留学ビザから就労ビザへの変更手続き
本ページは,入管が公表している「留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン」(平成27年2月策定・令和元年12月改定)をもとに,留学ビザから就労ビザへの変更手続きの注意すべきポイントを記載しています。
対象は,下記の方です。
- 留学生の方
- 留学生を採用した企業の人事担当の方
- 専門学校,大学で就職支援をされている方
Index
1.留学ビザから就労ビザへの変更申請が許可されるための要件
留学ビザから就労ビザへの変更申請が許可されるためには,
(1)在留資格該当性,(2)上陸許可基準適合性,(3)素行が悪くないこと,(4)入管法で定められている届出をおこなっていること,の4つの要件が必要とされています。
(1)在留資格該当性
就労ビザは,入管法において活動内容ごとにカテゴライズされています。
入管法に定める活動に該当することを“在留資格該当性あり”と言います。
反対に,入管法に定める活動に当てはまらない場合には,“在留資格該当性なし”と言います。
具体例をあげてみましょう。
例えば,通訳の仕事に就きたいと考えた場合,通訳の仕事は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当します。
そのため,この場合には在留資格該当性ありと判断します。
つまり就労ビザの観点からは,どのような会社に就職するかが重要なのではなく,“仕事内容”がとても重要ということです。
留学生の皆さんは,「業種」ではなく,「仕事内容」を重視して,就職活動をするようにしてください。
(2)上陸許可基準適合性
上陸許可基準とは,経済や国民生活に及ぼす影響を考慮して,入管政策上の観点から調整を要する外国人の活動について,(1)の在留資格該当性に加えて,法務省令において定められている要件のことをいいます。
少し難しいので,噛み砕いて説明します。
上記の例で,通訳の仕事は技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性があるとご説明しました。
しかし,在留資格該当性だけで就労ビザが取れるということになれば,どうなるでしょう。
通訳であれば,就労ビザは“誰でも”取得できることになってしまいます。
そこで,在留資格該当性だけではなく,上陸許可基準省令に適合することを求めることにしたのです。
具体的には上陸許可基準省令では,学歴や職歴,また保有する資格などが定められています。
このようにすることで,就労ビザの取得に絞りをかけているのです。
(3)素行が悪くないこと
留学ビザから就労ビザへの変更が許可されるためには,素行が悪くないことが求められています。
一般的に,素行が悪いというと,言葉遣いが悪かったり,喧嘩っ早いなどをイメージしますが,入管審査における素行の良し悪しの判断はそれに留まりません。
この点については,3.留学生が就労ビザ申請をする際に注意すること で詳しく解説します。
(4)入管法で決められた届出をおこなっていること
最後の要件は,入管法で決められた届出をおこなっていることです。
入管法では,第19条の7から第19条の13まで,第19条の15及び第19条の16で外国人に届出義務を課しています。
留学生が就労ビザを申請する場合,これらの届出が適正になされていることが求められているのです。
以下に,具体的に届出項目を列記しています。
留学生の皆さんは,どのようなケースで何の届出が必要なのかを理解してください。
- 第19条の7(新規上陸後の住居地届出)
- 第19条の8(在留資格変更等に伴う住居地届出)
- 第19条の9(住居地の変更届出)
- 第19条の10(住居地以外の記載事項の変更届出)
- 第19条の11(在留カードの有効期限の更新)
- 第19条の12(紛失等による在留カードの再交付)
- 第19条の13(汚損等による在留カードの再交付)
- 第19条の15(在留カードの返納)
- 第19条の16(所属機関等に関する届出)
2.留学ビザから就労ビザの申請許可率
皆さんは,留学ビザから就労ビザへの変更申請の許可率はご存じでしょうか。
下記のデータは,2018年10月,法務省入国管理局が公表した「留学生からの就職目的の処分数等の推移」です。
横スクロールで表全体をご覧いただけます。
単位:人 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
処分数 | 9,034 | 11,410 | 11,789 | 10,230 | 8,467 | 9,143 | 11,698 | 12,793 | 14,170 | 17,088 | 21,898 | 27,926 |
許可数 | 8,272 | 10,262 | 9,584 | 7,831 | 8,586 | 10,969 | 11,647 | 12,958 | 15,657 | 17,088 | 19,435 | 22,419 |
不許可数 | 762 | 1148 | 749 | 646 | 636 | 557 | 729 | 1,146 | 1,212 | 1,431 | 2,463 | 5,507 |
許可率 | 91.6% | 89.9% | 93.6% | 93.7% | 92.5% | 93.9% | 93.8% | 91.0% | 91.4% | 91.6% | 88.8% | 80.3% |
年度によってバラつきはあるものの,許可率100%の年はありません。
この表は,夢見て日本へ留学した若者の一部が,志半ばで帰国の途を余儀なくされたことを意味しています。
2017年をご覧ください。
留学ビザから就労ビザへの変更申請の許可率は,80.3%
言い換えると,5人に1人が不許可という憂き目にあっているということです。
3.留学生が就労ビザ申請をする際に注意すること
留学ビザから就労ビザへの変更申請が不許可になる理由として多いのが,
- 留学生のアルバイトのオーバーワーク
- 留学生として在学状況が良くない(出席率・成績が悪い)
- 犯罪行為等がある
というものです。
(1)留学生のアルバイトのオーバーワーク
留学生のアルバイト時間については,入管法施行規則第19条第5項1号に下記のような定めがあります。
一週について二十八時間以内(留学の在留資格をもつて在留する者については、在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは、一日について八時間以内)…(以下略)
アルバイトのオーバーワークは,留学ビザから就労ビザへの変更申請の中で最も多い不許可原因です。
留学生の皆さんは,くれぐれもアルバイト時間を遵守するようにしてください。
