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就労ビザの種類を専門行政書士が解説

1.日本の就労ビザの種類 就労ビザとは,外国人が日本で働くことを目的とした在留資格の総称です。 そのため,就労ビザというビザがあるわけではありません。 どの就労ビザに該当するかは,それぞれの活動内容に応じて判断する必要があります。 就労ビザの該当性を判断する際には,活動内容が極めて重要です。 本チャプターでは,就労ビザの種類と該当職種,在留期間をそれぞれ記載していきますので,就労ビザの該当性の判断にお役立てください。 では,19種類の就労ビザを解説していきます。 (1)外交ビザ 外交ビザは,日本と諸外国の外交関係を維持・発展するために設けられた就労ビザの一種です。 一般的にはあまり馴染みはないビザかと思いますが,外国政府の大使,公使,総領事,代表団構成員等及びその家族の方などが該当します。 また,外交は通常の就労ビザのように,1年や3年といった在留期間が具体的に定められているわけではありません。 外交活動を行う期間は,日本滞在が認められているのが大きな特徴です。 (2)公用ビザ 公用ビザは,日本と諸外国との友好関係を維持・発展させることを目的に設けられた就労ビザです。 (1)の外交同様,一般的にはあまり馴染みはないと思います。 外国政府の大使館・領事館の職員,国際機関等から公の用務で派遣される方及びその家族の方などが該当します。 在留期間は,5年,3年,1年,3月,30日又は15日と定められています。 (3)教授ビザ 教授ビザは,学術研究の向上発展を目的に,大学の教授などを外国から受け入れるために設けられた就労ビザです。 大学の教員等を対象とする就労ビザで,大学の教授,准教授,講師,助手などの方が該当します。 もっとも,教授ビザは就労ビザの一種と位置づけられていますので,たとえ教授職にあったとしても,収入を得ずに大学等で研究や教育活動をする場合には,教授ビザには該当しません。 この場合には,文化活動ビザに該当することになるので,間違わないように注意が必要です。 在留期間は,5年,3年,1年,3月と定められています。 (4)芸術ビザ 芸術ビザは,芸術分野を通じて,国際交流を図ることを目的に設けられた就労ビザです。 その名のとおり芸術家を対象とする就労ビザで,作曲家,作詞家,画家,彫刻家,工芸家,写真家などの方が該当します。 芸術ビザは就労ビザの一種であるため,収入を伴わない芸術活動をおこなう場合には,芸術ビザではなく文化活動ビザに該当することになります。 在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。 (5)宗教ビザ 宗教ビザは,外国の宗教団体から派遣される宗教家を受け入れるために設けられた就労ビザです。 僧侶,司教,宣教師等の宗教家の方が該当します。 在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。 (6)報道ビザ 報道ビザは,外国の報道機関から派遣される特派員等を受け入れるために設けられた就労ビザです。 新聞記者,雑誌記者,編集者,報道カメラマン,アナウンサーの方などが該当します。 なお,日本の報道機関との契約に基づき報道活動をおこなう場合には,報道ビザではありませんので注意が必要です。 この場合には,技術・人文知識・国際業務ビザに該当することになります。 在留期間は,5年,3年,1年又は3月と定められています。…

