行政書士法人第一綜合事務所

知らなかったでは通用しない不法就労助長罪とは?

企業が不法就労活動をさせた場合に問われるのが,不法就労助長罪です。
外国人材を雇用する企業が絶対に知っておくべき不法就労助長罪について,入管専門の行政書士が事例を交えながら,徹底解説していきます。

なお,本ページは, “企業側”の責任を記載しています。
外国人側の責任は,法定外活動の際に問われる資格外活動罪とは? に記載していますので,本ページと併せてご参照ください。

1.不法就労活動とは?

不法就労助長罪を理解しようとした時,前提として不法就労活動の意味を理解する必要があります。
そのため,本チャプターでは,不法就労活動についてみていきます。

不法就労活動と一言にいっても,実は様々な不法就労の類型があるのをご存じでしょうか。

法務省出入国在留管理庁のページには,不法就労の類型として,以下の3つの場合が記載されています。

①不法滞在者や被退去強制者が働くケース
(例)
・密入国した人や在留期限の切れた人が働く
・退去強制されることが既に決まっている人が働く

このケースが,一般的な不法就労のイメージと近いのではないでしょうか。
いわゆるオーバーステイなどの不法残留の外国人が就労するケースを想定しています。
また,オーバーステイの他に,不法に入国した外国人,不法に上陸した外国人なども対象とされています。

②入国管理局から働く許可を受けていないのに働くケース
(例)
・観光等短期滞在目的で入国した人が働く
・留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに働く

観光や親族訪問を目的に短期滞在ビザで入国した場合,収入を伴う活動に就くことはできません。なぜなら,短期滞在ビザは入管法で就労が禁止されているからです。
また,留学ビザや家族滞在ビザは,就労禁止が原則となっており,資格外活動許可(アルバイトの許可)を受けないと就労活動に就くことができません。

このルールを破って就労活動をおこなえば,不法就労活動に該当することになります。

③入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース (例)
・外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が工場・事業所で単純労働者として働く
・留学生が許可された時間数を超えて働く

このケースの摘発事例が最も多くなっていきます。
とても重要な内容なので,上記の例を一つずつ説明しています。


外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が工場・事業所で単純労働者として働く

入管法の在留資格制度のもと,外国人の就労ビザは,活動類型ごとにカテゴリーされています。具体的にいうと,コックさんなら技能ビザ,語学学校の先生であれば技術人文知識国際業務ビザというような感じです。
要するに,コックさんとして技能ビザを取得しているのであれば,入管法で定められている技能ビザを超える活動によって報酬を受けられない,ということを意味しています。
そのルールを破った事例が,③の例で記載されている一つ目の内容です。


留学生が許可された時間数を超えて働く

次に,③の二つ目の事例を見ていきましょう。
先に記載したとおり,留学ビザを持っている留学生は,原則就労できません。もっとも,一定の職種制限,時間制限はあるものの,資格外活動許可(アルバイトの許可)を受けることによって,留学生も就労活動に就くことができます。
本事例は,留学ビザをお持ちの方のアルバイト時間上限(原則週28時間)を超えて就労活動をおこなってしまった事例です。


いかがでしたでしょうか。
不法就労活動が意外と身近にあることをご認識いただけたかと思います。

それでは,次のチャプターでは,不法就労活動をさせた場合に企業が問われる責任をみていきましょう。

2.不法就労助長罪とは?

上記では,不法就労活動についてみてきました。
本チャプターでは,企業が不法就労活動をさせた場合に問われる不法就労助長罪についてみていきましょう。

不法就労助長罪は,入管法73条の2にその規定があります。

第73条の2 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
一  事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた者
二  外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三  業として,外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
2(略)


73条の2 1項1号「事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた者」の意味について

ここでいう不法就労活動を「させた」とは,自分が外国人より有利な立場にあって,その優位的な立場を利用して,外国人に不法就労活動に従事することを働きかけることを意味します。

代表例は,不法就労活動をおこなっている外国人を雇用した雇用主です。
また,雇用主のみならず,従業員であっても監督的立場にある方は,不法就労活動をさせたと判断される可能性があります。


73条の2 1項2号「外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者」の意味について

本号でいう「自己の支配下に置いた」とは,不法就労をしている外国人の意思を左右できる状態のもとに置くことにより,指示・従属の関係が認められる場合をいうとされています。

居住場所を提供するなどして身辺の生活支援をする一方,それがために心理的に離脱困難な状態にある例があげられます。

また,パスポートを預かることや借金をさせることによって,外国人が離脱できない状態にあると認定されると,本号の適用を受けることになります。


73条の2 1項3号「業として,外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者」の意味について

本号の該当例としては,ブローカーがあげられます。
本号でいう「業として」とは,実は対価を得ることを意味するものではありません。反復継続しているか,又は反復継続して行う意思があれば,本号の「業として」に該当します。


ここまで,不法就労助長罪の条文についてみてきました。

ところで,そもそも外国人の不法就労活動によって,なぜ企業が責任を問われるか,おわかりでしょうか。

企業側は不法就労活動によって経済的利益を受けます。利益あるところに責任も帰するべきという報償責任の原理に基づいて,企業の責任を問うています。また,企業側も処罰対象とすることで,不法就労活動が抑止されることを期待しているのです。

