行政書士法人第一綜合事務所

永住ビザの要件をかんたん解説

永住ビザは他のビザとは違い,在留活動に制限がなく,また在留期間にも制限がありません。
日本で安定的かつ継続的に生活したいと希望する外国人であれば,永住ビザの申請を考えることがあるかもしれません。
そこで,本コラムでは永住ビザの要件を紹介していきます。

1.永住ビザとは?

永住ビザとは,安定的,長期的に日本に滞在するビザのことを指します。
永住ビザを取得した外国人は,日本に無期限に滞在することができるようになります。
また,永住ビザを取得することで就労制限が無くなり,これまで以上に日本で幅広い活動をすることができるようになります。

良いこと尽くめの永住ビザですが,永住ビザを取得するためには多くの要件を満たす必要があります。
本コラムで永住ビザの原則的な要件と特例要件を一通りチェックしていきましょう。

2.永住ビザの原則的な要件

永住ビザの要件は,入管法22条2項と,入管庁公表の「永住許可に関するガイドライン」によって規定されています。

(入管法22条2項)
法務大臣は,その者が次の各号に適合し,かつ,その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り,これを許可することが出来る。ただし,その者が日本人,永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては,次の各号に適合することを要しない。
一 素行が善良であること
二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。

これらを読み解くと,永住ビザの要件は,①「素行が善良であること」,②「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」,③永住申請者の「永住が日本国の利益に合する」と認められることの3つに分けることができます。

そして,これらの永住ビザの要件は,それぞれ次のように省略して呼ばれます。
①素行善良要件
②独立生計要件
③国益適合要件

以下,ガイドラインの内容も踏まえ,それぞれの永住ビザの要件と実務上の運用について解説します。

2-1 永住ビザの要件①「素行善良要件」

「素行善良要件」とは,法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に避難されることのない生活を営んでいること。
(「永住許可に関するガイドライン」より)

分かりやすく言い換えるとすると,普段の生活の中で,人に迷惑をかけずに生活していますか?ということです。

具体的には,

  • 日本の法律に違反して,懲役,禁錮又は罰金刑になっていないこと。
  • 過去の在留の中で多数回の交通違反をしていないこと。
  • 留学生や家族滞在等のビザの方が入管から資格外活動の許可を得て仕事をしていること,あるいは,オーバーワークをしていないこと。

この他にも,素行善良要件のケースはたくさん考えられますが,実際にはケースバイケースで判断されるため,明確な基準は存在しません。
ただ一つ言えることは,この素行善良要件については,日常生活において法律に違反するような行動をしていなければ,特に気にする必要はないということです。

2-2 永住ビザの要件②「独立生計要件」

「独立生計要件」とは,日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
「永住許可に関するガイドライン」より

つまり,永住者として自立して生活することができる能力をチェックするための要件です。

具体的には,申請人が自分で生計を立てるための収入源を持っていること,
または,同居している家族が世帯全体の生活を支えられるほどの収入源を持っていることです。

独立生計要件を考える上で重要となるのは,年収と対象期間の2つです。

年収について,入管は明確な基準は公表していませんが2人世帯までであれば300万円以上の年収が許可・不許可を分けるボーダーラインとされています。
なお,世帯人数が増えるにつれて,年収の要件は厳しくなります。

最近では,入管の永住ビザの要件も厳しくなってきており,3人世帯の場合は350万円,4人世帯の場合は400万円の年収がボーダーラインと言われています。
※年収基準を下回っている場合でも,在留年数や家族構成などが考慮されて許可となるケースもあります。

上記で触れた通り,独立生計要件は世帯の年収で審査されるため,同居している家族の中で,申請人以外にも収入を得ている家族がいる場合は,永住ビザの審査対象となります。
なお,「家族滞在」ビザの方の年収は含まれない傾向が強いため,世帯の年収で申請を考える際には注意が必要です。

対象期間については,永住ビザの原則的要件では直近5年間の収入がチェックされます。
そのため,実務上,独立生計要件をクリアするためには,上記でボーダーラインとしてご紹介した年収を5年間キープする必要があると考えられています。