【解決事例】留学生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法

1.増加する留学生との国際結婚 2008年,当時日本の首相であった福田康夫氏が「留学生30万人計画」を発表し,目標の2020年より前倒しで目標達成を果たすほど,留学生の増加は顕著です。そして,留学生の増加に伴い,留学生と国際結婚をされる方も増えています。 本記事は,増加傾向にある留学生との国際結婚をした事案ですが,今回の事案で特に注意すべきポイントを中心に以下で見ていきます。 2.配偶者ビザに変更前にチェック!留学ビザとは? 留学ビザは,簡単に説明すると「本邦の指定する教育機関において教育を受ける活動」をするためのビザです。つまり,教育を受ける活動をしていなければ,留学ビザの要件には適合しないと判断されます。 留学ビザから他のビザに変更する際にも,留学ビザに該当する活動を行っていたかを審査されます。そのため,留学ビザから配偶者ビザへの変更申請を進めていく上で,一方配偶者である留学生がしっかり教育を受ける活動をしているかどうかを判断することは非常に重要です。 では,出入国在留管理局では「教育を受ける活動」をどういう視点で見ているのでしょうか。 3.留学ビザの時の出席率や成績,アルバイトも配偶者ビザ変更に関係がある 留学ビザの際に特に問題になりやすいのは, ①出席率 ②成績 ③アルバイト 以上の3点です。 留学生が学校に行っていない場合や留年をしている場合には,留学ビザから配偶者ビザへの変更申請の際,「単に日本に残るために,結婚したのではないか。」,「学校を辞めて日本で働きたいから配偶者ビザへ変更するのではないか。」と嫌疑を抱かれる可能性があります。 そのため当社では,進級あるいは卒業に必要な単位数と現在の単位数を照らし合わせ,検証をすることにしています。場合によっては,出席証明書や成績証明書に加えて,成績不良についての経緯説明書を添付し,事情を説明することもあります。 ①の出席率,②の成績については,一見すると配偶者ビザと直接関係がないように感じますが,留学ビザから配偶者ビザへ変更申請をする際には,欠かすことの出来ないポイントの一つになります。 次に,最近の傾向で重視されている点が③のアルバイトです。 留学生にとって,アルバイトは学費や生活費を得るための手段として認識されています。 もっとも,アルバイトに夢中になり,学業が疎かになってしまっては本末転倒です。そこで入管法では,留学生が学業とアルバイトの両立を図れるように,アルバイトに一定の制約を設けています。 実は留学ビザは,原則就労活動が認められていません。資格外活動許可を取得した場合に限り,法定時間内(原則週28時間以内)においてアルバイトに従事することを認められているに過ぎません。 それにも拘わらず,資格外活動許可を受けずにアルバイトをしている事例,資格外活動許可は受けてはいるものの,大幅に法定時間を超過してアルバイトをしている事例が散見されます。 そのため入管審査においても,資格外活動許可を得ていること,アルバイトの法定時間を遵守していることは,留学ビザから配偶者ビザへ変更申請する局面において注視されています。 4.計画的に進める必要あり!留学ビザから配偶者ビザへの変更のポイント さらに,留学ビザから配偶者ビザへの変更の場合,気を付けなければならないポイントがあります。 それは,教育機関に在籍しているかどうかという点です。既に学校を退学してしまい教育機関に在籍していない状態が一定期間続いていると,配偶者ビザの審査が厳しくなってしまいます。 上記の内容は,入管法第22条の4に定める在留資格の取消事由と関係します。留学ビザの場合は,留学の在留資格に係る活動を継続して3ヶ月以上行っていない場合,法務大臣はその在留資格を取り消すことができると入管法は定めています。 つまり,学校に行っていない状態が3ヶ月以上続く場合には,留学ビザが取り消される可能性があります。また,留学ビザが取り消されていない場合であっても,取消事由に該当するような配偶者ビザ申請については,消極的な事由として大きなマイナス点となります。 そのため,このような状況に陥ることがないように,計画的に留学ビザから配偶者ビザの申請準備をすることが肝要です。 5.今回の事例の結論は… 今回の事例では,Kさんは留学ビザの取消事由に該当していたため,不登校に至った経緯について丁寧に入管に説明をしました。また,その間の活動内容を具体的に示し,疎明資料と共に説明文を添付しました。 さらに,Kさんのアルバイト状況について,入管審査上,必要となる情報を全て提示しました。 一方,Jさんは新卒入社であったため,直近の所得課税証明書が非課税であり,収入の証明に不安を抱えていました。そこで,所得課税証明書の他に,配偶者ビザ申請段階でのJさんの安定所得を示す資料を提出しました。 その結果,申請から1ヶ月を待たずに,留学ビザから配偶者ビザへの許可通知書を受け取ることが出来ました。 6.留学生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法のまとめ 本ページでは,留学生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法をテーマに取り上げました。 上述の通り,留学生の場合は検討しなければならないポイントがたくさんあります。 これらは,配偶者ビザの許否判断をするにあたって,いずれも重視されている内容です。 留学生との国際結婚を考えている方,留学ビザから配偶者ビザへの変更申請を検討されている方は,まず上記のポイントに照らして,リスクの有無を確認してみてください。 配偶者ビザへの変更をご検討されている方で,これからどのように手続きを進めたらよいか不安を抱えている方は,一度当社までお問い合わせ下さい。 お話をお伺いし,最適な解決方法をご提案いたします。…

【解決事例】夫が永住ビザを取得したら妻の家族滞在ビザはどうなる?

1.はじめに 就労ビザの方が永住ビザを取得した場合,ご家族のビザはこれまでと同じ家族滞在ビザのままで良いのでしょうか。 本ページでは,家族で一緒に永住ビザの申請を行わなかったケースで生じる問題点,対応方法を記載していきます。 2.家族滞在ビザとは? 家族滞在ビザは,一定の在留資格をもって日本に在留する外国人の扶養家族を受け入れるために設けられているビザです。 本事例に当てはめると,技術・人文知識・国際業務ビザを持つAさんのご家族であるBさん,2人のお子様を受入れるためのビザということが出来ます。 今回は,Aさん(技術・人文知識・国際業務ビザ)が永住ビザを取得した結果,ご家族のBさん,2人のお子様(家族滞在ビザ)のビザに影響があるか否かというご相談事例です。 その答えは,上記で示した家族滞在ビザの定義にあります。 家族滞在ビザとは,“一定の在留資格”をもって日本に在留する外国人の扶養家族を受け入れるために設けられているビザでした。 ここでいう一定の在留資格とは,「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「文化活動」「留学」を意味し,永住者は入っていません。 つまり,「一定の在留資格」を持っていた外国人の在留資格が「永住者」に変更されると,その方の扶養を受けている家族は在留資格を変更しなければならない,ということになります。 まとめると, ①Aさん(技術・人文知識・国際業務ビザ),Bさん(家族滞在ビザ),お子様(家族滞在ビザ)の状況から, ②Aさんが永住ビザを取得したことによって,Bさんとお子様は家族滞在ビザの要件に該当しなくなる。 ③その結果,Bさんとお子様は在留資格を変更しなければならない。 ということになります。 3.家族滞在ビザから何のビザに変更すれば良い? (1)配偶者について 「一定の在留資格」をもっていた外国人の方が永住ビザを取得した場合,その配偶者の方は「永住者の配偶者等」にビザの種類を変更することになります。ここでは,永住者の配偶者等のビザについての要件は割愛しますが,家族滞在ビザの要件を満たしている方であれば,通常は問題になることはありません。 (2)お子様について お子様については,定住者ビザに変更することになります。定住者ビザには告示定住と告示外定住(告示に定めのない定住者)という種類がありますが,扶養者が永住者になったことによるお子様のビザは,定住者ビザ(告示定住)となります。 (参考) 〇出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件(平成2年法務省告示第132号) (略) 六 次のいずれかに該当する者(第一号から第四号まで又は第八号に該当する者を除く。)に係るもの イ 日本人,永住者の在留資格をもって在留する者又は日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者(以下「特別永住者」という。)の扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子 (略) 4.複雑な状況を回避するためには… 扶養者の方が永住ビザを取得した場合には,上述のとおり,家族滞在ビザの方はビザ変更の必要性が生じます。 家族滞在ビザは,上記で示した“一定の在留資格”に紐づいているビザです。そのため,“一定の在留資格”に変更があれば,家族滞在ビザの方も影響を受けることになってしまいます。 このような複雑な状況を回避するため,当社では家族全員で永住ビザの申請を行うことをお勧めしています。 今回の事例は,仮に家族全員で永住ビザを申請していれば生じない問題です。 また,ビザ申請の件数も,家族全員で永住許可申請をする場合とそうでない場合では異なります。 <家族全員で永住申請をする場合> ①Aさん,Bさん,お子様2名の永住許可申請 <今回の事例> ①Aさん 永住許可申請…

