渡邉 直斗

法定外活動の際に問われる資格外活動罪とは?

本ページでは,企業が外国人材を雇用する上で,また外国人の方が企業で勤務する上で,重要な視点になる資格外活動罪について解説していきます。

資格外活動罪を理解するには少々難解なところもあり,専門的な記載も多くなるかと思います。しかし,外国人材を雇用される企業ご担当者様,外国人の方については,正しく働くために必要となる知識ですので,最後までお付き合いください。

1.資格外活動罪とは?

我が国の在留資格(一般的にビザと呼ばれるもの。)は,外国人が本国に入国・在留して行うことのできる活動等を類型化したものと定義されます。簡単にいうと,調理師で勤務するなら技能ビザ,会社経営をするなら経営管理ビザ,大学教授の職に就くのであれば教授ビザといった具合です。

言い換えると,どの活動類型にも該当しない場合には法定外活動と評価され,ビザを取得することはできません。実務的にいうと,通訳として勤務するとして就労ビザを取得したにも関わらず,活動実態は倉庫内での単純作業や飲食店での接客などを行っている場合には,どの活動類型にも該当せず,法定外活動として入管法違反になることを意味します。

この際に問われるのが,資格外活動罪です。

先に述べたとおり,外国人は予め類型化した活動を行うことを予定して在留資格を付与されます。にもかかわらず,本来の在留資格の活動以外の活動で,かつ,収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動に従事する場合に,資格外活動罪に問われる可能性が出てきます。

つまり,外国人の方は,在留資格の活動範囲内でしか収入を得ることができないことを意味し,このルールを破った場合に,資格外活動罪に問われることになります。

上記に関連して一点補足をすると,収入を伴わない活動については,資格外活動罪の対象にならないということです。例えば,昼間は会社勤めしている外国人が,夜間の学校へ通う場合を例にあげてみましょう。一見すると,就労ビザを持っている外国人が,留学という別の活動を行うためには,入管で何らかの許可を取得しなければならないように感じられる方もいるのではないでしょうか。

今回の事例では,留学の活動において収入は得ていません。そのため,資格外活動罪が成立する余地はないというのが正しい結論です。

2.専従資格外活動罪の正しい理解

実は資格外活動罪は,専従資格外活動罪と非専従資格外活動罪に分類されます。
本チャプターでは,専従資格外活動罪の詳細をみていきましょう。

専従資格外活動罪については,入管法70条1項4号にその規定があります。

入管法70条抜粋
次の各号のいずれかに該当する者は,三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し,又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
④第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者

本条文を簡単に説明すると,違法な資格外活動(法定外活動)を専ら,かつ,明らかに行っている場合,刑罰を科すとしています。

ここでいう「専ら」とは,違法な資格外活動(法定外活動)を主たる活動として行っている場合を指します。換言すると,本来の在留資格の活動が実質的に変更したと言える程度まで,違法な資格外活動(法定外活動)に従事していたということを意味します。

具体的な事例でいうと,旅館やホテルなどでフロントとして採用され,就労ビザを取得したにも関わらず,客室の清掃や料飲部門で接客のみを行っていた場合などが該当します。もう一例をあげると,飲食店でマーケティング等を行うために就労ビザを取得したにも関わらず,飲食店舗で接客のみを行っている場合などが該当します。

次に,ここでいう「明らかに認められる」というのは,本人や関係者の供述や証拠資料によって,違法な資格外活動(法定外活動)に従事していたことが明白であることを意味します。

上記を併せ検討すると,「専ら」,「明らかに」違法な資格外活動(法定外活動)に従事し,その活動によって「報酬を受ける場合」には,専従資格外活動罪に問われるということがわかります。

それでは,「専ら」と言えない程度に資格外活動を行っていた場合には,どうなるのでしょうか。
このような場合に登場するのが,非専従資格外活動罪です。

3.非専従資格外活動罪の正しい理解

まずは,非専従資格外活動罪の規定をみていきましょう。

入管法第73条
第七十条第一項第四号に該当する場合を除き,第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行った者は,一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは二百万円以下の罰金に処し,又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。