他に注意が必要なのは,「一週について二十八時間以内」,「在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるとき」の意味です。
「一週について二十八時間以内」の計算は,連続するどの7日間を見ても,合計で28時間以内であることが必要です。
日曜日から土曜日までのアルバイト時間合計で判断するのではありませんので,誤解のないようにしてください。
次に,注意が必要なのは「在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるとき」の意味についてです。
留学生の勘違いが非常に多く,また,留学生を雇用するアルバイト先企業においても,とても誤解が多いです。
正しくは,「学則で定める長期休業期間」ですから,定期試験が終わって授業がない期間であっても,学則で休業とされていなければ長期休業期間には該当しません。
この勘違いによって,アルバイト時間が増加し,1週間の労働時間が超過してしまうケースがあるのです。
そのため,留学生の皆さんは長期休業期間をアルバイト先にきちんとお伝えするようにしましょう。
また,留学生のアルバイトを受入れる企業のご担当の方においては,時間管理の徹底という意味でも,学則のコピーなどを入手するのも一つの方法です。
(2)留学生として在学状況が良くない
留学生として在学状況が良くないとは,例えば,日本で専門学校を卒業し,就労ビザへの変更申請をする際,卒業はしたものの出席率が芳しくないような場合です。
留学ビザから就労ビザへ変更申請をする際には,就労ビザの要件さえ満たしていれば許可を取得できるわけではありません。
これまでの活動内容,すなわち留学生の時の在留状況も就労ビザの審査に大きな影響を与えるのです。
そのため,たとえ日本での就職が決まっても,これまでの勉学状況が良くなければ就労ビザは取得できません。
留学生の皆さんは学生の本分は勉強であると心得,学生生活を送るようにしてください。
(3)犯罪行為等がある
法律を遵守し,留学生活を過ごしている場合は特段問題にはなりません。
しかし,近頃は留学生が意図せず犯罪行為に巻き込まれている事例も増加しています。
例えば,自宅に居ながら荷物を受け取るだけのアルバイトや,在留カードを人に貸してしまった事例などでは,後に思いがけないトラブルに発展しています。
“割の良いアルバイトだから”
“友達,先輩もやっているから”
と安易な気持ちで行動することは,絶対に避けましょう。
4.留学生の採用を目指される企業の方へ
企業の人事担当者の方は,留学生の採用にあたり,下記の事項にご注意いただく必要があります。
- 業務内容を意識した採用をしていただくこと
- 企業で行う業務内容と教育機関での修得内容の関連性を意識していただくこと
- 留学時代の素行を確認すること
(1)業務内容を意識した採用をしていただくこと
「業務内容を意識した採用をしていただくこと」とは,いわゆるジョブ型雇用を意識していただくことです。
たとえ人物的に高評価で日本語能力が高くとも,在留資格該当性がない業務であれば就労ビザは取得できません。
そのため,就労ビザを取得するためには,業務内容が就労ビザの活動類型にあてはまっているか,正確に判断する必要があります。
近時では,留学生が企業担当者のミスを法的に主張するようなケースも見られます。
無用無益な争いを未然に防ぐためにも,上記のご確認をきちんとしてください。
(2)企業で行う業務内容と教育機関での修得内容の関連性を意識していただくこと
企業で行う業務内容と教育機関での修得内容の関連性の判断は,採用する留学生が大学卒業か専門学校卒業か峻別するのが合理的です。
まずは,大学卒業の場合です。
「大学における専攻科目と就職先における業務内容の関連性の柔軟な取扱いについて」(平成20年7月17日)という通達が入管局長から出されており,企業で行う活動内容と教育機関での修得内容の関連性の程度は柔軟に判断されています。
したがって,上記の関連性について,大学卒業の場合には緩やかにご判断いただいて構いません。
次は,専門学校の場合です。
先述の大学卒業の場合とは,取扱いが大きく異なります。
専門学校卒業の場合には,企業で行う活動内容と教育機関での修得内容は,一致していることが求められています。
例えば,観光系の専門学校を卒業した方が,不動産会社で勤務するのは困難です。
なぜなら,観光系の専門学校で修得した内容が,不動産会社で行う活動内容と一致しないと判断されるからです。
この関連性の立証が曖昧であったり,そもそも立証ができていないケースでは,留学ビザから就労ビザへの変更申請は不許可になってしまう可能性が高くなります。
専門学校卒業の留学生を採用される場合は,特に上記の関連性を強く意識するようにしてください。
(3)留学時代の素行を確認すること
留学時代の素行については,企業の人事担当者の方は,面接で確認することをお勧めします。
なぜなら,上述のとおり,留学生のアルバイトのオーバーワークや,法律違反などの過去は,留学ビザから就労ビザへ変更する際,大きなネガティブ要素となり,場合によっては就労ビザ申請が不許可になることもあり得ます。
不意打ちの就労ビザ不許可を防ぐため,面接で確認するようことをお勧めします。
なお,面接の際に留学生の素行を確認する場合には,厚生労働省告示を意識する必要があります。
具体的には,就労ビザ申請に必要があることを留学生に明示してから,留学時代の素行を確認することが必要です。
その他の注意事項については,【技術人文知識国際業務ビザ】ののコラムに詳細を記載していますので,ぜひご覧ください。
5.留学生の就労ビザ許可率向上のための取組み
私たちの目指すべきところは,日本に留学すれば,学びがあり,働くことが出来て,グローバル社会で活躍できる,そのような社会実現のための一助を担うことです。
私たちの取組みの代表例は,留学生就職促進プログラムです。
このプログラムは,文部科学省が主体となって,日本の成長につながる優秀な外国人留学生の受入れを増加させるために,国公私立大学,業界団体並びに企業及び留学生支援団体等が緊密に連携し,外国人留学生に対する国内企業への就職支援を図るものです。
下記の大学が本プログラムの選定大学になっており,当社は関西大学様のコンソーシアム機関として,留学生に対し,就労ビザに関する法的支援を行っています。
なお当社は,行政書士法人として日本で唯一のコンソーシアム機関です。
★留学生就職促進プログラムの選定大学
- 関西大学
- 北海道大学
- 東北大学
- 山形大学
- 群馬大学
- 東洋大学
- 横浜国立大学
- 金沢大学
- 静岡大学
- 名古屋大学
- 愛媛大学
- 熊本大学
他の取組みとしては,大学,専門学校などでの就労ビザ説明会の開催です。

