研修ビザとは?
研修ビザは,日本で開発され,培われた技術,技能又は知識を海外へ移転することを目的として,外国人を日本に研修生として招いて,技術および技能等を修得してもらうことにより,それらの国々の発展に寄与するという国際協力,国際貢献として推進されているビザです。
研修ビザはあくまでも日本の技術を修得するためのビザであり,就労ビザでありません。
そのため,労働力確保のための手段として利用することはできません。
本ページでは,研修ビザについて専門行政書士が解説をしています。
Index
1.研修ビザに該当する職種は?
研修ビザの活動内容(在留資格該当性)は,「本邦の公私の機関により受け入れられて行う技術,技能又は知識を修得する活動」と定められています。
ここで一つの疑問が生じます。
上記の活動内容に該当していれば,研修ビザで招へいする外国人材はどのような研修(職種)内容であったとしても良いのか。という点です。
下記,事例と共に検証していきましょう。
【事例】
申請人(30歳)は母国で医師免許を取得しており,申請人の母国では未だ取り入れられていない最先端の手術方法(手術支援ロボットを使用)を日本の医療機関で採用している場合,当該医療機関は1年間の研修予定で,申請人を研修ビザで招へいすることができるのか。
【事例検証】
研修ビザには上陸基準省令が定められていますので,在留資格該当性のみならず上陸基準省令に適合しているかどうかも検証する必要があります。
研修ビザの上陸基準省令は,以下のように定められています。
①「申請人が修得しようとする技術,技能又は知識が同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと」
⇒同一作業の反復によって修得できる技術等や単純作業と呼ばれる非熟練作業では,研修目的として扱われません。
②「申請人が18歳以上であり,かつ,国籍又は住所を有する国に帰国後本邦において修得した技能等を要する業務に従事することが予定されていること」
⇒研修ビザは日本で学んだ技術等を外国人の本国に持ち帰って移転することを目的としているため,研修予定を明らかにし,滞在年数を示す必要があります。
※入管法上,研修期間の定めはありませんが,実務上,2年を超える研修期間はハードルが高いと言われています。
③「申請人が住所を有する地域において修得することが不可能又は困難である技術,技能又は知識を修得しようとすること」
⇒日本で修得しようとする技術等が申請人の本国において修得が容易である場合には,申請人を招へいする必要性が乏しいと判断されます。
事例に沿って確認していきます。
①について,最先端の手術方法(手術支援ロボット)が専門知識および過去の経験を活かして修得する技術であることを立証すれば,要件を満たします。
②については,上述のとおり1年間の研修予定を明らかにすれば,要件を満たします。
③については,「申請人の本国で未だ取り入れられていない技術である」という事実と,日本で招へいする医療機関が最先端の手術方法(手術支援ロボット)の使用実績を立証すれば,要件を満たします。
したがって,今回の事例は,研修ビザの活動内容および上陸基準省令の観点から鑑みると,申請人を研修ビザで招へいすることは十分可能であると判断できます。
※もちろん具体的に研修ビザを申請するにあたっては,その他の事情を確認する必要があります。
2.研修ビザの理解に不可欠!非実務研修と実務研修とは?
研修ビザでは「非実務研修」と「実務研修」の2つの研修があります。
非実務研修とは,当該研修において修得する技術を見学,座学および短期間の体験を用いて
修得する研修内容のことを指します。
具体的には,日本語教育,生活指導,安全教育などの座学形式の研修や,現場見学,試作品の作成などがあります。
実務研修とは,商品を生産し若しくは販売する業務又は対価を得て役務の提供を行う業務に従事することで技術等を修得することを指します。
研修ビザは学ぶことを目的としているため,実務研修は限定的に認められているにすぎません。すなわち,実務研修を取り入れる場合は,法務大臣が告示で定める場合の特例以外の研修のときは,研修全体の3分の2以下とすることが定められています。
研修内容が非実務研修もしくは実務研修であるかどうかは非常に重要です。
実務研修を含む研修内容である場合は,検討する事項(基準省令)が増え,慎重に手続きを進める必要があります。研修内容の判断がつかない場合は,是非,当社へお問い合わせください。
3.研修ビザの受入れ機関が注意すべき点は?
研修ビザを取得するためには,上記でご紹介した研修内容以外にもう一つ重要なポイントがあります。
それは,研修生を受け入れる側の受入れ体制です。
入管が求めている受入れ機関の基準を確認していきましょう。
①「申請人が受けようとする研修が研修生を受け入れる本邦の公私の機関(以下「受入れ機関」という。)の常勤の職員で修得しようとする技能等について五年以上の経験を有するものの指導の下に行われること」
⇒研修は研修指導員が指導して行う必要があります。研修指導員は,受入れ機関の常勤の職員で,研修生が修得しようとする技術等について,5年以上の経験がなければなりません。
②「受入れ機関又はあっせん機関が研修生の帰国旅費の確保その他の帰国担保措置を講じていること」
⇒研修ビザは,研修生が本国へ日本の技術等を持ち帰ることを目的としていますが,過去には人材不足解消のための手段として悪用され問題視されていました。そこで,研修生の帰国までの在留管理責任が受入機関にあることを明確にし,研修修了後の帰国が担保される措置を講じていることが受入の条件とされました。
なお,帰国担保措置は受入あっせん機関が対応しても構いません。また,出国費用については入管法上の規定はありませんので,研修生に負担させても問題ありません。
③「受入れ機関が研修の実施状況に係る文書を作成し,研修を実施する事業所に備え付け,当該研修の終了の日から一年以上保存することとされていること」
⇒受入れが適正であったかを事後的に検証できるように,研修記録を作成し保存しておかなければなりません。在留関係で問題が生じた際には,研修記録の提出を求められることになります。
上記3つのポイントを必ず押さえた上で,受入れ機関は研修生を招へいする準備を進める必要があります。
4.研修ビザで再度研修を行うためには?
研修ビザで招へいして研修が終了した後に,再度当該外国人を研修生として招へいすることも不可能ではありません。
しかし,本来,研修ビザの目的は母国の発展に寄与するためのものです。そのため,再度研修ビザで招へいするためには,通常の審査ポイント+下記3点を充足する必要があります。
①より上級の又は関連する技術,技能等の修得を目的とする再研修であること
②前回研修で学んだ技術等が,母国において活用されていること
③従前と全く異なる業種に係る研修ではないこと
実務上,再度研修ビザの手続きを行う際には,審査ポイントを検証し,再び招へいする必要性をしっかり明らかにすることで研修ビザを取得することができますので,再度研修ビザで招へいすることを検討される場合は,まず上記のポイントをご確認ください。
5.研修ビザのまとめ
研修ビザは技能実習ビザと違い,受入れ機関と申請人の間に雇用契約が存在しません。そのため,3ヶ月から1年間の研修を目的とする場合に用いられることが多いです。
研修ビザは,研修内容や受入れ体制を中心にいくつか考慮すべきポイントがありますが,しっかりポイントを押さえれば,取得することができます。
これから外国人材の招へいをご検討されている方がいらっしゃいましたら,是非当社までお問い合わせください。現在の状況をお伺いのうえ,適正な方法をご案内させていただきます。