【解決事例】二重国籍者(重国籍者)との国際結婚手続き

1.国際結婚の要件はどの国の法律で判断すればよい? 法の適用に関する通則法第38条第1項本文には,次のような規定があります。 「当事者が二以上の国籍を有する場合には,その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を,その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。」 上記の内容を簡単にまとめると, ①国籍を有する国のうちに常居所がある場合は,常居所地の法律で本国法を判断する。 ②上記①がない時には,密接関連性を基準として本国法の判断をする。 したがって,どの国のパスポートで入国したのかを基準とする役所の回答は誤りです。 まずは,常居所地を基準に判断してください(なお,常居所とは,一般に人が相当期間居住することが明らかな地をいいます。)。 2.1の常居所地の判断は難しくない ①の常居所地の判断にあっては,基本的には居住している国から発行される居住証明書(日本でいう住民票と考えてください。)の有無によって判断することになります。居住証明書が取得できれば,その国が常居所地と判断してもらって差し支えありません。 しかし,複数の国から居住証明書の発行があった場合や居住証明書をどの国からも取得できない場合には,少し判断が複雑になってしまいます。 このような場合は,上記②の密接関連地を基準として,国際結婚の要件を判断することになります。 3.2の密接関連地は婚姻要件具備証明書が鍵になる!? では,②の密接関連地はどのような基準で判断をするのでしょうか。 多くの国において,国際結婚手続きを行うにあたり,婚姻要件具備証明書という書面の発行を求めることができます。 簡単にご説明をすると婚姻要件具備証明書とは,外国人の方が本国の法律に従って結婚できる条件を満たしていることを明らかにした公的な文書です。 密接関連地の判断基準は,この婚姻要件具備証明書の発行を基準としています。 すなわち,婚姻要件具備証明書を発行した国に密接関連性があると判断し,その国の法律に従って国際結婚の要件判断を行うことになります。 4.婚姻要件具備証明書が取得できない場合には? 問題となるのは,②のケースで婚姻要件具備証明書の発行をいずれの国からも受けられなかったケースです。 このような場合には,密接関連地の判断は総合的に行うことになります。 例えば,実際はどの国に住んでいるかという点や親族がどの国に居るか等を総合的に考慮して判断していくことになります。 この段階までいくと,市区町村役場のみで重国籍者の本国法を判断するのは困難となることから,法務局に受理照会(※1)を行い,密接関連地を認定するのが通常です。 ※1 受理照会とは,市区町村役場で届出を受理するにあたって内容に疑義が生じた場合,その届出を受理してよいかを管轄法務局に助言を求めることをいいます。 5.二重国籍者(重国籍者)との国際結婚手続きで注意することは? 二重国籍者(重国籍者)との国際結婚手続きについて,よくご質問をいただく事項があります。それは,仮に特に役所から指摘を受けなかった場合には,単一国籍者として国際結婚手続きをしても問題ないか,というご質問です。 日本の市区町村役場では,提出された書面のみをもとに審査を行う形式的審査主義が採用されています。そして,結婚手続きに添付した書類や婚姻届に記載した内容から,一つの国籍のみが示されており,疑義が生じていないケースでは,単一国籍者として扱ってよいと基本通達が出されています。 上記の基本通達から市区町村役場では,提出書面から二重国籍であることが判明しなければ,単一国籍者と扱うことになります。 したがって,国際結婚手続きをする外国人が二重国籍の場合には,本来は自ら二重国籍であることを明らかにする必要がありますが,二重国籍であることを市区町村役場の職員には告げず,単一国籍者として国際結婚手続きをする方が多数おられるのが現状のようです。 しかし,二重国籍者(重国籍者)として国際結婚手続きを行わないと,後に問題となるケースがあります。例えば,それぞれの国によって婚姻状況が異なる(一方では既婚,一方では未婚)ことから,相続やお子様の出生時に様々な弊害が生じることが考えられます。 後に巻き戻して手続きをやり直すことは,時間も労力も相当掛かってしまいます。 そのため,役所から指摘がないからといって,単一国籍者として国際結婚手続きをするのではなく,ご自身の将来のために,法に沿った適切な手続きを執るようにしてください。 6.今回の事例について 今回の事例は,普段はモルドバ共和国に住んでいる方が,ルーマニアが査証免除国(※2)であったため,ルーマニア人として短期ビザで入国していたところ,相談した役所からルーマニア人として結婚するように指導を受けました。 しかし,正しくは上記のとおり,まずは常居所地を検討し,この方の本国法を判断しなければなりません。 今回の事例においては,モルドバ共和国から居住証明書の発行を受ける事が出来ましたので,国際結婚の要件はモルドバ共和国の法律で判断し,加えてルーマニア国籍を有していることの証明書を添付することで,適切な手続きが完了しました。 ※2 査証免除国については,外務省のホームページをご参照下さい。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html

