仲野 翔悟

特定技能「工業製品製造業分野」とは?JAIM事前加入などの要件、試験概要や注意点を行政書士が解説

特定技能「工業製品製造業分野」とは?JAIM事前加入などの要件、試験概要や注意点を行政書士が解説

従来3分野(素形材、産業機械、電気電子情報関連)に分かれていた製造業の特定技能ビザは、紙器・段ボール、家具、印刷、繊維等を含む「工業製品製造業分野」として運用されています。
 
本コラムでは、「工業製品製造業分野」としての要件、受入れ上限数、登録法人(JAIM)への加入方法、さらに製造分野特定技能評価試験の実施概要や注意点まで、入管専門の行政書士が解説します。
製造業にて、特定技能外国人の受入れをする予定の機関に限らず、既に受入れ中の機関にとっても重要な内容ですので、ぜひ最後までご一読下さい。

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1.「工業製品製造業分野」へ再編された背景

製造業の特定技能ビザは、従来、「素形材」「産業機械」「電気電子情報関連製造業分野」の3分野に分かれていましたが、上限数に達して停止していた受入れの再実現や、分野ごとに行う必要があった手続きの簡素化を主な理由として統合されました。

その後、現場の人手不足解消や生産性向上、多様な製造現場への適用を目指して対象範囲が拡大され、現在の「工業製品製造業分野」へと再編されました。

2.「工業製品製造業分野」の業務内容と受入れ要件

本章では、工業製品製造業分野における主な制度内容と受入れ要件を紹介します。

(1)「工業製品製造業分野」の業務区分と「技能実習(育成就労)」移行職種の関係

工業製品製造業分野では、17の業務区分が設定されており、幅広い製造工程での就労が認められています。

技能実習(2027年4月からは「育成就労」)との対応関係は以下の表の通りです。

特定技能(業務区分) 技能実習(職種) 技能実習(作業)
機械金属加工 鋳造 鋳鉄鋳物鋳造
非鉄金属鋳物鋳造
ハンマ型鍛造
プレス型鍛造
ダイカスト ホットチャンバダイカスト
コールドチャンバダイカスト
機械加工 普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
金属プレス加工 金属プレス
鉄工 構造物鉄工
工場板金 機械板金
仕上げ 治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立仕上げ
機械検査 機械検査
機械保全 機械系保全
塗装 建築塗装
金属塗装
鋼橋塗装
噴霧塗装
溶接 手溶接
半自動溶接
工業包装 工業包装
電気電子機器組立て 電子機器組立て 電子機器組立て
回転電機組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電機巻線製作
プリント配線板製造 プリント配線板設計
プリント配線板製造
金属表面処理 めっき 電気めっき
溶融亜鉛めっき
アルミニウム陽極酸化処理 陽極酸化処理
金属熱処理 全体熱処理
表面熱処理
部分熱処理
プレハブ住宅製品製造 プレハブ住宅製品製造 プレハブ住宅製品製造
紡織製品製造 紡績運転 前紡工程
精紡工程
巻糸工程
合ねん糸工程
織布運転 準備工程
製織工程
仕上工程
染色 糸浸染
織物・ニット浸染
ニット製品製造 靴下製造
丸編みニット製造
たて編ニット生地製造
カーペット製造 織じゅうたん製造
タフテッドカーペット製造
ニードルパンチカーペット製造
縫製 婦人子供服製造 婦人子供既製服縫製
紳士服製造 紳士既製服製造
下着類製造 下着類製造
寝具製作 寝具製作
帆布製品製造 帆布製品製造
布はく縫製 ワイシャツ製造
座席シート縫製 自動車シート縫製
タオル製造 タオル縫製
家具製造 家具製作 家具手加工
かばん製造 かばん製造 かばん製造
紙器・段ボール箱製造 紙器・段ボール箱製造 印刷箱打抜き
印刷箱製箱
貼箱製造
段ボール箱製造
コンクリート製品製造 コンクリート製品製造 コンクリート製品製造
陶磁器製品製造 陶磁器工業製品製造 機械ろくろ成形
圧力鋳込み成形
パッド印刷
印刷・製本 印刷 オフセット印刷
グラビア印刷
製本 製本
ゴム製品製造 ゴム製品製造 成形加工
押出し加工
混練り圧延加工
複合積層加工
RPF製造 RPF製造 RPF製造
電線・ケーブル製造
生コンクリート製造
定形・不定形耐火物製造

