コラム

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【解決事例】資料提出通知書(追加資料の要求)が届いた時

1.はじめに 入管へビザ申請を行った後,「資料提出通知書」という書類が届くことがあります。 入管から資料提出通知書(追加資料の要求)が届いた場合,どのような書類を準備したらいいのか,説明文の書き方がわからないといったお悩みを抱えている方は多くいらっしゃると思います。今回は,その資料提出通知書についてご説明致します。 2.資料提出通知書とは? 資料提出通知書は,審査過程において不明点が発生した場合に,不明点を明らかにするために入管が求めるものです。例えば,提出した書類に不備がある場合,提出した書類では明らかとなっていない事項がある場合,提出した書類に疑義がある場合など,様々なケースが想定されます。 何もやましい事がなくても資料提出通知書が送られてくると,「不許可になるのではないか」,「何を提出したらいいのかわからない」,「求められた説明文をうまく作成できない」など,混乱してしまう方も少なくありません。 しかし,適切な対応をすれば許可の可能性は十分にありますので,まずは落ち着いて対応することが重要です。 3.資料提出通知書が届いた場合,どう対応すべきか? 資料提出通知書で求められる追加資料や説明文は,ビザ申請の許可・不許可を分ける重要な資料となります。そのため,入管からの追加資料・説明文の提出要求に対して,無視をしたり,適当な回答や的外れの回答を行うと不許可のリスクが非常に高まります。真摯に入管対応していれば許可となっていた可能性があったにもかかわらず,このような不誠実な対応で不許可となるのは非常にもったいないです。 当社においても,資料提出通知書の対処方法を間違えて不許可となってしまったという相談が多数ございます。そして,その多くが適切に対応をしていれば許可となっていたのではないかと想定されるケースです。また,不適切な対応をとってしまったがために不許可となったケースで再度申請するとなると,入管は不許可となった申請の資料を保管しているため,再申請にも悪影響を与えることになってしまいます。 このような不幸な事態を招かないためには,資料提出通知書が届いた場合に,慌てることなく,資料を求めている入管の意図を知ることに努めてください。この作業は,非常に高度な知識を要するため,ご自身での分析が困難と判断された場合には,早めにビザ申請の専門家に相談することをお勧めします。 4.資料提出通知書の提出期限 また,資料提出通知書には提出期限が設けられています。通常,2週間程度の期限が設けられているので,時間との勝負になります。仮に,期限内に追加資料を提出することができない場合には,すでに提出された書類のみで審査を完了する旨の記載がされています。そのため,提出期限の遵守についても意識をする必要があります。 もっとも,外国から資料を取り寄せなければならない場合や,求められた提出資料が期限内に作成できない場合などは,入管に事情を説明し,期限の延長を求める連絡をしてください。決して,連絡なしに資料提出通知書の提出期限を超過してはいけません。 5.資料提出通知書の対応の重要性 資料提出通知書を入管から受け取ると,追加資料提出までは入管での審査は通常ストップしています。資料提出通知書に基づき追加書類や説明文を入管に提出した後,審査が再開されます。しかし,提出した書類や説明文に更に不明な点や提出した書類に不備があった場合には,再度の資料提出通知書が送られてくることもあります。そのため,最初の資料提出通知書の対応は非常に重要です。 ただ,入管申請の専門家でない場合には,入管の担当審査官が求めている意図を理解し,その意図に沿った詳細な説明をし,説明に合致した証拠を提出することは困難を伴います。このような場合は,一人で悩まずにビザ申請に特化している行政書士に相談されることが解決までの一番の近道です。 6.今回の事例における対処方法 配偶者ビザの審査要領には,社会通念上の夫婦の共同生活を営むといえるためには,特別な理由がない限り,同居して生活していることを要すると記載があります。 夫婦としての共同生活の実体を判断する上で,同居の有無が重要な考慮事情となるとしても,今回の事例のように夫婦によって種々の事情があります。 今回の事例では,Bさんは中国に兄弟姉妹や頼れる親戚がおらず,Bさんしか父親の看病をする人がいませんでした。また,Bさんが中国に滞在中,夫のAさんは2,3週間に1度,Bさんが滞在する中国に渡り,Bさんの父親の看病をBさんと一緒にしていました。 そこで,お父様の入院記録,ご主人様の渡航歴を示す資料と共に,具体的な理由を記載した説明文を提出しました。通常の在留期間更新許可申請の審査期間に比べると,審査期間は長くかかりましたが,結果的に無事に更新許可を得ることができました。 7.さいごに 本ページでは,資料提出通知書についてご説明しました。 資料提出通知書で求められる提出書類や説明文は,ビザ申請の許可・不許可を分ける重要なポイントになります。 場合によっては,入管との行政交渉も必要とすることから,資料提出通知書で迷っているのであれば,ビザ専門の行政書士へ早期にご相談ください。入管申請の専門家である行政書士が,お客様の状況をヒアリングしたうえで,資料提出通知書に沿った書類提出をサポートいたします。…