【解決事例】出産看護を目的とする短期滞在ビザ

1.短期滞在ビザの手続きと他のビザの手続きはちがうの? 短期滞在ビザのための特別な手続きが必要かどうかは,その国が査証免除国であるかを確認することからスタートすることになります。 査証免除国の案内は,外務省のホームページで確認することができますので,これから短期滞在ビザの取得を目指す方は,一度ご覧ください。 ○外務省ホームページ https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html 2020年4月現在の査証免除国は68ヶ国です。 ただし,68ヶ国すべてが90日の査証を免除されているわけではありません。上陸許可の際に付与される在留期間は,インドネシア,タイ及びブルネイは「15日」,アラブ首長国連邦は「30日」,その他の国・地域については「90日」となっています。 したがって,査証免除されていない国の方が来日される場合や,インドネシア,タイ,ブルネイ,アラブ首長国連邦の方が定められた在留期間よりも長い期間のビザ(例えば「90日」の短期滞在ビザ)を希望される場合には,短期滞在ビザを取得することが必要です。 中長期在留者のビザについては,原則として日本にある出入国在留管理局に申請を行いますが,短期滞在ビザは在外公館(ビザを申請される方の居住国にある日本大使館や日本領事館のことをいいます。)で本人が申請することが必要です。この点が,短期滞在ビザが中長期在留者のビザと大きく異なるところです。 2.短期滞在ビザの有効期限は 在外公館で発給された査証の有効期限は3ヶ月です。有効期限内に日本に上陸する必要があります。そして,上陸許可がされた翌日から表示されている日数(15日,30日,90日)の在留が許可されます。 たとえば,30日間の短期滞在ビザの方が3月1日に上陸された場合,3月2日から30日後の3月31日まで滞在が許されます。実際に上陸が許可された方は,パスポートに貼り付けられる上陸許可のシールに滞在期限が記載されていますので,確認してみて下さい。 3.出産看護のための短期滞在ビザは期間を更新することはできるの? 短期滞在ビザの更新申請は,法律上は他の中長期在留ビザと同様に「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があれば更新できると規定されています。 しかし,短期滞在ビザは,観光や親族訪問を理由とした短期間の滞在を目的としていることから,原則として更新は想定されていません。実務上,短期滞在ビザの期間の更新については,人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に限り,許可されています。 そのため,もう少し観光をしたいであるとか,航空機代が高い時期だからという理由では短期滞在ビザの更新はできないとご理解ください。 もっとも,実務上は本事例のような出産看護の場合には,短期滞在ビザの延長が認められているケースが多数あります。 4.出産看護を目的とする短期滞在ビザを取得するまでの道のり Aさんのお母様の事例に戻って,解決策を振り返ります。 まず,Aさんのお母様はベトナム人ですので,ベトナムの管轄の日本領事館に提出する資料を確認します。 ①入国・在留目的を立証する資料 Aさんが出産を控えていること,Aさんには出産予定のお子様の他に小さいお子様がいらっしゃること,Aさんとお母様の関係性を示す資料を提出し,かつ招へい理由書を作成しました。また,滞在予定表についても滞在先や訪問予定先,予定されている行事などを記載しました。 ②滞在中の経費及び出国のための手段又は経費を支弁できることの立証資料 Aさん夫婦の家計は主にBさんの収入によって賄われています。Aさんのお母様はベトナムでも働いていないため,滞在費用についてはBさんの収入や,預貯金を示す証明書を提出しました。 なお,ベトナムの場合,申請時に往復航空券の予約票が必要になります。提出先の領事館によって,航空券の事前予約の要否等が異なることがありますので,提出前に必ずチェックするようにしましょう。 結果,Aさんのお母様は無事に,出産看護を目的として90日の短期滞在ビザを得ることができました。 5.出産看護を目的とする短期滞在ビザのまとめ 在外公館で行う短期滞在ビザ申請においては,申請人(Aさんのお母様)の方が集める資料と,招へい人(Aさん)が集める資料を合わせて提出する必要があります。招へい人は自身の資料を国際郵便で申請人に送ることになります。 注意点としては,ビザが不発行になりますと,6ヶ月間は原則として同一の目的・内容でビザ申請をすることができないことになっています。 出産看護を目的とする短期滞在ビザでご不明があれば,行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせ下さい。…

N1特定活動ビザ(特定活動46号)の解決事例をご紹介します!

1.N1特定活動ビザでどんな仕事ができるの? そもそも,N1特定活動ビザでは,具体的にどのような仕事ができるのでしょうか? 結論から言うと,N1特定活動ビザでは,今まで「技術・人文知識・国際業務」で認められてこなかった,現業メインでのフルタイム就業が可能になります。 これは,N1特定活動ビザの最大のメリットであると言えます。 では,具体的にはどのような業務に従事することが出来るのか。 詳細な説明に先立ち,まずはN1特定活動ビザで従事可能な活動の大枠を捉えましょう。 N1特定活動ビザで従事可能な業務について,出入国在留管理庁公表のガイドラインでは次のように記載されています。 「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」 「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とは,単に雇用主等からの作業指示を理解し,自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず,いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や,自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ,他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であることを意味します。 つまり,高い日本語能力を用いて他者とコミュニケーションをすることを基礎にして成り立つ業務であり,代表的なものとして接客業が挙げられます。 これによって,これまで技術・人文知識・国際業務の在留資格では従事困難であった接客業や小売業の現場での在留資格取得が可能になりました。 ただし,N1特定活動ビザであれば,無制限に現業に従事できるという訳ではありません。N1特定活動ビザの業務には,「本邦の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること」という限定がついています。 これは,従事しようとする業務内容に,技術・人文知識・国際業務の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること,又は,今後そのような業務に従事することが見込まれることを意味します。 したがって,技術・人文知識・国際業務のように一定水準以上の業務をメイン業務とする必要はないものの,全くの単純作業のみに従事することはN1特定活動ビザでも認められず,業務の一部は一定の専門性を要する業務でなければならないということです。 もっとも,今後一定水準以上の業務に従事することが見込まれる場合でも良いとなっていますので,例えば,入社当初はレストランのホールスタッフとして採用し,ゆくゆくはお店の経理も任せるようにするといった場合も可能になります。 上記の前提を踏まえて,ガイドラインに記載の具体例をご紹介します。 ア 飲食店に採用され,店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行う もの(それに併せて,日本人に対する接客を行うことを含む。)。 ※ 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。 イ 工場のラインにおいて,日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外 国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ,自らもラインに入って業務を行うもの。 ※ ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。 ウ 小売店において,仕入れや商品企画等と併せ,通訳を兼ねた外国人客に対する接 客販売業務を行うもの(それに併せて,日本人に対する接客販売業務を行うことを含む。)。 ※ 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。 エ ホテルや旅館において,翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設,更新作業を行うものや,外国人客への通訳(案内),他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(それに併せて,日本人に対する接客を行うことを含む。)。 ※ 客室の清掃にのみ従事することは認められません。 オ タクシー会社に採用され,観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ,自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(それに併せて,通常のタクシードライバーとして乗務することを含む。)。 ※ 車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。 カ …

