2020.04.01 松原 桃子 帰化届出書日本語帰化申請帰化後の手続き帰化後の届出国籍喪失 帰化許可後の手続き 1.帰化許可後の手続きについて 帰化が許可され日本国籍を取得した場合,帰化後には様々な手続きが必要になります。帰化が許可されると,法務局から身分証明書が交付され,市区町村役場への帰化届出や各種名義変更等,行わなければならない手続きが数多くあります。 以下においては,帰化許可後に必ずしなければならない手続きをご紹介します。 Ⅰ.市区町村役場への帰化届の提出 帰化が許可されると,官報に氏名と住所が掲載されます。その後,2週間程度で法務局から許可の連絡があり,法務局で「帰化者の身分証明書」が交付されます。これを帰化許可申請時に本籍地とした地を管轄する市区町村役場に,帰化届と一緒に提出してください。帰化届を提出する事で,戸籍が編製されます。 帰化届を提出する上で,気を付けなければならない点が提出期限です。帰化届は,官報掲載日から掲載日を含めて1ヶ月以内に提出しなければなりません。 帰化届の提出に必要な書類は以下の通りです。 ・帰化届書 ⇒日本人の配偶者がいる場合は,配偶者の署名・捺印が必要となります。 ・届出人の印章(ハンコ) ⇒日本人の配偶者がいる場合は,配偶者の印章も必要です。 ・帰化者の身分証明書 ⇒法務局から交付されます。 上記の必要書類は一般的なものになりますので,実際に帰化届を提出される場合は,管轄の市区町村役場へ事前に確認してください。 Ⅱ.在留カードもしくは特別永住者証明書の返納 帰化許可により日本国籍を取得した時点で,外国人ではなくなります。住所地を管轄する地方出入国在留管理局に在留カードを返納してください。特別永住者の場合は,市区町村役場に特別永住者証明書を返納してください。 なお,在留カードまたは特別永住者証明書の返納は,身分証明書の交付から14日以内に行わなければなりません。帰化届の提出期限よりも短いので,身分証明書が交付されてから速やかに返納するようにしましょう。 上記2つの手続きは帰化許可後,必ず行う手続きになります。 そのため,期限内に手続きを行わなければ,罰金刑を科されることがありますので,期限には十分に注意して手続きを行いましょう。 2.国籍による手続きの違いについて 帰化届の提出,在留カードまたは特別永住者証明書の返納以外にも,本国の国籍離脱の手続きを行う必要がある場合があります。 本国の国籍離脱手続きは国によって様々ですので,大使館または領事館に国籍離脱方法を事前に確認する必要があります。 以下では,帰化許可申請の主要国である韓国と中国の国籍離脱手続きをご紹介します。 【韓国の場合】 韓国の法律上,韓国の国籍を喪失した者は,法務部長官へ国籍喪失届を提出しなければならないと定められています。 具体的には,在日韓国大使館または総領事館へ国籍喪失届を提出します。国籍喪失届を提出しないまま放っておくと,韓国の登録簿に依然として韓国籍のまま記載が残ったままになり,相続等の際に大きな支障が生じることになります。 【中国の場合】 中国の場合は,帰化許可申請時に国籍証明書を法務局へ提出し,中国国籍の離脱意思があることを法務局に提出します。 国籍証明書は,管轄の在日中国大使館または領事館に,退出中華人民共和国国籍証書を申請して手に入れることができます。 中国は中国国籍法第9条で,「外国に定住している中国公民で,自己の意思によって外国の国籍に入籍し又は取得した者は自動的に中国国籍を失う。」と定めています。 つまり,中国も日本と同様に二重国籍を認めておらず,中国以外の国籍を取得した時点で自動的に中国国籍を失うことになります。 自動的に中国国籍を失うということは,国籍証明書以外の手続きは行わなくて良いのか?というとそういう訳ではありません。以前は国籍証明書を取得した時点で中国旅券(パスポート)が失効する扱いになっていましたが,平成28年5月以降から,国籍証明書を発行しても中国旅券(パスポート)は失効しなくなりました。つまり,帰化許可申請後も中国旅券を使用することが可能になりました。 これに伴って,帰化許可を取得した方は,中国旅券の失効手続きを行わなければならなくなりました。また,中国旅券の失効手続きと一緒に,中国国籍を離脱した報告を行うことで,中国側へ日本国籍を有していることを示すことになります。 このように,中国国籍の方の国籍離脱は平成28年以降から手続きが変わっていますので,注意してください。 3.帰化不許可時の対応について 次は,帰化許可申請の不許可時の対応をご紹介します。 実は,帰化許可申請の不許可は,あまり想定されていません。何故かと言うと,帰化の許可要件に適合しない事項があれば,「申請が受理されない」か「申請後に申請取り下げ」を法務局から指示されるからです。帰化許可申請は,審査に辿り着くまでの申請を事前に絞っているため,帰化許可申請の許可率は,入管での永住許可申請に比べると非常に高くなっています。 しかし,帰化許可申請後の審査中に,長期出国,交通事故および刑事犯罪などで消極的事由があるために,不許可になるケースもあります。 また,不許可理由の中で最も懸念されるのは,申請内容と実態との間に齟齬があった場合です。この場合は,もちろん今回の帰化許可申請は不許可処分となり,次回以降の帰化許可申請を検討するときも,書類審査のハードルが上がりますので,実態との齟齬のある申請は絶対に行わないようにしましょう。 また,帰化許可申請の不許可は,申請人の自宅への不許可通知書の郵送によって通知されます。…