【解決事例】交際期間が短い場合でも配偶者ビザ申請が許可される方法

1.国際結婚したから配偶者ビザが取得できるわけではない… 日本人と外国人が国際結婚した場合,必ず配偶者ビザは許可されるのでしょうか。 日本人側の権利だけを強調すれば,家族が離れ離れになるのは不利益であることから,当然に配偶者ビザは許可されるべきとも考えられます。 しかし,日本の入管政策は国境の壁をなくす“グローバル化”ではなく,国境の壁はそのままで,壁にある門を広げたり,増やしたりする“国際化”と言われるものです。そのため,日本人と国際結婚したからといって,外国人が無制限に日本に在留できるわけではありません。配偶者ビザの申請にあたっては「夫婦が日本で生活していく上で安定した経済基盤があるかどうか」「結婚が真実婚であるかどうか」という2つのポイントが厳しく審査されることになります。 つまり,国際結婚=配偶者ビザの許可ではないということです。 2.配偶者ビザ申請の入管審査において確認されること 先述のように,配偶者ビザ申請の入管審査に当たっては二つの大きなポイントがあります。1つが「夫婦が日本で生活していく上で安定した経済基盤があるかどうか」であり,もう1つが「結婚が真実婚であるかどうか」です。 それぞれのポイントについて,ご説明していきたいと思います。 1つ目のポイントは「夫婦が日本で生活していく上で安定した経済基盤があるかどうか」。 ご夫婦の生活が経済的に困窮する可能性がある場合には,配偶者ビザが不許可となる可能性が高くなります。そのため,日本で安定した夫婦生活を送るに足る収入や資産が必要とされています。 そしてもう1つのポイントである「結婚が真実婚であるかどうか」。真実婚とは,ご夫婦が同居し,お互いを扶助し,協力し合う意思をもって結婚をしているかという事です。 しかし,真実婚の立証は容易ではありません。なぜなら,それは内心に関わることだからです。そのため,真実婚の立証については,客観的な証拠が重要になります。 3.配偶者ビザ申請のポイントとなる “交際期間”について さて,皆さんに問題です。甲さんと乙さんが国際結婚しました。この人たちは真実婚でしょうか? 突然このように問われた場合,まず間違いなく,「甲さんと乙さんはどのような人で,どのように付き合って,どのように国際結婚に至ったのか知らないからわからない。」とお答えになると思います。 自信満々に真実婚だ,と言える人は当事者と付き合いの長い友人くらいで,見ず知らずの人の国際結婚について,真実婚かどうかを判別する事は不可能です。ですが,この夫婦が3年に亘る交際の末,国際結婚したという事情を付け加えるとどうでしょう。なんとなく真実婚であるような気がしませんか? では,甲さんと乙さんが知り合ってから1ヶ月で国際結婚したという場合はどうでしょうか。付き合っている期間が短いことから,離婚する確率や偽装結婚である可能性が高いように感じないでしょうか。 みなさんが上記の二つの例の比較で感じたことは,入管審査においても同じように感じるはずです。このように,その国際結婚が真実婚であるかどうかを審査するにあたり,まず入管がチェックするのが交際期間の長短です。交際期間は婚姻の実体を示す分かり易い物差しとなるのです。 4.配偶者ビザ申請する際に交際期間が長い事のメリットと短い事のデメリット 配偶者ビザ申請する際,交際期間が長い場合には,それ自体が有利に働く事実になります。また,交際期間が長いという事は他にもメリットがあります。というのも,交際期間が長ければ夫婦で撮影した写真やメールなど,お二人の交際の事実を証明する資料が多く残っており,交際の実体を入管に証明しやすいのです。 他方,交際期間が短い場合,交際の事実を示す証拠も少なくなるのが通常です。そのため,真実婚であるかどうかを入管に説明する際には,多方面から証明する必要が出てきます。 とはいえ,交際期間が短いから審査で不利になりそうだと考え,実際よりもずっと前から交際をしていたなどと話を捏造したりすることは言語道断です。物語として上手に書け,誤魔化せていると思っていても,入管審査ではまず間違いなく見抜かれ,配偶者ビザが不許可になってしまうという悲惨な結果が待っています。仮に捏造した箇所以外はすべて真実だとしても,その真偽も全て疑われて不許可なってしまいますので,真実に反する書面を提出することは絶対にやめてください。 確かに,配偶者ビザ申請の入管審査において,交際期間が短いことはデメリットではあります。しかし,必ず配偶者ビザ申請が不許可になるわけではありません。自分たちの交際を振り返り,交際の実体を示せるものを準備することが出来れば,交際期間が短くても配偶者ビザが許可されている事例はたくさんあります。 5.交際期間が短い場合以外に配偶者ビザの審査が厳しくなる要素とは? 交際期間が短いこと以外にも,配偶者ビザの入管審査が厳しくなりがちなケースがあります。下記の例はいずれも偽装婚などの犯罪に利用されたために,入管も慎重に審査するようになっています。 例えば,日本人側に離婚歴が多い場合は審査が厳しくなりがちです。 日本人が外国人の方と国際結婚し,その外国人配偶者が入国して暫くして離婚し,また別の外国人の方と婚姻する。このような偽装婚を繰り返し,外国人を多数入国させたケースがかつては見られたため,日本人側に離婚歴が多いと審査が厳しくみられる傾向にあります。 他には,出会い系サイトや結婚相談所で外国人配偶者と出会ったというケースにおいても,審査が厳しくなる傾向にあります。