依田 隼弥

宿泊業の外国人雇用ガイド:ビザの違い・できる仕事・注意点を行政書士が徹底解説

宿泊業の外国人雇用ガイド:ビザの違い・できる仕事・注意点を行政書士が徹底解説

宿泊業は、不規則な勤務形態や休日の確保などの理由から人材確保の難易度が高く、人手不足が続く業界のひとつです。こうした課題の解決策として、外国人材の採用を検討されるホテル・旅館の経営者様や人事担当者様が増えています。
 
しかし、「何から調べればよいか分からない」「自社で雇えるのか、どんな仕事を任せられるのか不安」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
 
本コラムでは、宿泊業における外国人雇用の全体像から、任せたい業務に応じた「在留資格(ビザ)」の選び方、費用、採用手続きの流れ、雇用後の注意点まで、入管業務専門の行政書士が分かりやすく解説します。

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Index

1.宿泊業で外国人を雇用することはできる?

結論から申し上げますと、ホテルや旅館などの宿泊施設で外国人労働者を雇用することは十分に可能です。

ただし、注意が必要なのは、「ホテルならどの在留資格でも雇える」「フロントなら誰でも大丈夫」という単純な話ではない点です。

外国人を雇用する際は、必ず「外国人本人の在留資格」×「任せる業務内容」×「施設の営業許可」の3つが法的に適合しているかを確認しなければなりません

自社で任せたい仕事に応じて、検討すべき主な在留資格は以下の通りです。

任せたい主な業務内容の例 検討すべき主な在留資格 ポイント
外国語を使ったフロント・企画・広報 技術・人文知識・国際業務/特定技能1号・2号/特定活動46号(N1特定活動)/ 特定活動9号(インターンシップ) 学歴・職歴や専門性を活かす仕事
接客全般・レストランサービス・館内業務 特定技能1号・2号/特定活動46号(N1特定活動)/特定活動9号(インターンシップ) 現場のマルチタスクに対応可能
客室清掃・ベッドメイキング中心 身分系ビザ/資格外活動(留学生等) 就労ビザ(技人国・特定技能)では専任不可
複数の従業員をまとめる管理・指導業務 技術・人文知識・国際業務/ 特定技能2号/特定活動46号(N1特定活動) 熟練した技能や実務経験が必要

それぞれ3章で詳しく解説します。

2.宿泊業で外国人が「できる仕事」と「できない仕事」

(1)任せられる主な業務ラインナップ

適切な在留資格を取得することで、以下のような幅広い業務を任せることができます。

  • フロント・レセプション業務
  • 企画・広報・マーケティング
  • 通訳・翻訳業務
  • 接客・案内・ベルスタッフ
  • レストラン・宴会場でのサービス提供
  • 施設管理・安全衛生管理など

(2)ホテル・旅館で「客室清掃・ベッドメイキング」のみを任せられる?

採用現場で最も多い誤解のひとつが「清掃作業」に関する取り扱いです。

  • 「技術・人文知識・国際業務」の場合
    客室清掃やベッドメイキングなどの単純作業・現場作業を専任で行わせることは認められません
  • 「特定技能(宿泊)」の場合
    客室清掃は「関連業務(付随的業務)」として行うことは許可されていますが、「客室清掃のみ」を専任で行わせる雇用は認められません。フロントや接客などの「主たる業務」を行う中で、付随的に清掃を行う必要があります。

客室清掃のみを専任で任せたい場合は、就労制限のない「身分系ビザ(永住者や日本人の配偶者等)」を持つ外国人か、留学生等の「資格外活動許可(週28時間以内)」を得ているアルバイトを雇用する必要があります(次章で詳しく解説します)。

3.宿泊業で活用できる主な在留資格(ビザ)の種類

(1)就労ビザの二本柱:「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」

宿泊業でフルタイムの外国人従業員を雇う場合、メインとなるのは「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」と「特定技能(1号・2号)」の2つです。

(2)「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」と「特定技能(1号・2号)」比較

項目 技術・人文知識・国際業務 特定技能1号 特定技能2号
主な対象業務 フロント、企画・広報、通訳・翻訳など フロント、接客、レストランサービス等全般 複数の従業員を指導しながら行う宿泊サービス
現場作業・清掃 専任は不可(実務研修等のみ例外) 主たる業務の付随として可能 主たる業務の付随として可能
技能・日本語試験 不要(学歴・職歴が必要) 原則必要(試験等で確認) 2号評価試験+指導実務経験2年以上
在留期間の上限 制限なし(更新可能) 通算上限5年まで 制限なし(更新可能)
家族帯同 条件を満たせば可能 原則不可 可能(配偶者・子)

