德永 武道

経営管理ビザからの永住ビザ申請のポイント

経営管理ビザは,外国人が日本で事業の経営・管理業務に従事するために設けられたものです。永住ビザを取得すれば,より安定的・継続的に事業活動を行うことが可能になりますので,永住ビザを取得するメリットは大きいといえるでしょう。

本ページでは,経営管理ビザから永住ビザ申請を行う際のポイントを中心に記載していますので,ご覧ください。

1.役員報酬について

永住ビザを取得するためには,「独立した生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」が求められます(入管法22条2項2号,独立生計要件)。申請人世帯の構成人数と世帯全体の収入,居住地域,世帯構成員の年齢等を総合考慮して,今後安定した生活を継続できると認められるかどうかが審査されます。

明確な基準はありませんが,就労系の在留資格からの永住申請の場合は,最低でも年収300万円は必要と言われています。この点,申請人が会社経営者の場合は,役員報酬が申請人の収入源となりますので,役員報酬を年間300万円以上(月間25万円以上)に設定しておくことが望ましいでしょう。

役員報酬はいつでも変更できるわけではなく,事業年度開始の日から3か月以内というルールがありますので,注意が必要です。

なお,2019年7月以降は,永住ビザ申請の際に直近5年度分の所得証明書の提出が求められるようになりました。会社の決算状況によりますが,ゆくゆく永住ビザを希望されているのであれば,永住ビザ申請が可能な時期(原則,在留10年以上,かつ,就労資格または居住資格を取得した日から5年以上)の5年以上前から役員報酬を年間300万円以上に設定しておいたほうが良いでしょう。

2.会社の安定性・継続性について

会社には法人格があり,法律上は経営者=会社ではありません。そのため,経営者である申請人個人が永住ビザ申請を行う際に,会社の経営状況の良し悪しは本来関係がないはずです。しかし,経営者の役員報酬は,会社の財務状況によって大きく左右されるのが一般的です。財務状況が悪くなれば,役員報酬を引き下げて欠損を圧縮することがあり得ます。最悪の場合,役員を解任されることもあり得るわけです。

そこで,経営管理ビザからの永住ビザ申請の場合は,安定した収入を確保できているかどうかという観点から,申請人が経営する会社の安定性・継続性も審査対象とされています。

会社の財務状況が債務超過(負債が資産を超えていること)にある場合には,経営者である申請人個人が安定した収入を確保できているとは言えません。また,債務超過にはなくとも,欠損が連続している場合には,これも役員報酬を引き下げられる可能性が高いため,安定収入の確保の観点から問題視される傾向にあります。直近2事業年度は経常損益が黒字で回っていることが望ましいでしょう。

3.会社の納税状況について

申請人である経営者個人の納税状況は当然ですが,永住ビザの審査においては会社の納税状況も審査対象になります。特に近年は,社会保険の加入の有無,社会保険料の適正納付は厳格に審査されています。

会社は社会保険(厚生年金保険および健康保険)の強制適用事業所とされ,役員一人だけの従業員がいない会社でも社会保険に加入する義務があります。また,社会保険料は労使折半とされ,会社が保険料の半分を負担しなければなりません。

経営者が永住ビザ申請を行う際には,年金事務所が発行する社会保険料納入証明書を提出しなければなりません。社会保険に加入していない場合や,社会保険料を納付していない,あるいは納期遅滞がある場合には,永住ビザの審査において大きなマイナス要因になります。必ず社会保険に加入し,社会保険料を適正に納付するようにしてください。

4.出国日数について

日本で経営者として活動している外国人の方には,日本以外の海外でも事業を展開し,グローバルに活躍されている方が沢山います。そういった方は,必然的に出国日数が多くなる傾向にあります。

永住ビザ申請においては出国状況も審査対象になり,その頻度や日数からみて日本に活動の本拠がないと評価されるような場合には,永住許可はされません。概ね1年の半分以上(=183日以上)を出国している場合には,永住許可の可能性は大きく下がります。

ただし,出国理由が合理的なものであり,かつ,出国の頻度や期間が相当と言える場合には,出国日数が多くても活動の本拠が日本にあると評価されるケースもあります。海外出国が多い場合には,海外での事業活動や出国理由を示す他,たとえば本社機能を日本に集中させているなど事業活動の本拠が日本にあることを積極的にアピールするようにしましょう。

5.経営管理ビザからの永住ビザ申請のポイントのまとめ

経営管理ビザからの永住ビザ申請の際には,他の在留資格とは異なった観点から審査対象となる項目が増えます。
しかし,適正に会社を運営し,利益を上げる体制を構築できていれば,何も恐れることはありません。

外国で事業活動を行うことはとても勇気がいることです。外国人経営者であれば,誰しも安心して事業を運営したいと思うのは当然のことです。

行政書士法人第一綜合事務所では,永住ビザ申請はもとより,外国人経営者が安心して経営活動に専念できるように,あらゆる方向から全力でサポートしています。

経営管理ビザをお持ちの方で永住ビザ申請をご検討中の方は,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 德永 武道

・日本行政書士会連合会(登録番号第23082840号)
・東京都行政書士会(会員番号第14958号)
千葉県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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