とりわけ年齢差が大きいと,本当にお互いに愛し合っているのだろうか,営利目的の偽装婚ではないだろうか,単に日本で働きたいために日本人を騙しているのではないだろうかなどと,入管は慎重に審査をします。 しかしながら,上記のケースに当たっているとしても,しっかりと愛し合って婚姻に至ったのであれば,隠したり嘘をついたりするのではなく,出会いの経緯を正直に伝えるべきです。たとえ入管審査が厳しくなる要素があったとしても,交際の実体を示す証拠を多角的に集め,しっかりと真実婚を証明できれば,配偶者ビザを取得することは不可能ではありません。 6.配偶者ビザ申請で交際期間が短い場合のまとめ お二人が大恋愛の末に結婚されたのであれば,間違いなく婚姻の実体はあるはずです。交際の実体をしっかり入管の審査官に伝わるように書類を準備する事ができれば,配偶者ビザの許可の可能性は高まります。 交際の実体を証明するためにどんな資料が必要で,その資料をもってどのように証明しようとしているのか,戦略をしっかりと考えた上で資料を準備するようにしてください。 人の恋愛は十人十色,千差万別です。結婚に至るまでの男女の仲においては様々な事があり,数々の思い出があると思います。意外なものが交際の実体を示す証拠になったりします。 交際期間が短いから,交際の実体の証明がまだ無理だろうと諦め,愛する方と遠距離恋愛を続けると決めるのは早計です。 今回のご相談のケースにおいても,出会いはインターネット上であり,また東京と大阪の遠距離恋愛であったこともあり,結婚に至るまでお二人が会った回数は多くありませんでした。交際期間も3ヶ月と決して長くはありませんでした。 そのため,Aさんの配偶者ビザ申請にあたり,ご夫婦の交際の実体をしっかりと示す必要がありました。交際経緯については時系列に沿って詳しくお話を伺い,それに対応したお二人の写真も準備してもらいました。また,インターネット上でやりとりをしていたため,大量の通信履歴も残っていました。そこで,交際経緯と写真,通信履歴をリンクさせ,お二人が知り合い,交際に発展し,結婚に至るまでの流れをフィードバックできるような資料を準備しました。 詳細にヒアリングをし,それに沿ってどのような資料が存在するかを検証し,事実と証拠を綿密につなぎ合わせていった結果,無事にAさんは留学から配偶者ビザへの在留資格変更許可を受けました。その後,お二人の間にはお子様が生まれ,現在ご夫婦は大阪で幸せにお子様と共に暮らされております。 一般的には,何が交際の実体を示せる証拠になるかわからないことが多いと思います。 私たちの経験でも,ヒアリングを進める上で,思わぬ書類がご夫婦の交際実体を示す有益な資料になったこともしばしばございます。また,直接的な事実のみならず,間接的な事実の積み上げによって,交際期間が短くとも交際実体の立証に成功した事例もあります。…

【解決事例】経営管理ビザを持つ外国人が家事使用人を呼ぶ方法

1.はじめに 近頃は,益々グローバル化が加速し,日本法人の代表者が外国人というケースも珍しいものではなくなりつつあります。 今回は,経営管理ビザを持つ外国人経営者が,家事使用人(いわゆる家政婦さん)を本国から招へいする手続きについて解説していきます。 家事使用人の活動内容に該当するビザは,法務大臣が個々に活動を指定する特定活動ビザになります。 特定活動ビザとは,他の在留資格に該当しない活動の受け皿として,法務大臣が個々の外国人について活動を指定するという在留資格です。 雇用主の在留資格が「外交・公用」,「経営・管理」,「法律・会計業務」,「高度専門職」の4つのいずれかに該当する場合,個人的使用人として雇用されている家事使用人に対して,特定活動ビザが認められています。 注意が必要なのは,家事使用人に在留資格が認められるための要件は,上記4つの在留資格によって異なるということです。 本ページでは,経営管理ビザを持つ外国人経営者が雇用する家事使用人の要件を確認していきます。 2.経営管理ビザに雇用される家事使用人の要件とは? 経営・管理ビザを有する外国人が雇用する家事使用人に在留資格が認められるには,以下の7つの要件を満たす必要があります。 ①経営・管理の在留資格をもって在留する雇用主が,事業所の長又はこれに準ずる地位にある者であること ②申請の時点において,雇用主が13歳未満の子又は病気等により日常の家事に従事することができない配偶者を有していること ③当該外国人が雇用できる家事使用人は在留資格を求める1名のみであり,18歳以上であること ④雇用主が使用する言語により日常会話を行うことができること ⑤家事使用人は個人的使用人として雇用されていること ⑥家事使用人が月額20万円以上の報酬を受けていること ⑦雇用主の家事に従事する活動を行うこと ①の「事業所等の長又はこれに準ずる地位にある者」という意味については,地位の名称・肩書きといった形式によって判断されるのではなく,事業所等の規模,形態,業種,報酬額及び事業所等における権限等を考慮し,総合的に判断されます。例えば,代表者でなくても,代表者から直接指示を受けている場合や,一般職員と異なり権限の範囲が広く,所属部署自体が独立しているような場合については,本要件に該当する可能性があります。 ②の「申請の時点において」とは,上陸許可申請の時点を指します。