(3)その他の選択肢(身分系ビザ・育成就労制度・資格外活動)

  • 身分系ビザ(永住者・日本人の配偶者等・定住者)
    業務制限がなく、日本人と全く同じ条件で雇用可能です。ただ、ビザの更新手続きは外国人本人が行うため、会社側で「在留期限の更新漏れ」が起きていないか定期的に在留カードを確認する管理が求められます。
  • 育成就労制度
    従来の技能実習制度に代わり、未経験者を3年間で特定技能1号の水準まで育成する新制度で、2027年4月開始予定です。宿泊分野も対象となっており、一定の要件(1年以上の就労等)を満たすことで本人の意向による「転籍(転職)」が可能となるルールが導入されます。
  • 資格外活動(留学生・家族滞在)
    週28時間以内の制限内でアルバイト雇用が可能です。他社とのダブルワークで合計28時間を超えた場合も不法就労となるため、注意が必要です。
  • 特定活動9号(インターンシップ・サマージョブ)
    海外の大学に在籍する現役学生が、大学の教育課程(単位認定等)の一環として最大1年間(インターンシップ)、あるいは大学の夏休みなどの長期休暇期間に最長3ヶ月間(サマージョブ)、日本の宿泊施設と雇用契約を結んで報酬を得ながら業務に従事できる在留資格です。学生への実践的な職業教育の提供とともに、将来的な新卒採用に繋げる取り組みとしてのインターンの導入が進んでいます。インターンシップビザについて詳しくは海外からのインターンシップ受入れに必要なビザはどれ?在留資格(特定活動9号・12号、文化活動、短期滞在)の選び方と申請ガイドもご参照ください。
  • 特定活動46号(N1特定活動)
    日本の大学・大学院を卒業し、かつ日本語能力試験N1(またはBJT480点以上)を取得している外国人向けの在留資格です。雇用形態は「フルタイムでの直接雇用」に限定されますが、技人国よりも柔軟性が高く、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」として、フロントや接客・給査に加え、それに付随する現場作業にも幅広く従事させることが可能です。詳しくはN1特定活動ビザ(特定活動46号)とは?できる仕事・要件・2024年改正後の注意点を解説をご参照ください。

4.「技術・人文知識・国際業務」で雇用する際のポイント

(1)技人国ビザが適しているケース

大学などで学んだ知識や語学力を活かし、「フロント専任」「企画・広報」「マーケティング」「通訳・翻訳」などの専門的業務に従事させる場合に適しています。

(2)【2026年4月15日改正】「技人国ビザの明確化」ルール

技人国ビザには、その制度運用をほかの在留資格から区別するために、以下のような「明確化」ルールがあります(入管公表『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について』)。

①学歴(大学卒・専門学校卒)による専攻と業務の関連性審査の違い

  • 大学・高等専門学校卒業者(海外大学含む)
    学術の中心として幅広い知識・教養を修得していることから、専攻科目と担当業務の関連性は柔軟に判断されます
    (例:経済学部卒→フロント・予約管理業務、文学部卒→通訳・広報業務など、文系全般で柔軟に認められやすい特徴があります)
  • 専修学校(専門学校)卒業者
    職業教育を目的とする機関であるため、原則として学校での専攻科目と従事する業務との間に「相当程度の密接な関連性(一致)」が必要です。
    (例:ホテル・観光系学科卒→フロント業務は可/製菓・服飾・デザイン系学科卒→フロント業務は関連性なしとして不許可リスクが高いです)
【専門学校卒の緩和特例】
専門学校卒であっても、文部科学省認定の「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」修了者や、履修内容全体で知識習得が認められる場合、または関連業務に3年程度従事した実務経験がある場合は、大学卒と同様に専攻と業務の関連性が柔軟に判断(緩和)されます。

②入社初期の「現場実務研修(清掃・料飲給査等)」の許容ルール

「技人国」では客室清掃やレストランの給査などの単格・現場業務は認められませんが、入社初期の「実務研修」の一環として行う場合は、以下の要件を満たすことで認められます。

  • 将来的に専門的業務(フロントや企画等)を行う上で必然性・必要性があること
  • 日本人の新入社員に対しても全く同じ内容・期間の研修が実施されていること
  • 研修計画が明確であり、期間が合理的かつ一時的であること

