依田 隼弥

留学ビザから就労ビザへの変更手続き|許可要件や許可率,注意点を解説!

留学ビザから就労ビザへの変更申請は,5人に1人の割合で「不許可」になる手続きです。申請すれば必ず許可がされるというわけではありませんので,留学生の採用担当者の方は,許可要件や手続き上の注意点などを把握しておくことをおすすめします。
このコラムは,出入国在留管理庁が公表している留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン(平成27年2月策定・令和2年4月改定)をもとに,留学ビザから就労ビザへの変更手続きの注意すべきポイントを記載しています。

対象は,下記の方です。

  • 留学生の方
  • 留学生を採用した企業の人事担当の方
  • 専門学校,大学で就職支援をされている方

1.就労ビザとは?

外国人が日本で生活するためには,在留資格(ビザ)が必要です。
ビザは外国人が日本で行う活動内容に応じて分類されており,日本で働くためのビザも,働く内容に応じて複数用意されています。(これら働くためのビザの総称として,このコラムでは「就労ビザ」と表現しています。)。
留学生が日本で就職するためには,「留学ビザ」から「就労ビザ」へのビザの種類を変更する必要があります。

2.留学ビザから就労ビザへの変更申請が許可されるための要件

留学ビザから就労ビザへの変更申請が許可されるためには,以下の4つの要件が必要です。

①入管法が規定している業務内容に当てはまること(在留資格該当性)
留学生が学校を卒業さえすれば,どのような業務内容の仕事でもできるわけではなく,専門的技術や知識を必要とする業務や外国人特有の感性が求められる業務に当てはまる必要があります。

いわゆるホワイトカラーの職種,ITエンジニア,翻訳・通訳の業務が代表的な仕事ですが,実務上は可否の判断が難しいものもあるため,慎重に確認することが求められます。

就労ビザの観点からは,どのような会社に就職するかが重要なのではなく,どのような業務内容なのかがとても重要です。
留学生の皆さんは,「業種」だけではなく,「業務内容」をしっかり確認して,就職活動をするようにしてください。

②学歴や職歴,保有する資格などの基準に適合していること(上陸許可基準適合性)
業務に必要な知識に関連する科目を専攻して,大学や専門学校を卒業していることが必要です。
専攻科目とこれから従事する業務との関連性については,後ほど7(2)で入管が公表する事例をご紹介します。

③素行が悪くないこと
留学ビザから就労ビザへの変更が許可されるためには,素行が悪くないことが求められています。

この点については,「6.留学生が就労ビザ申請をする際に注意すること」で詳しくご説明します。

④入管法で決められた届出をおこなっていること
入管法では,「住居地の変更届」をはじめ,外国人に届出義務を課しています。
在留カードの住居地以外の記載事項に変更があった場合も届出が必要です。

留学生の皆さんは,どのようなケースで何の届出が必要なのかを知っておく必要があります。

3.留学ビザから就労ビザへの変更申請の流れ

「応募先の企業から採用内定をもらったが,就労ビザの手続きは自分で行うように言われた」という留学生からのお問い合わせや,「会社で初めて外国人留学生を採用することになったが,その後の手続きの流れがわからない」といった企業の人事担当者の方からのご相談が当社に寄せられます。

留学ビザから就労ビザの変更申請においては,内定のタイミングに合わせて以下の2通りに分けて対応するようにしましょう。

3-1.卒業時点で内定している場合

4月入社予定の新卒内定者を例に,留学ビザから就労ビザへの変更申請の流れと注意点をご紹介します。

① 採用内定
・留学生と企業の双方で必要書類を準備
 ※就労ビザへの変更が許可されるまでは,正社員としての勤務はできません。

② 12月~ 出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請
・留学生の居住地または勤務予定先の住所を管轄する入管局へ申請
 ※勤務予定先の所在地を管轄する入管へ申請する場合は,勤務予定先の従業員が申請取次資格を保有している必要があります。

・留学生または申請取次者が書類を提出
 ※企業の担当者が代理人として申請書類を提出することはできません。
・入管より資料の追加提出要請があれば,準備をして提出

③ 1月~ 出入国在留管理局から審査結果の通知
・申請を行った方の自宅(従業員が申請を取次いだ場合は勤務予定先企業)に審査結果の通知はがきが届きます。

④ 3月~ 出入国在留管理局で新しい在留カードの受領
・留学生または取次者が在留カードを受領
 ※卒業証明書と結果の通知はがきを持参します。

⑤ 4月~ 入社

以上が,留学ビザから就労ビザへの変更申請の流れです。

このように見ると,書類の準備から申請,新しい在留カードの受領に至るまで,留学生や企業のご担当者にかなりの負担があることがわかります。

詳しくは,以下のページを参考にしてください。

>>就労ビザの取得 についてはこちら

3-2.卒業後も就活中の場合

留学生が卒業後も未内定で就職活動を続行している際は,「特定活動」への変更が必要になります。留学ビザから就労ビザの切り替えのタイミングは,【内定→就労ビザへの変更】が順番であることを確認しておきましょう。