2020.03.18 渡邉 直斗 企業内転勤ビザ外国人材の雇用Q&A必要書類日本語就労ビザ 企業内転勤ビザとは?必要書類や活動内容,許可要件などを解説! 1.企業内転勤ビザに該当する範囲は? (1)企業内転勤ビザにより行うことができる活動内容 企業内転勤ビザにより行うことができる活動内容は,技術・人文知識・国際業務ビザの活動内容と同じです。 転勤者であれば,入管法に定めの無い法定外業務も従事できると勘違いされている方が多い印象ですが,企業内転勤ビザの活動内容には制限があります。 仮に,企業内転勤ビザのルールを知らずに,法定外業務に就かせると,企業は不法就労の罪に問われ,勤務している外国人は,資格外活動罪に問われてしまう可能性があります。 とても重要なことですので,下記コラムをご参照ください。 ・知らなかったでは通用しない不法就労助長罪とは? ・法定外活動の際に問われる資格外活動罪とは? (2)入管法の解説 (2)では,企業内転勤ビザの入管法の規定を,次の(3)では,企業内転勤ビザの上陸許可基準省令の規定をそれぞれ解説していきます。 内容的には,少し難しい内容です。 本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動 ア.「本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関」とは? 民間企業のみならず,公社,独立行政法人およびその他の団体(JETRO,経団連等)が含まれます。 外国の政府関係機関または外国の地方公共団体(地方政府を含みます。)の関係機関も含まれます。 ただし,外国の政府関係機関の場合に当該機関における活動が「外交」または「公用」の在留資格に該当するときは,企業内転勤ビザではなく,外交ビザか公用ビザが付与されることになります。 イ.「転勤」とは? 「転勤」は日常用語では,同一社内の異動を指すことが多いですが,企業内転勤ビザの「転勤」は,系列企業内の出向等も含まれます。 ここでいう「系列企業内」とは,財務諸表等の用語,様式および作成方法に関する規則(以下「財務諸表規則」といいます。)第8条にいう「親会社」,「子会社」,および「関連会社」を意味します。 財務諸表規則第8条の「親会社」,「子会社」,または「関連会社」にあたらない,単なる業務提携関係では,企業内転勤ビザは取得できませんので注意してください。 (3)上陸許可基準省令の解説 企業内転勤ビザは,在留資格該当性に加え,上陸許可基準適合性も求められる在留資格です。 上陸許可基準省令によれば,申請人が次のいずれにも該当していることとされています。 【上陸許可基準省令】 一 申請に係る転勤の直前に外国にある本店,支店その他の事業所において法別表第1の2の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる業務に従事している場合で,その期間(企業内転勤の在留資格をもって外国に当該事業所のある公私の機関の本邦にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には,当該期間を合算した期間)が継続して1年以上あること。 二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。 転勤前の業務は,「技術・人文知識・国際業務」の項の下欄に掲げる業務であれば足り,転勤後,日本において従事する業務と同一または関連する業務であることまでは必要ではありません。 また,申請人が日本の本店,支店その他の事業所に転勤する直前に1年以上継続して勤務していたことが必要です。 ただし,直前の1年以内に外国の事業所等から転勤して日本にある事業所に企業内転勤ビザで在留していた期間がある場合は,その期間を含めることができます。 なお,「技術・人文知識・国際業務」の上陸許可基準で要求される学歴要件や実務要件は要求されていませんので,大卒者でない方や実務経験が浅い方でも企業内転勤ビザの対象になります。 報酬の支払主体については,企業内転勤ビザは「技術・人文知識・国際業務」のように雇用契約の締結主体に限定されません。 例えば,基本給は外国の本社が支払い,それに加えて,日本にある支社が住居費等の生活に伴う各種手当をいくらか補完して支払うという場合でも,その合計額が「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」であれば,企業内転勤ビザは許可されています。 2.企業内転勤ビザを申請する場合の必要書類 企業内転勤ビザを申請する場合の必要書類は以下のとおりです。 下記に入管のホームページを記載しています。 なお,企業内転勤ビザのカテゴリーは,就労ビザのカテゴリーによって提出書類が変わる!? に記載していますので,ご確認ください。…
2020.03.17 藤澤 勇來 日本人の配偶者等簡易帰化元日本人日本人の子日本生まれ縁組未成年日本語帰化申請 簡易帰化および大帰化について 1.簡易帰化について 簡易帰化とは,一定の身分や条件を満たす場合に,帰化許可の7つの要件(ここでは「普通帰化」と定義します。)が一部緩和される申請を指します。 つまり,該当する条件によりますが,一定の身分や条件を満たす場合には普通帰化の7つの要件を全て満たさなくても帰化許可される可能性があります。 簡易帰化は申請人のそれぞれの身分や条件によって,緩和される要件が異なりますので,自分がどの身分や条件を満たしているのかを確認し,同時にどの要件が緩和されるのかを把握する必要があります。 簡易帰化には9つのパターンがありますので,それぞれの要件を順に確認していきましょう。 Ⅰ.住所要件のみ緩和される場合 a.日本国民であった者の子(養子を除く)で,引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者 ⇒もともと日本国籍を有していた方が,再度日本国籍を取得する場合は,本来5年以上日本に住所又は居所を有しなければならないところ,これが3年以上に緩和されます。 b.日本で生まれた者で3年以上日本に住所又は居所を有し又はその父もしくは母(養父母を除く)が日本で生まれた者 ⇒特別永住者の方がこの条件に該当するケースが多いです。 この場合も,5年以上の住所要件が緩和され,3年以上に緩和されます。 c.引き続き10年以上日本に居所を有する者 ⇒特別永住者,永住者および留学から日本に引き続き在留している方がこの条件に該当するケースが多いです。 また,普通帰化の場合は,5年以上の日本在留のうち3年間以上の就労が必要ですが,引き続き日本に10年以上在留している場合は1年以上の就労で住所要件を満たすことになります。 <ポイント> 簡易帰化では,住所と居所の使い分けがあります。 