なお,上記の金額は絶対的な要件ではなく,次のようなケースであれば,永住ビザの申請にチャレンジする価値があります。

・入社5年目で,5年前の年収のみ300万円を下回っているが,それ以外の年では300万円を上回っているケース

このケースでは,4月入社の日本企業が多いため,実際に入社した年に働くことができるのは9か月間ということを,入管も承知しているという事情があります。
この点を説明書等でフォローすることによって,永住ビザの独立生計要件をクリアできる可能性があります。

・独立生計要件の対象期間に転職をし,転職初年度は前年に比べて年収が下がったが,その後年収が上がっているケース

このケースでは,転職後のキャリアアップを入管に十分説明することができれば,独立生計要件をクリアできる可能性があります。

2-3.永住ビザの要件③「国益適合要件」

ア.原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。
※この期間のうち,直近5年間において,就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)または居住資格(配偶者ビザなど)をもって引き続き在留していること。イ.罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。
※ 納税,公的年金及び公的医療保険の保険料の納付に加え,入管法に定める届出等の義務を履行していることが求められます。ウ.現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
※ 当面の間は,在留期間「3年」を有する場合は,「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。

エ.公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

「永住許可に関するガイドライン」より

上記の要件をまとめると,永住ビザを申請する方が日本に永住することで,日本にとってプラスになるかという要件です。

近年の永住ビザの傾向からすると,ア.在留年数,イ.公的義務の履行が特に重要視されています。
そのため,本コラムではこの2点にフォーカスして解説します。

ア.引き続き,日本に10年以上在留

引き続きとは,在留資格が途切れることなく在留を続けることをいいます。
再入国許可を受けずに単純出国したり,海外滞在中に再入国許可の有効期限が経過したりすると,在留年数がリセットされます。
また,実務上,1回の出国日数が90日以上,年間のトータル出国日数が150日以上を越えると,継続在留がリセットされると考えられています。

しかし,会社の出張など,日本を出国するための正当な理由があれば,上記基準を超えるような出国日数であっても,継続在留がリセットされないケースがあります。

イ. 公的義務を適正に履行

これは,過去に支払い遅れや未納がないことが要件とされています。
実務上,健康保険と年金に関しては直近2年間,住民税等の税金に関しては直近5年間の支払い遅れや未納がないことがチェックされます。

支払い遅れについては,市役所や年金事務所から指定された期日までに納付が行われてからカウントが始まります。
したがって,例えば年金の支払いについて,1年10か月目までは指定された期日までに支払っていたが,1年11か月目に支払い遅れをしてしまった場合は,過去の支払い期間はリセットされ,再度適正に支払い始めた月から2年間を適正に納付する必要があります。

同じ会社に長く勤めている会社員の方は,毎月給料から天引きされるため,支払い遅れの問題に関して気にすることはないでしょう。

支払い遅れが生じやすいのは,自営業の方や転職が多い方です。
特に,年金や住民税などを自分で支払わなければならない場合には,支払期限を自分で管理しなければならないことから,うっかり知らない間に未納や支払い遅れが発生していることがあります。

3.永住ビザの特例的な要件

永住ビザは,原則として引き続き10年以上日本に在留し,この期間のうち,5年以上の就労または居住資格で在留していることが要件となります。

しかし,永住許可に関するガイドラインでは,原則10年在留に関する特例的な要件を定めています。そのため,外国人が永住ビザを取得する場合,自分に当てはまる特例要件があるかどうかチェックすることが近道です。

以下に,原則10年在留に関する特例の要件を紹介します。

3-1.永住ビザの特例的な要件①「日本人,永住者及び特別永住者の配偶者またはその実子」

日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。
その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること。

日本人や永住者の配偶者の場合,以下の2つの要件を満たすことで,「素行善良要件」と「独立生計要件」は永住ビザの申請では不問となります。
これを「簡易永住許可」と呼んだりします。

