藤澤 勇來

中国人の帰化申請

中国人の方の帰化許可者数は,毎年2,000人以上います。
当社も帰化申請を数多くサポートさせて頂いてきましたが,中国人の方が多い印象です。
そこで,本コラムでは,当社のこれまでの実績に基づいて得られた情報などをもとに,中国人が帰化申請を行う際に必要な書類の確認すべき事項や,手続きを進める上で注意しなければならない点などを行政書士が解説しています。
これから帰化申請を考えている中国人の方,また帰化申請をするか迷っている方へ向けて解説しています。

1.帰化申請とは

帰化申請とは,一言でいうと「日本人になる手続き」を言います。帰化申請が許可されると日本人となるため,日本の戸籍(帰化許可者の生年月日やご両親,婚姻日などのパーソナル情報のこと)が作成されます。
また,日本人なので,ビザの申請をすることなく日本で安定的に生活出来るようになりますし,世界でも信頼度の高い日本のパスポートを持つことになるため,海外旅行の際にビザ申請をすることなく行ける国が増えます。

他方,5.帰化許可後の対応についてで詳しく解説しますが,日本は二重国籍を認めていないため,中国人が日本へ帰化許可されると自動的に中国国籍を喪失することになります。

2.中国人の帰化申請の動向

法務省が発表した国籍別帰化許可者数を見ると,中国国籍の方は2019年が2,374人(全体8,453人),2020年が2,881人(全体9.079人),2021年が2,526人(全体8,167人)となっています。

国別にみると,2019年から2021年の間で順位の変動はなく,1位韓国・朝鮮,2位中国,3位ブラジル,4位ベトナム,5位フィリピンとなっています。
また,1位の韓国・朝鮮は歴史的背景もあるため,特別としても,2位の中国と3位のブラジルでは帰化許可者数が毎年6倍以上もの差が生じています。(2021年のブラジルの帰化許可者数は444人)。

この数字からわかることは,他の国と比較して,中国人の多くが日本人として,日本で長く住みたいと思ってくれているということです。
日本人としては,国籍という自身のアイデンティティを変えてまで日本人となりたいと思ってもらえていることを嬉しく感じますが,法務局との関係で考えると,帰化許可者数が多いということは,中国人の帰化申請について多く審査をしているということの裏返しであり,どこの法務局も中国人の帰化申請の審査に慣れているということです。

そのため,書類の不備があると法務局から「ここが違う」「この書類は取得できるはずだ」とその都度エクスキューズが入り,帰化申請の準備に時間がかかる可能性があります。
だからこそ,中国人の方が帰化申請を円滑に,かつ,早急に進めるためには,書類に不備がないよう正しい知識を持って帰化申請に臨むことが大切になります

3.中国人の帰化申請を成功させるための条件

中国人の帰化申請を成功させるための条件として,最も重要となることは,どの本国書類をどこで取得することが出来るのか,取得するための手続きはどのようにするのかということを事前にしっかり調査することです。

また,取得すべき書類を正確に知るためには,自身のことだけでなく,自身のご両親などについても事前にヒアリングすることが大切です。

なぜなら,中国以外の国であれば,本国に届出をしていれば,本国の行政機関からそれぞれの内容の証明書の発行が出来ます。
しかし,中国の場合,届出る行政機関によって発行される場所が変わることがあるからです。

例えば,ご両親がどちらも中国国籍である独身の中国人の方が帰化申請をするとなった場合,ご両親の結婚を証明するための証明書が必要となります。
この際,両親が中国本土で結婚していれば,公証処より結婚公証書の発行が可能となりますが,ご両親が日本の中国大使館,領事館で結婚手続きを進めた場合,本国の公証処から結婚公証書は発行されず,日本の中国大使館,領事館から発行された結婚証のコピーで良いとされます。

そして,帰化申請で必要となる書類について,法務局は申請人から話を聞いて判断するため,法務局での初回相談の際に不確かな情報を伝えると,取得できない書類を案内され,帰化申請が進まないとう事態に陥るかもしれませんので,帰化申請を成功させるためにも,先述した書類の取得場所や取得方法,自身だけでなく親族の情報も事前に調査しておくことは肝要です。