住所とは,日本で生活の本拠を意味し,原則3ヶ月を超えて在留する外国人には住所を届け出る義務があります。 居所とは,生活の本拠ではないものの,人がある期間継続して滞在する場所をいいます。短期滞在者等の日本における居所がこれにあたります。 Ⅱ.住所要件および能力要件を緩和 d.日本国民の配偶者たる外国人で,引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し,かつ,現に日本に住所を有する者 ⇒日本人と婚姻関係にある方が該当します。 また,ここでのポイントは,日本人配偶者との婚姻期間は必ずしも3年以上必要ではないということです。つまり,日本に3年以上住んでいた方が日本人と結婚した時点で,この要件に該当するということです。 この要件に該当する場合,住所要件に加えて能力要件が緩和され,20歳未満であっても帰化許可申請を行うことができます。 e.日本人の配偶者で婚姻から3年以上経過し,かつ,1年以上日本に住所を有する者 ⇒日本人と結婚をして,海外で2年以上夫婦生活を送ったあと,日本に生活の本拠を移し,1年以上日本人配偶者と共に生活を送った場合にこの要件に該当します。 この要件に該当する場合にも,住所要件に加えて能力要件が緩和され,20歳未満であっても帰化許可申請を行うことができます。 Ⅲ.住所要件,能力要件および生計要件を緩和 f.日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者 ⇒父又は母が先に帰化許可申請を行い日本国籍に帰化をして,その後子が帰化許可申請をする場合が該当します。 また,国際結婚を経た両親(日本人と日本以外の国籍者)の子で,国籍選択のときに日本国籍を選択しなかったが,後に帰化する場合も該当します。 この要件に該当する場合は,日本に住所を有する年数は問われず,能力要件および生計要件も緩和されます。 g.日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し,かつ,縁組の時本国法により未成年であった者 ⇒親が日本人と結婚し,未成年の当時に継父母と養子縁組をした連れ子が該当します。 この場合,引き続き1年以上日本に住所を有し,かつ,縁組の時に未成年であれば要件を満たすことになります。 h.日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有する者 ⇒元は日本人だったものの日本国籍を喪失した方が,再度日本国籍を取得する場合はこの要件に該当します。 ただし,一度帰化を行い日本国籍の取得をしている者が,日本国籍を喪失後に更にもう一度帰化許可申請を行う場合は,この要件に該当しません。 i.日本で生まれ,かつ,出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者 ⇒日本で生まれ,何らかの理由により無国籍の状態になっている方が,出生から引き続き3年以上日本で住所を有している場合に該当します。 以上が簡易帰化の9つの類型になります。…
2020.03.16 渡邉 直斗 オーバーステイ仮放免許可入管収容日本語 仮放免許可申請とは? 1.仮放免とは? 仮放免とは,収容令書又は退去強制令書によって収容されている外国人について,請求又は職権によって一時的に収容を停止し,身柄の拘束を仮に解く措置のことをいいます。 刑事事件における「保釈」をイメージして下さい。 入管法第54条には,以下のとおり定められています。 (1)収容令書若しくは退去強制令書の発付を受けて収容されている者又はその者の代理人,保佐人,配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹は,法務省令で定める手続により,入国者収容所長又は主任審査官に対し,その者の仮放免を請求することができる。 (2)入国者収容所長又は主任審査官は,前項の請求により又は職権で,法務省令で定めるところにより,収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格,資産等を考慮して,三百万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させ,かつ,住居及び行動範囲の制限,呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して,その者を仮放免することができる。 (3)入国者収容所長又は主任審査官は,適当と認めるときは,収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者以外の者の差し出した保証書をもつて保証金に代えることを許すことができる。保証書には,保証金額及びいつでもその保証金を納付する旨を記載しなければならない。 下記,順にみていきましょう。 2.仮放免許可申請を出来る人は? 仮放免許可申請を出来るのは,下記の方々です。 ①収容されている外国人本人 ②収容されている外国人の代理人 ③収容されている外国人の保佐人 ④収容されている外国人の配偶者 ⑤収容されている外国人の親や子などの直系親族 ⑥収容されている外国人の兄弟姉妹 3.仮放免許可申請の必要書類 仮放免許可申請を行う局面は,収容令書によって収容されている場合の他,退去強制令書によって収容されている場合があります。 前者は,収令仮放免や退令前仮放免と呼ばれ,後者は退令仮放免と呼ばれます。 それぞれの局面により,仮放免許可申請に添付する書類は異なります。 そのため,本ページでは一般的な必要書類を記載しています。 ①仮放免許可申請書(別記第六十六号様式(第四十九条関係)) ②仮放免許可理由書 ③身元保証書 ④誓約書(身元保証人用) ⑤誓約書(被収容者用) ⑥身元保証人の住民票(本籍地記載,マイナンバーの記載がないもの) ⑦身元保証人の収入関係証明(EX:在職証明書,課税証明書など) ⑧委任状(代理人が申請をする場合) その他に提出する書面としては, ・収容場では治療困難な病気を患っていることを示す資料 ・ご家族の状況によって収容困難であることを示す資料 などが考えられます。 また,退令前仮放免の場合には, ・在留特別許可が認められる可能性が高いことを示す資料 退令仮放免の場合には, ・長期収容により心身が疲弊していることを示す資料 なども有効な提出資料の一つです。 4.仮放免の許可要件 実は入管法には,仮放免許可の要件についての定めはありません。入管のホームページにも,…
