タイの二国間協定の誓約事項と受入れフロー
本記事では,タイと日本との間で締結された特定技能の二国間協定について紹介します。
二国間協定の誓約事項や,タイの特定技能外国人のみに必要な受入れフローなどを解説した記事内容となっているので,ぜひ最後までご一読下さい。
Index
1.特定技能の二国間協定が締結された目的
二国間協定が締結された目的は,それぞれの国の役割を明確にすることや,特定技能制度の運用を適正に実施して特定技能外国人の保護をするためです。
2.二国間で情報共有する内容
二国間協定の中では,次の事項について特に重視して,情報共有することが定められています。
- 特定技能外国人の財産管理
- 契約不履行時の違約金
- 特定技能外国人への人権侵害
- 違法な手数料の徴収
- 入管への偽装文書の提出
特定技能外国人が金銭的に搾取されることや人権侵害を受けることを防止する内容の情報共有が,密になされることがわかります。
また,特定技能ビザ取得のために,偽の内容の文書の提出防止についても徹底して監視されます。
3.タイ政府が誓約した重要事項
まずは,タイ政府が誓約した主な重要事項を紹介します。
- 無許可の人材紹介会社からの特定技能外国人送り出しを許可しない
- 特定技能外国人からの手数料徴収を法令の範囲内で認める
- タイ国内の特定技能試験の実施許可
- 雇用契約の審査・承認の実施
〇無許可の人材紹介会社からの特定技能外国人送り出しを許可しない
特定技能外国人をタイから受入れする際には,タイ政府より許可を得た職業紹介事業者またはタイ労働省からの人材斡旋のみを認めることが誓約されています。
なお,特定技能外国人が自身で受入れ機関へ申し込みすることは,認められています。
〇特定技能外国人からの手数料徴収を法令の範囲内で認める
特定技能外国人から職業紹介費などを徴収することは禁止されていませんが,本人からの同意を得た金額のみ徴収可能であることや,契約不履行に関する違約金などの契約はできないことが原則となっています。
〇タイ国内の特定技能試験の実施許可
タイ政府が実施可能と判断した特定技能の試験については,試験計画を承認して,タイ国内での実施許可を出すことが誓約されています。
〇雇用契約の審査・承認の実施
特定技能外国人の雇用契約を審査して,承認する手続きを行うことが誓約されています。
なお,タイの特定技能外国人との雇用契約について,日本国内にいるタイ人が特定技能ビザへの切り替え申請を行う場合には,入管への申請前に必ず駐日タイ大使館の認証手続きを経る必要があります。
4.日本政府が誓約した重要事項
次に,日本政府の誓約事項を紹介します。
- 駐日タイ大使館に認証された契約書のみを受け付けすること
- 契約内容や支援計画の内容の厳正な審査
- 日本での雇用情報の周知
〇駐日タイ大使館に認証された契約書のみを受け付けすること
入管では,駐日タイ大使館より承認を受けた雇用契約書のみを受理することが誓約されています。
そのため,雇用契約書については,駐日タイ大使館と入管の2つの機関の審査を経ることになります。
〇契約内容や支援計画の内容の厳正な審査
雇用契約内容や特定技能外国人に対する支援計画について,基準を満たしているか厳正に審査することが誓約されています。
特に,支援計画については,駐日タイ大使館での審査は無いため,入管のみで内容が確認されます。
〇日本での雇用情報の周知
特定技能外国人が安心して日本での就労開始ができるように,日本の雇用情報を周知することが誓約されています。
5.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ:紹介会社なし)
紹介会社なしで,特定技能外国人の受入れをする際のフローを7つのステップごとに紹介します。
② 雇用契約の締結
③ 特定技能ビザの取得
④ 雇用契約の承認(駐日タイ大使館)
⑤ 在タイ日本大使館での手続き
⑥ タイ労働省での手続き
⑦ 入国・就労開始
① 採用する人材を確保
受入れを希望する特定技能外国人を選定します。
紹介会社を経由しない場合は,既に受入れしているタイ人社員の紹介や,元々技能実習生として受入れしていた人材などが想定されます。
② 雇用契約の締結
特定技能外国人と雇用契約の締結をします。
特定技能ビザの申請前に実施義務のある「事前ガイダンス」も済ませておくと,手続きがスムーズになります。
③ 特定技能ビザの取得
入管へ特定技能ビザ申請の手続きを行います。
この時点では,特定技能ビザを申請する外国人はタイにいるため,「申請等取次」の資格を持つ行政書士などに特定技能ビザの申請は依頼することになります。
④ 雇用契約の承認(駐日タイ大使館)
特定技能外国人と締結した雇用契約書などを,駐日タイ大使館へ提出して認証を受けます。
また,③で取得した特定技能ビザの写しについても,雇用契約書などと一緒にタイ大使館へ提出する必要があります。