したがって,例えばビザ取得後に在留期間満了を迎えるに際して在留期間更新許可の申請を行った時点で,雇用主の子が13歳に達していた場合であっても,指定された活動に変更が生じたことにはなりません。 ただし,これは同一の雇用主に雇用される場合の取り扱いであり,雇用主が変更になった場合には,新たな雇用主との契約に基づいて在留期間更新等の申請を行った時が「申請の時点」となるので注意が必要です。 ③当該外国人が雇用している家事使用人は,在留資格を求める1名のみであることが要件となっています。他に家事使用人を雇っている場合は,常勤,非常勤,日本人,外国人を問わず,家事使用人を呼び寄せることは出来ません。 ④雇用主が使用する言語により日常会話を行うことができることの要件については,通常雇用主と家事使用人の国籍が同一である場合には特別な立証資料は必要ありません。雇用主と家事使用人の母語が異なる場合には,どのようにしてその言語を習得したかを立証する資料が求められます。 ⑤家事使用人は個人的使用人として雇用されていること,⑥家事使用人が月額20万円以上の報酬を受けていること,⑦雇用主の家事に従事する活動を行うことの立証資料については,雇用主との契約書の写し等を提出します。本国での雇用条件を変更しなければならない場合も少なくありません。申請前に雇用契約の内容をチェックする必要があります。 また,⑤,⑥要件との関係上,雇用主に家事使用人の報酬を支払えるだけの資力があることの立証を求められることもあります。 3.家事使用人の招へいまでの道のり Aさんは中国法人の子会社の代表取締役として来日していますので,①経営・管理の在留資格をもって在留する雇用主が,事業所の長又はこれに準ずる地位にある者であることの要件を満たします。また,娘Cちゃんは現在6歳ですので,②上陸申請の時点において,雇用主が13歳未満の子を有するという要件も満たします。 Dさんは中国でAさん夫婦の家事使用人をしていたため,日常会話の言語能力に問題はなく(要件④),来日後は唯一の家事使用人として雇用主の家事に従事する予定です(要件③,⑤,⑦)。 問題となる要件は,⑥家事使用人が月額20万円以上の報酬を受けていることです。 Dさんの場合,本国においては,要件⑥の水準に満たない給与で家事使用人として雇用されていましたが,告示の規定をAさんに示し,日本で雇用する間は契約内容を改定しました。 その結果,Dさんは無事に家事使用人として特定活動ビザを得ることができました。 4.経営管理ビザを持つ外国人が家事使用人を呼ぶ方法のまとめ これまでに見てきたように,経営管理ビザを持つ雇用主が,仕事の多忙や子どもの世話を理由に,本国で雇用していた家事使用人を帯同することは可能です。 本国で雇用していた家事使用人と一緒に来日することができれば,来日後の雇用主の活動範囲は大いに広がるでしょう。本国で雇用していた家事使用人の雇用契約の内容等については,変更の必要がある場合もありますので,その点には注意が必要です。 経営管理ビザをお持ちの外国人の方で家事使用人を招へいされたい方は,ぜひ当社までお問い合わせ下さい。…

【解決事例】外国にある関連会社等から企業内転勤ビザで招へいする方法

1.企業内転勤ビザの要件は? まず,企業内転勤ビザで認められる活動内容を確認しましょう。 (1)在留資格該当性 入管法には,以下のような活動内容が規定されています。 本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動 そして,技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動とは,以下のとおりです。 入管法別表1の2「技術・人文知識・国際業務」の項の下欄 「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)。」 要約しますと,企業内転勤ビザで認められる活動内容とは,同一企業等の内部で外国の事業所から日本の事業所に一定期間転勤して,理系分野(技術)または文系分野に属する業務内容(人文知識),もしくは,通訳・翻訳業務,語学の指導,海外取引業務等(国際業務)を行う場合を指します。 (2)上陸基準省令 企業内転勤ビザを取得するためには,雇用開始後に予定する業務内容が上記の活動内容に合致すること(在留資格該当性)に加え,我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定められている基準に適合することが求められています(上陸基準省令適合性)。 上陸基準省令については,下記のように分類することができます。 ①実務要件 申請に係る転勤の直前に外国にある本店,支店その他の事業所において上記「技術・人文知識・国際業務」の業務に従事している場合で,その期間(企業内転勤の在留資格をもって外国に当該事業所のある公私の機関の日本にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には,当該期間を合算した期間)が継続して1年以上あること。 少し読みづらいので要約すると,企業内転勤ビザにいう「転勤」というためには,1年以上,外国にある本店,支店などで,技術・人文知識・国際業務ビザの業務に従事している必要があります。つまり,企業内転勤ビザを取得することを目的として新規雇用しても,1年以上の在籍実績がなければ,日本で企業内転勤ビザは取得することは出来ません。 ②報酬要件 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。 これは技術・人文知識・国際業務ビザの場合と同様の解釈です。端的に記載をすると,同じ会社で同じ業務をする日本人と比較して,報酬が低廉でないことを求めています。 2.企業内転勤のポイント ~「転勤」と認められる範囲は?~ 「転勤」は,日常用語では同一会社内の異動をいうことが多いですが,企業内転勤ビザの「転勤」は,系列企業内の出向等も含まれます。 「系列企業内」とは,財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則第8条にいう「親会社」,「子会社」,及び「関連会社」を指します。単なる業務提携関係の異動では,「転勤」に該当しないことに注意が必要です。 具体的には,次のような関係図における異動の場合には「転勤」に該当することになりますが,他にも細かな要件の検討が必要となりますので,どのケースに該当するかの判断は,専門家を交えて相談されることをお勧めします。 (1)本店・支店間の異動 (2)親会社と子会社間の異動 (3)子会社間等の異動 (4)関連会社への異動   3.企業内転勤ビザの必要書類について 会社の性質や規模毎に4つのカテゴリーに区分されており,必要書類はカテゴリーに応じて異なります。 企業内転勤ビザを申請する場合の必要書類は,以下の法務省ホームページをご覧ください。 (在留資格認定証明書交付申請) http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shin_zairyu_nintei10_13.html (在留資格変更許可申請) http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shin_henko10_12.html (在留期間更新許可申請) http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shin_zairyu_koshin10_13.html 4.今回の事例 それでは,今回の事例について見ていきましょう。 今回の事例では,最終学歴や実務経験を満たさず,これまで取得していた技術・人文知識・国際業務ビザには該当しませんでした。そして,活動内容をお伺いすると,技術カテゴリーに該当する活動であったため,当社で企業内転勤ビザの要件への適合判断を行いました。…

【解決事例】永住許可申請と年収の関係について

1.はじめに 2019年7月1日から,永住許可申請の提出資料として,申請人又は申請人を扶養する方の所得状況を証明する資料として直近5年分の所得証明書の提出が必要となりました。これまでは3年分でよかったものが,5年分になったため,より長期に亘る家計の状況を明らかにする資料を提出することになり,生計の安定性については,これまでより厳しい判断が行われるようになっています。 「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザをお持ちの方は,永住許可申請のハードルが上がっていることや,提出資料が増加していることから,これまで以上に早めに永住許可申請を希望される方が少なくありません。 また,審査が厳しくなったこともあり,これまで許可されていたケースにもかかわらず,永住ビザの申請が不許可になってしまうケースが増加しています。 私共にご相談が寄せられる中で,永住をお考えの方の一番の関心事は,①永住許可の可能性,②永住許可が見込まれる時期,という二つの事項に集約されます。 その中でも,永住許可申請と年収の関係については,特にご質問が多い事項です。ご自身の年収状況によって,永住許可の可能性が下がってしまうことや,また申請を見送るような事例が多く見受けられます。 そこで,今回は永住許可申請と年収の関係について,詳しく解説していきます。 2.永住許可申請をする場合 永住ビザが許可されるためには,どのような要件が定められているでしょうか。入管法には,以下のとおり定めがあります。 (第22条第2項 永住許可) 前項の申請があった場合には,法務大臣は,その者が次の各号に適合し,かつ,その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り,これを許可することができる。ただし,その者が日本人,永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては,次の各号に適合することを要しない。 一 素行が善良であること。 二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。 今回は永住許可申請と年収の関係をピックアップしていますので,他の要件は割愛しますが,年収要件については,「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とあるのみで,具体的に年収はいくら必要であるとか,貯蓄がいくら以上必要かなどについての具体的な言及は入管法にはありません。 永住許可申請にいう「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とは,日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることを指します。 