仲野 翔悟

特定技能ビザと就労ビザの違い

特定技能ビザと就労ビザの違い

特定技能ビザは,人手不足を目的として就労ビザの一つとして新設されました。
就労ビザは,特定技能ビザを含めて主なもので19種類もあり,それぞれ取得要件なども異なります。
本記事では,特定技能ビザと就労ビザの違いを紹介した内容となっています。

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1.特定技能ビザとは

特定技能ビザとは,2019年に新設された就労ビザのひとつで,人手不足が深刻な12分野で一定の専門性や技能をもつ即戦力外国人の受入れを認めたビザです。

特定技能ビザには,1号と2号がありますが現在のところ,特定技能ビザで日本に在留している外国人の全てが特定技能(1号)ビザを取得しています。

なお,特定技能(2号)ビザは,建設と造船・舶用工業の2分野で将来的に,ビザの発行が開始されることが決定しています。

特定技能ビザで認められている12分野は次のとおりです。

特定技能(1号)ビザ
介護分野 ビルクリーニング分野 建設分野
素形材産業分野
産業機械製造業分野
電気・電子情報関連産業分野
飲食料品製造業分野 外食業分野
造船・舶用工業分野 自動車整備分野 航空分野
宿泊分野 農業分野 漁業分野

就労ビザについては,就労ビザの取得方法 に詳しく記載していますのでご覧ください。

2.特定技能ビザと就労ビザの違い

今回は,就労ビザの中でも,外国人数の多い「技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザ」を取り上げて,特定技能ビザとの6つの違いについて見ていきます。

①在留期間

特定技能ビザ 就労ビザ(技人国)
最長5年
※特定技能(2号)ビザは実質無期限
実質無期限

〇特定技能ビ
特定技能ビザでは,4ヶ月,6ヶ月,1年のいずれかの期間の在留期間が与えられますが,在留できるのは最大5年間と定められています。

ただし,特定技能(2号)ビザでは回数制限なしでビザの期間更新が認められることが決まっていますので,今後,特定技能(1号)ビザから特定技能(2号)へのビザ変更も増加することが予想されます。

〇就労ビザ(技人国)
就労ビザ(技人国)では,3ヶ月,1年,3年,5年のいずれかの期間の在留期間が与えられ,入管法上の問題が無ければ,回数制限なしでビザの期間更新が認められます。

②外国人の要件

特定技能ビザ 就労ビザ(技人国)
日本語能力と各分野・業務区分で定められた技能要件を満たす必要がある。 就労する業務に必要な技術や知識を,学歴や実務経験などで証明する必要がある。

〇特定技能ビザ
特定技能ビザでは,日本語要件として日本語能力試験N4以上,または国際交流基金日本語基礎テスト(JFTーBasic)A2レベル程度の結果,技能要件として各分野・業務区分で設置された技能試験への合格が必要です。

また,各分野・業務区分に対応する技能実習2号を良好に修了した外国人は,技能試験を免除されます。

なお,介護分野に関しては,日本語要件として介護日本語評価試験の合格も必要な点には注意して下さい。

〇就労ビザ(技人国)
就労ビザ(技人国)で就労する外国人は,それぞれ次の要件を満たす必要があります。

技術分野・人文知識分野
大卒以上の学歴または日本の専門学校卒業,10年以上の実務経験のいずれかに該当
※技術分野に関しては,法務大臣指定の試験合格や情報処理技術の資格でも要件を満たします。
国際業務分野
該当する業務(翻訳,通訳,語学の指導,広報,宣伝または海外取引業務,服飾若しくは室内装飾に係るデザイン,商品開発など)への従事とその業務での原則3年間以上の実務経験
※翻訳者・通訳者・語学指導者は大卒の場合,実務要件免除

③業務内容

特定技能ビザ 就労ビザ(技人国)
12分野の各分野・業務区分で規定された業務 教育機関などで身につけた専門的な技術や知識,実務経験を活かせる業務

〇特定技能ビザ
特定技能ビザで従事可能な業務は,該当する各分野・業務区分で定められた業務のみです。

また,同じ就労場所で働いている日本人が従事する業務に,付随的に従事することは認められています。

認められる付随業務の例として,農業に従事する特定技能外国人が,農産物の販売業務などに付随的に従事する場合などが想定されます。

〇就労ビザ(技人国)
就労ビザ(技人国)では,教育機関などで身につけた専門的な技術や知識,実務経験を活かせる業務に従事することが認められています。

他方で,特定技能ビザと違い,単純作業いわゆるブルーカラーに該当するような業務への従事は認められません。

④家族帯同の可否

特定技能ビザ 就労ビザ(技人国)
家族帯同不可
※特定技能(2号)ビザは可能
家族帯同可能

〇特定技能ビザ
特定技能(1号)ビザでは,家族を日本に呼び寄せることはできませんが,将来的に,特定技能(2号)ビザの運用が開始された際には,家族帯同が認められます。