次のチャプターでは,不法就労助長罪に問われた場合の罰則についてみていきましょう。

3.不法就労助長罪の罰則

不法就労助長罪に企業が問われた場合,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金(いずれも科される場合もあります)に問われます。

不法就労助長罪は本コラムのタイトルにあるとおり,「知らなかった」という言い訳が通用しません。

例えば,技術人文知識国際業務ビザを持つ外国人材を雇用している企業が,技術人文知識国際業務の枠外(法定外)の業務を就かせたことにつき,たとえ企業側に入管法の知識がなかったとしても,それは理由にならないということです。

また,留学ビザを持つ学生をアルバイトで雇用している企業について,確認を怠った結果,アルバイトの許可を取得していると勘違いしたような場合も同様です。

不法就労助長罪は,「知らなかった」が通用しない,非常に厳しいものであることをご認識いただけたかと思います。

4.不法就労助長罪に問われないために企業がすべきこと

知らなかったことを理由に,不法就労助長罪が免責されないことは先述のとおりです。
もっとも,企業に「過失がない場合」には,不法就労助長罪に問われないとされています。

過失がない場合とは,尽くすべき手段を全て尽くしている場合と説明されます。
抽象的でわかりにくいですよね。

ここでは,外国人材を雇用する際,企業がすべきことを具体的にみていきましょう。

①入管法の正しい理解をする

上述のとおり,外国人の就労ビザは,活動類型ごとにカテゴリーされています。保有するビザの活動範囲を正確に知らなければ,法定内の活動,法定外の活動にあるか判別がつきません。

定められた活動範囲を超えて報酬を受けることは,不法就労活動に該当します。
そのため,外国人材を雇用する場合,入管法の正しい理解は必要不可欠です。

②在留カードの有効性を確認する

入管が提供している以下のサイトから,在留カードおよび特別永住者証明書の番号の失効情報を確認することができます。

(参考サイト)出入国在留管理庁 在留カード等番号失効情報照会
https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx

残念ながら偽造在留カードも出回っていることから,本サイトでは在留カード有効性の証明にはならないとされていますが,外国人材を雇用する企業としては,尽くすべき手段を尽くしていると判断される余地は十分にあります。

ぜひ外国人材を雇用される企業は,本サイトを有効にご活用いただき,確認結果を保存する等の措置を講じるようにしてください。

③在留カード,パスポートを確認する

外国人材を雇用する場合,在留カードとパスポートは必ず確認しましょう。
ポイントはいくつかありますが,まずは在留カードの表面の「就労制限の有無」の欄を確認することです。また,アルバイト雇用の場合等には,在留カード裏面の「資格外活動許可欄」を確認するようにしてください。

ここで注意が必要なのは,在留カードだけでは判断できないケースがあるということです。具体的にいうと,特定技能ビザ,特定活動ビザ,技能実習ビザなどが該当します。これらのビザの場合には,パスポートに貼付されている指定書を確認する必要があります。

④専門家に相談する

一般的に,ビザを保有していれば就労できると考えられていますが,法定された活動内容から逸脱すれば不法就労活動となります。また,ビザの種類によっては,パスポートを見る必要があったり,アルバイトの時間を管理することが求められたりします。

大切なのは「ビザを取得できたか」ではなく,「どのように外国人材を雇用し,管理していくか」という視点です。
ビザを保有していても,企業におけるその後の外国人材の管理次第で,不法就労活動に陥ることもあり,それによって企業は,不法就労助長罪に問われるリスクを負うことになります。

外国人材の雇用における曖昧な点を明確にするため,国際業務の専門家を活用することも,法令遵守のためには有効な手段です。

5.まとめ

本ページでは,企業が問われる不法就労助長罪についてみてきました。

不法就労助長罪に問われた企業支援をおこなう際,必ずといっていいほど耳にするフレーズがあります。

「まさかこんなことになるとは…」

不法就労助長罪に問われた企業ご担当の方が皆さん仰います。

ちょっとした勘違いやボタンの掛け違いによって,企業は極めて大きな代償を支払わされることになるのです。

不法就労助長罪に問われると,企業は法的責任の他にも社会的責任も負うことになります。マスコミにも取り上げられる可能性は高いでしょう。
仮に不法就労助長罪に問われた企業として報道がなされると,企業のブランドイメージ,社会的信用は大きく失われます。

上記事態を回避するためには,外国人材の雇用に際し,企業がすべきことを正しくおこなう必要があります。

“外国人材を雇用したい”
“でも,何から手をつけてよいかわからない”

“現在外国人材を雇用している”
“しかし,今の雇用方法,管理方法が正しいかどうかわからない”

本コラムをご覧の方で,こんなお悩みをお持ちの方は,ぜひ当社へご相談ください。
外国人材の雇用方法のフロー構築から,外国人材の管理方法の確立へ向けて,ご提案をさせていただきます。