仲野 翔悟

建設業の特定技能ビザとは?受け入れ機関の要件・業務区分・2号へのキャリアパスを行政書士が解説

建設業の特定技能ビザとは?受入機関の要件・業務区分・2号へのキャリアパスを行政書士が解説

建設業は、過酷な業務内容などの理由もあり、日本人の定着率が低いことでも知られる業界です。
 
本コラムでは、人手不足が深刻な建設業での外国人雇用を認める「特定技能ビザ」について、受け入れ機関が満たす必要のある要件や、特定技能外国人が従事可能な業務区分を中心に、入管業務専門の行政書士が解説します。
 
建設業で、特定技能外国人を雇用する際に参考にして頂ける内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

無料相談のお問い合わせ先

1.建設業での特定技能ビザ取得状況

まずは、建設業での特定技能ビザ取得状況について紹介します。

2019年に特定技能制度が施行された際に比べて、建設分野における特定技能外国人の受入れは大幅に進展しています。

入管が公表した最新データ(令和8年6月末時点・速報値)によると、建設分野の特定技能1号外国人の在留者数は直近1年間で8,533人増加し、52,132人に達しています(令和11年3月までの受入れ見込み数は76,000人で充足率は68.6%)。

また、熟練した技能を要する特定技能2号についても3,000名を超える外国人が在留しており、1号からのステップアップや長期就労の仕組みが定着しつつあります。

2.特定技能で従事可能な3つの業務区分(技能実習との対応関係)

かつての建設分野は19業務区分に分かれていましたが、大きく「土木」「建築」「ライフライン・設備」の三つに再編されました。同じ区分内であれば、他の業務を行うことが可能です。

次の表では、技能実習と特定技能それぞれの制度で従事可能な業務を紹介しています。

特定技能(業務区分) 技能実習(職種) 技能実習(作業)
土木 型枠施工 型枠工事
鉄筋施工 鉄筋組立て
とび とび
石材施工 石材加工
石張り
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事
ウェルポイント施工 ウェルポイント工事
建設機械施工 押土・整地
積込み
掘削
締固め
さく井 パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
建築 建築大工 大工工事
型枠施工 型枠工事
鉄筋施工 鉄筋組立て
とび とび
石材施工 石材加工
石張り
タイル張り タイル張り
かわらぶき かわらぶき
左官 左官
内装仕上げ施工 プラスチック系床仕上げ工事
カーペット系床仕上げ工事
鋼製下地工事
ボード仕上げ工事
カーテン工事
サッシ施工 ビル用サッシ施工
防水施工 シーリング防水工事
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事
表装 壁装
築炉 築炉
建具製作 木製建具手加工
建築板金 内外装板金
ライフライン・設備 さく井 パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
建築板金 ダクト板金
冷凍空気調和機器施工 冷凍空気調和機器施工
配管 建築配管
プラント配管
熱絶縁施工 保温保冷工事

上記表にて、「特定技能の業務区分(土木、建築、ライフライン・設備)」に対応している「技能実習の職種・作業」の技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能ビザの取得要件を満たすため、特定技能1号の評価試験(技能試験および日本語能力試験)の受験は免除されます

他方で、例えば技能実習2号で「建築大工」を良好に修了した外国人が、対応する業務区分が異なる「土木」や「ライフライン・設備」の分野で特定技能外国人として就労を希望する場合は、移行先の業務区分に対応する特定技能1号評価試験(学科・実技)の合格が必要となります。

なお、業務区分再編・統合により、特定技能への移行対象外(または対応する技能実習職種がなかった)とされていた作業についても3業務区分のいずれかに包括・整理されたため、建設分野の技能実習2号のすべての職種から特定技能への移行が可能となっています。

3.受入れ機関の要件

建設業で特定技能外国人を受入れする際には、通常行う入管への特定技能ビザ申請以外に、国土交通省による「建設特定技能受入計画」を受ける必要があります

受入れ計画について、特に審査される項目は次の7つです。

  1. 建設業法第3条の許可
  2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
  3. 特定技能外国人受入事業実施法人への加入
  4. 特定技能外国人への報酬要件
  5. 契約上の重要事項の書面での事前説明
  6. 特定技能外国人の講習への参加
  7. 受入れ機関への巡回指導