2020.03.13 德永 武道 永住ビザ永住権よくある質問日本語 日本の永住権は難しい?永住ビザ申請についてよくあるご質問 Q1.転職が多いのですが,永住権を取得するのは難しいですか。 A1.転職回数は,永住ビザ申請の結果に影響を与える可能性があります。例えば,転職が多い場合は,再就職までの期間を検証する必要があります。たとえ就労ビザの保有期間が5年を経過したとしていても,5年の期間に転職活動の期間を含んでいる時には注意を要します。また,転職してから安定的な就労状況にあるかという点も永住権では審査されます。転職してから時間が経過していない場合には,安定性がないとして永住権の申請が不許可になってしまうリスクがあると言えるでしょう。 Q2.貯金はどれくらいあれば,永住権の申請で有利になりますか。 A2.永住権の審査において,貯金額の基準は定められていません。そのため,貯金がいくらあるから永住権が許可されるというわけではないのです。 上記に関連してご説明すると,入管実務では,実は貯金額よりも年収の方が重視されています。もっとも,就労ビザで勤務する中で,所得に応じた貯金を形成している事実は,生活状況,経済基盤の安定性を示すものとして,永住権の審査上,積極的な一事情に数えられます。 Q3.家族滞在ビザを持っている配偶者や子供も一緒に永住ビザ申請した方が良いですか。 A3.配偶者やお子様が永住権の要件を満たしているようであれば,一緒に永住権の申請をするのが良いでしょう。仮に,何らかの理由があり,単独で永住権を取得した場合には,配偶者やお子様は,永住者の配偶者ビザや定住者ビザに変更をする必要があります(詳細は【解決事例】夫が永住ビザを取得したら妻の家族滞在ビザはどうなる? をご覧ください。)。別々に申請すると,ビザの申請回数が増え,申請毎にそれぞれ書類を用意しなければなりません。やはり,永住権の要件を満たしているのであれば,家族一緒に永住権の申請をするほうが手続上のメリットがあるといえるでしょう。 Q4.交通違反を何度かしてしまいました…。永住権を取得するのは難しいですか。 A4.まずは,交通違反の度合いを検証する必要があります。1,2回程度の軽微な違反であれば,永住権の申請に大きく影響することはないといってよいでしょう。しかし,繰り返し交通違反を行っている場合は,永住権の審査に影響する可能性があります。 なお,交通違反をしてしまって罰金を支払った経歴のある方は,罰金を支払った日から5年を経過しなければ永住許可が認められない可能性が高くなります。 いずれにしても,永住権の審査の如何に関わらず,日頃より安全運転を心掛けることは重要です。 Q5.これまで年金を払ったことがありません。今から年金を払って永住権は取得できますか。 A5.国民年金は,最大25ヶ月間を遡って支払うことができます。入管局によって取扱いが多少異なりますが,過去2年内に支払遅延や未払いがある場合には,永住権が許可される可能性は非常に低くなります。 上記の交通違反のお話と同様に,永住権の審査に関わらず,年金の支払いは公的義務の一つであるため,期限までに支払うことが永住権の許可への近道であることは間違いありません。 Q6.私は仕事の都合で日本を出国することが多いのですが,永住権を取得することはできませんか。 A6.日本からの出国日数が多い場合には,永住権の審査に影響があります。ただし,理由を問わず出国の事実がマイナスに影響するわけではありません。出国の理由を明らかにし,出国理由が合理的なもので,出国の頻度や期間が相当である事を説明するようにしましょう。 実際,当社の事例でも,仕事の都合で1年の半分以上を日本から出国していたケースで,永住権の許可を取得できた案件もございます。 そのため,合理的な出国であることが立証できるケースでは,永住権の許可の可能性はあると判断されます。 Q7.永住権の申請の身元保証人は,収入が少ない人でも大丈夫ですか。 A7.身元保証人の責任からして,理論的には身元保証人世帯が生活するに足る収入+αの収入が必要と言えます。もっとも,身元保証人の年収が低いことで永住権の申請が不許可になる事案は,当社の過去の事例ではありません。 比較として,永住権の身元保証人がいない場合にはどうでしょうか。 この場合には,永住権を取得することはできないと判断されます。 あまり重視されてないと思われる永住権の申請における身元保証人ですが,やはり日本で永住するにあたって,身元保証人は必要と考えられています。なぜなら,身元保証人を誰にもお願いできないとなると,日本の社会に馴染めていないと判断されてしまうからです。 上記の内容をまとめると,永住権の申請における身元保証人は必要であるものの,それほど高いハードルがあるわけではなく,定期的な収入がある方であれば,身元保証人として適格ありと判断して良いでしょう。 Q8.永住ビザ申請の身元保証人には,どのような責任がありますか。 A8.永住許可申請時の身元保証人は,以下の3点を保証することになります。 ①滞在費 ②帰国旅費 ③法令の遵守 身元保証人の保証責任は法的拘束力がなく,道義的責任であると考えられています。 仮に身元保証をした外国人が滞在費や帰国旅費の準備が出来ない場合でも,身元保証人が代わりに支払うことを求められるわけではなく,直ちに法的な責任追及をされるわけではありません。ここでいう身元保証は,民法上の身元保証契約を指しているわけではなく,在留制度独自のものと解釈されています。 永住ビザの身元保証人の詳細については,永住ビザの身元保証人とは でもご説明しておりますので,ご興味のある方はご覧ください。 Q9.過去の永住権の申請の不許可は,再申請の永住権の申請に影響しますか。 A9.虚偽の内容や事実に相違がある書類を入管へ提出していないのであれば,過去の永住権の申請の不許可が影響することは通常ありません。 もっとも,不許可理由を何らリカバーしないままでは,何度永住権の申請をしても結論は変わりません。そのため,永住権が不許可になった場合には,不許可理由の確認はもとより,不許可となった原因への対応が重要となります。 詳細は,…