4.留学ビザから就労ビザへ変更申請するための必要書類

留学ビザから就労ビザへ変更申請をする際には,以下の書類が必要となります。
ただし,会社の規模により省略可能な資料があるほか,申請内容によっては入管から追加で提出を求められる書類もあります。
あくまで一般的なものとしてご理解ください。
以下は,本人または会社が準備する必要書類です。手続きを進める際は,事前に行政書士に確認して書類の不備がないようにしましょう。

4-1.本人が準備する必要書類

1.在留資格変更許可申請書(申請人作成用)
2.写真(縦4cm×横3cm)
3.大学の卒業証明書
※ 専門学校を卒業し,専門士又は高度専門士の称号を取得した者については,専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
4.パスポート及び在留カード
※ 申請時に入管窓口で提示します。

4-2.会社が準備する必要書類

会社が準備する必要書類については,カテゴリーごとに異なる書類と共通書類に分けて確認しましょう。

※共通書類

  • 在留資格変更許可申請書(所属機関等作成用)
  • 労働条件通知書/雇用契約書

カテゴリー別の必要書類については,以下のページより確認できます。

>>就労ビザ カテゴリー はこちら

5.留学ビザから就労ビザの申請許可率

皆さんは,留学ビザから就労ビザへの変更申請の許可率はご存じでしょうか。
下記のデータは,2021年11月,出入国在留管理庁が公表した「留学生からの就職目的の処分数等の推移」です。

(単位 人) 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
処分数 21,898 27,926 30,924 38,711 34,183 31,955
許可数 19,435 22,419 25,942 30,947 29,689 28,974
不許可数 2,463 5,507 4,982 7,764 4,494 2,981
許可率 88.80% 80.30% 83.90% 79.90% 86.90% 90.70%

年度によってバラつきはあるものの,許可率が100%の年はありません。
この表は,夢見て日本へ留学した若者の一部が,志半ばで帰国の途を余儀なくされたことを意味しています。

2019年をご覧ください。
留学ビザから就労ビザへの変更申請の許可率は,79.9%
言い換えると,5人に1人が不許可という憂き目にあっているということです。

留学ビザから就労ビザへの変更申請の際に,どのような理由で不許可になるのでしょうか。

以下では,留学ビザから就労ビザへの変更申請の際の不許可の理由と,留学生が就労ビザ申請をする際に注意する点をご説明します。

6.留学生が就労ビザ申請をする際に注意すること

留学ビザから就労ビザへの変更申請が不許可になる理由は,以下の内容があげられます。

  • 留学生のアルバイトのオーバーワーク
  • 留学生として在学状況が良くない(出席率・成績が悪い)
  • 犯罪行為等がある

6-1.留学生のアルバイトのオーバーワーク

留学生のアルバイト時間については,以下の規定があります。

入管法施行規則第19条第5項1号
一週について二十八時間以内(留学の在留資格をもつて在留する者については,在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは,一日について八時間以内)・・・(以下略)

アルバイトのオーバーワークは,留学ビザから就労ビザへの変更申請が不許可となる最も多い原因です。
留学生の皆さんは,くれぐれもアルバイト時間を守るようにしてください。

注意が必要なのは,「一週について二十八時間以内」,「在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるとき」の意味です。

「一週について二十八時間以内」の計算は,連続するどの7日間を見ても,合計で28時間以内であることが必要です。
日曜日から土曜日までのアルバイト時間の合計で判断するものではありませんので,誤解のないようにしてください。

次に注意が必要なのは「在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるとき」の意味についてです。
これについては,留学生だけでなく,留学生を雇用するアルバイト先企業においても,誤解している方が多くいらっしゃいます。

正しくは,「学則で定める長期休業期間」ですから,例えば定期試験が終わって授業がない期間であっても,学則で休業とされていなければ長期休業期間には該当しません。
この誤解によって,アルバイト時間が増加し,1週間の労働時間が超過してしまうケースがあります。

時間超過のリスクを防ぐためにも,企業側は,留学生に長期休業期間の報告と学則のコピーを提出してもらうことを徹底すると良いでしょう。

6-2.留学生として在学状況が良くない

留学ビザから就労ビザへ変更申請をする際は,就労ビザの要件さえ満たしていれば許可を取得できるわけではありません。
留学生の時の在学状況も審査に大きな影響を与えます。出席率が低い,または,成績が良くない留学生は,就労ビザ取得のハードルも高くなります。

たとえ日本での就職が決まっても,在学状況によっては就労ビザが取得できない場合もあります。

就労ビザ取得を目指している留学生の皆さんは,以上を理解して学生生活を送るようにしてください。

6-3.犯罪行為等がある

日本の法律を守って留学生活を送っている場合には,特段問題にはなりません。
しかし,近頃は留学生が意図せず犯罪行為に巻き込まれてしまう事例も増加しており,その点には注意が必要です。

例えば,「自宅で荷物を受け取るだけ」というアルバイトに応募したところ,自宅に違法薬物の国際小包が届いて受け取ってしまったり,在留カードを人に貸したところ,知らないうちに携帯電話が契約されてしまったり,といったトラブル事例が増えています。

