農業で特定技能外国人を雇うには?受け入れ要件から試験の概要・合格率、雇用形態まで解

農業は、日本の産業の中でも過疎化や少子高齢化の影響を受けやすく、慢性的な人手不足に悩まされている産業のひとつです。
従来から、技能実習生を中心とした外国人の雇用が多い産業ではありましたが、特定技能ビザの施行や制度の拡充によって、農業分野の外国人材の雇用は加速しています。
本コラムでは、農業分野にて特定技能外国人を雇用する際の基礎知識から、特定技能試験の概要や繁忙期のみの雇用を実現する方法まで、入管業務専門の行政書士が解説します。
最後まで読んで頂くことで、農業分野で特定技能外国人の雇用をする際の判断材料にして頂けると思いますので、ぜひお付き合いください。
Index
1.農業分野の特定技能ビザについて
特定技能制度の開始当初、農業分野では最長5年の在留に限られる「特定技能1号」のみが運用されていました。しかし制度改定により、熟練した技能を持つ方向けの「特定技能2号」が導入され、農業分野でも無制限の在留期間更新や家族の帯同が可能となりました。
これにより、事業者には「通算5年の壁を越えた長期雇用」や「将来像を提示することによる定着率向上」という大きなメリットが生まれています。今後の外国人採用では、2027年4月から開始される新制度「育成就労」から特定技能1号、さらに現場の指導者・管理者を目指す「特定技能2号」へと至る一貫したキャリアパスを見据え、初期段階から育成・定着の体制を整えておくことがこれまで以上に重要となっています。
それでは、特定技能制度での農業の業務区分や雇用形態について見ていきましょう。
2.農業分野の業務区分と受け入れ方式
(1)業務区分
特定技能「農業」の業務区分は、次の表のとおり「耕種農業全般」と「畜産農業全般」の2つのみです。
対応する技能実習制度の作業で技能実習2号を良好に修了した外国人については、特定技能ビザを取得するための要件を満たすため、新たに農業技能評価試験を受験する必要はありません。
| 特定技能制度(業務区分) | 技能実習制度(作業名) |
| 耕種農業全般 (栽培管理、農産物の集出荷、選別等の業務) |
施設園芸 畑作・野菜 果樹 |
| 畜産農業全般 (飼養管理、畜産物の集出荷、選別等の業務) |
養豚 養鶏 酪農 |
特定技能外国人が就労する際には、許可を取得した業務区分に含まれる業務への従事のみが認められるため、例えば、耕種農業全般に従事する特定技能外国人が、畜産農業の業務に携わることは認められていません。
なお、特定技能の2つの業務区分のどちらで就労する場合でも、関連業務として、運搬業務、販売業務、冬季の除雪作業などに付随的に従事させることは認められています。
(2)雇用形態
農業は作物の収穫期など、時期によって必要な人員が大きく変わる特殊性があります。特定技能制度では、事業者のニーズに合わせて主に3つの方法で外国人を雇用することが可能です。
①通年雇用(直接雇用)
一般的な雇用形態として、1年以上の雇用契約を結び、年間を通して自社で就労してもらう方法です。熟練度を高めやすく、長期的な戦略に基づいて人材を確保できます。
②繁忙期・季節限定雇用(直接雇用の期間設定)
特定技能ビザは、技能実習と異なり、受入れ機関と外国人の双方が合意すれば雇用契約期間を自由に設定できます。 そのため、「収穫期の3ヶ月間だけ雇用する」といった契約を結ぶことが可能です。繁忙期以外の期間は母国へ一時帰国してもらうか、繁忙期と閑散期が逆になる他の農家と連携して時期をずらしながら雇用をリレーしていく運用も行われています。
③派遣での雇用
特定技能制度では原則として直接雇用が義務付けられていますが、農業分野(および漁業分野)では例外的に「派遣」での受け入れが認められています。人材派遣会社が雇用主となり、繁忙期を迎えた複数の農家へ外国人を派遣で手配する仕組みです。直接雇用に比べ費用は高くなる傾向がありますが、登録支援機関の許可を取得している派遣会社もあるため、特定技能外国人への支援業務も含めて依頼することで、労務管理や手続きの手間を大幅に軽減できるメリットがあります。
④請負での雇用
JAなどが請負業者となり、複数の請負現場にて、特定技能外国人を就労させるような受入れの方法も可能です。請負業者と外国人の間で締結するため、請負業者が繁忙期の違う複数の請負現場と請負契約を締結していれば、就業場所が変更となった場合でも、新たに特定技能ビザの切り替え申請をする必要はなく、入管庁への就業場所変更の届出等のみで就労を継続させることができます。
3.農業分野の受け入れ要件
(1)外国人本人の要件
技能試験と日本語試験に合格
農業の技能を証明するための農業技能評価試験と日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストA2レベル程度の結果を取得することで、農業の特定技能ビザ申請のための要件を満たすことができます。
技能実習2号を良好に修了
農業の該当職種にて、技能実習2号を良好に修了した外国人については、技能試験や日本語試験を受験せずに、特定技能ビザの申請をすることができます。