【解決事例】内定待機のための特定活動ビザ

1.内定後も日本で滞在し続けるには? 多くの日本企業は,3月の教育機関の卒業時期に合わせて,新入社員の入社時期を4月に統一しています。卒業前に内定が決まっている方は,4月の入社に何ら問題はありません。しかし,Aさんのように就職浪人をして卒業後に内定を得た場合,翌年4月の入社となると,入社までの待機期間が長期に及ぶ場合があります。 そこで,入管も日本企業の採用実態に合わせて,内定が決まった方の入社時期までの在留を認めています。それが,内定待機のための特定活動ビザといわれるものです。 内定後,入社までに在留期限が到来してしまう方が,入社まで日本で引き続き滞在を希望する場合には,内定待機のための特定活動ビザに変更する必要があります。 本ページでは,内定待機のための特定活動ビザを見ていきましょう。 留学生の方は必見です。 2.内定待機のための特定活動ビザの要件 内定待機のための特定活動ビザが変更許可されるための要件は,以下の4つが挙げられます。 ①留学の在留資格,または就職活動のための特定活動の在留資格で在留していること ②就職先が内定し,内定後1年以内であって,かつ,卒業後1年6ヶ月以内に採用されること ③内定している企業等において従事する活動が「技術・人文知識・国際業務」等の就労に係るいずれかの在留資格への変更が認められるものであること ④在留中の一切の経費を支弁する能力を有すること 対象となる方が,②内定後1年以内であって,かつ,卒業後1年6ヶ月以内に採用される場合に限られていますので,内定後1年を超える日または卒業後1年6ヶ月を超える日以降に採用されることが決定している場合は,内定待機のための特定活動ビザの対象にはなりません。 また,内定待機のための特定活動ビザへの変更を希望する場合は,就職活動のための特定活動ビザの場合と異なり,卒業した学校からの推薦状は必要ありません。ただし,一定期間ごとに内定者と連絡をとること,内定を取り消した場合には出入国在留管理局に,遅滞なく連絡すること等を記載した内定先企業の誓約書を提出しなければなりません。 内定待機のための特定活動の申請を希望する場合は,あらかじめ内定先企業の合意を取り付けておくことをお勧めします。 なお,内定待機のための特定活動は,9月に卒業して,在学中に内定が決まっているものの,採用が翌年4月からという場合も対象になります。この場合は,留学ビザから内定待機のための特定活動ビザに変更することになります。 3.内定待機のための特定活動ビザはアルバイトできるの? 内定待機のための特定活動ビザで在留している間は,原則としてアルバイトが禁止されています。 しかし,留学ビザと同様に,資格外活動許可を取得すれば週28時間以内でアルバイトをすることができるようになります。 そのため,資格外活動許可を取得すれば,内定先企業で入社前インターンシップに参加することも可能になります。通常の資格外活動許可は週28時間ですが,インターンシップの内容を示す資料等を提出して個別の資格外活動許可を取得すれば,週28時間を超えるインターンシップに参加することもできるようになります。 4.内定待機のための特定活動ビザのまとめ 就職活動のための特定活動ビザも,内定待機のための特定活動ビザも,日本の企業で働きたいと希望する留学生は,有効に活用すべき在留資格です。また,2019年5月末から施行されたN1特定活動ビザは,留学生の就職を今まで以上に後押しするものと言えます。 誤った情報で将来を台無しにしないように,在留資格に関する情報は正確に理解することが重要です。日本で勉強した優秀な人材が,一人でも多く日本の社会で活躍してくれることを願ってやみません。…

