依田 隼弥

【解決事例】出産看護を目的とする短期滞在ビザ

【事例】
ベトナム人のAさんは,再来月に第3子の出産を予定しています。Aさんの夫Bさんは,日中は仕事をしていますので,幼い兄弟の世話をつきっきりですることは難しいのが現状です。そこで,AさんはベトナムにいるAさんの母親に手伝ってほしいと考えました。
Aさんの母親は,仕事をしておらず,貯金はほとんどありませんが,出産看護を目的として,できるだけ長く短期滞在ビザで日本に滞在してほしいとAさんは考えています。

日本で生活する外国人の方が,出産などを契機に両親のサポートを求めて短期滞在ビザを申請するケースは少なくありません。
短期滞在ビザは,わが国に一時的に滞在して,観光,親族・知人訪問,商用などの活動を行う外国人を受け入れるために設けられています。短期滞在ビザの審査は,報酬の有無,活動内容の虚偽性,滞在期間がポイントになります。
短期滞在ビザの期間は15日,30日,90日の3種類がありますが,長期の滞在については,招へい理由書等の書類が求められています。

1.短期滞在ビザの手続きと他のビザの手続きはちがうの?

短期滞在ビザのための特別な手続きが必要かどうかは,その国が査証免除国であるかを確認することからスタートすることになります。

査証免除国の案内は,外務省のホームページで確認することができますので,これから短期滞在ビザの取得を目指す方は,一度ご覧ください。
○外務省ホームページ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html

2020年4月現在の査証免除国は68ヶ国です。
ただし,68ヶ国すべてが90日の査証を免除されているわけではありません。上陸許可の際に付与される在留期間は,インドネシア,タイ及びブルネイは「15日」,アラブ首長国連邦は「30日」,その他の国・地域については「90日」となっています。

したがって,査証免除されていない国の方が来日される場合や,インドネシア,タイ,ブルネイ,アラブ首長国連邦の方が定められた在留期間よりも長い期間のビザ(例えば「90日」の短期滞在ビザ)を希望される場合には,短期滞在ビザを取得することが必要です。

中長期在留者のビザについては,原則として日本にある出入国在留管理局に申請を行いますが,短期滞在ビザは在外公館(ビザを申請される方の居住国にある日本大使館や日本領事館のことをいいます。)で本人が申請することが必要です。この点が,短期滞在ビザが中長期在留者のビザと大きく異なるところです。

2.短期滞在ビザの有効期限は

在外公館で発給された査証の有効期限は3ヶ月です。有効期限内に日本に上陸する必要があります。そして,上陸許可がされた翌日から表示されている日数(15日,30日,90日)の在留が許可されます。

たとえば,30日間の短期滞在ビザの方が3月1日に上陸された場合,3月2日から30日後の3月31日まで滞在が許されます。実際に上陸が許可された方は,パスポートに貼り付けられる上陸許可のシールに滞在期限が記載されていますので,確認してみて下さい。

3.出産看護のための短期滞在ビザは期間を更新することはできるの?

短期滞在ビザの更新申請は,法律上は他の中長期在留ビザと同様に「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があれば更新できると規定されています。

しかし,短期滞在ビザは,観光や親族訪問を理由とした短期間の滞在を目的としていることから,原則として更新は想定されていません。実務上,短期滞在ビザの期間の更新については,人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に限り,許可されています。

そのため,もう少し観光をしたいであるとか,航空機代が高い時期だからという理由では短期滞在ビザの更新はできないとご理解ください。

もっとも,実務上は本事例のような出産看護の場合には,短期滞在ビザの延長が認められているケースが多数あります。

4.出産看護を目的とする短期滞在ビザを取得するまでの道のり

Aさんのお母様の事例に戻って,解決策を振り返ります。
まず,Aさんのお母様はベトナム人ですので,ベトナムの管轄の日本領事館に提出する資料を確認します。

①入国・在留目的を立証する資料

Aさんが出産を控えていること,Aさんには出産予定のお子様の他に小さいお子様がいらっしゃること,Aさんとお母様の関係性を示す資料を提出し,かつ招へい理由書を作成しました。また,滞在予定表についても滞在先や訪問予定先,予定されている行事などを記載しました。

②滞在中の経費及び出国のための手段又は経費を支弁できることの立証資料

Aさん夫婦の家計は主にBさんの収入によって賄われています。Aさんのお母様はベトナムでも働いていないため,滞在費用についてはBさんの収入や,預貯金を示す証明書を提出しました。

なお,ベトナムの場合,申請時に往復航空券の予約票が必要になります。提出先の領事館によって,航空券の事前予約の要否等が異なることがありますので,提出前に必ずチェックするようにしましょう。

結果,Aさんのお母様は無事に,出産看護を目的として90日の短期滞在ビザを得ることができました。

5.出産看護を目的とする短期滞在ビザのまとめ

在外公館で行う短期滞在ビザ申請においては,申請人(Aさんのお母様)の方が集める資料と,招へい人(Aさん)が集める資料を合わせて提出する必要があります。招へい人は自身の資料を国際郵便で申請人に送ることになります。
注意点としては,ビザが不発行になりますと,6ヶ月間は原則として同一の目的・内容でビザ申請をすることができないことになっています。

出産看護を目的とする短期滞在ビザでご不明があれば,行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせ下さい。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

依田 隼弥

・令和3年度行政書士試験合格
山梨県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,国際結婚手続き,永住権取得など国際業務を専門としている。

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