この抽象的な規定が,これから永住許可申請をされる方々の悩みになるのは,想像に難くありません。 3.年収について 本項では,永住許可申請の際に必要となる年収をケースに分けて解説していきます。 (1)就労ビザで単身世帯の場合 申請人の方が就労ビザの保有者で,単身世帯である場合には,年収300万円以上が永住審査における一つの指標になっています。もっとも,年収が300万円を超えている場合であっても,ご家族の構成,扶養家族,勤続年数などによっては,必ずしも永住許可が保証されているわけではありません。この点,注意が必要です。 例えば,就労ビザの単身世帯で年収300万円であったとしても,世帯外の扶養家族が4名いる場合には,年収として300万円では不十分として判断される可能性が高いでしょう。また,転職したばかりのケースにあっては,年収300万円以上であっても,就労状況の安定性が低いと評価され,永住ビザの不許可要素となり得ます。 このように様々なケース,考慮すべき事項があるため,一概にいくらの年収があれば大丈夫と断言するのは難しいのですが,就労ビザで単身世帯の場合には,年収300万円を指標に検討するのが一般的です。 (2)就労ビザ+家族滞在ビザの場合 事例のように,ご主人様が就労ビザ,奥様が家族滞在ビザでアルバイトをしているケースについて検討します。例えば,ご主人様の年収が240万円,奥様のアルバイトでの年収が60万円の場合,ご主人様が永住申請をするにあたって,ご主人様の年収と奥様のアルバイト年収を合計して,世帯年収300万円以上と判断してくれるのでしょうか。 この点については,入管局によって,また個別の申請内容によって,判断が分かれるところではありますが,原則的な考えとしては,家族滞在ビザの収入は含めないと判断するのが一般的です。その理由としては,そもそも家族滞在ビザは就労ビザではなく,原則として就労が出来ないビザであると考えられているからです。また,アルバイト収入は安定所得とは言い難いという点もあります。そのため,家族滞在ビザの奥様のアルバイト収入は含めず,ご自身の年収のみで判断してみて下さい。 (3)就労ビザ+就労ビザの場合 夫婦が共に就労ビザ,いわゆる共働き世帯のケースを見ていきましょう。例として,ご主人様の年収が260万,奥様の年収が260万の場合には,永住許可申請の審査においては,世帯の年収で判断してもらえる可能性があります。 なぜなら,上記(2)とは異なりいずれも就労ビザであるため,夫婦で今後も安定した継続収入が見込まれると考えられているからです。そのため,共に就労状況が安定している場合には,永住審査における年収要件はクリアしていると判断して差し支えありません。 注意すべき事項としては,一方配偶者の年収があまりにも低いような場合です。この場合には,就労状況が不安定と判断される可能性があり,世帯の合計年収で見てもらえない可能性があることから,この点には注意を要します。 (4)配偶者ビザの場合 日本人の配偶者等,永住者の配偶者等,定住者のビザは,身分系のビザと言われ,その身分や地位に基づきビザが与えられています。言い換えると,日本との結びつきが強いビザということが出来ます。そのため,上記で見た就労ビザと比較すると,永住許可申請の年収判断においても,有利に解釈がなされています。 具体的にいうと,配偶者が日本人の場合には年収300万円なくとも,実際に永住ビザが許可されています。また,上記(2)は世帯の合計年収では判断されなかったのに対し,配偶者ビザの場合には,パート年収も含めて世帯の合計年収で判断してもらうことが出来ます。 このように,身分系のビザをお持ちの方については,年収要件が就労ビザの場合よりも緩和されているのが大きな特徴です。 (5)まとめ いかがでしたでしょうか。同じ永住許可申請をする場合であっても,お持ちのビザの種類によって判断は異なりますし,また扶養家族の人数,配偶者のビザの種類によっても結論は異なります。 ご相談の中には,海外での所得や貯金額などで独立生計要件を満たしていると考える方もおられますが,その一事をもって永住許可を得るのは難しいです。 なぜなら,永住の年収要件は,あくまでも日本に生活基盤を持つことを前提として,審査されているからです。…

【解決事例】永住ビザと転職との関係について

1.はじめに 永住ビザのお問い合わせをいただく中で,転職歴がある場合には永住ビザの審査上で不利になりますか?というご質問をいただくことがあります。 転職歴のある方(あるいは転職が多い方)が永住ビザの申請を行う場合には, ①転職の時期や回数 ②転職に伴う手続きの履行状況 ③転職後の業務内容と就労ビザとの関係 ④離職期間の長さ ⑤転職による年収の状況等, 様々な内容を検討する必要があります。 そこで,本ページでは転職が永住ビザの審査に与える影響を見ていきたいと思います。 2.転職が多いと永住ビザは取得できない!? 結論から申し上げると,転職をしても永住ビザを取得されている方はたくさんいます。 そのため,転職すると永住ビザが取得できないという訳ではありません。 では,なぜ転職が永住ビザの審査で不利になると思っている方が多いのでしょうか。 その理由として,転職経験がない方に比べて,転職経験がある方の場合,手続きや検討事項が増えることが要因と考えられます。 例えば,上記②転職に伴って行うべき手続きを履行しているかという点について,所属機関等に関する届出(入管法第19条の16)を適正に行っているかを検討する必要があります。 