詳しくは就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)で許容される実務研修とは?もご参照ください。

③「反復訓練でできる業務」や求人票の表現による不許可リスク

求人票に「未経験可、すぐに慣れます」と記載されるような反復訓練で従事可能な業務や、学歴・実務経験要件を満たしていない日本人一般従業員と同じ現場作業は「技人国」の対象外(不許可対象)となります。

④>対人業務・外国語業務における「日本語能力」の立証

外国人従業員がフロント業務や通訳・翻訳などの対人業務に従事する場合、十分な言語能力(CEFR B2相当)を有していることが前提条件となります。具体的には以下の条件の立証が必要です。

【日本語能力の要件(いずれかに該当)】

  • 日本語能力試験(JLPT)N2以上を取得していること
  • BJTビジネス日本語能力テストで400点以上を取得していること
  • 日本の大学を卒業、または日本の専門学校(専門課程)を修了していること(※専攻と業務に関連性がある場合に限る)
  • 日本の義務教育を修了し高等学校を卒業していること、または中長期在留者として20年以上日本に在留していること
【外国語能力(英語・母国語等)の要件(いずれかに該当)】

  • 当該言語が申請人の母国語または公用語であること
  • 語学試験等によりCEFR B2以上の能力が証明されていること
【書類提出ルール】
受入れ企業(ホテル・旅館)が「カテゴリー3」または「カテゴリー4」(中小企業や設立間もない法人など)に該当する場合、ビザ申請時に上記言語能力を証明する証明資料(合格証や卒業証明書など)の提出が必須となります。

5.特定技能「宿泊」で外国人を雇用する条件と要件

(1)特定技能とは

「特定技能」は深刻な人手不足に対応するため、即戦力となる一定の技能・日本語能力を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。宿泊分野はその発足当時よりあります。詳しくは宿泊業で特定技能外国人を雇用する要件と注意点を行政書士が解説もご参照ください。

(2)外国人本人が満たすべき要件(1号・2号)

  • 特定技能1号
    • 「宿泊分野特定技能1号評価試験」に合格
    • 日本語試験(JLPT N4以上、またはJFT-Basic A2レベル以上)に合格
    • 宿泊職種(接客・衛生管理作業)の技能実習2号を良好に修了した方は、技能・日本語ともに両方の試験が免除されます。
  • 特定技能2号
    • 宿泊施設にて複数の従業員を指導しながら宿泊サービスを提供する業務に2年以上の実務経験を有すること
    • 「宿泊分野特定技能2号評価試験」に合格

(3) 受入れ企業(ホテル・旅館)側が満たすべき要件

  • 施設の営業許可:旅館業法に基づく「旅館・ホテル営業」の許可が必要です(※「簡易宿所」や「民泊」は受入れ不可です)。
  • 日本人と同等以上の報酬:同じ業務を行う日本人従業員と同等以上の給与を設定すること。
  • 健全な経営状況・法令遵守:決算状況が健全であり、過去5年以内に労働法・入管法違反がないこと。

(4) 宿泊業特定技能協議会への加入

受入れ企業は観光庁が設置する「宿泊業特定技能協議会」への加入が義務付けられています。従来認められていた「雇用後4ヶ月以内の加入」という猶予特例は2024年6月14日をもって終了しました。2024年6月15日以降はビザ申請の時点で協議会の加入証明(オンライン申請)が必要となっています。

(5) 風営法に関する遵守事項

特定技能外国人を風俗営業該当施設で働かせることや、客への「接待業務」に従事させることは禁止されています。受入れ企業には、接待業務が発生しない管理体制の整備(接待防止措置)と、行政・協議会が行う調査への協力が義務付けられています。

6. 外国人を採用する2つのパターンと手続きの流れ

(1) パターンA:すでに日本国内にいる外国人を採用する場合(転職・留学生等)

  1. 採用選考・内定
  2. 雇用契約の締結
  3. 協議会への加入(特定技能の場合・オンライン)
  4. 出入国在留管理局へ「在留資格変更許可申請」
  5. 許可・在留カードの受取り
  6. 就労開始

※同じ「特定技能」や「技人国」の資格を持っている転職者であっても、入管での変更手続き(または指定書変更)が必要となるため、前職のビザのまま即日働かせることはできません