2020.03.08 依田 隼弥 配偶者ビザ結婚ビザ国際結婚日本人の配偶者等留学生日本語 【解決事例】留学生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法 1.増加する留学生との国際結婚 2008年,当時日本の首相であった福田康夫氏が「留学生30万人計画」を発表し,目標の2020年より前倒しで目標達成を果たすほど,留学生の増加は顕著です。そして,留学生の増加に伴い,留学生と国際結婚をされる方も増えています。 本記事は,増加傾向にある留学生との国際結婚をした事案ですが,今回の事案で特に注意すべきポイントを中心に以下で見ていきます。 2.配偶者ビザに変更前にチェック!留学ビザとは? 留学ビザは,簡単に説明すると「本邦の指定する教育機関において教育を受ける活動」をするためのビザです。つまり,教育を受ける活動をしていなければ,留学ビザの要件には適合しないと判断されます。 留学ビザから他のビザに変更する際にも,留学ビザに該当する活動を行っていたかを審査されます。そのため,留学ビザから配偶者ビザへの変更申請を進めていく上で,一方配偶者である留学生がしっかり教育を受ける活動をしているかどうかを判断することは非常に重要です。 では,出入国在留管理局では「教育を受ける活動」をどういう視点で見ているのでしょうか。 3.留学ビザの時の出席率や成績,アルバイトも配偶者ビザ変更に関係がある 留学ビザの際に特に問題になりやすいのは, ①出席率 ②成績 ③アルバイト 以上の3点です。 留学生が学校に行っていない場合や留年をしている場合には,留学ビザから配偶者ビザへの変更申請の際,「単に日本に残るために,結婚したのではないか。」,「学校を辞めて日本で働きたいから配偶者ビザへ変更するのではないか。」と嫌疑を抱かれる可能性があります。 そのため当社では,進級あるいは卒業に必要な単位数と現在の単位数を照らし合わせ,検証をすることにしています。場合によっては,出席証明書や成績証明書に加えて,成績不良についての経緯説明書を添付し,事情を説明することもあります。 ①の出席率,②の成績については,一見すると配偶者ビザと直接関係がないように感じますが,留学ビザから配偶者ビザへ変更申請をする際には,欠かすことの出来ないポイントの一つになります。 次に,最近の傾向で重視されている点が③のアルバイトです。 留学生にとって,アルバイトは学費や生活費を得るための手段として認識されています。 もっとも,アルバイトに夢中になり,学業が疎かになってしまっては本末転倒です。そこで入管法では,留学生が学業とアルバイトの両立を図れるように,アルバイトに一定の制約を設けています。 実は留学ビザは,原則就労活動が認められていません。資格外活動許可を取得した場合に限り,法定時間内(原則週28時間以内)においてアルバイトに従事することを認められているに過ぎません。 それにも拘わらず,資格外活動許可を受けずにアルバイトをしている事例,資格外活動許可は受けてはいるものの,大幅に法定時間を超過してアルバイトをしている事例が散見されます。 そのため入管審査においても,資格外活動許可を得ていること,アルバイトの法定時間を遵守していることは,留学ビザから配偶者ビザへ変更申請する局面において注視されています。 4.計画的に進める必要あり!留学ビザから配偶者ビザへの変更のポイント さらに,留学ビザから配偶者ビザへの変更の場合,気を付けなければならないポイントがあります。 それは,教育機関に在籍しているかどうかという点です。既に学校を退学してしまい教育機関に在籍していない状態が一定期間続いていると,配偶者ビザの審査が厳しくなってしまいます。 上記の内容は,入管法第22条の4に定める在留資格の取消事由と関係します。留学ビザの場合は,留学の在留資格に係る活動を継続して3ヶ月以上行っていない場合,法務大臣はその在留資格を取り消すことができると入管法は定めています。 つまり,学校に行っていない状態が3ヶ月以上続く場合には,留学ビザが取り消される可能性があります。また,留学ビザが取り消されていない場合であっても,取消事由に該当するような配偶者ビザ申請については,消極的な事由として大きなマイナス点となります。 そのため,このような状況に陥ることがないように,計画的に留学ビザから配偶者ビザの申請準備をすることが肝要です。 5.今回の事例の結論は… 今回の事例では,Kさんは留学ビザの取消事由に該当していたため,不登校に至った経緯について丁寧に入管に説明をしました。また,その間の活動内容を具体的に示し,疎明資料と共に説明文を添付しました。 さらに,Kさんのアルバイト状況について,入管審査上,必要となる情報を全て提示しました。 一方,Jさんは新卒入社であったため,直近の所得課税証明書が非課税であり,収入の証明に不安を抱えていました。そこで,所得課税証明書の他に,配偶者ビザ申請段階でのJさんの安定所得を示す資料を提出しました。 その結果,申請から1ヶ月を待たずに,留学ビザから配偶者ビザへの許可通知書を受け取ることが出来ました。 6.留学生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法のまとめ 本ページでは,留学生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法をテーマに取り上げました。 上述の通り,留学生の場合は検討しなければならないポイントがたくさんあります。 これらは,配偶者ビザの許否判断をするにあたって,いずれも重視されている内容です。 留学生との国際結婚を考えている方,留学ビザから配偶者ビザへの変更申請を検討されている方は,まず上記のポイントに照らして,リスクの有無を確認してみてください。 配偶者ビザへの変更をご検討されている方で,これからどのように手続きを進めたらよいか不安を抱えている方は,一度当社までお問い合わせ下さい。 お話をお伺いし,最適な解決方法をご提案いたします。…