大阪府 様,SUCCESS-Osaka 様

羽衣国際大学 様

関西国際大学 様

ECC国際外語専門学校様

学校法人トラベルジャーナル学園 様

大阪YMCA国際専門学校 様
私たちは日本の未来を見据え,“留学ビザから就労ビザへの申請不許可を未然に防ぐこと”に本気で取り組んでいます。
6.留学ビザから就労ビザへの変更申請のまとめ
留学ビザから就労ビザへの変更申請をする場合のポイントは,ご理解いただけましたでしょうか。
留学ビザから就労ビザへの変更申請は,5人に1人が不許可になる申請です。
せっかく日本で頑張ってきたのに,それを活かせないのは本当にもったいないです。
在留資格該当性がない場合には,残念ながらどれだけ頑張って就職活動をしても報われません。
留学生の皆さんは,日本のルールを守り,“就労ビザが許可される”就職活動に励んでください。
企業のご担当者様においては,不意打ちのビザ不許可を受けることは,今後の人事に大きな影響を与えることかと思います。
そのような就労ビザの不意打ちの不許可は,何としても避けたいものです。
では,そのような事態を回避するためには,日本企業はどのような取り組みをすれば良いのでしょうか。
就労ビザ申請が難しくなるのは,①求人内容,②採用の過程にエラーがあるからです。
つまり,就労ビザ申請前の過程でエラーを無くすことができれば,日本企業が就労ビザの申請で困ることはありません。
“日本人の代わりに外国人を採用する時代”は,もう終わりました。
これからは国際競争力を高める意味でも,優秀な外国人材を採用できるかどうかが勝負を分かつ時代です。
そのためには,外国人材の受入体制を整備することが日本企業には求められています。
私たち行政書士法人第一綜合事務所は,日本で頑張ってきた留学生が報われる社会の実現を目指しています。
留学生が就労ビザの知識がなくて不許可になることを未然に防止したい。
そして,日本企業が優秀な留学生を採用できるお手伝いをしたい。
そんな風に考え,日々活動をおこなっています。
ご相談は無料で承っております。
英語,中国語,ベトナム語,韓国語にも無料で言語対応が可能です。
留学ビザから就労ビザへの申請相談,外国人材の受入体制の整備など,お困り事がございましたら,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。