先の例にならい本条文に説明を加えていきます。

第七十条第一項第四号とは,上記でみた専従資格外活動罪のことを指しています。つまり,専従資格外活動罪に該当する場合以外で,違法な資格外活動(法定外活動)を行った場合が本条文の射程範囲であることがわかります。

そのため,非常に広い範囲で,非専従資格外活動罪が成立することになります。

では,通訳として就労ビザを取得している外国人は,在留資格の範囲内でしか活動することができず,一切の例外はないのでしょうか。

ここで,参考になる考え方をご紹介します。

法務省が平成27年12月に公表したガイドラインによれば,日本で従事しようとする活動が,入管法に規定される在留資格に該当するものであるか否かは,在留期間中の活動を全体として捉えて判断するとしています。

そのため,例えば入社当初に研修があり,その研修期間,研修目的が合理的な場合には,本来の在留活動から離脱する期間があったとしても,それをもって直ちに資格外活動罪には問われないということです。

次に,本来の在留資格の活動を一時的に離脱し,資格外活動(法定外活動)を行った場合です。上記のガイドラインでは,フロント業務に従事している最中に団体客のチェックインがあり,急遽,宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった場合などが例にあげられています。

この場合でも,直ちに違法性は帯びないとしています。もっとも,このような場合であっても,宿泊客の荷物を部屋まで運搬することが一時的な本来の活動の離脱にとどまらず,主たる活動となっているような場合には,資格外活動罪の成立の余地はあるとしています。

4.強制退去もあり得る資格外活動罪の罰則とは?

上記では,専従資格外活動罪,非専従資格外活動罪についてみてきました。
それでは,このような資格外活動罪が成立した場合,どのようなペナルティーがあるのでしょうか。
本チャプターでは,それぞれの罰則をみていきます。

(1)専従資格外活動罪に問われた場合

専従資格外活動罪に該当した場合には,入管法70条1項4号によって,三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し,又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科するとされています。

また,裁判で刑罰を科されなくとも,入管に専従資格外活動を事実認定された場合,入管法24条4号イの退去強制事由に該当することになります。

つまり,懲役や禁錮と罰金を同時に受ける可能性があり,かつ,退去強制事由に該当するという極めて重い罪に問われることになります。

(2)非専従資格外活動罪に問われた場合

非専従資格外活動罪に該当した場合には,入管法73条によって,一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは二百万円以下の罰金に処し,又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科するとされています。

従前は,罰金額は20万円以下であったものの,悪質な非専従資格外活動の増加に鑑み,経済制裁を強化し抑止力を高めるため,2004年の改正入管法によって,罰金額が200万円以下に引き上げられました。

加えて,非専従資格外活動罪に該当するとして,禁錮以上の罪に処せられた場合には,入管法24条4号ヘによって,退去強制事由に該当することになります。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。
難しい内容であったため,理解し難い部分もあったかも知れません。

本ページでは,資格外活動罪に問われた場合における,外国人の罰則等をみてまいりました。

ここで一つ疑問が浮かぶのは,資格外活動罪に問われた外国人材を雇用していた企業側の責任です。外国人材を雇用する企業は,仮に雇用する外国人材が資格外活動罪に問われた場合でもお咎めはないのでしょうか。

実は,企業には不法就労助長罪や資格外活動罪のほう助罪が成立する余地があります。
この点については,知らなかったでは通用しない不法就労助長罪とは? に記載をしていますので,ぜひご覧ください。

入管法では,外国人材を雇用する企業と,企業で勤務する外国人の双方に,正しい知識とその正確な理解を求めています。
もっとも,入管法の度重なる改正,そして様々なガイドライン等の創設によって,外国人材の雇用を取り巻く環境は刻々と変化しており,専門的な知識が求められるようになっています。

外国人材を正しく雇用したい,法令遵守を徹底したい企業様,また外国人の方で就労ビザにお悩みをお持ちの方は,お気軽に当社までお問い合わせください。

企業様向けには,貴社にあった外国人材の雇用最適化をご提案いたします。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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