行政書士法人第一綜合事務所

【徹底比較】特定技能ビザと技能実習ビザの12の違い

日本ではこれまで,技能実習制度を活用しての外国人雇用が行われてきました。
しかし,制度の運用が難しいなどの理由で,実際の雇用には至らないケースも見られました。
そんな中,単純労働の現場でも外国人を労働者として雇用可能な,特定技能制度が2019年に始まりました。
技能実習と特定技能ビザは,雇用可能な業種などの類似点も多いため,それぞれの制度の違いが分かり辛いという声も多く聞かれます。
本記事では,そんな2つの制度について12の違いを比較しながらご紹介します。
最後まで読んで頂くことで,外国人を雇用する際にどちらの制度を活用すべきかの判断材料にして頂けると思いますので,ぜひお付き合いください。

特定技能と技能実習の目的・法令の違い

まずは,特定技能制度と技能実習制度のそれぞれの目的の違いから見ていきましょう。

1-1 ➀目的

特定技能制度 技能実習制度
生産性向上や国内人材を確保するための施策などを行っても,なお人材不足が深刻な日本の産業分野の労働力を,一定の専門性・技能をもつ外国人材によって補う 先進国としての役割を果たすため,技能,技術・知識の移転を通して発展途上国の経済発展に協力する

表のとおり,2つの制度の目的は全く異なります。比較すると特定技能制度の目的の方が,多くの受入れ機関が,外国人を雇用したい目的と合致するのではないでしょうか。

特定技能制度では,雇用する外国人を労働者として扱うことが認められているのに対して,技能実習制度は,あくまでも技能実習を通して,技能等を外国人に習得させるのが目的であるため,労働者として扱うことは認められていません。

そのため,認可を受けた「技能実習計画」に沿った活動のみが認められており,従事させる作業まで細かく規定されています。

1-2 ②適応法令

特定技能制度 技能実習制度
出入国管理及び難民認定法 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
出入国管理及び難民認定法

どちらの制度にも,出入国管理及び難民認定法が適応されます。加えて,技能実習制度に対しては,外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(通称:外国人技能実習法)も適応されており,制度を管轄する技能実習機構が,外国人技能実習法を遵守しているかどうか,不定期で受入れ機関や監理団体を訪問監査する他,技能実習生の受入れに必要な技能実習計画についての許認可をする権限を持ちます。

2.特定技能と技能実習に関連する機関・受入れ方法の違い

2-1 ➂関連する機関

特定技能制度 技能実習制度
出入国在留管理庁,登録支援機関
※国籍によっては送出し機関が関連する可能性あり
出入国在留管理庁,外国人技能実習機構,監理団体,送出し機関

日本に在留する全ての外国人の監理に関与する出入国在留管理庁以外は,表のとおり2つの制度で関連機関が異なります。各関連機関の役割は次の通りです。

〇特定技能制度
特定技能制度に登場する登録支援機関とは,本来,受入れ機関が行うことを義務付けられている,特定技能外国人に対する生活相談や行政手続きのサポートなどの支援業務を,受入れ機関から委託を受けて,代行する許可を得ている機関のことです。

〇技能実習制度
外国人技能実習機構は,技能実習の適正な実施,及び技能実習生の保護を目的として設立された機関で,受入れ機関を含む技能実習制度に関連する機関を監査する役割も担います。

監理団体は,受入れ機関の技能実習制度の適正な運用を監視・サポートするための機関です。

外国人技能実習法に則った技能実習が行われているか,受け入れ機関に定期訪問して監査する立場でもあります。

送り出し機関は,技能実習生の母国にある,技能実習生候補者の募集などを行う機関です。また,ほとんどの技能実習生が参加する入国後講習を実施するための,日本語学校を併設している場合も多いです。

なお,紹介した関連機関以外にも,それぞれの制度の手続き上,国籍によっては各国の大使館などが関連する場合もあります。

2-2 ④受入れ方法

特定技能制度 技能実習制度
仲介機関なしで外国人の受入れが可能 送り出し機関と監理団体を通して,外国人を受入れ
※仲介機関なしで,受入れすることも可能。

表のとおり,特定技能制度では仲介機関なしで,外国人を雇用することが可能です。

一方で,技能実習制度では外国にある送出し機関と,日本にある監理団体が技能実習生の受入れに関わる場合が多いです。

なお,技能実習制度では,監理団体や送り出し機関の関与なしに,現地法人の社員を技能実習生として日本で受入れする「企業単独型」と,監理団体や送り出し機関と協力して受入れをする「監理団体型」の2つの受入れ方法があります。

3.特定技能と技能実習の要件の違い

3-1 ⑤求められる技能・日本語水準

特定技能制度 技能実習制度
特定技能の各分野で定められた相当程度の知識または経験と日本語能力が必要 なし
※介護職種のみ技能実習計画申請時に,日本語能力試験N4程度の日本語能力の証明が必要

特定技能制度では,特定技能の14分野で定められた基準以上の技能と日本語能力試験N4程度の日本語能力が求められます。

技能と日本語の水準については,それぞれの分野で設けられた試験に合格する方法以外に,特定技能の業務区分に対応する職種で,「技能実習2号を良好に修了」することでも満たすことができます。

