今井 幸大

就労ビザは契約社員や派遣社員でも取得できる?正社員でないとだめ?

契約社員や派遣社員として働こうとしている場合,就労ビザの取得ができるかどうか,正社員でないといけないのか心配ですよね。
実は,契約社員や派遣社員でも就労ビザの取得が可能であります。
決して正社員でないと就労ビザを取得できないわけではないのです。

この記事では,各雇用形態についての説明,契約社員や派遣社員の就労ビザの取得条件,契約社員や派遣社員として就労ビザを取得して労働するうえでの注意点をお話します。
なお,この記事ではもっとも代表的な就労ビザである技術・人文知識・国際業務ビザに絞って解説します。
就労ビザの種類は,就労ビザ19種類を行政書士が解説 をご参照ください。

1.正社員・契約社員・派遣社員・業務委託・アルバイトの違い

まず,以下の労働形態についての概要を説明します。

①正社員
②契約社員
③派遣社員
④業務委託
⑤アルバイト

①正社員

正社員とは,基本的に以下の条件を満たす従業員のことを指します。

1. 労働契約の期間の定めがない
2. 所定労働時間がフルタイムである
3. 直接雇用である

また,現在では正社員の在り方も多様化しています。
具体的には,以下のような感じです。

勤務地 所定労働時間 職務内容
正社員 限定なし 限定なし 限定なし
勤務地限定正社員 転勤するエリアが限定されていたり,転居を伴う転勤がなかったり,あるいは転勤が一切ない 限定なし 限定なし
職務限定正社員 限定なし 限定なし 担当する職務内容や仕事の範囲が他の業務と明確に区別され,限定されている
勤務時間限定正社員 限定なし 所定労働時間がフルタイムではない,あるいは残業が免除されている 限定なし

このように,転勤ができなかったり,残業ができなかったりしても,正社員になれるのです。
国籍や性別,家庭環境に左右されず正社員になれるチャンスはある時代と言って良いでしょう。

②契約社員

契約社員とは,企業と有期で雇用契約を締結する従業員のことです。
契約期間の上限は,基本的に3年ですが,労働基準法第14条に定める項目に該当する場合(厚生労働大臣が定める基準を満たす専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者との労働契約)は5年の契約が認められています。
また,契約期間が満了した場合は自動的に終了します。

ただし,同一企業に契約社員として5年以上継続して勤務した場合,無期労働契約への転換が認められています。
この無期労働契約への転換は,企業側は拒否できないため,希望さえすれば必ず正社員へ転換することができます。

③派遣社員

派遣社員とは,人材派遣会社(派遣元)と雇用契約を締結し,実際には派遣先の企業で労働する従業員のことです。
派遣労働者は派遣元ではなく,派遣先の指揮命令を受けて労働します。

派遣労働は,労働形態としては複雑であるため,「労働者派遣法」によってさまざまなルールが定められています。
この労働者派遣法は,基本的には派遣労働者を保護するためのものです。

ちなみに,派遣労働については,派遣期間終了後に正社員または契約社員として派遣先企業が雇用することをあらかじめ想定して就業する「紹介予定派遣」という制度があります。
この制度は労使双方にメリットがあるため,近年普及が進んでいます。

④業務委託

業務委託とは,企業と雇用契約を結ぶのではなく,特定の業務を遂行することで報酬を得るタイプの労働形態のことです。
成果物に対し報酬が支払われるため,労働時間については特に制限はありません。

業務委託を受ける場合,従業員ではなく「個人事業主」として仕事を受けます。
副業として業務委託を受ける場合も同様です。

業務委託には「請負契約」「委任契約」「準委任契約」があります。
いずれも業務の遂行や成果物に対して報酬が支払われることは共通していますが,成果物の完成責任の範囲などが異なります。

⑤アルバイト

アルバイトとは,企業と有期契約を結び,労働時間に応じて給料を得る労働形態のことです。
労働時間の融通が利くことがメリットですが,基本的には正社員よりも賃金が安い傾向があります。
また,労働時間は短いことが多いです。

2.契約社員や派遣社員でも就労ビザは取得できる

契約社員や派遣社員でも就労ビザの取得ができるかどうかですが,結論としては可能です。
なぜなら就労ビザの取得は,法律上契約形態は問われないことになっているためです。
そのため,契約社員や派遣社員だから就労ビザの申請が通らないのではないかという心配は必要ありません。

ただし,契約社員や派遣社員よりも,正社員の方が就労ビザの取得には有利であるというのは事実です。
その理由は,就労ビザの取得要件として,雇用の安定性や継続性が要求されるためです。
ただし裏を返せば,契約社員や派遣社員でも雇用契約期間が長ければ,就労ビザを取得できる可能性は高いといえます。
雇用契約期間は数ヶ月や半年程度では,上述のとおり雇用の安定性や継続性に疑義を持たれる可能性があるため,短くとも1年以上が好ましいと言えるでしょう。