また,社会保険料の納付状況についても,離職をされると,それまで厚生年金に加入されていた方は国民年金に,健康保険は国民健康保険への切り替えが必要になります。そして,再就職した場合には,新しいお勤め先で年金と健康保険の切り替え手続きをすることになります。仮に,これらの手続きに漏れがあると,永住ビザの審査で大きな減点となってしまいます。 このように,転職に伴う手続きでエラーしないように細心の注意を払う必要がありますが,逆を言えば,これらの手続きにエラーがないのであれば,転職をしても永住ビザの審査で不利になることはありません。 そのため,「転職=永住ビザ×」 となるのではなく,「転職手続きエラー=永住ビザ×」とご理解ください。 3.永住ビザを取得するために転職で特に注意すること 以下に記載する内容は,永住ビザの取得を目指す皆さんが,転職時に特にご注意いただきたい事項です。 ・転職の際の手続き忘れには注意! 転職をすると入管への手続き,社会保険の手続き等を履行する必要があります。この点については,離職する会社,転職する会社の顧問行政書士や顧問社労士に確認を取り,手続漏れが無いようにしてください。手続漏れは永住ビザの審査でネガティブに判断されます。 ・転職してからすぐに永住ビザ申請しない! 入管の永住ビザの審査においては,皆さんの就労状況の安定性を確認します。どういう事かというと,永住ビザの審査では永住ビザを取得した後も日本で安定的に生活ができるか否かという点を審査しています。つまり,転職してすぐに永住ビザを申請した場合には,就労状況の安定性を欠いていると判断されてしまう可能性があります。そのため,転職してすぐに永住ビザ申請をするのではなく,就労状況の安定性が確認できる期間を待って永住ビザの申請をすることをお勧めします。 ・離職期間が長い場合には注意! 転職活動を行うため,離職期間がある方はご自身の履歴書を確認してみて下さい。離職期間があまりに長い場合,就労ビザを持っているにも関わらず,入管法で定める活動をしていなかったという事で,永住ビザの審査上,大きな減点になる可能性があります。特に,入管法第22条の4(在留資格の取消し)で定める期間を超過している場合には,注意を要します。 ・転職後の業務内容には注意! 転職の業務内容が前職と異なる場合で,就労資格証明書交付申請を行っていない場合には,注意が必要です。入管法に照らして明らかに業務内容が問題ない場合は良いのですが,就労ビザ活動内容が入管法上,微妙なケースでは注意が必要です。転職後の業務内容に心配がある場合には,専門家に相談するようにしましょう。 ・転職による年収の低下には注意! 転職活動によって働いてない期間があり年収が減少している場合,あるいは転職によって年収が減少してしまった場合には,永住ビザの審査で消極的に判断されてしまう可能性があります。通常,転職はキャリアアップと考えられているところ,年収が減少するのは永住ビザの審査上よくありません。そのため,年収の減少幅が大きい場合には,別途説明を加え,ご自身のキャリアデザイン等を示すことをお勧めします。 4.事例の検討 それでは,ここからは今回の事例の検討をしていきましょう。 Aさんの場合には,就労ビザへ変更してから間もなく5年が経過しますが,その間に何度か転職をしています。 そこで,当社において永住ビザの許可の可能性を検証していきました。 その結果,離職期間が相当期間あり,現職に転職してから3ヶ月ほどしか経っていなかったため,就労状況の安定性に問題がありました。そのため,永住ビザの申請時期を就労状況の安定性が確認できる時期に変更するよう,当社行政書士から提案しました。 また,ある年の所得について,再就職先の会社の手続きの漏れがあったため,修正申告を行い,国税・地方税等の納付を行いました。 その他,転職に伴い発生する契約機関に関する届出,社会保険料については,自身で適切な手続をとっていたため,その他の要件については,特段問題を生じることはありませんでした。 Aさんは永住ビザの申請時期が明確になり,とても安心された様子でした。…

【解決事例】ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ方法

1.家族滞在ビザとは? 家族滞在ビザとは,「就労可能な在留資格(外交,公用,特定技能1号,技能実習を除く)」,「文化活動」又は「留学(日本語学校など一部の教育機関を除く)」の在留資格をもって日本に在留する外国人の扶養家族を受け入れるために設けられたものです。例えば,就労ビザを取得し,日本の会社で働いている夫が妻および子を扶養している場合に,妻と子が家族滞在ビザを取得することによって,日本で一緒に暮らすことができるようになります。 上記の通り,「扶養」する家族を受け入れることが趣旨であることから,扶養者側の在留資格は就労可能なもの(具体的には「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」「文化活動」「留学(基準省令第1号又はロに該当するもの。))に限定されます。また,扶養を受ける者は,資格外活動許可を得ない限り,就労活動を行うことはできないのが特徴です。 そして,「配偶者」は現に婚姻が法律上有効に存続中の方に限られ,離婚した方や内縁の配偶者,外国で有効に成立した同性婚による者は含まれません。