以下ではこれら7つの受入計画の要件に加えて、建設業分野独自の受け入れ人数の条件についても解説します。それぞれ見ていきましょう。

(1)建設業法第3条の許可:受入れ企業は建設業許可の取得が必須

特定技能外国人を受入れする機関は、「建設業法第3条の許可」を取得していることが必要です。

建設業法第3条の許可は、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除き、全ての建設業者に取得が求められている許可です。

なお、軽微な建設工事とは、受託する工事1件の請負金額が、建築一式工事の場合には1,500万円未満又は延べ面積が150平方メートル未満、建築一式工事以外の建設工事の場合には、500万円未満の木造住宅の工事のことを指します。

(2)建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録:受入れ企業・外国人双方の登録が条件

特定技能外国人を雇用する受入れ機関と、特定技能外国人のそれぞれが建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録する必要があります。

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、労働者が取得した資格、講習の受講歴、社会保険加入状況、現場の就業履歴などを業界横断的に登録・蓄積する仕組みで、労働者の処遇改善を目的として開発されたシステムです。

2019年より運用が開始され、特定技能外国人に限らず、建設業の労働者全員が登録することを目標としています。

登録した労働者には、カードが発行され、建設現場に入場する際にも専用の機械でカードの情報を読み取り、就労状況がシステム上で管理されます。

なお、受入れ機関と特定技能外国人が建設キャリアアップシステムに登録するべきタイミングは次のとおりです。

〇受入れ機関
国土交通省へ特定技能外国人の受入れ計画を申請する前までに登録が必要です。

具体的には、受入計画の認定申請前に事業者登録を完了させ、申請画面へ事業者登録をして発行される「事業者ID」を入力する必要があります

〇特定技能外国人

  • 国内にいる人材
    受入計画の認定申請時に、外国人本人の技能者登録をして発行される「技能者ID」を入力し、建設キャリアアップカードの写し(画像データ等)を添付して提出する必要があります。
  • 海外にいる人材
    計画申請時点ではカードがないため、入国後に登録を行います。入国後原則1か月以内に登録を完了させ、システム上で受入報告を行う際に、技能者IDの入力およびカードの写しの提出を行います。

(3)特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入:受入負担金(月額12,500円)の納付

特定技能外国人を受入れするためには、国内唯一の特定技能外国人受入事業実施法人である、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への加入が必要です

JACは、建設業の特定技能外国人、その他の外国人材の適正な受入れや、労働者の権利保護に関する活動を行い建設業の健全化を目的として設立されており、次の7つを主な活動としています。

  • 建設分野における外国人材の適正かつ円滑な受入れの実現に向けた行動規範の策定及び当該規範の適正な運用
  • 建設分野における外国人材が有する能力を有効に発揮できる環境の整備に関する事業
  • 建設分野特定技能外国人の受入れに関する事業
  • 建設分野特定技能外国人に対する職業紹介事業
  • 建設技能者の技能評価その他の建設技能者の確保等に関する事業
  • 建設技能者の確保等に関する調査研究
  • その他本機構の目的を達成するために必要な事業

参照:建設人材機構(一般社団法人建設技能人材機構JACについて)

受入れ機関がJACへ加入する方法は次の2つのみです。

    >正会員団体の会員になる
    JACの正会員団体の会員となることで、直接JACの会員とならなくても特定技能外国人の受入れが認められます。
    正会員団体の情報については、「建設技能人材機構(JAC)入会のご案内(外部リンク)」をご確認下さい。
    なお、正会員団体の会員となるためには、各団体が定める会費が発生するため、入会を検討する前に各団体へ確認をする必要があります。
  1. JACの賛助会員になる
    JACの賛助会員となることで、特定技能外国人の受入れが認められます。
    賛助会員は、会費として毎年24万円(入会金なし)をJACへ支払う必要があります。