【解決事例】資料提出通知書(追加資料の要求)が届いた時

1.はじめに 入管へビザ申請を行った後,「資料提出通知書」という書類が届くことがあります。 入管から資料提出通知書(追加資料の要求)が届いた場合,どのような書類を準備したらいいのか,説明文の書き方がわからないといったお悩みを抱えている方は多くいらっしゃると思います。今回は,その資料提出通知書についてご説明致します。 2.資料提出通知書とは? 資料提出通知書は,審査過程において不明点が発生した場合に,不明点を明らかにするために入管が求めるものです。例えば,提出した書類に不備がある場合,提出した書類では明らかとなっていない事項がある場合,提出した書類に疑義がある場合など,様々なケースが想定されます。 何もやましい事がなくても資料提出通知書が送られてくると,「不許可になるのではないか」,「何を提出したらいいのかわからない」,「求められた説明文をうまく作成できない」など,混乱してしまう方も少なくありません。 しかし,適切な対応をすれば許可の可能性は十分にありますので,まずは落ち着いて対応することが重要です。 3.資料提出通知書が届いた場合,どう対応すべきか? 資料提出通知書で求められる追加資料や説明文は,ビザ申請の許可・不許可を分ける重要な資料となります。そのため,入管からの追加資料・説明文の提出要求に対して,無視をしたり,適当な回答や的外れの回答を行うと不許可のリスクが非常に高まります。真摯に入管対応していれば許可となっていた可能性があったにもかかわらず,このような不誠実な対応で不許可となるのは非常にもったいないです。 当社においても,資料提出通知書の対処方法を間違えて不許可となってしまったという相談が多数ございます。そして,その多くが適切に対応をしていれば許可となっていたのではないかと想定されるケースです。また,不適切な対応をとってしまったがために不許可となったケースで再度申請するとなると,入管は不許可となった申請の資料を保管しているため,再申請にも悪影響を与えることになってしまいます。 このような不幸な事態を招かないためには,資料提出通知書が届いた場合に,慌てることなく,資料を求めている入管の意図を知ることに努めてください。この作業は,非常に高度な知識を要するため,ご自身での分析が困難と判断された場合には,早めにビザ申請の専門家に相談することをお勧めします。 4.資料提出通知書の提出期限 また,資料提出通知書には提出期限が設けられています。通常,2週間程度の期限が設けられているので,時間との勝負になります。仮に,期限内に追加資料を提出することができない場合には,すでに提出された書類のみで審査を完了する旨の記載がされています。そのため,提出期限の遵守についても意識をする必要があります。 もっとも,外国から資料を取り寄せなければならない場合や,求められた提出資料が期限内に作成できない場合などは,入管に事情を説明し,期限の延長を求める連絡をしてください。決して,連絡なしに資料提出通知書の提出期限を超過してはいけません。 5.資料提出通知書の対応の重要性 資料提出通知書を入管から受け取ると,追加資料提出までは入管での審査は通常ストップしています。資料提出通知書に基づき追加書類や説明文を入管に提出した後,審査が再開されます。しかし,提出した書類や説明文に更に不明な点や提出した書類に不備があった場合には,再度の資料提出通知書が送られてくることもあります。そのため,最初の資料提出通知書の対応は非常に重要です。 ただ,入管申請の専門家でない場合には,入管の担当審査官が求めている意図を理解し,その意図に沿った詳細な説明をし,説明に合致した証拠を提出することは困難を伴います。このような場合は,一人で悩まずにビザ申請に特化している行政書士に相談されることが解決までの一番の近道です。 6.今回の事例における対処方法 配偶者ビザの審査要領には,社会通念上の夫婦の共同生活を営むといえるためには,特別な理由がない限り,同居して生活していることを要すると記載があります。 夫婦としての共同生活の実体を判断する上で,同居の有無が重要な考慮事情となるとしても,今回の事例のように夫婦によって種々の事情があります。 今回の事例では,Bさんは中国に兄弟姉妹や頼れる親戚がおらず,Bさんしか父親の看病をする人がいませんでした。また,Bさんが中国に滞在中,夫のAさんは2,3週間に1度,Bさんが滞在する中国に渡り,Bさんの父親の看病をBさんと一緒にしていました。 そこで,お父様の入院記録,ご主人様の渡航歴を示す資料と共に,具体的な理由を記載した説明文を提出しました。通常の在留期間更新許可申請の審査期間に比べると,審査期間は長くかかりましたが,結果的に無事に更新許可を得ることができました。 7.さいごに 本ページでは,資料提出通知書についてご説明しました。 資料提出通知書で求められる提出書類や説明文は,ビザ申請の許可・不許可を分ける重要なポイントになります。 場合によっては,入管との行政交渉も必要とすることから,資料提出通知書で迷っているのであれば,ビザ専門の行政書士へ早期にご相談ください。入管申請の専門家である行政書士が,お客様の状況をヒアリングしたうえで,資料提出通知書に沿った書類提出をサポートいたします。…