「子」には嫡出子の他,養子および認知された非嫡出子が含まれます。成年に達していたとしても,学生の身分であるなど,親の扶養を受けている方は含まれます。なお,配偶者および子以外の家族は,「家族滞在」の在留資格に該当しません。 2.家族滞在ビザの要件 ① 扶養者の在留資格が,「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」「文化活動」「留学(基準省令第1号又はロに該当するもの。)のいずれかに該当すること ② 扶養者が扶養の意思と扶養能力を有すること ③ 扶養を受ける側の配偶者または子が現に扶養を受け又は監護養育を受けていると認められること 以上が家族滞在ビザの要件です。 それでは,今回のAさんのケースで,具体的に見ていきましょう。 3.ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶまでの道のり Aさんは,就職したばかりで所得課税証明書も納税証明書も入管に提出することが出来ないという事情があることから,上記2の要件のうち,特に②の扶養能力が問題となります。さらに,Aさんは留学時代にオーバーワークをしてしまっているという問題があります。そこで,まずはその事実が今回の申請にあたり,ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ際に,どのような影響をもたらすのかについて検討していきましょう。 (1)過去の法律違反が今回の申請に与える影響について ① オーバーワークについて 前提として,留学の在留資格は就労不能の在留資格であり,オーバーワーク(アルバイト時間の制限を超えた場合)は明白な資格外活動許可違反(入管法違反)となります。留学ビザを更新する際や,就労ビザへ変更を申請する場合に,その法令違反を理由に,ビザの更新や変更が不許可になってしまうこともあります。 その結果,留学生活を志半ばで断念せざるを得なくなったり,就職の場合には,企業から内定取り消しになる場合もあることは肝に銘じておいてください。 ② オーバーワークが家族滞在ビザ申請に与える影響について では,Aさんのオーバーワークの事実を前提として,ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ際に,どのような点に気を付けなければいけないか検討してみましょう。 法律違反の前歴は消えることはないので,オーバーワークに至った経緯を説明すると共に,二度とそのような事態を生じさせないことを明らかにする必要があります。どうして労働時間を超えてしまったのか,今後の再発を防ぐためにどのような対策を練るのかをしっかりと書面で具体的に示すことが重要になります。 (2)家族滞在ビザ取得時の要件「扶養能力」について では次に,Aさんの「扶養能力」の問題について検討していきましょう。 扶養能力については,扶養者の経費支弁能力と認める資産等は扶養能力と認めることとされています。例えば,扶養者が資格外活動許可の範囲内で行った就労活動(いわゆるアルバイト)による預貯金は扶養能力として認められます。また,奨学金も扶養能力として認められる可能性があります。そのため,給付金額および給付期間を明示した奨学金給付に関する証明書があれば,それらも有力な立証資料となります。 では,オーバーワークにより得た金銭で扶養能力を証明することは出来るのでしょうか? そもそもオーバーワークは法律違反であり,厳格な罰則規定が設けられています。法律違反によって得られた収入をもって資金の証明が出来てしまうとしたら,法の趣旨を形骸化してしまう恐れがあると考えられます。 よって,いくら資金の証明ができても,扶養能力としての資産には含まれないと考えられます。 そのため,Aさんがオーバーワークで得た収入は資産に含めることはできません。Aさんの場合には,許可の範囲内で適法に行った就労活動で得た収入,および他の有する資産をもって,扶養能力を証明する必要があります。また,奨学金を受けていた事実があれば,その証明書も立証資料となります。 Aさんの場合,入管法違反という重大なマイナス要素があるため,奥様の家族滞在ビザの許可を取得することは容易ではありません。しかし,過去の在留状況が不良だからといって,今回の申請もまた疑わしいと断定することは妥当性を欠きます。このことは過去の判例でも指摘されています(東京地裁平21.10.16判決「在留資格認定証明書不交付処分取消請求事件」)。 Aさんの場合も,上記の証明を丁寧に行うことで,無事ベトナム人の奥様の家族滞在ビザの許可を取得することができました。 4.ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ方法のまとめ 今回の事例では,①扶養者の過去の法律違反が今回の在留申請に与える影響,②家族滞在ビザ取得の要件である扶養能力に法律違反によって取得した資産が含まれるか,の2点が問題となりました。 当社に相談が寄せられるものには,このような解決が難しそうな複合的事案が数多くあります。しかし,一見困難に見える問題も,ひとつひとつを丁寧に読み解くことで,これまでも多くの案件について解決に導いてきました。 今回の案件も,他の事務所では家族滞在ビザの許可は難しいと判断された案件です。 ご自身では解決の糸口が見えず,悩まれている方は是非当社までご相談ください。…