局へ追加で提出が必要になります。転職先に記載してもらう書類もありますので準備に数週間かかる場合もあります。 追加の書類がすべて揃うまでは審査が中断することになるため,帰化申請後に転職をした場合は,トータルの審査期間が長くなってしまいます。 【転職をした場合の追加提出書類】 ①転職先企業が作成した「在勤及び給与明細書」 ②転職先の「勤務先附近の略図」 ③転職先の給与明細書 ①は転職先の人事部門などで作成してもらい,法人印を押印してもらう必要があります。 ②は申請人ご自身で作成します。 ③は転職先から発行され次第,法務局へ提出します。 これら以外にも,追加で提出を求められる場合があります。 帰化の審査をするうえで求められているものなので,法務局の指示に従って用意してください。 帰化申請する前に転職すれば大丈夫? 帰化申請の直前に転職することも,おすすめできません。 転職してから帰化申請をするまでの期間として,少なくとも半年,できれば1年は空けたほうが安心です。 転職して半年未満の場合,法務局での事前相談でも,帰化申請するタイミングを後ろ倒しするように言われることが多いです。 転職して半年未満の場合は,転職先に定着できるか不透明で安定しているとは言えない状態です。半年経過していれば,その間の給与実績などで評価してもらえることもあります。このあたりは,転職先の状況や申請する法務局によっても判断に差が出る部分ですので,事前相談の際にしっかり確認することをおすすめします。 過去の転職も帰化申請の審査に影響する? 帰化申請の審査中,申請前に転職することはおすすめできない話をしてきましたが,過去の転職についても帰化申請に影響があるのでしょうか。 過去に転職をしたことがある場合,転職そのものがマイナスになることはありません。 ただ,転職の内容によっては,帰化申請の審査に影響する場合もあります。主な3つのポイントを解説します。 ①「年収」での影響 過去に何度か転職していて年収が下がっている方は,帰化申請の審査に影響する可能性があります。 帰化申請では,経済基盤が安定していることを評価するために「年収」を重視しています。転職するごとに年収が減少している,短い期間で頻繁に転職している場合は,「経済的に安定していない」と判断される可能性が高くなります。一方で,何度か転職していたとしても,転職するごとに年収が増加していることが示せれば,経済的に安定していると見なされる可能性があります。 ②「仕事内容」での影響 過去に何度か転職している場合,仕事内容の一貫性や適法性について詳しく確認されることになります。 例えば,就労ビザの代表格である「技術・人文知識・国際業務」ビザの場合, 前回のビザ更新以降に転職している場合は,転職後の仕事内容がビザの要件に適合しているかについても確認されます。 同じ業界内でキャリアアップするための転職であれば,ポジティブに評価されることが多いですが,その一方で,異業種への転職が頻繁に行われると,定着性がなく不安定だと判断されるリスクがあります。 ③「離職期間」での影響 前の職場を退職して新しい職場へ就職するまでの離職期間についても,帰化申請の審査に影響を与える場合があります。 短期間の離職であれば,次の職場を探していた期間として理解されやすいですが,離職期間が長期間だった場合,その期間中の生活費や生活の安定性について疑問を持たれてしまいます。 過去に半年以上の離職期間がある場合は,その理由とともに,不安定な状況ではなかったことを書面で説明できるようにしましょう。 「転職」以外でも注意すべきポイント ここまでは転職について解説してきましたが,『仕事が変わる』という視点では,転職以外でも注意すべきポイントがあります。ここでは2つのポイントを解説します。 個人事業主(フリーランス)や会社経営者になる場合 申請時点では会社員として働いていた方が,審査中に個人事業主や会社経営者になった場合,ほとんどのケースで,法務局から帰化申請の取り下げを求められることになるでしょう。 個人事業主や会社経営者の方が帰化申請をする場合,最低でも直近2年分の確定申告書や決算報告書の提出が必要になります。事業の安定性や経営状況などを審査することができないため, 「審査できる状態になってから再度申請してください」と言われてしまいます。…

就労ビザの種類とは?外国人が日本で働く方法について行政書士が解説