“短い時間で稼げるアルバイトだから”
“友達や先輩もやっているから”
と安易な気持ちで行動することは,絶対に避けましょう。

7.留学生の採用を目指される企業の方へ

留学生を採用するにあたって,企業の人事担当の方には以下の点に注意いただく必要があります。

  • 業務内容を意識した採用活動を行うこと
  • 企業での業務内容と,学校で履修した内容との関連性を意識すること
  • 留学生の在学中の素行を確認すること

7-1.業務内容を意識した採用活動

たとえ人物的に高評価で日本語能力が高くても,就労ビザとして想定されている業務内容でなければ就労ビザを取得することはできません。
就労ビザを取得するためには,業務内容が就労ビザの活動類型にあてはまっているか,正確に判断する必要があります。

7-2.企業での業務内容と学校での履修内容の関連性を意識する

企業での業務内容と学校教育機関での履修内容の関連性を判断するには,採用する留学生の最終学歴が「大学卒業」か「専門学校卒業」という峻別するのが合理的です。

まず,最終学歴が大学卒業の場合,企業での業務内容と大学での履修内容との関連性は,ある程度柔軟に判断されています。

次に,専門学校卒業の場合,大学卒業の場合とは取り扱いが大きく異なります。
専門学校卒業の場合には,企業での業務内容と専門学校での履修内容は「一致していること」が求められています。

この関連性の立証が曖昧であったり,そもそも立証ができていないケースでは,留学ビザから就労ビザへの変更申請は不許可になってしまう可能性が高くなります。

ここからは,入管が公表する許可事例をいくつかご紹介します。
専門学校卒業のケースでは不許可事例もご紹介しますので,合わせてご確認いただくことで理解が深まるかと思います。

【大学卒業の場合】

〇許可事例

  • 経営学部を卒業した者が,コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき,翻訳・通訳に関する業務に従事するもの。
  • 経済学部を卒業した者が,ソフトウェア開発会社との契約に基づき,システムエンジニアとして稼働するもの

【専門学校卒業の場合】

〇許可事例

  • 情報システム開発学科においてC言語プログラミング,ビジネスアプリケーション,ネットワーク技術等を履修した者が,電気機械・器具製造を行う企業において,現場作業用システムのプログラム作成,ネットワーク構築を行うもの
  • 国際ビジネス学科において,観光概論,ホテル演習,料飲実習,フードサービス論,リテールマーケティング,簿記,ビジネスマナー等を履修した者が,飲食店経営会社の本社事業開発室において,アルバイトスタッフの採用,教育,入社説明資料の作成を行うもの
〇不許可事例

  • 国際ビジネス学科において,英語を中心に,パソコン演習,簿記,通関業務,貿易実務,国際物流,経営基礎等を履修した者が,不動産業(アパート賃貸等)を営む企業において,営業部に配属され,販売営業業務に従事するとして申請があったが,専攻した中心科目は英語であり,不動産及び販売営業の知識に係る履修はごくわずかであり,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの

8.留学ビザから就労ビザへの変更申請のまとめ

留学ビザから就労ビザへの変更申請をする際のポイントを解説してきましたが,ご理解いただけましたでしょうか。

留学ビザから就労ビザへの変更申請は,5人に1人が「不許可」になる申請です。
せっかく日本で頑張って学んだのに,それを活かせないのは本当にもったいないことです。
どれだけ就職活動を頑張っても,就労ビザの要件を満たさない場合には,残念ながら日本で働くことはできないのです。

留学生の皆さんは,日本のルールを守り,“就労ビザが許可される”就職活動に励んでください。

企業のご担当者様においては,不意打ちのビザ不許可を受けることは,今後の人事に大きな影響を与えることかと思います。
そのような不許可は,何としても避けたいものです。
では,そうならないためには,企業側はどのような取組みをすれば良いのでしょうか。

就労ビザの許可が難しくなるのは,求人の内容,採用の過程にそれぞれエラーがあるからです。
つまり,就労ビザ申請を行う前の過程でエラーをなくすことができれば,企業側が就労ビザの申請で困ることはありません。

“日本人の代わりに外国人を採用する時代”は,もう終わりました。

これからは国際競争力を高める意味でも,優秀な外国人材を採用できるかどうかが勝負を分かつ時代です。
そのためには,外国人材の受入体制を整備することが日本企業には求められています。

私たちは,留学生が日本で活躍できる社会づくりのために,留学生就職促進プログラムに取り組んできました。主な活動内容は,関西大学様のコンソーシアム機関として,留学生の就労ビザに関する支援を行ってまいりました。

留学生が就労ビザの知識不足で不許可になることを未然に防止したい。
そして,日本企業が優秀な留学生を採用できるお手伝いをしたい。
そのような考えのもと,日々活動を行っております。

初回のご相談は無料で承っています。
英語をはじめ,中国語,ベトナム語にも無料で言語対応が可能です。

留学ビザから就労ビザへの変更,外国人材の受入体制の整備など,お困り事がございましたら,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

依田 隼弥

・令和3年度行政書士試験合格
山梨県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,国際結婚手続き,永住権取得など国際業務を専門としている。

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