(2) パターンB:海外から外国人を呼び寄せて採用する場合

  1. 海外現地での面接・内定
  2. 雇用契約の締結
  3. 協議会への加入(特定技能の場合・オンライン)
  4. 日本の入管へ「在留資格認定証明書(COE)交付申請」
  5. COE交付後、現地大使館で査証(ビザ)発給手続き
  6. 来日・就労開始

7. 採用後・就労開始後に会社が果たすべき義務

(1) 特定技能の「定期届出」ルールの更新

特定技能外国人を雇用する企業は、入管庁への定期届出が必要です。従来の四半期ごと(年4回)から「年1回(毎年4月1日〜翌3月31日分を5月31日までに提出)」に変更されています。

(2) ハローワークへの「外国人雇用状況届出書」の提出

雇入れ時および離職時には、翌月末日までにハローワークへ届出を行う義務があります。

(3) 社会保険の適正加入と在留期限の管理

社会保険・労働保険への適正な加入手続きを行うとともに、外国人本人の在留期限(ビザの期限)を切らさないよう、余裕を持って更新手続きを進める社内管理体制が必要です。

8. 宿泊業の外国人雇用でよくある失敗・トラブル防止策

失敗例1:在留カードの表面だけを見て雇用してしまう

特定技能や特定活動の場合、パスポートにホッチキス留めされている「指定書」を確認しなければ正確な就労条件が分かりません。必ずパスポート原本を確認しましょう。マイナンバーカード一体型の特定在留カード等の場合も同様に、電子情報等で自社が受入れ指定機関になっているかを必ず確認してください。

失敗例2:技人国の外国人に客室清掃ばかりさせてしまい不法就労に

フロント採用した技人国の外国人に、連日清掃業務を行わせた場合、不法就労助長罪に問われるリスクがあります(詳しくは不法就労助長罪とは?罰則や企業がすべきことを専門家が解説!をご参照ください)。

失敗例3:特定技能での受入れで事前加入を忘れてビザ申請がストップする

前述の通り、協議会への加入(証明書取得)はビザ申請の必須要件です。申請直前に慌てないよう早めの手続きが必要です。

9.このコラムに関するQ&A

Q1.簡易宿所(ゲストハウス・カプセルホテル)や民泊で特定技能外国人を雇えますか?


A1.できません。

特定技能(宿泊)の受入れは、旅館業法上の「旅館・ホテル営業」の許可を受けた施設に限られます。

Q2.特定技能1号の外国人には登録支援機関の支援が必ず必要ですか?


A2.支援計画の実施は必須ですが、自社に適切な支援体制(過去に不法就労者を発生させていない、生活支援を行える自社スタッフがいる等)があれば、自社(自機関)で支援を行うことも可能です。自社対応が難しい場合は登録支援機関へ委託します。詳しくは【登録支援機関の総まとめ】行政書士の解説!をご参照ください。

Q3.特定技能外国人はアルバイトとして雇用できますか?


A3.できません。

特定技能は「フルタイム(直接雇用・常勤)」での雇用が義務付けられています。

Q4.特定技能の外国人は家族を日本に呼べますか?


特定技能1号では原則不可ですが、「特定技能2号」にステップアップすることで、配偶者や子の帯同が認められます

10.まとめ:宿泊業での外国人雇用は行政書士法人第一綜合事務所へご相談ください

宿泊業における外国人雇用は、人手不足の解消にとどまらず、インバウンド対応や将来の現場リーダー育成といった大きなメリットをもたらします。一方で、職務内容と在留資格の適合性、協議会への事前加入、労働法令の遵守など、正しい知識に基づいた運用が不可欠です。

行政書士法人第一綜合事務所では、これまでにホテル・旅館を運営する事業者様向けに、ビザ申請、受入れ体制の構築、法務監査などのサポートを行ってまいりました。

また、同グループ内には社会保険労務士法人も併設しており、密に連携を行っております。

行政書士法人による入管法上のビザ申請手続きに加え、グループ内の社労士法人により「労働基準法や社会保険各法に準拠した雇用契約書の作成」や「適正な給与計算・労務管理」まで、外国人雇用に伴う法務・労務手続きをグループ全体で総合的にサポートすることが可能です。

外国人材の採用やビザ手続き、法改正への対応をご検討中のホテル・旅館事業者様は、ぜひ行政書士法人第一綜合事務所までご相談ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 依田 隼弥

・日本行政書士会連合会(登録番号第24081844号)
・神奈川県行政書士会(会員番号第6892号)
山梨県出身。横浜オフィスに所属し,外国人ビザ申請,国際結婚手続き,永住権取得など国際業務を専門としている。

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