日本の就労ビザは19種類ある【仕事内容の違いに注目】 就労ビザとは,外国人が日本で働くことを目的とした在留資格の総称で,働く内容=就労活動によって19種類に分けられています。どんな仕事でもできるオールマイティな「就労」ビザというものはありません。 どの就労ビザに該当するかは,どのような仕事をするのか,就労活動の内容に応じて判断する必要があります。 本チャプターでは,就労ビザの種類と該当する職種,許可される在留期間について解説していきますので,就労ビザの該当性の判断にお役立てください。 それでは,19種類の就労ビザを解説していきます。 (1)外交ビザ 外交ビザは,日本と諸外国の外交関係を維持・発展するために設けられた就労ビザです。 一般的にはあまり馴染みがないかもしれませんが,外国政府の大使,公使,総領事,代表団構成員等及びその家族の方などが該当します。 また,外交ビザは一般的な就労ビザのように,「1年」や「3年」といった在留期間が具体的に定められているわけではなく,外交活動を行う期間中は継続して在留が認められているのが特徴です。 (2)公用ビザ 公用ビザは,日本と諸外国との友好関係を維持・発展させることを目的に設けられた就労ビザです。 (1)の外交ビザ同様,一般的にはあまり馴染みがないと思います。 外国政府の大使館・領事館の職員,国際機関等から公の用務で派遣される方及びその家族の方などが該当します。 在留期間は,5年,3年,1年,3月,30日又は15日と定められています。 (3)教授ビザ 教授ビザは,学術研究の向上発展を目的に,大学の教授などを外国から受け入れるために設けられた就労ビザです。 大学の教員等を対象とする就労ビザで,大学の教授,准教授,講師,助手などの方が該当します。 もっとも,教授ビザは就労ビザの一種と位置づけられていますので,たとえ教授職にあったとしても,収入を得ずに大学等で研究や教育活動をする場合には,教授ビザには該当しません。 この場合には,「文化活動」ビザに該当することになるので,注意が必要です。 在留期間は,5年,3年,1年,3月と定められています。 (4)芸術ビザ 芸術ビザは,芸術分野を通じて,国際交流を図ることを目的に設けられた就労ビザです。 その名のとおり芸術家を対象とする就労ビザで,作曲家,作詞家,画家,彫刻家,工芸家,写真家などの方が該当します。 芸術ビザは就労ビザの一種であるため,収入を伴わない芸術活動をおこなう場合には,芸術ビザではなく文化活動ビザに該当することになります。 在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。 (5)宗教ビザ 宗教ビザは,外国の宗教団体から派遣される宗教家を受け入れるために設けられた就労ビザです。 僧侶,司教,宣教師等の宗教家の方が該当します。 在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。 (6)報道ビザ 報道ビザは,外国の報道機関から派遣される特派員等を受け入れるために設けられた就労ビザです。 新聞記者,雑誌記者,編集者,報道カメラマン,アナウンサーの方などが該当します。 なお,日本の報道機関との契約に基づき報道活動をおこなう場合には,報道ビザではなく「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当することになるので注意が必要です。報道ビザの在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。 (7)高度専門職ビザ 高度専門職ビザは,高度外国人材の受入れを促進するため,高度外国人材に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずるために設けられた就労ビザです。 「高度学術研究活動」,「高度専門・技術活動」,「高度経営・管理活動」の3つに分類され,それぞれの特性に応じて,「学歴」,「職歴」,「年収」などの項目ごとにポイント制を設けています。 このポイントの合計点数が一定の点数以上に達した場合,出入国管理上の優遇措置を受けることができるというメリットがあります。 具体的な優遇措置は次の通りです。 【高度専門職1号でポイントが70点以上の場合】 ①複合的な在留活動の許容…