藤澤 勇來

簡易帰化および大帰化について

簡易帰化および大帰化について

本ページでは,簡易帰化および大帰化について説明をしていきます。

1.簡易帰化について

簡易帰化とは,一定の身分や条件を満たす場合に,帰化許可の7つの要件(ここでは「普通帰化」と定義します。)が一部緩和される申請を指します。

つまり,該当する条件によりますが,一定の身分や条件を満たす場合には普通帰化の7つの要件を全て満たさなくても帰化許可される可能性があります。

簡易帰化は申請人のそれぞれの身分や条件によって,緩和される要件が異なりますので,自分がどの身分や条件を満たしているのかを確認し,同時にどの要件が緩和されるのかを把握する必要があります。

簡易帰化には9つのパターンがありますので,それぞれの要件を順に確認していきましょう。

Ⅰ.住所要件のみ緩和される場合

a.日本国民であった者の子(養子を除く)で,引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者

⇒もともと日本国籍を有していた方が,再度日本国籍を取得する場合は,本来5年以上日本に住所又は居所を有しなければならないところ,これが3年以上に緩和されます。

b.日本で生まれた者で3年以上日本に住所又は居所を有し又はその父もしくは母(養父母を除く)が日本で生まれた者

⇒特別永住者の方がこの条件に該当するケースが多いです。
この場合も,5年以上の住所要件が緩和され,3年以上に緩和されます。

c.引き続き10年以上日本に居所を有する者

⇒特別永住者,永住者および留学から日本に引き続き在留している方がこの条件に該当するケースが多いです。
また,普通帰化の場合は,5年以上の日本在留のうち3年間以上の就労が必要ですが,引き続き日本に10年以上在留している場合は1年以上の就労で住所要件を満たすことになります。

<ポイント>
簡易帰化では,住所と居所の使い分けがあります。
住所とは,日本で生活の本拠を意味し,原則3ヶ月を超えて在留する外国人には住所を届け出る義務があります。
居所とは,生活の本拠ではないものの,人がある期間継続して滞在する場所をいいます。短期滞在者等の日本における居所がこれにあたります。

Ⅱ.住所要件および能力要件を緩和

d.日本国民の配偶者たる外国人で,引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し,かつ,現に日本に住所を有する者

⇒日本人と婚姻関係にある方が該当します。
また,ここでのポイントは,日本人配偶者との婚姻期間は必ずしも3年以上必要ではないということです。つまり,日本に3年以上住んでいた方が日本人と結婚した時点で,この要件に該当するということです。
この要件に該当する場合,住所要件に加えて能力要件が緩和され,20歳未満であっても帰化許可申請を行うことができます。

e.日本人の配偶者で婚姻から3年以上経過し,かつ,1年以上日本に住所を有する者

⇒日本人と結婚をして,海外で2年以上夫婦生活を送ったあと,日本に生活の本拠を移し,1年以上日本人配偶者と共に生活を送った場合にこの要件に該当します。
この要件に該当する場合にも,住所要件に加えて能力要件が緩和され,20歳未満であっても帰化許可申請を行うことができます。

Ⅲ.住所要件,能力要件および生計要件を緩和

f.日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者

⇒父又は母が先に帰化許可申請を行い日本国籍に帰化をして,その後子が帰化許可申請をする場合が該当します。
また,国際結婚を経た両親(日本人と日本以外の国籍者)の子で,国籍選択のときに日本国籍を選択しなかったが,後に帰化する場合も該当します。
この要件に該当する場合は,日本に住所を有する年数は問われず,能力要件および生計要件も緩和されます。

g.日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し,かつ,縁組の時本国法により未成年であった者

⇒親が日本人と結婚し,未成年の当時に継父母と養子縁組をした連れ子が該当します。
この場合,引き続き1年以上日本に住所を有し,かつ,縁組の時に未成年であれば要件を満たすことになります。

h.日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有する者

⇒元は日本人だったものの日本国籍を喪失した方が,再度日本国籍を取得する場合はこの要件に該当します。
ただし,一度帰化を行い日本国籍の取得をしている者が,日本国籍を喪失後に更にもう一度帰化許可申請を行う場合は,この要件に該当しません。

i.日本で生まれ,かつ,出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者

⇒日本で生まれ,何らかの理由により無国籍の状態になっている方が,出生から引き続き3年以上日本で住所を有している場合に該当します。

以上が簡易帰化の9つの類型になります。
在留年数でまとめると以下のように分類できます。

日本での在留年数 申請可能要件
0年 f.h
1年 e.g
3年 a.b.d.i

2.大帰化について

ここまでは,簡易帰化について紹介を行ってきました。
簡易帰化は,普通帰化の7つの要件の一部を緩和する申請類型です。
更に,日本の国籍法には,普通帰化の7つの要件全てが免除される類型があります。それが大帰化と呼ばれる類型です。

国籍法第9条には,「日本に特別の功労のある外国人については,法務大臣は,第五条第一項の規定にかかわらず,国会の承認を得て,その帰化を許可することができる」と定められています。

大帰化は,日本に多大な貢献がある外国人に対して,日本政府から申請人に帰化が打診され,国会の承認を得て行われます。過去にはスポーツ界で活躍した外国人に大帰化が検討されたことがあるようですが,現在のところ大帰化によって帰化した方は一人もいません。

3.まとめ

本ページでは,普通帰化の7つの要件が緩和される類型をまとめました。
実は,簡易帰化で帰化許可を取得される方は少なくありません。帰化の相談を受けた際には,簡易帰化のいずれかの類型に該当してないかどうかをまずは検証することになります。
これから帰化許可申請をお考えの方は,一度当社までお問い合わせください。お客様の最善の道を当社からご提案させていただきます。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 藤澤 勇來

・日本行政書士会連合会(登録番号第24261751号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8992号)
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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