尾島 諒

夫婦とも無職でも配偶者ビザは取得できる!?

夫婦とも無職でも配偶者ビザは取得できる!?

「無職でも配偶者ビザを取得できますか?」
そのようなご相談を受けることがあります。
最近は新型コロナウィルス感染拡大の影響で,図らずも失業してしまった方もいらっしゃいます。
しかし,恋人と結婚して,一緒に暮らしたいという想いはどのような状況でも変わりません。
また,近頃は海外で生活していたご夫婦から,家族で日本に移住を希望して,外国人の配偶者ビザ取得のご相談をいただくケースも増えています。
そういったケースでは,日本に収入源がないご夫婦がほとんどです。
そこで,本ページでは,配偶者ビザの生計面の審査実体を踏まえながら,ご夫婦とも無職の場合でも配偶者ビザが取得できるかという疑問にお答えしていきます。

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1.配偶者ビザの審査実体について

まずは,配偶者ビザの審査がどのような観点で行われているのかを解説します。
効果的な申請を入管にするには,まずはルールを知ることが重要です。
配偶者ビザの一般的な申請は,配偶者ビザの申請 をご覧ください。

さて,配偶者ビザの審査では,①婚姻の実体②夫婦生活を送るに足る生計基盤の二つが主たる審査ポイントであると言われています。
①の婚姻実体の審査とは,夫婦として同居し扶けあって生活する信憑性のある関係かどうかという観点での審査です。
夫婦の出会いの経緯や,結婚にいたるまでの交際の経緯,結婚後の生活実態などから総合的に判断されます。
婚姻実体の脆弱さを理由として,配偶者ビザが不許可になる理由は 配偶者ビザが不許可になる理由 で解説していますのでご覧ください。

②の生計基盤では,夫婦として日本で生活することができる経済的な基礎があるかという観点から審査されます。
本ページをご覧になっている方が懸念されているのは,こちらの方かと思いますので,以下では,②生計基盤の審査手法を詳しく見ていきます。

生計基盤の審査では,申請人(外国人配偶者)が日本に上陸した場合に構成することとなる世帯人数と,その世帯全体で見込まれる収入とのバランスで判断されます。
世帯人数が多ければ多いほど,必要となる世帯収入は増えていきます。
反対に,世帯人数が少なければ,必要となる世帯年収は減ります。

2.配偶者ビザで求められる夫婦生活を送るに足る生計基盤とは

例えば,実家で暮らしている日本人妻がいて,結婚相手の外国人夫を日本に呼んで一緒に暮らす予定というケースで考えてみましょう。

結婚を機に,日本人妻は実家を離れて夫婦で暮らす部屋を探し,外国人夫の来日後は,夫婦二人で暮らす生活を希望しています。
この場合,申請人である外国人夫が来日した場合に構成される世帯人数は,夫婦だけの二人となります。
そして,世帯全体で見込まれる収入は,日本人妻の収入と外国人夫の収入を合算した金額で計算します。

外国人夫が来日前から日本での仕事が決まっている(就職内定をもらっている)ケースはごく少数ですので,基本的には日本人妻の収入だけが世帯年収になります。
ここで日本人妻が無職であれば,当然世帯年収は0円になります。
これでは配偶者ビザが許可を得られる見込みは非常に低くなります(多額の預貯金があれば可能性がないわけではありません。)。

では,結婚後も日本人妻の実家で暮らす場合はどうでしょうか。

日本人妻の実家は,父母と祖母,そして日本人妻の4人家族であると仮定します。
父は会社員,母はパート勤務,祖母は無職ですが年金をもらっています。
この場合,外国人夫が来日した場合に構成される世帯人数は5人になります。
世帯人数は上記のケースより多くなってしまっていますので,求められる世帯年収は夫婦二人暮らしの場合よりも増えます。

しかし,この場合は,父と母の給与収入,さらには祖母の年金収入が世帯全体の収入として計算できます。
その合算額が5人世帯の生活を維持できるレベルに達していれば,配偶者ビザの許可を得られる見込みは高くなります。

このように,配偶者ビザの生計基盤の審査においては,世帯人数と世帯全体の収入のバランスで判断されています。
上記の比較では,実家で暮らすという選択をすれば,世帯人数が増えたとしても,世帯全体の収入とのバランスでは余裕がある状態になりますので,実家で暮らすほうが配偶者ビザの審査上有利であるという判断になるでしょう。

3.配偶者ビザに必要とされる世帯収入額とは

世帯人数と世帯全体の収入額のバランスで生計基盤が審査されることはお分かりいただけたと思いますが,具体的に世帯全体でどれくらいの収入があれば配偶者ビザの許可は見込まれるのでしょうか。

これについて具体的な基準は公開されていませんが,生活保護受給基準がボーダーラインになっていると言われています。
生活保護受給基準とは,生活保護を受給することができる最高額の収入基準です。
基準以下の収入であれば,生活保護の受給資格があるという判断に用いられています。
生活保護基準以下の収入レベルであれば生計基盤が確保されているとは言えず,反対に,生活保護基準を上回る収入レベルであれば生計基盤は確保されていると言い換えることができます。

生活保護受給基準は,世帯人数のほか,世帯構成員の年齢(稼働年齢かどうか),居宅が所有不動産かどうかなど,様々な要素によって上下します。
また,地域によっても生活保護基準は異なります。
実際の生活保護制度においては,1級地-1から3級地-2までの6段階に分けられており,地域ごとの立地特性や生活様式などに応じて生じる物価水準の差を支給額に反映させているのです。
したがって,都市部では生活保護受給基準は高くなり,地方では生活保護受給基準は低くなります。