各業務区分に対応する技能評価試験や日本語試験に合格した外国人(または対応する技能実習2号を良好に修了した外国人)であれば、受入れが可能です。

また、主たる作業に加えて、日本人が通常行う関連業務(原材料・部品の調達・搬送作業、各業務の前後工程作業、クレーン・フォークリフト等運転作業、清掃・保守管理作業など)に付随的に従事することも認められています。

なお、熟練した技能が求められる特定技能2号については、「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分で受入れが可能です。

(2)「工業製品製造業分野」の受入れ上限数

特定技能1号では、5年ごとに分野ごとの受入れ見込数(受入れ上限)が設定されています。令和8年6月末時点における工業製品製造業分野の受入れ見込数および在留者数は以下の通りです。

項目 数値 備考
受入れ見込数(上限) 199,500人 令和11年3月までの設定数値
在留者数 62,033人 令和8年6月末時点(速報値)
受入れ見込数の充足率 31.10% 受入れ上限に対して約3割程度
年間増加数 10,970人 令和7年6月末〜令和8年6月末の増加数

在留者数は年々増加しているものの、充足率は31.1%となっており、依然として受入れ枠に余裕がある状況です。ただし、特定技能の分野それぞれで設定されている、受入れ上限数については、国内の情勢などを勘案して、人数の見直しがなされることもある点には注意が必要です。

人数変更がなされる際には、より多くの人員確保が必要と判断された分野の受入れ上限が引き上げられ、逆に、人数が充足していると判断された分野は、上限が引き下げられる可能性もあります。

(3)JAIMへの加入手続き

特定技能外国人を受入れするためには、原則として受入れ機関が特定技能協議会へ加入する必要があります。ただし、工業製品製造業分野では、事業所ごとに経済産業大臣の登録法人である「一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)」へ加入することで協議会所属要件を満たす仕組みになっています。

また、ビザ申請時には後述するように、「JAIMの名簿の写し」の提出が必須となるため、入管へのビザ申請を行う前にあらかじめJAIMへの入会・名簿掲載を完了させておく必要があります。審査には2〜3ヶ月を要するため、採用・受入れ計画に合わせて早めの手続きを開始しましょう。

JAIMの会員区分は活用する制度によって異なります。

  • 賛助会員:特定技能外国人(および育成就労外国人)を受入れる事業所向け。特定技能外国人の受入れには賛助会員としての入会が必要です。
  • 育成就労会員:育成就労外国人(旧技能実習に代わる新制度)のみを受入れる事業所向け。

以下では、特定技能外国人を受け入れるための「賛助会員」への入会方法を解説します。

〇加入申請に必要な書類と事前の準備
JAIMポータルサイト(外部リンク)から専用様式をダウンロードし、以下の書類を作成します。

誓約書関係(JAIM所定様式)

  • 様式2:共通行動規範に係る誓約書
  • 様式3:反社会的勢力でないことの表明・確約に係る誓約書
  • 様式4:生産性向上及び国内人材確保のための取組に係る誓約書

証明書類(事業実体の証明)
自社の「日本標準産業分類」の該当性や、直近1年間に該当製造品の出荷額・加工賃収入が発生していることを証明する資料(納品書・仕入書、設備画像、最終製品の画像と説明文など)
※「日本標準産業分類」は総務省公式サイト(外部リンク)からご確認ください

上乗せ要件提出書類(対象業種のみ)
繊維工業、印刷・同関連業、ゴム製品、金属熱処理、RPF製造、こん包業等で申請する場合、業界特有の上乗せ要件(人権基準遵守、勤怠電子化、加盟組合確認など)に応じた追加書類が必要です

〇加入申請から名簿掲載(完了)までの4ステップ
申請から審査完了・名簿掲載までは標準で約2〜3ヶ月かかります。ビザ申請に間に合うよう、早めの手続きが必要です。

  • STEP 1:申請書類の準備
    ポータルサイトより各種テンプレートを入手し、事業所で製造する製品証跡や誓約書を作成・PDF化します。
  • STEP 2:JAIMポータルサイトでのオンライン入会申請
    「JAIMポータルサイト」のフォームにて法人情報・受入れ事業所情報を入力し、準備した書類をアップロードして申請します。
  • STEP 3:年会費の支払い
    審査通過後、メールにて請求書が届きます。初年度の年会費は指定口座へ銀行振込にて支払います(次年度以降は口座振替となります)。
  • STEP 4:手続き完了(名簿掲載)
    入金確認後、手続きが完了し「工業製品製造業分野 特定技能外国人受入可能事業所名簿」(外部リンク)に事業所名が掲載されます。この名簿の写しが、入管へのビザ申請時の添付資料(受入れ要件適合証明)となります。JAIMでの会員証の発行はございません。