2020.03.07 尾島 諒 永住ビザ永住権よくある質問日本語 【解決事例】夫が永住ビザを取得したら妻の家族滞在ビザはどうなる? 1.はじめに 就労ビザの方が永住ビザを取得した場合,ご家族のビザはこれまでと同じ家族滞在ビザのままで良いのでしょうか。 本ページでは,家族で一緒に永住ビザの申請を行わなかったケースで生じる問題点,対応方法を記載していきます。 2.家族滞在ビザとは? 家族滞在ビザは,一定の在留資格をもって日本に在留する外国人の扶養家族を受け入れるために設けられているビザです。 本事例に当てはめると,技術・人文知識・国際業務ビザを持つAさんのご家族であるBさん,2人のお子様を受入れるためのビザということが出来ます。 今回は,Aさん(技術・人文知識・国際業務ビザ)が永住ビザを取得した結果,ご家族のBさん,2人のお子様(家族滞在ビザ)のビザに影響があるか否かというご相談事例です。 その答えは,上記で示した家族滞在ビザの定義にあります。 家族滞在ビザとは,“一定の在留資格”をもって日本に在留する外国人の扶養家族を受け入れるために設けられているビザでした。 ここでいう一定の在留資格とは,「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「文化活動」「留学」を意味し,永住者は入っていません。 つまり,「一定の在留資格」を持っていた外国人の在留資格が「永住者」に変更されると,その方の扶養を受けている家族は在留資格を変更しなければならない,ということになります。 まとめると, ①Aさん(技術・人文知識・国際業務ビザ),Bさん(家族滞在ビザ),お子様(家族滞在ビザ)の状況から, ②Aさんが永住ビザを取得したことによって,Bさんとお子様は家族滞在ビザの要件に該当しなくなる。 ③その結果,Bさんとお子様は在留資格を変更しなければならない。 ということになります。 3.家族滞在ビザから何のビザに変更すれば良い? (1)配偶者について 「一定の在留資格」をもっていた外国人の方が永住ビザを取得した場合,その配偶者の方は「永住者の配偶者等」にビザの種類を変更することになります。ここでは,永住者の配偶者等のビザについての要件は割愛しますが,家族滞在ビザの要件を満たしている方であれば,通常は問題になることはありません。 (2)お子様について お子様については,定住者ビザに変更することになります。定住者ビザには告示定住と告示外定住(告示に定めのない定住者)という種類がありますが,扶養者が永住者になったことによるお子様のビザは,定住者ビザ(告示定住)となります。 (参考) 〇出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件(平成2年法務省告示第132号) (略) 六 次のいずれかに該当する者(第一号から第四号まで又は第八号に該当する者を除く。)に係るもの イ 日本人,永住者の在留資格をもって在留する者又は日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者(以下「特別永住者」という。)の扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子 (略) 4.複雑な状況を回避するためには… 扶養者の方が永住ビザを取得した場合には,上述のとおり,家族滞在ビザの方はビザ変更の必要性が生じます。 家族滞在ビザは,上記で示した“一定の在留資格”に紐づいているビザです。そのため,“一定の在留資格”に変更があれば,家族滞在ビザの方も影響を受けることになってしまいます。 このような複雑な状況を回避するため,当社では家族全員で永住ビザの申請を行うことをお勧めしています。 今回の事例は,仮に家族全員で永住ビザを申請していれば生じない問題です。 また,ビザ申請の件数も,家族全員で永住許可申請をする場合とそうでない場合では異なります。 <家族全員で永住申請をする場合> ①Aさん,Bさん,お子様2名の永住許可申請 <今回の事例> ①Aさん 永住許可申請…
2020.03.04 今井 幸大 配偶者ビザ結婚ビザ国際結婚日本人の配偶者等二重国籍日本語 【解決事例】二重国籍者(重国籍者)との国際結婚手続き 1.国際結婚の要件はどの国の法律で判断すればよい? 法の適用に関する通則法第38条第1項本文には,次のような規定があります。 「当事者が二以上の国籍を有する場合には,その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を,その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。」 上記の内容を簡単にまとめると, ①国籍を有する国のうちに常居所がある場合は,常居所地の法律で本国法を判断する。 ②上記①がない時には,密接関連性を基準として本国法の判断をする。 したがって,どの国のパスポートで入国したのかを基準とする役所の回答は誤りです。 まずは,常居所地を基準に判断してください(なお,常居所とは,一般に人が相当期間居住することが明らかな地をいいます。)。 2.1の常居所地の判断は難しくない ①の常居所地の判断にあっては,基本的には居住している国から発行される居住証明書(日本でいう住民票と考えてください。)の有無によって判断することになります。居住証明書が取得できれば,その国が常居所地と判断してもらって差し支えありません。 しかし,複数の国から居住証明書の発行があった場合や居住証明書をどの国からも取得できない場合には,少し判断が複雑になってしまいます。 このような場合は,上記②の密接関連地を基準として,国際結婚の要件を判断することになります。 3.2の密接関連地は婚姻要件具備証明書が鍵になる!? では,②の密接関連地はどのような基準で判断をするのでしょうか。 多くの国において,国際結婚手続きを行うにあたり,婚姻要件具備証明書という書面の発行を求めることができます。 