4.中国人の帰化申請の書類で注意すべき点

帰化申請を行うためには,まず,自身が帰化申請するために必要な書類を確定させるために,お住いの住所を管轄する法務局を調べ,初回相談へ行って頂く必要があります。

帰化申請の管轄の法務局を調べ,実際に管轄の法務局へ相談に行った際に,法務局から必要な書類について教えてもらうのですが,中国人の帰化申請の場合,必ず本人(家族)の身分関係を示す書類を取得するように指示を受けます。

例えば,日本で生まれた場合や日本にある中国大使館・領事館で手続きをした事項であれば,日本の大使館・領事館で取得できる書類もありますが,原則,中国本国で身分関係を示す書類を取得する必要があります。

身分関係を示す書類は,「出生公証書」,「親族関係公証書」,「婚姻公証書」,「離婚公証書」および「死亡公証書」です。

なお,これらの書類は申請人本人の分だけでなく,帰化申請に関係している親族の分の提出を求められる書類もありますので,その都度対応が必要になってきます。
上記書類はすべて公証された書類(公証書)が必要となりますので,取得した書類を日本へ発送する場合や持ち帰る場合には,注意してください。

また,「親族関係公証書」を取得する際に,申請人に兄妹がいなく一人っ子の場合,親族関係公証書に「独生子」である旨の記載を行ってもらうようにしてください。
「独生子」とは,申請者が一人っ子であることを示す文言であり,他に兄妹がいないことを明らかにします。

近年は,公証書を発行する公証処で,親族関係公証書に「独生子」の記載をしないところもあるようですが,法務局はこの「独生子」の記載が無いと,申請書類を受理しないケースもありますので,ご注意ください。

さらに,中国人の帰化申請では「領事証明」を取得する必要があります。

領事証明とは,他の国でいうところの国籍証明書のことで,中国でも数年前まで国籍公証書として発行されていました。
この解説だけ読むと,領事証明と国籍公証書は同じものと思われるかもしれませんが,そんなことはありません。

確かに領事証明も国籍公証書も,申請人の国籍が中国であることを証明するための証明書です。
しかし,国籍公証書は,中国政府が当該中国人の国籍離脱意思を認め,中国国籍を離脱したことを示す書類で,取得すると中国のパスポートが使用できなくなるため,法務局より取得の案内があった後に取得の手続きをしていたのに対し,領事証明は取得をしても中国のパスポートが使用出来なくなるわけではないので,有効期限はあるものの,法務局の案内を待つことなく帰化申請書類一式を法務局に提出する際に必ず必要となります。

なお,領事証明書を取得するために必要な書類は次の通りです。

①パスポート原本とパスポートの写真ページのコピー
②在留カード原本および両面コピー
③領事証明申請書

詳しくは,中国大使館・領事館のホームページをご覧ください(公証の申請に関する注意 – 在日中華人民共和国大使館 (china-embassy.gov.cn))。

また,中国人の場合,その他の国と比較すると「経営・管理」の在留資格を持つ人が多いのですが,こちらの在留資格を持った中国人の方は,原則直近3年間の会社の決算状況が確認されるだけでなく,会社の事業に実体があるかも確認されます。
そのため,会社の事業の実体を示すための書類の提出までは必要ありませんが,事業の実体を証明するための資料は準備しておくこと必要があります。

5.帰化許可後の対応について

中国人が帰化許可された場合,領事証明に記載があるのですが,自動的に中国国籍を喪失します。
そのため,ベトナム人や香港の方のように帰化申請とは別に国籍離脱のための手続きをして頂く必要はありません。

ただし,中国人は帰化許可後に,中国パスポートの失効手続きを日本にある中国大使館,領事館で行う必要がありますので,手続き漏れがないように注意してください。
中国パスポートの失効手続きを行った後は,日本の市区町村へ帰化届を提出し,日本のパスポートを取得することが可能になります。

帰化許可後の一般的な手続きを確認するためには,帰化許可後の手続き のコラムを参考にしてください。

6. 中国人の帰化申請でよくある質問

ここからは,中国人の方から帰化申請業務でよくあるご質問をまとめています。

帰化申請のご依頼を検討中の方は,ぜひご覧ください。

Q1 帰化申請の相談は無料ですか?