(2)受入れ機関の主な要件
【重要】農業分野特定技能協議会への事前加入
農林水産省が運営する「農業分野特定技能協議会」への加入が必須です。ビザの申請前に加入手続きを完了しておく必要があります。手続きは農林水産省の専用ページ(外部リンク)から行い、入会金や年会費などはかかりません。
特定技能の他業種と同様に、個人事業主または法人のいずれでも、特定技能外国人の受入れ機関となることが認められますが、以下にあげる事項については、最低限遵守していることが求められます。
・日本人と同等程度の報酬の支払い
雇用する特定技能外国人への報酬は、同程度の経験をもつ同じ職場の日本人従業員と差異をつけることは認められていません。
・特定技能外国人への支援体制を確保
特定技能外国人を雇用するためには、日本での生活や職場での困りごとに対応できる相談体制や、役所関係の手続き補助、銀行口座開設等をサポートする義務的支援を適正に実施できる体制を準備する必要があります。
なお、受入れ機関にて、支援体制を準備できない場合は、登録支援機関へ義務的支援の全てを委託することも認められています。
・1年以内の非自発的離職者・行方不明者が無いこと
過去1年以内に受入れ機関の都合で退職した従業員や、外国人の行方不明者があった場合、特定技能外国人を雇用することは認められません。
・5年内に法令違反が無いこと
過去5年以内に、入管法に関わらず、日本国内の全ての法令に対する違反歴がある場合は、特定技能外国人の雇用が認められません。
・特定技能外国人と違法な契約が無いこと
雇用契約を締結するにあたり、契約期間を満了せずに退職する場合の違約金や保証金の取り決め、登録支援機関に支援業務を委託する際に発生する費用を特定技能外国人に負担させる取り決めなど、違法な契約を締結した場合、特定技能外国人の雇用は認められません。
4.特定技能「農業分野」の試験概要
特定技能の他業種と同様に、農業分野でも技能評価試験が実施されており、農業未経験者でも試験に合格することで、農業の特定技能ビザ取得のための技能要件を満たすことができます。試験には「1号」と「2号」の2つが存在します。
(1)試験の種類と合格基準
農業技能評価試験は、「耕種農業全般」と「畜産農業全般」の2種類の業務区分ごとに実施されており、特定技能外国人として就労を希望する業務区分の試験に合格する必要があります。
・1号農業技能測定試験(基本技能)
未経験者や留学生等でも受験可能です(受験資格:満17歳以上)。
そのため、国内に在留している外国人留学生や他業種で技能実習を修了した外国人が、農業のこの試験に合格して、特定技能外国人として就労するケースも少なくありません。
難易度は、「日本国内での農業実務経験3年以上の人材であれば7割程度が合格できる」水準に設定されています。
2026年7月実施の試験の結果は、国内外あわせて3,954名が受験、3,536名が合格(合格率 約89.4%)というもので、実際に高い水準で推移しています。
・2号農業技能測定試験(熟練技能)
現場で複数の作業員を指導・管理する熟練人材向けです。農業現場での実務経験(工程を管理する者として2年以上、または耕種農業もしくは畜産農業の現場で3年以上)が受験資格として求められます。
「実務経験7年以上の熟練者で約3割が合格」という、高い難易度が設定されています。
2026年7月実施の試験の結果は823名が受験、353名が合格(合格率 約42.9%)と、1号に比べて難易度が高くなっています。
(2)試験内容
農業技能評価試験は、業務区分ごとに、別々の試験内容の出題がなされます。
それぞれ、60分間の制限時間内に、学科試験と実技試験、日本語の聞き取り問題(1号試験のみ・2号試験は問題文が日本語です)が出題され、多肢選択の中から解答をします。
試験は、コンピューターを使用して問題に解答するCBT方式または、ペーパーテスト方式で実施されますが、ほとんどの試験ではCBT方式での実施となっています。
実技試験についても、実際に作業を行う試験は無く、全ての試験がCBT方式またはペーパーテスト方式のみで行われるという点は、誤解が多いところになりますので、注意してください。
なお、それぞれの業務区分で出題される範囲については次の通りです。
・1号農業技能測定試験
〇耕種農業全般の出題範囲
- 耕種農業一般
- 安全衛生
- 栽培作物の品種・特徴
- 栽培環境(施設・設備・資材・機械)
- 栽培方法・管理
- 病害虫・雑草防除
- 収穫・調整・貯蔵・出荷 等
- 土壌の観察
- 肥料・農薬の取扱い
- 種子の取扱い
- 環境管理、資材・装置・機械の取扱い
- 栽培に関する作業
- 安全衛生 等
- 日本語で指示された農作業の内容等の聴き取り
〇畜産農業全般の出題範囲
- 畜産農業一般
- 安全衛生
- 品種
- 繁殖・生理
- 飼養管理 等
- 個体の取扱い
- 個体の観察
- 飼養管理、器具の取扱い
- 生産物の取扱い
- 安全衛生 等
- 日本語で指示された農作業の内容等の聴き取り
・2号農業技能測定試験
〇耕種農業全般(マネジメント能力を含む)