〇年会費と割引制度
賛助会員の基本年会費は60,000円〜83,000円/年(入会月による月割あり)です。条件を満たす場合、以下の割引が適用されます。

  • 中小企業割引:資本金3億円以下または従業員300人以下の証跡(履歴事項全部証明書、決算書、確定保険料申告書など)を提出することで割引が適用されます。
  • 正会員団体割引:JAIMの正会員である業界団体に所属している場合、手続きフォーム上の団体一覧から選択し、必要に応じて証明書を提出すると(不要な場合あり)割引が適用されます。

3.製造分野特定技能評価試験の実施概要

技能水準の確認試験は、JAIMが試験実施機関となって、CBT方式で実施しています。

学習テキストや問題例などは、JAIM公式サイト上「試験関連資料」ページ(外部リンク)よりご確認ください。

(1)特定技能1号評価試験の実施方式

・受験資格
試験日当日において満17歳以上の外国人、インドネシア国籍の場合は、試験日当日において満18歳以上

・日程・会場
年3回程度(7月・11月・2月頃)、全国のCBTテストセンターおよび海外会場で実施

・試験区分
全17区分(特定技能1号の対象である業務区分ごとに実施)

・実施方式
学科(40分)+実技(40分)の80分、日本語で実施

・合格基準
学科試験:正答率65%以上 / 実技試験:正答率60%以上

・受験料
8,000円(全業務区分共通)

・合格を証明する書類
プロメトリックのマイページから「結果通知書」を取得します

(2)特定技能2号評価試験の実施方式

・受験資格
以下の2点を満たさなければなりません。
試験日当日において満17歳以上の外国人、インドネシア国籍の場合は、試験日当日において満18歳以上
試験の前日までに日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有する者

・日程・会場
全国のCBTテストセンター(日本国内のみ)

・試験区分
全3区分(特定技能2号の対象である機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理)

・実施方式
実技試験のみ(80分)
学科試験はビジネス・キャリア検定3級等で代替

・受験料
15,000円 (全業務区分共通)

・合格を証明する書類
プロメトリックのマイページから「結果通知書」を取得します

4.受入れ企業が押さえるべき「工業製品製造業分野」の実務上の注意点

工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れるにあたり、実務において注意すべきポイントは以下の通りです。

注意点①JAIM入会は「事業所単位」

JAIMへの加入は、会社(法人)単位ではなく外国人が実際に就労する「事業所単位」で行う必要があります。本社のみで加入していても、対象工場が名簿に未掲載の場合はビザ申請が不許可となります。

注意点②直近1年間の「製造品出荷額・加工賃収入」の立証が必要

受入れ事業所が対象産業に該当するかは、直近1年間で該当製品の出荷額等が発生しているかで審査されます。納品書、仕入書、製造設備・完成品の画像などの証跡資料の提出が必須です。

注意点③無秩序な「引き抜き行為」の自粛

同一業務区分内での転職は認められていますが、特定企業や都市部への過度な集中を防ぐため、他社からの積極的な引き抜き雇用は自粛が求められています。

5.工業製品製造業分野の特定技能ビザまとめ

本コラムでは、製造業分野が「工業製品製造業分野」へと再編された背景や受入れ要件、JAIMへの加入手続き、評価試験の概要を中心に解説しました。

工業製品製造業分野では、対象となる業種や業務の幅が大きく広がり、手続の利便性向上や受入れ枠の拡大が図られています。

一方で、受入れにあたっては「JAIMへの事業所単位での加入義務」や「対象産業・出荷額の実体証明」、2号に向けた実務経験管理など、押さえるべきポイントが多岐にわたります。

行政書士法人第一綜合事務所では、特定技能ビザの申請手続からJAIM加入手続きのサポートまで幅広く対応しております。外国人材の受入れをご検討中の事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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