このように,世帯構成や地域によって生活保護受給基準が上下するため,配偶者ビザにおける生計基盤の審査においても,世帯構成や地域によって必要とされる世帯収入額が変わってきます。
生活保護制度は公費負担,つまり国民の税金によって賄われていますので,外国人を受け入れることによって,国民の税金を使うことにならないようにとの政策的な配慮もあるのかもしれません。

4.配偶者ビザの世帯収入の計算基礎になる収入について

配偶者ビザの審査において,世帯全体の収入として加算できる収入(計算の基礎になる収入)とは,どのようなものでもよいのでしょうか。

この点,配偶者ビザの計算の基礎にできる収入は,「申請時に確定している事実関係に基づく収入」に限られます。
先ほどの例で,日本人妻は無職,外国人夫は現在仕事をしているものの,退職して来日する予定だとしましょう。
外国人夫はまだ若く,日本で仕事を探せば月20万円くらいの収入は得られかもしれません。

しかしこの場合でも,外国人夫の想定月収,つまり青写真に基づく月収は,配偶者ビザの審査において世帯収入の計算の基礎に入れることはできません。
なぜなら,外国人夫の雇用関係は,配偶者ビザの申請時に確定している事実ではないからです。
外国人夫の想定月収を配偶者ビザ申請において計算に入れるには,少なくとも勤務予定先からの雇用内定を配偶者ビザの申請時に得ていることが必要です。

他方,配偶者ビザの申請時点で給与収入を得ている方は,勤務先との雇用関係は申請時に存在しますので,その給与収入は世帯収入の計算に含まれます。
雇用形態は問わず,正社員,契約社員,派遣社員,アルバイト・パートでも同じです。
給与収入は毎年の増減が少なく,安定した収入源のひとつと評価されます。
会社員でも歩合割合が大きい方や,アルバイトの方シフト勤務で,毎月の給料が決まっていないという方もいらっしゃるでしょうが,原則的には,直近年度の所得証明書で計上されている給与収入額から判断されるのが審査の実態です。

また,自営業をされている方の営業所得も,配偶者ビザの審査では世帯収入として換算されます。
事業として経営されている限り,一次的な収入ではなく,継続的な収入と評価できます。なお,自営業の収入は年毎の上下が大きいのが特徴ですが,配偶者ビザの審査においては,直近年度の所得証明書で計上されている営業所得が世帯収入の計算の基礎になります。

その他,年金収入や不動産収入も継続的な収入として世帯収入の計算の基礎になります。

では,申請人となる外国人配偶者本人の海外での給与収入はいかがでしょうか。
入管が審査において判断しているのは,申請人(外国人配偶者)が日本に上陸した場合に安定した夫婦生活を送ることができる生計基盤が確保されているかという点です。
そのため,外国人配偶者が海外で働いて得ている給与収入については,退職して来日するのであれば世帯収入の計算の基礎には入りません。
他方,来日後もリモートで仕事を続け,海外の会社から給与収入が見込めるのであれば,その収入も世帯収入の計算の基礎に入ります。

5.預貯金その他の財産について

次に預貯金について説明します。

預貯金についても,配偶者ビザの審査において,生計基盤の判断の考慮される一事情になります。
海外の銀行口座の預金でも構いませんし,普通預金・定期預金等の預金種別を問いません。
日本人配偶者の名義でも外国人配偶者の名義でもどちらでも構いません。

ただし,入管の審査においては,預貯金残高よりも継続的な収入の方を重視する傾向にあります。
むしろ,世帯人数が生活できる継続的な収入が確保されていれば,全く預貯金がなくても問題ありません。

インターネットでは,100万円以上の預金残高を提出しなければ配偶者ビザは通りにくい,といった記載が見受けられますが,そんなことはありません。

反対に,継続的な収入が全くない,他に頼れる身内もいないというケースでは,預金残高の証明が大きな証明力を発揮します。
ただし,少なくとも無収入の状態でも1年以上は生活できるレベルの預金を用意しておく必要があります。

なお,一次的に誰かからお金を借りて預金を多く見せることは,虚偽申請になりますのでお控えください。

6.夫婦とも無職でも配偶者ビザは取得できる!?のまとめ

以上のとおり,ご夫婦とも無職の場合でも,給与以外の収入,同居予定のご家族の経済状況や,預金などによって配偶者ビザの許可が得られるケースはたくさんあります。

生計基盤にご不安があるとのことでご相談をいただいた際には,ご夫婦の収入だけでなく,来日後に予定されている生活の本拠や,同居親族の収入,他に親族からの援助が見込まれるかなど,あらゆる事実を詳細にヒアリングさせていただきながら,配偶者ビザの許可の可能性を探っていきます。

行政書士法人第一綜合事務所では,配偶者ビザの申請リスクを最小限にすること,そして配偶者ビザの許可を最大限に高めることを重視しながら,お客様にご提案しております。

収入がないからといって諦めていた方も,当社へご相談をいただいた結果,解決できた事例も数多くございます。

私たちは,可能性がある限り諦めることはありません。
配偶者ビザ申請でのお困りごとは,行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 尾島 諒

・日本行政書士会連合会(登録番号第24260162号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8842号)
愛知県出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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