例外として,元々留学ビザなどを使って,家族と日本に在留していた外国人が,特定技能ビザへの切り替えをした場合は引き続き家族帯同が認められます。

〇就労ビザ(技人国)
就労ビザ(技人国)をもつ外国人は,家族滞在ビザを使って家族を日本に呼び寄せることができます。

家族滞在ビザでは,経済的に自立していない配偶者または子供のみの呼び寄せが可能です。

また,家族滞在ビザで日本に在留している間は,資格外活動許可を取得すれば,週に28時間以内のアルバイトに従事することは認められます。

⑤転職の可否

特定技能ビザ 就労ビザ(技人国)
転職可能 転職可能

〇特定技能ビザ
特定技能ビザでは,特定技能12分野の各分野・業務区分で設定された,技能要件をみたしている範囲内での転職が認められます。

特定技能ビザで求められる日本語要件は,介護分野以外の11分野で共通のため,転職先の分野・業務区分の技能要件を満たせば特定技能ビザの取得要件を満たすことになります。

〇就労ビザ(技人国)
就労ビザ(技人国)では,転職が認められており転職に際して,「所属機関の変更の届け出」を入管へ提出するのみで,ビザ切り替え申請をする必要はありません。

ただし,就労ビザ(技人国)の期間更新をする際に,新しい就職先での業務内容が就労ビザ(技人国)の要件に該当しないと判断された場合は,ビザ更新ができずに日本で就労継続ができない可能性がある点には,注意が必要です。

なお,新しい就職先での業務内容が,就労ビザ(技人国)の要件に該当するか確認する方法として,「就労資格証明書」があります。

就労資格証明書を取得することで,新しい就職先が就労ビザ(技人国)の要件を満たしていることを確認することができるので,転職後は就労資格証明書の申請をしておくことをお勧めします。

詳細は,就労資格証明書 に記載しておりますので,ご確認ください。

⑥永住ビザ取得の可否

特定技能(1号)ビザ 就労ビザ(技人国)
永住ビザの申請不可 就労ビザ(技人国)で10年以上継続して在留することで永住ビザ申請が可能

〇特定技能ビザ
特定技能(1号)ビザでの在留期間は,永住ビザ要件の「5年間は就労ビザまたは居住ビザで在留」に該当しません。

そのため,技能実習ビザなどと併せて,10年間以上の在留をしても永住ビザの申請は認められません。

他方で,特定技能(2号)ビザでの在留期間は,「5年間は就労ビザまたは居住ビザで在留」の期間として計算できるため,特定技能外国人にも将来的な永住ビザの申請の道は残されています。

〇就労ビザ(技人国)
永住ビザの重要な要件のひとつに,10年以上継続して在留(内5年間は就労ビザまたは居住ビザで在留)していることがあります。

そのため,就労ビザ(技人国)で10年間以上の在留をすることで,永住ビザの申請をすることができます。

3.特定技能ビザから他の就労ビザへの切り替え

特定技能ビザから他の就労ビザへの切り替えが可能なケースを紹介します。

①就労ビザへの切り替え

特定技能ビザをもつ外国人は,就労ビザの要件を満たすことで,ビザの切り替えが認められます。

例としては,特定技能外国人として就労をしながら,通信制の大学で学位を取得して要件をみたす場合や,高い日本語能力(日本語能力試験N2以上など)を証明できる試験に合格して,且つ就労しながら技能実習生への通訳業務の経験を積むことなどで,就労ビザの要件を満たす可能性が考えられます。

②介護ビザへの切り替え

特定技能ビザにて介護分野で就労中に,介護福祉士の資格を取得することで,介護ビザへの切り替え要件を満たします。

なお,就労できる業務は介護のみに限られますが,介護ビザでは,就労ビザと同様に家族帯同や実質無期限の在留期間更新が認められています。

4.特定技能ビザと就労ビザの違いのまとめ

本記事では,特定技能ビザと就労ビザの違いなど中心にご紹介しました。

就労ビザは,日本で従事する業務や目的などに応じて種類が分けられており,それぞれ要件も異なるため,間違った方法で外国人を雇用すると入管法に抵触する可能性もあります。

そのため,外国人を雇用する際には,適切なビザを選択することが重要となります。

特定技能ビザを取得するべきか,就労ビザを取得するべきか,それぞれのメリット,デメリットなど,ご不明がございましたら,行政書士法人第一綜合事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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