松原 桃子

帰化申請中に転職しても大丈夫?不許可リスクについて専門行政書士が解説!

帰化申請は結果が出るまで1年程度かかる長い手続きです。1年もあれば,環境や状況が変わることも珍しくはありません。「転職」もそんな変化の一つです。転職するつもりがなかったとしても,ある日突然,企業からスカウトやオファーを受けることがあるかもしれません。
帰化申請をしたあと,転職する機会が訪れた場合,はたしてそのまま転職することは可能なのでしょうか?
結論から申し上げると,転職すること自体は「可能」です。特に禁止されているわけではありません。ただし,帰化の許可を取る側面では,審査中の転職はおすすめできません。それは,転職することで経済的に安定していないと判断され,不許可となってしまうリスクが高いためです。
本コラムでは,帰化申請の審査中に転職する場合の影響について,専門行政書士が解説していきます。
帰化を検討している方で,転職もしたいと考えている方はぜひ最後までお読みください。

帰化申請の審査中に転職をした場合

帰化申請後,審査中に転職をした場合は,申請した法務局の担当事務官へ必ず報告してください。
転職先に関する書類など,法務局へ追加で提出が必要になります。転職先に記載してもらう書類もありますので準備に数週間かかる場合もあります。
追加の書類がすべて揃うまでは審査が中断することになるため,帰化申請後に転職をした場合は,トータルの審査期間が長くなってしまいます。

【転職をした場合の追加提出書類】
①転職先企業が作成した「在勤及び給与明細書」
②転職先の「勤務先附近の略図」
③転職先の給与明細書

①は転職先の人事部門などで作成してもらい,法人印を押印してもらう必要があります。
②は申請人ご自身で作成します。
③は転職先から発行され次第,法務局へ提出します。
これら以外にも,追加で提出を求められる場合があります。
帰化の審査をするうえで求められているものなので,法務局の指示に従って用意してください。

帰化申請する前に転職すれば大丈夫?

帰化申請の直前に転職することも,おすすめできません。
転職してから帰化申請をするまでの期間として,少なくとも半年,できれば1年は空けたほうが安心です。
転職して半年未満の場合,法務局での事前相談でも,帰化申請するタイミングを後ろ倒しするように言われることが多いです。

転職して半年未満の場合は,転職先に定着できるか不透明で安定しているとは言えない状態です。半年経過していれば,その間の給与実績などで評価してもらえることもあります。このあたりは,転職先の状況や申請する法務局によっても判断に差が出る部分ですので,事前相談の際にしっかり確認することをおすすめします。

過去の転職も帰化申請の審査に影響する?

帰化申請の審査中,申請前に転職することはおすすめできない話をしてきましたが,過去の転職についても帰化申請に影響があるのでしょうか。
過去に転職をしたことがある場合,転職そのものがマイナスになることはありません。
ただ,転職の内容によっては,帰化申請の審査に影響する場合もあります。主な3つのポイントを解説します。

①「年収」での影響

過去に何度か転職していて年収が下がっている方は,帰化申請の審査に影響する可能性があります。
帰化申請では,経済基盤が安定していることを評価するために「年収」を重視しています。転職するごとに年収が減少している,短い期間で頻繁に転職している場合は,「経済的に安定していない」と判断される可能性が高くなります。一方で,何度か転職していたとしても,転職するごとに年収が増加していることが示せれば,経済的に安定していると見なされる可能性があります。

②「仕事内容」での影響

過去に何度か転職している場合,仕事内容の一貫性や適法性について詳しく確認されることになります。
例えば,就労ビザの代表格である「技術・人文知識・国際業務」ビザの場合,
前回のビザ更新以降に転職している場合は,転職後の仕事内容がビザの要件に適合しているかについても確認されます。
同じ業界内でキャリアアップするための転職であれば,ポジティブに評価されることが多いですが,その一方で,異業種への転職が頻繁に行われると,定着性がなく不安定だと判断されるリスクがあります。

③「離職期間」での影響

前の職場を退職して新しい職場へ就職するまでの離職期間についても,帰化申請の審査に影響を与える場合があります。
短期間の離職であれば,次の職場を探していた期間として理解されやすいですが,離職期間が長期間だった場合,その期間中の生活費や生活の安定性について疑問を持たれてしまいます。
過去に半年以上の離職期間がある場合は,その理由とともに,不安定な状況ではなかったことを書面で説明できるようにしましょう。

「転職」以外でも注意すべきポイント

ここまでは転職について解説してきましたが,『仕事が変わる』という視点では,転職以外でも注意すべきポイントがあります。ここでは2つのポイントを解説します。

個人事業主(フリーランス)や会社経営者になる場合

申請時点では会社員として働いていた方が,審査中に個人事業主や会社経営者になった場合,ほとんどのケースで,法務局から帰化申請の取り下げを求められることになるでしょう。
個人事業主や会社経営者の方が帰化申請をする場合,最低でも直近2年分の確定申告書や決算報告書の提出が必要になります。事業の安定性や経営状況などを審査することができないため,
「審査できる状態になってから再度申請してください」と言われてしまいます。

無職になる場合

申請時点では会社員として働いていた方が,審査中に退職して無職となった場合は,生計が安定していないと判断され不許可になるリスクが高いです。
同居する親族がいる場合,その親族に十分な収入があればそれでカバーできることもありますが,持っているビザが「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザだった場合,早急に次の職場を見つけないと,「無職の状態でいる=在留資格に見合った活動をしていない」とみなされ,やはり不許可になるリスクが高まります。

帰化申請と転職についてまとめ

本ページでは,帰化申請と転職について解説しましたが,いかがでしたでしょうか。
転職はその時期や内容によって帰化申請の審査に影響を及ぼす場合があります。帰化と転職の両方を考えている方は,以下の①②どちらかにされることをおすすめします。

①転職から少なくとも半年経過した後に帰化申請をする
②帰化の許可が出てから転職をする

①の場合は,希望する会社に転職できる一方で,転職後の状況によっては帰化申請が難しくなる場合もあります。
②の場合は,日本へ帰化できる一方で,その頃希望する会社で同じような求人が出ていないかもしれません。
どちらにも一長一短ありますが,悩んだときはぜひ帰化の専門家にも相談してみてください。

行政書士法人第一綜合事務所では,帰化申請について全国各地から数多くのご相談をいただいております。当社での許可事例なども踏まえて,最適なプランをご提案いたします。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 松原 桃子

・日本行政書士会連合会(登録番号第24261750号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8991号)
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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