  • 実体を伴った婚姻生活が3年以上継続していること
  • 引き続き1年以上日本に在留していること

つまり,簡易永住許可で永住ビザを申請する場合,永住ビザの要件③「国益適合要件」のみをクリアすることで,永住ビザを取得することができます。
特に,海外で実体のある婚姻生活を2年以上継続している場合,最短で日本に来てから1年で永住ビザを取得することができます。

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3-2.永住ビザの特例的な要件②「在留資格が定住者の人」

「定住者」の在留資格で5年以上継続して日本に在留していること

この特例は,在留資格が「定住者」,かつ,その在留資格で日本に5年以上継続して在留していることが要件になります。

また,「日本人の配偶者等」の在留資格をもっていた人が,在留資格変更許可を受けて「定住者」の在留資格を付与された後,引き続き日本に5年以上在留していない場合でも,「日本人の配偶者等」の在留資格と「定住者」の在留資格で合計5年以上在留している場合にも永住ビザの要件を満たすものとされています。

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3-3.永住ビザの特例的な要件③「難民認定を受けた人」

難民の認定を受けた者の場合,認定後5年以上継続して本邦に在留していること

この特例は,難民認定された後,かつ,難民認定後も日本に5年以上継続して在留していることが要件になります。

3-4.永住ビザの特例的な要件④「特定の分野で日本に貢献した認められる人」

外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる人で,5年以上本邦に在留していること

この特例は,入管が定める「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン」に該当し,かつ,5年以上日本において社会生活上問題を起こすことなく滞在してきたことが要件となります。

参考:「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン」

一例としては,下記のような方がこの特例を利用することができます。

  • 国際機関若しくは外国政府などから,国際社会において権威あるものとして評価されている賞を受けた方
  • 日本国内の大企業で経営に3年以上従事した者で,日本経済に貢献した方
  • 芸術の分野で権威あるものとして一般的評価を受けている賞を受けた方
  • 研究論文等が学術雑誌等に掲載され,その論文が他の研究者の論文等に複数引用されている方
  • 世界規模で行われるスポーツ競技会で多大な貢献し,日本でスポーツの振興に係る活動を行っている方

3-5.永住ビザの特例的な要件⑤「特定の区域内にある機関で日本に貢献したと認められる人」

地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において,出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号のいずれかに該当する活動を行い,当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合,3年以上継続して本邦に在留していること

参考:「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件」

3-6.永住ビザの特例的な要件⑥「高度専門職のポイント計算にて70点以上の人」

ア 「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること
イ 3年以上継続して日本に在留している人で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること

高度人材外国人とは,就労資格で日本に在留する外国人の中でも,経済成長やイノベーションへの貢献が期待される能力や資質に優れた外国人のことを指します。
高度人材外国人には,入管が定めるポイント計算表を設け,一定のポイントを満たす方に対して優遇措置が与えられています。
その中の一つが,永住ビザの原則10年在留に関する特例要件です。

具体的には,永住ビザの申請時点と申請から3年前の時点で,ポイント計算表にあてはめて70点以上を満たす場合,最短で日本に3年間在留するだけで永住ビザの申請が可能となります。

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3-7.永住ビザの特例的な要件⑦「高度専門職のポイント計算にて80点以上の人」

ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること
イ 1年以上継続して本邦に在留している人で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること

永住ビザの申請時点と申請から1年前の時点で,ポイント計算表にあてはめて80点以上を満たす場合,最短で日本に1年間在留するだけで永住ビザの申請が可能となります。

4.おわりに

このページでは,永住ビザの要件についてご紹介をしてきました。
永住ビザを取得するには,要件を理解することはとても重要です。

しかし,法律やガイドラインだけでなく,実務上の要件もあるため,他のビザ申請と比べると少しハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。

行政書士法人第一綜合事務所では,初回相談を無料で行っています。
永住ビザを申請する前に,自分が要件をクリアしているかどうかチェックしたい方や,確実に永住ビザを取得したい方は,お気軽に当社にご相談ください。