一方で,技能実習制度では,介護職種を除いて初めのビザ取得時に求められる技能・日本語水準はありません。

ただし,入国後に,技能実習生が次の号へ移行する際には,それぞれの職種で設けられた試験に合格していることが求められます。

3-2 ⑥ビザ取得のための試験

特定技能制度 技能実習制度
特定技能の各分野で定められた技能試験と,日本語試験に合格が必要 なし

特定技能制度では,各分野の業務区分ごとに技能試験が設けられており,それぞれの試験に合格することで技能要件を満たすことができます。

加えて,日本語能力試験N4,または国際交流基金日本語基礎テストでA2レベル程度の結果を取得することで,日本語要件も満たすことができます。

注意点として,介護の特定技能のみ,上記の日本語試験に加えて,介護日本語評価試験の合格も必要になります。

特定技能ビザの試験については,【特定技能ビザ】全14分野の試験内容のページもご確認ください。

4.特定技能と技能実習の人数枠・活動内容の違い

4-1 ➆人数枠

特定技能制度 技能実習制度
人数枠の制限なし
※介護・建設分野は常勤職員数が上限
常勤職員数によって受入れ可能人数に制限あり

特定技能制度では,介護と建設を除いて,特定技能外国人の受入れに人数制限はありません。
そのため,数人程度の常勤職員数の機関が,数十人の特定技能外国人を雇用することも可能です。

技能実習制度では次の表のとおり,受入れ機関の常勤職員数に応じた人数の技能実習生受入れのみが認められています。

受入れ機関が一定の要件を満たして,優良な受入れ機関の認定を受けた場合のみ,基本人数枠が倍になります。

◯基本人数枠

受入れ機関の常勤職員数 1号技能実習生の人数枠
301人以上 常勤職員数の20分の1
201人~300人 15人
101人~200人 10人
51人~100人 6人
41人~50人 5人
31人~40人 4人
30人以下 3人

4-2 ⑧活動内容

特定技能制度 技能実習制度
相当程度の知識または経験を必要とする業務に従事する活動 技能実習計画に基づいた講習や技能等に係る業務に従事する活動

特定技能制度では,各分野・業務区分で定められた一定程度の知識・経験を必要とする業務に従事することが認められています。

加えて,関連業務として,同じ職場の日本人従業員が通常,従事する業務に携わることも認められていますが,専ら関連業務のみに従事することは認められない点に注意が必要です。

技能実習制度では,認可を受けた技能実習計画で認められた,作業への従事のみが認められています。

技能実習計画を作成する際には,使用する道具や機械から作業内容まで細かく精査されるため,認められる業務範囲も特定技能制度と比べて狭く,業務の自由度は低いと言えます。

5.特定技能と技能実習の転職・家族帯同の違い

5-1 ⑨転職

特定技能制度 技能実習制度
転職可能 原則不可
※受入れ機関の倒産等,やむを得ない場合や2号から3号への移行時のみ受入れ機関の変更が可能

特定技能制度では,技能要件を満たす範囲での転職が認められています。

そのため,特定技能外国人として就労している機関と,同じ分野・業務の機関への転職は認められますが,別の分野・業務の機関への転職は認められません。

ただし,別の分野・業務であっても,特定技能の技能試験に合格して,技能要件を満たしていれば,転職が可能となります。

他方で,技能実習制度では,基本的に転職が認められておらず,2号から3号へ移行するタイミングでのみ受入れ機関の変更が可能です。

5-2 ⑩家族帯同

特定技能制度 技能実習制度
特定技能(1号)は不可
特定技能(2号)は可能
※例外あり
不可

家族帯同については,現在のところ,いずれの制度でも認められていませんが,将来的にビザの発行が開始される予定の特定技能(2号)では,家族帯同が認められています。

なお,例外的に留学ビザから特定技能(1号)へビザの切り替えをする外国人については,留学ビザで家族を日本へ呼び寄せていた場合に限り,特定技能(1号)ビザを取得した後も,家族帯同が認められます。

6.特定技能と技能実習の在留期間と永住展望の違い

6-1 ⑪在留期間

特定技能制度 技能実習制度
特定技能(1号):最長5年間
特定技能(2号):実質無期限
技能実習(1号):1年間
技能実習(2号):2年間
技能実習(3号):2年間

特定技能制度では,現在のところ,特定技能(1号)で最長5年間の就労のみが認められていますが,将来的に特定技能(2号)が開始されると,該当分野(現在は建設業と造船・舶用工業のみ)では実質無期限の就労が認められます。

一方で,技能実習制度でも,1号から3号までの通算で最大5年間の技能実習が可能です。そのため,技能実習と特定技能(1号)を併せて,最大で10年間の間,外国人を雇用することも可能となりました。

6-2 ⑫永住ビザ取得の可能性

特定技能制度 技能実習制度
特定技能(2号)での在留を継続することで,永住申請の要件を満たす 技能実習での在留期間では,永住申請の要件を満たさない

日本の永住ビザ申請要件のひとつに「原則として引き続き10年以上,日本に在留しており,期間中,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)または居住資格をもって,引き続き5年以上在留していること」があります。

そのため,特定技能(2号)として5年間以上,日本に在留することで,技能実習や特定技能(1号)での在留期間と併せて永住ビザ申請の要件を満たすことができます。

7.まとめ:【徹底比較】特定技能ビザと技能実習ビザの12の違い

本記事では,特定技能ビザと技能実習ビザの違いについて紹介しました。

2つの制度には多くの違いがあるため,受入れ機関がどちらの制度を使うのか長期的な視点で検討が必要になります。

この際,重要になるのが“正確な情報収集”です。

今の時代,インターネット上では情報が溢れていますが,正確な情報の見極めをするには,専門的な知識,俯瞰した視点が必要になります。

行政書士法人第一綜合事務所では,外国人の受け入れ体制の構築などのコンサルティングを積極的に行っております。

ビザ申請のみならず,外国人の受入体制構築にご興味をお持ちの企業様は,お気軽に弊社までお問い合わせください。