簡単にご説明をすると婚姻要件具備証明書とは,外国人の方が本国の法律に従って結婚できる条件を満たしていることを明らかにした公的な文書です。 密接関連地の判断基準は,この婚姻要件具備証明書の発行を基準としています。 すなわち,婚姻要件具備証明書を発行した国に密接関連性があると判断し,その国の法律に従って国際結婚の要件判断を行うことになります。 4.婚姻要件具備証明書が取得できない場合には? 問題となるのは,②のケースで婚姻要件具備証明書の発行をいずれの国からも受けられなかったケースです。 このような場合には,密接関連地の判断は総合的に行うことになります。 例えば,実際はどの国に住んでいるかという点や親族がどの国に居るか等を総合的に考慮して判断していくことになります。 この段階までいくと,市区町村役場のみで重国籍者の本国法を判断するのは困難となることから,法務局に受理照会(※1)を行い,密接関連地を認定するのが通常です。 ※1 受理照会とは,市区町村役場で届出を受理するにあたって内容に疑義が生じた場合,その届出を受理してよいかを管轄法務局に助言を求めることをいいます。 5.二重国籍者(重国籍者)との国際結婚手続きで注意することは? 二重国籍者(重国籍者)との国際結婚手続きについて,よくご質問をいただく事項があります。それは,仮に特に役所から指摘を受けなかった場合には,単一国籍者として国際結婚手続きをしても問題ないか,というご質問です。 日本の市区町村役場では,提出された書面のみをもとに審査を行う形式的審査主義が採用されています。そして,結婚手続きに添付した書類や婚姻届に記載した内容から,一つの国籍のみが示されており,疑義が生じていないケースでは,単一国籍者として扱ってよいと基本通達が出されています。 上記の基本通達から市区町村役場では,提出書面から二重国籍であることが判明しなければ,単一国籍者と扱うことになります。 したがって,国際結婚手続きをする外国人が二重国籍の場合には,本来は自ら二重国籍であることを明らかにする必要がありますが,二重国籍であることを市区町村役場の職員には告げず,単一国籍者として国際結婚手続きをする方が多数おられるのが現状のようです。 しかし,二重国籍者(重国籍者)として国際結婚手続きを行わないと,後に問題となるケースがあります。例えば,それぞれの国によって婚姻状況が異なる(一方では既婚,一方では未婚)ことから,相続やお子様の出生時に様々な弊害が生じることが考えられます。 後に巻き戻して手続きをやり直すことは,時間も労力も相当掛かってしまいます。 そのため,役所から指摘がないからといって,単一国籍者として国際結婚手続きをするのではなく,ご自身の将来のために,法に沿った適切な手続きを執るようにしてください。 6.今回の事例について 今回の事例は,普段はモルドバ共和国に住んでいる方が,ルーマニアが査証免除国(※2)であったため,ルーマニア人として短期ビザで入国していたところ,相談した役所からルーマニア人として結婚するように指導を受けました。 しかし,正しくは上記のとおり,まずは常居所地を検討し,この方の本国法を判断しなければなりません。 今回の事例においては,モルドバ共和国から居住証明書の発行を受ける事が出来ましたので,国際結婚の要件はモルドバ共和国の法律で判断し,加えてルーマニア国籍を有していることの証明書を添付することで,適切な手続きが完了しました。 ※2 査証免除国については,外務省のホームページをご参照下さい。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html…
2020.03.01 依田 隼弥 家族の呼び寄せ親の呼び寄せ短期滞在ビザ出産看護日本語 【解決事例】出産看護を目的とする短期滞在ビザ 1.短期滞在ビザの手続きと他のビザの手続きはちがうの? 短期滞在ビザのための特別な手続きが必要かどうかは,その国が査証免除国であるかを確認することからスタートすることになります。 査証免除国の案内は,外務省のホームページで確認することができますので,これから短期滞在ビザの取得を目指す方は,一度ご覧ください。 ○外務省ホームページ https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html 2020年4月現在の査証免除国は68ヶ国です。 ただし,68ヶ国すべてが90日の査証を免除されているわけではありません。上陸許可の際に付与される在留期間は,インドネシア,タイ及びブルネイは「15日」,アラブ首長国連邦は「30日」,その他の国・地域については「90日」となっています。 したがって,査証免除されていない国の方が来日される場合や,インドネシア,タイ,ブルネイ,アラブ首長国連邦の方が定められた在留期間よりも長い期間のビザ(例えば「90日」の短期滞在ビザ)を希望される場合には,短期滞在ビザを取得することが必要です。 中長期在留者のビザについては,原則として日本にある出入国在留管理局に申請を行いますが,短期滞在ビザは在外公館(ビザを申請される方の居住国にある日本大使館や日本領事館のことをいいます。)で本人が申請することが必要です。この点が,短期滞在ビザが中長期在留者のビザと大きく異なるところです。 2.短期滞在ビザの有効期限は 在外公館で発給された査証の有効期限は3ヶ月です。有効期限内に日本に上陸する必要があります。そして,上陸許可がされた翌日から表示されている日数(15日,30日,90日)の在留が許可されます。 たとえば,30日間の短期滞在ビザの方が3月1日に上陸された場合,3月2日から30日後の3月31日まで滞在が許されます。実際に上陸が許可された方は,パスポートに貼り付けられる上陸許可のシールに滞在期限が記載されていますので,確認してみて下さい。 3.出産看護のための短期滞在ビザは期間を更新することはできるの? 短期滞在ビザの更新申請は,法律上は他の中長期在留ビザと同様に「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があれば更新できると規定されています。 しかし,短期滞在ビザは,観光や親族訪問を理由とした短期間の滞在を目的としていることから,原則として更新は想定されていません。