また、JACへの加入に発生する費用以外にも、特定技能外国人の受入れにあたり、「受入れ負担金」の支払いも必要となります。

2024年7月以降、受入負担金は、特定技能外国人1人当たり、一律で月額12,500円となっています。なお、この受入負担金を外国人本人の給与から控除(天引き)することは禁止されています。

(4)特定技能外国人への報酬要件:日本人と同等以上の報酬と「月給制」の徹底

特定技能外国人への報酬は、同等の技能をもつ日本人労働者と同等以上の報酬額且つ、技能習熟度に応じて昇給を行う契約をすることが求められます。

これは、入管への特定技能ビザ申請時にも確認される重要事項のため、受入れの際には外国人という理由で賃金差が無いように注意して下さい。

また、建設分野では、特定技能外国人の安定的な報酬を確保するため、仕事の繁閑により報酬が変動しないこと、すなわち「月給制」により、あらかじめ特定技能外国人との間で合意を得た額の報酬を毎月安定的に支払うことが求められます。受入企業で雇用している他の職員が月給制でない場合であっても、特定技能外国人に対しては月給制による報酬の支払いが求められます。

(5)契約上の重要事項の書面での事前説明:母国語書面を用いた事前同意

雇用契約を締結する際には、雇用契約内容について、特定技能外国人が十分に理解することができる言語で書面を交付して説明することが求められます。

雇用契約内容についての双方同意の証明として、受入れ機関の押印・特定技能外国人の署名をした母国語併記の雇用契約書と雇用条件書の写しを、国土交通省へ提出する必要があります。

なお、確認が必要な項目を網羅した母国語併記の雇用契約書と雇用条件書の参考書式については、「特定技能外国人の在留諸申請に関するもの(参考様式)(外部リンク)」よりダウンロードできます。

(6)特定技能外国人の講習への参加:FITS受入れ後講習の受講義務

特定技能外国人の受入れ開始後3ヶ月~6ヶ月以内に、一般社団法人国際建設技能振興機構(FITS)が主催する「建設特定技能受入後講習」を特定技能外国人に受講させる義務があります

講習の目的は、認められている権利、受入れや保護の仕組みを特定技能外国人へ理解させることです。

特定技能外国人の多い国の言語を中心として、以下の言語での実施に加え、その他の言語にも個別対応で実施しています。

講習の対象言語(2026年度)
ベトナム、中国、フィリピン(タガログ語)、インドネシア、タイ、 カンボジア(クメール語)、モンゴル、ネパール、マレーシア、ミャンマー、 バングラデシュ、スリランカ(シンハラ語、タミル語)、ラオス、韓国、インド

(7)受入れ機関への巡回指導・調査への協力:事前チェックの重要性

特定技能外国人の受入れ後に、一般社団法人国際建設技能振興機構(FITS)より巡回指導実施の要請があった場合は必要な協力を行う義務があります

特定技能外国人の受入れ後は、国土交通省より認証された受入れ計画の履行状況について、FITSが原則として1年に1回以上、全ての受入れ機関を巡回指導するため、巡回指導を受けた際には履行状況の説明ができるよう適正に制度の運用をすることが求められます。