3.契約社員・派遣社員の就労ビザの取得条件

契約社員・派遣社員の就労ビザの取得条件は,以下の5つです。

①学歴,職歴の要件
②職務内容の専門性と関連性
③外国人社員への報酬
④安定して外国人を雇用できるか
⑤外国人を雇用する必要性

就労ビザの取得をするためには,これらの条件を全て満たす必要があります。
では,それぞれについて解説します。

①学歴,職歴の要件

技術・人文知識・国際業務ビザを取得するためには,大学や専門学校で専門的な知識や技術を習得しなければなりません。
また,学士もしくは学士相応以上の学歴を有していること,もしくは日本の専門学校で専門士の学位を有していることも必要です。

②職務内容の専門性と関連性

大学や専門学校で専攻していた分野と職務内容は関連している必要があります。例えばIT業界でエンジニアやプログラマーとして働く場合は,大学や専門学校でプログラミングなどを専攻していなければなりません。
ただし,日本の大学や大学院を卒業している場合は,専攻科目と職務内容の関連性が異なっていたとしても就労ビザ取得の可能性があるため,個々の状況に合わせて判断することが必要です。

③外国人社員への報酬

日本人の社員に支払う給与と同等以上の条件で雇用しなければなりません。
近時の入管審査の傾向として,非常に厳しくチェックされている項目です。

④安定して外国人を雇用できるか

就職先の企業が経営的な視点から,外国人の雇用を安定して継続できることも要件です。
要は,すぐに外国人を解雇したり,会社が倒産してしまう状況では,外国人材は雇用することは困難ということです。
そのため,不安定な企業よりも,安定している規模の大きい企業に就職する方が,就労ビザの取得においては有利といえます。
ただし,小さな企業であったとしても,貸借対照表や損益計算書などの決算報告書や,給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表などで財務状況が健全であることを証明できれば,就労ビザの取得は十分可能です。

⑤外国人を雇用する必要性

企業にとって,外国人を雇用する必要性がない場合には,就労ビザの取得が難しくなるケースがあります。
例えば,海外進出を視野に入れていたり,海外取引をする場合などがこれに当たります。
このように外国人を雇用する必要性が明確になっていれば,就労ビザを取得できる可能性は高くなります。

4.契約社員・派遣社員として就労ビザを取得して働く際の注意点

契約社員や派遣社員として就労ビザを取得して働く際に注意すべきこととして,まず契約社員や派遣社員は雇用される期間が決まっていることによるデメリットがあることが挙げられます。
例えば,先述のとおり正社員と比較して雇用の継続性や安定性は低いと判断され,付与される在留期間の年数に影響してくる可能性があります。

また,就労ビザの有効期限が残っていても契約期間満了により失業するケースが想定されます。
このケースでは,就労ビザの取消期間(3ヶ月間)に注意をして,再就職先を探す必要があります。
さらに,退職をした日から14日以内に入管法19条の16「所属機関等に関する届出」を行う必要があります。

次に派遣社員の場合は,不法就労に注意することが重要です。

どういうことかというと,派遣社員の場合は派遣先が変わることで仕事内容も異なる可能性があるため,取得している就労ビザと仕事内容が一致しなくなってしまう可能性があります。
このようなことが起こらないよう企業側と認識をすり合わせておく必要があるでしょう。

また,派遣社員の場合は勤務先の変更が起こる頻度が高いため,入管への届出も忘れてはいけません。
そしてこの手続きは,変更があった日から14日以内におこなう必要があります。

そして,雇用契約の無期転換についても把握しておきましょう。

雇用契約の無期転換は一般的に「5年ルール」と呼ばれ,雇用契約期間が5年を超えると無期労働契約への転換を要求できるものです。
この5年ルールは外国人にも適用されます。
しかし,無期転換は被雇用者から要求するものであるため,この制度を知らないと無期転換ができません。
そのため,無期転換ができることは忘れないでおきましょう。

5.まとめ:就労ビザは契約社員や派遣社員でも取得できる?正社員でないとだめ?

契約社員や派遣社員でも,就労ビザの取得は可能であります。
当社へお問い合わせいただく企業様の中には,正社員でないと就労ビザが取得できないと勘違いされている方は少なくありません。

ただし,契約社員や派遣社員ならではの気をつけるべきポイントがあるため,その点には注意が必要です。

まとめとして,

  • 就労ビザは契約社員や派遣社員でも取得できる
  • ただし,雇用の安定性は正社員より劣ってしまう
  • 正社員以外は,雇用契約の安定性,継続性の立証が重要

もし就労ビザの取得についてご不安がございましたら,行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にご相談ください。
就労ビザ取得の可能性を上げるためのアドバイスをさせていただきます。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

特定行政書士 今井 幸大

・日本行政書士会連合会(登録番号第18080677号)
・東京都行政書士会(会員番号第11843号)
東京都出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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