認証を受けた雇用契約書などは,駐日タイ大使館の認証印が押印されて返却された後に,③で取得した特定技能ビザと一緒に,タイにいる本人へ郵送をします。
⑤ 在タイ日本大使館での手続き
日本から送られた特定技能ビザを持参して,在タイ日本大使館にて手続きをすることで,正式な特定技能ビザが発行されます。
⑥ タイ労働省での手続き
日本から送られた,駐日タイ大使館の認証印がある雇用契約書などを持参してタイ労働省にて,手続きをすることで,タイからの出国許可証を取得することができます。
⑦ 入国・就労開始
無事に日本へ入国したら特定技能ビザ(在留カード)が発行されます。
在留カードが発行された日より,特定技能外国人としての就労が許可されます。
6.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ:紹介会社あり)
紹介会社を仲介して,特定技能外国人の受入れをする際のフローを7つのステップごとに紹介します。
② 採用する人材を確保
③ 雇用契約の締結
④ 特定技能ビザの取得
⑤ 在タイ日本大使館での手続き
⑥ タイ労働省での手続き
⑦ 入国・就労開始
① 雇用契約の承認(駐日タイ大使館)
タイ政府が許可した人材紹介会社やタイ労働省から人材の斡旋を受ける場合,まず雇用契約書などのフォーマートを作成した上で,駐日タイ大使館へ申請して認証を受けます。
駐日タイ大使館の認証手続きについては,必ず人材の斡旋を受ける前に終える必要があります。
なお,タイの紹介会社としては,技能実習生の送出し機関が許可を取得している場合が多いため,既に取引のある送出し機関がある場合は,特定技能外国人の紹介も依頼することができる可能性があります。
② 採用する人材を確保
駐日タイ大使館より雇用契約書などの認証手続きを終えたら,人材の斡旋を受け面接などを実施することができます。
③ 雇用契約の締結
採用する人材が決定したら雇用契約の締結を行います。
タイ大使館から認証を受けた雇用契約書と同じ内容の契約書を作成して,受入れ機関の押印と本人署名をします。
④ 特定技能ビザの取得
締結した雇用契約書の写しや,特定技能ビザのその他の必要書類を入管に申請して問題がなければ特定技能ビザを取得できます。
この際に提出する雇用契約書には,駐日タイ大使館の認証印は不要です。
⑤ 在タイ日本大使館での手続き
④で取得した特定技能ビザを持参して在タイ日本大使館で手続きをすることで,来日のための正式な特定技能ビザが発行されます。
⑥ タイ労働省での手続き
駐日タイ大使館の認証を受けた雇用契約書のフォーマットを持参して,タイ労働省にて手続きをすることで,出国許可証を発行することができます。
タイ労働省での手続きは,紹介会社が採用されたタイ人全員分の手続きをすることができます。
⑦ 入国・就労開始
日本に入国した際に,空港で特定技能ビザ(在留カード)が発行され,特定技能外国人としての就労が可能となります。
7.特定技能外国人の受入れフロー(日本にいるタイ人)
最後に,日本にいるタイの特定技能外国人を受入れする際の手続きについて紹介します。
② 雇用契約の締結
③ 雇用契約の認証(駐日タイ大使館)
④ 特定技能ビザの取得
① 採用する人材を確保
特定技能外国人として受入れする人材を確保します。
人材を確保する方法としては,日本国内の人材紹介会社からの紹介や自社で既に受入れしている技能実習生などが想定されます。
自社で受入れしている技能実習生の中から,特定技能外国人を選定する場合は,手続きにかかる期間なども考慮して,技能実習満了日から逆算して余裕をもって希望意志の確認をしておく必要があります。
② 雇用契約の締結
面接などを経て,採用する人材が決定した段階で,雇用契約の締結を行います。
特定技能外国人を他社から採用する場合には,現職の受入れ企業とも合意・退職日の確認などを行い,トラブルの無いように特定技能ビザの手続きを進める必要があります。
③ 雇用契約の認証(駐日タイ大使館)
特定技能外国人の署名をした雇用契約書などを駐日タイ大使館へ提出して,審査・認証を受けます。
④ 特定技能ビザの取得
駐日タイ大使館より認証された雇用契約書や他の必要書類を入管へ提出して,特定技能ビザの申請をします。
③で認証を受けた雇用契約書や,特定技能ビザのその他の必要書類を入管へ申請することで,問題が無ければ特定技能ビザが取得できます。
呼び寄せの場合と違い,必ず駐日タイ大使館の認証印がある雇用契約書を入管へ提出する必要がある点には,特に注意する必要があります。
特定技能ビザを取得した日より,特定技能外国人としての就労を開始することが可能です。
8.まとめ:タイの二国間協定の誓約事項と受入れフロー
本記事では,二国間協定の誓約事項や,受入れの際のフローについて紹介しました。
呼び寄せの場合の手続きと,既に日本にいるタイ人の手続きを行う場合で,申請する機関の順番が違うため,事前に受入れフローについては確認をしておきましょう。