実務上,短期滞在ビザの期間の更新については,人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に限り,許可されています。 そのため,もう少し観光をしたいであるとか,航空機代が高い時期だからという理由では短期滞在ビザの更新はできないとご理解ください。 もっとも,実務上は本事例のような出産看護の場合には,短期滞在ビザの延長が認められているケースが多数あります。 4.出産看護を目的とする短期滞在ビザを取得するまでの道のり Aさんのお母様の事例に戻って,解決策を振り返ります。 まず,Aさんのお母様はベトナム人ですので,ベトナムの管轄の日本領事館に提出する資料を確認します。 ①入国・在留目的を立証する資料 Aさんが出産を控えていること,Aさんには出産予定のお子様の他に小さいお子様がいらっしゃること,Aさんとお母様の関係性を示す資料を提出し,かつ招へい理由書を作成しました。また,滞在予定表についても滞在先や訪問予定先,予定されている行事などを記載しました。 ②滞在中の経費及び出国のための手段又は経費を支弁できることの立証資料 Aさん夫婦の家計は主にBさんの収入によって賄われています。Aさんのお母様はベトナムでも働いていないため,滞在費用についてはBさんの収入や,預貯金を示す証明書を提出しました。 なお,ベトナムの場合,申請時に往復航空券の予約票が必要になります。提出先の領事館によって,航空券の事前予約の要否等が異なることがありますので,提出前に必ずチェックするようにしましょう。 結果,Aさんのお母様は無事に,出産看護を目的として90日の短期滞在ビザを得ることができました。 5.出産看護を目的とする短期滞在ビザのまとめ 在外公館で行う短期滞在ビザ申請においては,申請人(Aさんのお母様)の方が集める資料と,招へい人(Aさん)が集める資料を合わせて提出する必要があります。招へい人は自身の資料を国際郵便で申請人に送ることになります。 注意点としては,ビザが不発行になりますと,6ヶ月間は原則として同一の目的・内容でビザ申請をすることができないことになっています。 出産看護を目的とする短期滞在ビザでご不明があれば,行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせ下さい。…
2020.02.27 渡邉 直斗 内定待機日本語就労ビザ特定活動ビザ留学生 【解決事例】内定待機のための特定活動ビザ 1.内定後も日本で滞在し続けるには? 多くの日本企業は,3月の教育機関の卒業時期に合わせて,新入社員の入社時期を4月に統一しています。卒業前に内定が決まっている方は,4月の入社に何ら問題はありません。しかし,Aさんのように就職浪人をして卒業後に内定を得た場合,翌年4月の入社となると,入社までの待機期間が長期に及ぶ場合があります。 そこで,入管も日本企業の採用実態に合わせて,内定が決まった方の入社時期までの在留を認めています。それが,内定待機のための特定活動ビザといわれるものです。 内定後,入社までに在留期限が到来してしまう方が,入社まで日本で引き続き滞在を希望する場合には,内定待機のための特定活動ビザに変更する必要があります。 本ページでは,内定待機のための特定活動ビザを見ていきましょう。 留学生の方は必見です。 2.内定待機のための特定活動ビザの要件 内定待機のための特定活動ビザが変更許可されるための要件は,以下の4つが挙げられます。 ①留学の在留資格,または就職活動のための特定活動の在留資格で在留していること ②就職先が内定し,内定後1年以内であって,かつ,卒業後1年6ヶ月以内に採用されること ③内定している企業等において従事する活動が「技術・人文知識・国際業務」等の就労に係るいずれかの在留資格への変更が認められるものであること ④在留中の一切の経費を支弁する能力を有すること 対象となる方が,②内定後1年以内であって,かつ,卒業後1年6ヶ月以内に採用される場合に限られていますので,内定後1年を超える日または卒業後1年6ヶ月を超える日以降に採用されることが決定している場合は,内定待機のための特定活動ビザの対象にはなりません。 また,内定待機のための特定活動ビザへの変更を希望する場合は,就職活動のための特定活動ビザの場合と異なり,卒業した学校からの推薦状は必要ありません。ただし,一定期間ごとに内定者と連絡をとること,内定を取り消した場合には出入国在留管理局に,遅滞なく連絡すること等を記載した内定先企業の誓約書を提出しなければなりません。 内定待機のための特定活動の申請を希望する場合は,あらかじめ内定先企業の合意を取り付けておくことをお勧めします。 なお,内定待機のための特定活動は,9月に卒業して,在学中に内定が決まっているものの,採用が翌年4月からという場合も対象になります。この場合は,留学ビザから内定待機のための特定活動ビザに変更することになります。 3.内定待機のための特定活動ビザはアルバイトできるの? 内定待機のための特定活動ビザで在留している間は,原則としてアルバイトが禁止されています。 しかし,留学ビザと同様に,資格外活動許可を取得すれば週28時間以内でアルバイトをすることができるようになります。 そのため,資格外活動許可を取得すれば,内定先企業で入社前インターンシップに参加することも可能になります。通常の資格外活動許可は週28時間ですが,インターンシップの内容を示す資料等を提出して個別の資格外活動許可を取得すれば,週28時間を超えるインターンシップに参加することもできるようになります。 4.内定待機のための特定活動ビザのまとめ 就職活動のための特定活動ビザも,内定待機のための特定活動ビザも,日本の企業で働きたいと希望する留学生は,有効に活用すべき在留資格です。また,2019年5月末から施行されたN1特定活動ビザは,留学生の就職を今まで以上に後押しするものと言えます。 誤った情報で将来を台無しにしないように,在留資格に関する情報は正確に理解することが重要です。日本で勉強した優秀な人材が,一人でも多く日本の社会で活躍してくれることを願ってやみません。…