以下の表は、FITSが公表しているチェック項目の例です。ぜひご参照ください。

カテゴリー 項目 チェックポイント
1. 契約内容・条件 労働条件の整合性 建設特定技能受入計画・重要事項事前説明書・雇用契約書と実際の労働条件に食い違いがないか
契約書の交付 日本語および母国語等で記載された雇用契約書を本人へ手渡しているか
2. 手当 月給制の徹底 日給制・時給制ではなく「月給制」で基本賃金を毎月安定して口座振込で支払っているか
不適切な手当控除の禁止 基本給を固定残業代として切り分けていないか(家賃・光熱費等の天引きは賃金控除協定が必要)
保証金・違約金の禁止 保証金の徴収や、不当な違約金・帰国に関する取り決めを結んでいないか
3. 労働時間・休日・休業 労働時間の適切な管理 1日8時間・週40時間を基本とし、出退勤時刻や残業時間を正確に記録・管理しているか
割増賃金の支払い 36協定の範囲内で業務を行い、職務手当等を含めた基礎単価で残業手当・休日手当を正しく算出しているか
有給休暇の促進と配慮 年次有休を付与・取得促進し、母国への一時帰国時にも取得に配慮しているか
休業手当の支給 天候不順や会社都合の休業を欠勤扱いとせず、給与全額または60%以上の休業手当を支払っているか
4. 昇給・教育・安全 技能に応じた定期昇給 勤続年数に応じた毎年の昇給に加え、資格取得やCCUSの能力レベル向上に応じて昇給を行っているか
特別教育・技能講習 業務に必要な特別教育・技能講習を受講させているか
健康管理の実施 雇入れ時の健康診断および年1回の定期健康診断を確実に実施しているか
5. キャリア・職場環境 将来目標の共有 「職長を目指す」「特定技能2号を取得する」などの目標を早期に共有し、指導・サポートを行っているか
社内環境・相談体制 差別・暴言・ハラスメントのない職場環境を作り、母国語等で迅速に相談できる体制を整えているか

(8)【補足】特定技能1号外国人の受入人数枠の制限:常勤職員数による人数上限

以上で解説した受入計画の要件に加えて、建設分野では企業ごとに受け入れられる人数に上限が設けられていることにも注意が必要です。

特定技能1号の外国人の受入総数が、受入企業の常勤職員(日本人技能者等※技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人を除く)の総数を超えてはならないという人数制限枠が設けられています。自社の常勤規模に応じた適正な指導・養成体制を確保するためのルールです。

4.特定技能2号ビザの取得要件と将来のキャリアパス

建設分野における特定技能2号は制度の本格運用が行われており、前述したように数多くの外国人が在留資格を取得して建設現場で活躍しています。

さらに今後は、2027年4月より施行される「育成就労制度」を皮切りに、「育成就労(3年間)→特定技能1号(最長5年)→特定技能2号(制限なし)→永住権取得」という中長期的なキャリアパスの確立が見込まれます。企業がこのキャリアステップを積極的に後押しし、成長の道筋を提示することが、優秀な外国人材の獲得と定着において重要となります。

建設分野で特定技能2号を取得するための主な要件は以下の3点です。

〇試験要件
それぞれの業務区分で設置された「建設分野特定技能2号評価試験」または「技能検定1級」いずれかに合格していること。日本語で出題される為、日本語能力が必要です。この試験の合格をもって実質的に必要な日本語水準(B1相当以上)を満たしていると評価されます。

〇実務要件
建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験を有していること。

実務経験の確認は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された就業日数や能力評価レベルに基づいて客観的に審査されます。
なお、対象業務区分でCCUSのレベル3を取得している場合は、レベル判定結果通知書の提示により実務経験申告書等の添付を省略できます

特定技能2号へ移行した外国人は、1号のような在留期間の上限(通算5年)がなくなり、要件を満たせば家族(配偶者・子)の帯同も可能となり、将来的には永住許可申請への道も開かれます

また、受入企業が支払うJAC受入負担金の対象から外れます。

5.建設業分野の特定技能ビザまとめ

本コラムでは、建設業にて特定技能外国人を雇用する際に必要な、受入れ機関の要件や業務区分を中心にご紹介しました。

特定技能の他分野と比べて、建設業は国土交通省独自の基準(受入計画認定、CCUS登録、JAC加入、月給制、受入人数制限など)が多く設定されているため、特定技能外国人を雇用する際には、余裕をもって準備を進めることが肝心です。

また、単なる短期的な労働力確保にとどまらず、「育成就労から特定技能1号・2号を経て、将来的な日本での定住(永住)まで見据えたキャリアプラン」を企業側が提示し、資格取得や班長経験の付与などを組織的にバックアップすることが求められています。外国人技能者が自社で長く活躍できる育成・支援体制を整えることこそが、人手不足を解消し、建設現場の未来を支える鍵となります。

建設業分野での特定技能ビザの申請手続きや、受入れ・キャリア形成支援の体制構築についてご質問や不安な点がございましたら、行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

ご相談は無料です。
お気軽にご相談ください。