- 耕種農業一般
- 安全衛生
- 栽培作物の品種・特徴
- 栽培環境(施設・設備・資材・機械)
- 栽培方法・管理
- 病害虫・雑草防除
- 収穫・調整・貯蔵・出荷 等
- 肥料・農薬の取扱い
- 種子の取扱い
- 環境管理、資材・装置・機械の取扱い
- 栽培に関する作業
- 病害虫
- 安全衛生 等
〇畜産農業全般(マネジメント能力を含む)
- 畜産農業一般
- 安全衛生
- 品種
- 繁殖・生理
- 飼養管理 等
- 個体の取扱い
- 個体の観察
- 飼養管理、器具の取扱い
- 繁殖・生理
- 安全衛生 等
(3)実施場所
1号農業技能測定試験の国内試験は全国各地で、ほぼ毎日実施されているため、他業種と比べても受験の機会に恵まれています。
海外試験についてもアジア各国で実施されており、開催国によって違いはありますが、ほとんどの国でほぼ毎月の受験機会があります。
2号農業技能測定試験は日本国内のみの実施となっております。
(4)受験方法
受験場所を問わず、専用の予約サイト(外部リンク)より受験予約をします。
予約サイトは、プロメトリック社が運営しているため、初めての予約をする際には、受験者の個人情報を提出して、プロメトリックIDを取得する必要があります。
プロメトリックIDについては、IDを取得した試験合格者のみが閲覧することのできる求人情報ページ(外部リンク)へアクセスする際にも必要なため、忘れずに保管してください。
その後、受験を希望する会場と日時を選択し、受験料の支払いをすることで受験をする資格を得ることができます。
試験当日は、本人確認書類の原本と印刷した受験票を提示する必要があり、それらをスマートフォン画面で提示することは認められていないため、忘れた場合は受験ができない点に注意が必要です。
(5)試験対策
農業の特定技能試験については、一般社団法人全国農業会議所が運営する「農業技能測定試験」公式サイト(外部リンク)に学習用のテキストが用意されております。
試験のサンプル問題や、各国語版の学習用テキストに加え、日本語の聞き取り問題の音声まで用意されているため、試験前にはサイトより教材をダウンロードして、学習することをお勧めします。
特定技能ビザの試験については、【特定技能ビザの試験内容】全12分野の解説もご参照ください。
5.雇用する際の注意点
(1)労働基準法が一部適用外
農業で就労する外国人には、日本人を雇用する場合と同様に、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。
そういった事情も関係してか、適用される労働基準法を遵守しておらず、法外な低賃金で外国人技能実習生の雇用をしていた受入れ機関が、摘発されるようなケースもあるのが実情です。
特定技能外国人の雇用開始後は、毎年賃金台帳などを添付した定期報告書を入管庁へ提出する義務があるため、特定技能ビザ申請の際に締結した適正な雇用条件を遵守していないような場合には、雇用の継続ができなくなる可能性もある点には注意が必要です。
(2)不法就労の防止
派遣社員としての就労も認められている農業分野においては、特に、不法就労については細心の注意が必要です。
不法就労に該当するケースには、特定技能ビザの許可を取得したのとは違う業務で就労するケースや、有効期限切れのビザにて就労する場合などが想定されます。
派遣社員の特定技能外国人を受入れする場合でも、適正なビザを得て就労をしているかについて、確認を徹底する必要があります。
なお、不法就労の外国人を受け入れした場合は、受入れ機関が不法就労助長罪の対象となり、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金または併科(2027年4月に「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金または併科」に厳罰化)が科せられる可能性がある点に、注意が必要です。
6.農業分野の特定技能ビザまとめ
本コラムで紹介した通り、特定技能ビザの農業分野は、1号の試験も合格率が高いなどの理由で、他業種と比べても特定技能ビザ申請の要件を満たすのが比較的容易な分野です。
一方で、農業分野における慢性的な人手不足は年々深刻さを増しています。また、熟練者向けの「特定技能2号」が導入されたことで、将来的な無制限の更新や家族帯同といった長期的なキャリアパスも構築できるようになりました。
これらの事情を勘案すると、今後も、この分野で特定技能外国人が増えていくことが見込まれます。
特定技能外国人の受入れを検討している機関には、紹介した繁忙期雇用の方法なども参考にして頂き、最善の方法で受け入れることを目指していただければと思います。
私たち行政書士法人第一綜合事務所では、これまで農業分野の特定技能ビザ申請を数多く行ってまいりました。
既に特定技能外国人を受け入れている場合のみならず、新たに受け入れる場合についても、お客様のご希望をお伺いしながら最善策をご提案しております。
ご相談は無料で承っておりますので、ご気軽にお問い合わせください。