【解決事例】交際期間が短い場合でも配偶者ビザ申請が許可される方法

1.国際結婚したから配偶者ビザが取得できるわけではない… 日本人と外国人が国際結婚した場合,必ず配偶者ビザは許可されるのでしょうか。 日本人側の権利だけを強調すれば,家族が離れ離れになるのは不利益であることから,当然に配偶者ビザは許可されるべきとも考えられます。 しかし,日本の入管政策は国境の壁をなくす“グローバル化”ではなく,国境の壁はそのままで,壁にある門を広げたり,増やしたりする“国際化”と言われるものです。そのため,日本人と国際結婚したからといって,外国人が無制限に日本に在留できるわけではありません。配偶者ビザの申請にあたっては「夫婦が日本で生活していく上で安定した経済基盤があるかどうか」「結婚が真実婚であるかどうか」という2つのポイントが厳しく審査されることになります。 つまり,国際結婚=配偶者ビザの許可ではないということです。 2.配偶者ビザ申請の入管審査において確認されること 先述のように,配偶者ビザ申請の入管審査に当たっては二つの大きなポイントがあります。1つが「夫婦が日本で生活していく上で安定した経済基盤があるかどうか」であり,もう1つが「結婚が真実婚であるかどうか」です。 それぞれのポイントについて,ご説明していきたいと思います。 1つ目のポイントは「夫婦が日本で生活していく上で安定した経済基盤があるかどうか」。 ご夫婦の生活が経済的に困窮する可能性がある場合には,配偶者ビザが不許可となる可能性が高くなります。そのため,日本で安定した夫婦生活を送るに足る収入や資産が必要とされています。 そしてもう1つのポイントである「結婚が真実婚であるかどうか」。真実婚とは,ご夫婦が同居し,お互いを扶助し,協力し合う意思をもって結婚をしているかという事です。 しかし,真実婚の立証は容易ではありません。なぜなら,それは内心に関わることだからです。そのため,真実婚の立証については,客観的な証拠が重要になります。 3.配偶者ビザ申請のポイントとなる “交際期間”について さて,皆さんに問題です。甲さんと乙さんが国際結婚しました。この人たちは真実婚でしょうか? 突然このように問われた場合,まず間違いなく,「甲さんと乙さんはどのような人で,どのように付き合って,どのように国際結婚に至ったのか知らないからわからない。」とお答えになると思います。 自信満々に真実婚だ,と言える人は当事者と付き合いの長い友人くらいで,見ず知らずの人の国際結婚について,真実婚かどうかを判別する事は不可能です。ですが,この夫婦が3年に亘る交際の末,国際結婚したという事情を付け加えるとどうでしょう。なんとなく真実婚であるような気がしませんか? では,甲さんと乙さんが知り合ってから1ヶ月で国際結婚したという場合はどうでしょうか。付き合っている期間が短いことから,離婚する確率や偽装結婚である可能性が高いように感じないでしょうか。 みなさんが上記の二つの例の比較で感じたことは,入管審査においても同じように感じるはずです。このように,その国際結婚が真実婚であるかどうかを審査するにあたり,まず入管がチェックするのが交際期間の長短です。交際期間は婚姻の実体を示す分かり易い物差しとなるのです。 4.配偶者ビザ申請する際に交際期間が長い事のメリットと短い事のデメリット 配偶者ビザ申請する際,交際期間が長い場合には,それ自体が有利に働く事実になります。また,交際期間が長いという事は他にもメリットがあります。というのも,交際期間が長ければ夫婦で撮影した写真やメールなど,お二人の交際の事実を証明する資料が多く残っており,交際の実体を入管に証明しやすいのです。 他方,交際期間が短い場合,交際の事実を示す証拠も少なくなるのが通常です。そのため,真実婚であるかどうかを入管に説明する際には,多方面から証明する必要が出てきます。 とはいえ,交際期間が短いから審査で不利になりそうだと考え,実際よりもずっと前から交際をしていたなどと話を捏造したりすることは言語道断です。物語として上手に書け,誤魔化せていると思っていても,入管審査ではまず間違いなく見抜かれ,配偶者ビザが不許可になってしまうという悲惨な結果が待っています。仮に捏造した箇所以外はすべて真実だとしても,その真偽も全て疑われて不許可なってしまいますので,真実に反する書面を提出することは絶対にやめてください。 確かに,配偶者ビザ申請の入管審査において,交際期間が短いことはデメリットではあります。しかし,必ず配偶者ビザ申請が不許可になるわけではありません。自分たちの交際を振り返り,交際の実体を示せるものを準備することが出来れば,交際期間が短くても配偶者ビザが許可されている事例はたくさんあります。 5.交際期間が短い場合以外に配偶者ビザの審査が厳しくなる要素とは? 交際期間が短いこと以外にも,配偶者ビザの入管審査が厳しくなりがちなケースがあります。下記の例はいずれも偽装婚などの犯罪に利用されたために,入管も慎重に審査するようになっています。 例えば,日本人側に離婚歴が多い場合は審査が厳しくなりがちです。 日本人が外国人の方と国際結婚し,その外国人配偶者が入国して暫くして離婚し,また別の外国人の方と婚姻する。このような偽装婚を繰り返し,外国人を多数入国させたケースがかつては見られたため,日本人側に離婚歴が多いと審査が厳しくみられる傾向にあります。 他には,出会い系サイトや結婚相談所で外国人配偶者と出会ったというケースにおいても,審査が厳しくなる傾向にあります。とりわけ年齢差が大きいと,本当にお互いに愛し合っているのだろうか,営利目的の偽装婚ではないだろうか,単に日本で働きたいために日本人を騙しているのではないだろうかなどと,入管は慎重に審査をします。 しかしながら,上記のケースに当たっているとしても,しっかりと愛し合って婚姻に至ったのであれば,隠したり嘘をついたりするのではなく,出会いの経緯を正直に伝えるべきです。たとえ入管審査が厳しくなる要素があったとしても,交際の実体を示す証拠を多角的に集め,しっかりと真実婚を証明できれば,配偶者ビザを取得することは不可能ではありません。 6.配偶者ビザ申請で交際期間が短い場合のまとめ お二人が大恋愛の末に結婚されたのであれば,間違いなく婚姻の実体はあるはずです。交際の実体をしっかり入管の審査官に伝わるように書類を準備する事ができれば,配偶者ビザの許可の可能性は高まります。 交際の実体を証明するためにどんな資料が必要で,その資料をもってどのように証明しようとしているのか,戦略をしっかりと考えた上で資料を準備するようにしてください。 人の恋愛は十人十色,千差万別です。結婚に至るまでの男女の仲においては様々な事があり,数々の思い出があると思います。意外なものが交際の実体を示す証拠になったりします。 交際期間が短いから,交際の実体の証明がまだ無理だろうと諦め,愛する方と遠距離恋愛を続けると決めるのは早計です。 今回のご相談のケースにおいても,出会いはインターネット上であり,また東京と大阪の遠距離恋愛であったこともあり,結婚に至るまでお二人が会った回数は多くありませんでした。交際期間も3ヶ月と決して長くはありませんでした。 そのため,Aさんの配偶者ビザ申請にあたり,ご夫婦の交際の実体をしっかりと示す必要がありました。交際経緯については時系列に沿って詳しくお話を伺い,それに対応したお二人の写真も準備してもらいました。また,インターネット上でやりとりをしていたため,大量の通信履歴も残っていました。そこで,交際経緯と写真,通信履歴をリンクさせ,お二人が知り合い,交際に発展し,結婚に至るまでの流れをフィードバックできるような資料を準備しました。 詳細にヒアリングをし,それに沿ってどのような資料が存在するかを検証し,事実と証拠を綿密につなぎ合わせていった結果,無事にAさんは留学から配偶者ビザへの在留資格変更許可を受けました。その後,お二人の間にはお子様が生まれ,現在ご夫婦は大阪で幸せにお子様と共に暮らされております。 一般的には,何が交際の実体を示せる証拠になるかわからないことが多いと思います。 私たちの経験でも,ヒアリングを進める上で,思わぬ書類がご夫婦の交際実体を示す有益な資料になったこともしばしばございます。また,直接的な事実のみならず,間接的な事実の積み上げによって,交際期間が短くとも交際実体の立証に成功した事例もあります。…