A1 帰化申請のご相談は無料でお受けしています。
無料相談では,お客様の状況を確認し,帰化申請の許可可能性を判断致します。

Q2 帰化申請を依頼した場合,状況によって追加料金は掛かりますか?


A2 帰化申請の費用は全て事前にお見積りし,追加費用基本的には掛かりませんのでご安心ください。
なお,翻訳は実際の記載内容を確認してからでないと費用を確定することが出来ませんので,当社へ翻訳を依頼される場合は,例外的に追加費用が掛かます。
その点,予めご了承ください。

Q3 帰化申請に必要となる中国の公証書を代わりに取得してもらうことはできますか?


A3 中国国内で発行される書類については,当社で代理取得できません。
そのため,お客様で中国にいるご親族の方を通じて中国の機関から取得してください。
なお,日本国内で発行される書類で,当社で代理取得可能なものについては,全て当社で書類収集します。

Q4 何十年も前に卒業した小学校の卒業証書がありません。既に廃校となったため,卒業証明書の取得も出来ません。どうしたらよいですか。


A4 帰化申請において,取得できない書類は仕方がないので,法務局の対応の仕方にもよりますが,準備しなくてもよくなる可能性があります。
なお,日本の学校を卒業している場合,教育委員会に事情を説明すれば,卒業証明書の発行が出来ます。

Q5 帰化申請の相談は,中国語対応していますか?


A5 帰化申請のご相談は,中国語での対応もしています。
中国語対応につきましても,無料でご対応しております。

なお,中国人の帰化申請の場合,他の国の方と比べると日本語能力で不許可になる場合が多い印象です。
帰化申請は,準備を始めてから帰化申請の結果が出るまで,1年以上かかりますし,不許可になって,再申請しようとすると,再度,中国本国から公証書を取得し,日本へ郵送して頂く必要があり大変です。

そのため,日本語能力にご不安がある方についても,ご相談いただければ当社で確認いたします。

Q6 帰化申請をする際,法務局への同行をしていますか?


A6 東京,大阪,京都,滋賀,兵庫,奈良,和歌山,三重の法務局には,申請同行するプランがございます。

その他の管轄の法務局の場合は,当社で作成し納品させていただいた申請書類をお客様にご提出いただくようにお願いしています。
なお,その他の管轄の法務局の場合であっても,追加の費用を頂くことにより,同行させて頂くことも可能です。

Q7 帰化申請が不許可になった場合には,返金や保証はありますか?


A7 帰化申請が万が一不許可になった場合には,実費,事務手数料を除き,当社報酬額をご返金いたします。

なお,当社は許可の見込みのない案件について,受任することはありません。
仮に,許可の見込みが薄い場合に,お客様が申請を希望される場合には,十分にリスクを説明したうえで受任することを徹底しております。

7.中国人の帰化申請のまとめ

本コラムでは,中国人が帰化申請を行う際の注意点等について解説しましたが,いかがでしたでしょうか。

帰化申請を行うためには準備すべき書類がたくさんあります。

また,中国人の帰化申請は,申請件数が多いからこそ法務局も慣れています。
事前にちゃんと申請人の事情を伝えないと,法務局が過去に扱った事例からこの書類は取れたから取れるはずだと申請人にとっては取得不可能な書類をずっと案内される可能性があります。

そのため,本コラムを読んで頂き,正しい知識を身につけたうえで,帰化申請の準備を進めていただければと思います。

どうしても,自分では難しい,少しでも早く申請したいというご希望がありましたら,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。
お客様が少しでも負担なく,書類準備ができるようにサポートしております。

本ページがこれから帰化申請をご検討されている中国の方にとって少しでも参考になれば幸いです。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

藤澤 勇來

・令和3年度行政書士試験合格
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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