【解決事例】経営管理ビザを持つ外国人が家事使用人を呼ぶ方法

1.はじめに 近頃は,益々グローバル化が加速し,日本法人の代表者が外国人というケースも珍しいものではなくなりつつあります。 今回は,経営管理ビザを持つ外国人経営者が,家事使用人(いわゆる家政婦さん)を本国から招へいする手続きについて解説していきます。 家事使用人の活動内容に該当するビザは,法務大臣が個々に活動を指定する特定活動ビザになります。 特定活動ビザとは,他の在留資格に該当しない活動の受け皿として,法務大臣が個々の外国人について活動を指定するという在留資格です。 雇用主の在留資格が「外交・公用」,「経営・管理」,「法律・会計業務」,「高度専門職」の4つのいずれかに該当する場合,個人的使用人として雇用されている家事使用人に対して,特定活動ビザが認められています。 注意が必要なのは,家事使用人に在留資格が認められるための要件は,上記4つの在留資格によって異なるということです。 本ページでは,経営管理ビザを持つ外国人経営者が雇用する家事使用人の要件を確認していきます。 2.経営管理ビザに雇用される家事使用人の要件とは? 経営・管理ビザを有する外国人が雇用する家事使用人に在留資格が認められるには,以下の7つの要件を満たす必要があります。 ①経営・管理の在留資格をもって在留する雇用主が,事業所の長又はこれに準ずる地位にある者であること ②申請の時点において,雇用主が13歳未満の子又は病気等により日常の家事に従事することができない配偶者を有していること ③当該外国人が雇用できる家事使用人は在留資格を求める1名のみであり,18歳以上であること ④雇用主が使用する言語により日常会話を行うことができること ⑤家事使用人は個人的使用人として雇用されていること ⑥家事使用人が月額20万円以上の報酬を受けていること ⑦雇用主の家事に従事する活動を行うこと ①の「事業所等の長又はこれに準ずる地位にある者」という意味については,地位の名称・肩書きといった形式によって判断されるのではなく,事業所等の規模,形態,業種,報酬額及び事業所等における権限等を考慮し,総合的に判断されます。例えば,代表者でなくても,代表者から直接指示を受けている場合や,一般職員と異なり権限の範囲が広く,所属部署自体が独立しているような場合については,本要件に該当する可能性があります。 ②の「申請の時点において」とは,上陸許可申請の時点を指します。したがって,例えばビザ取得後に在留期間満了を迎えるに際して在留期間更新許可の申請を行った時点で,雇用主の子が13歳に達していた場合であっても,指定された活動に変更が生じたことにはなりません。 ただし,これは同一の雇用主に雇用される場合の取り扱いであり,雇用主が変更になった場合には,新たな雇用主との契約に基づいて在留期間更新等の申請を行った時が「申請の時点」となるので注意が必要です。 ③当該外国人が雇用している家事使用人は,在留資格を求める1名のみであることが要件となっています。他に家事使用人を雇っている場合は,常勤,非常勤,日本人,外国人を問わず,家事使用人を呼び寄せることは出来ません。 ④雇用主が使用する言語により日常会話を行うことができることの要件については,通常雇用主と家事使用人の国籍が同一である場合には特別な立証資料は必要ありません。雇用主と家事使用人の母語が異なる場合には,どのようにしてその言語を習得したかを立証する資料が求められます。 ⑤家事使用人は個人的使用人として雇用されていること,⑥家事使用人が月額20万円以上の報酬を受けていること,⑦雇用主の家事に従事する活動を行うことの立証資料については,雇用主との契約書の写し等を提出します。本国での雇用条件を変更しなければならない場合も少なくありません。申請前に雇用契約の内容をチェックする必要があります。 また,⑤,⑥要件との関係上,雇用主に家事使用人の報酬を支払えるだけの資力があることの立証を求められることもあります。 3.家事使用人の招へいまでの道のり Aさんは中国法人の子会社の代表取締役として来日していますので,①経営・管理の在留資格をもって在留する雇用主が,事業所の長又はこれに準ずる地位にある者であることの要件を満たします。また,娘Cちゃんは現在6歳ですので,②上陸申請の時点において,雇用主が13歳未満の子を有するという要件も満たします。 Dさんは中国でAさん夫婦の家事使用人をしていたため,日常会話の言語能力に問題はなく(要件④),来日後は唯一の家事使用人として雇用主の家事に従事する予定です(要件③,⑤,⑦)。 問題となる要件は,⑥家事使用人が月額20万円以上の報酬を受けていることです。 Dさんの場合,本国においては,要件⑥の水準に満たない給与で家事使用人として雇用されていましたが,告示の規定をAさんに示し,日本で雇用する間は契約内容を改定しました。 その結果,Dさんは無事に家事使用人として特定活動ビザを得ることができました。 4.経営管理ビザを持つ外国人が家事使用人を呼ぶ方法のまとめ これまでに見てきたように,経営管理ビザを持つ雇用主が,仕事の多忙や子どもの世話を理由に,本国で雇用していた家事使用人を帯同することは可能です。 本国で雇用していた家事使用人と一緒に来日することができれば,来日後の雇用主の活動範囲は大いに広がるでしょう。本国で雇用していた家事使用人の雇用契約の内容等については,変更の必要がある場合もありますので,その点には注意が必要です。 経営管理ビザをお持ちの外国人の方で家事使用人を招へいされたい方は,ぜひ当社までお問い合わせ下さい。…