今井 幸大

外国人のスポーツ選手やコーチの在留資格(就労ビザ)とは?

外国人のスポーツ選手やコーチの在留資格(就労ビザ)とは?

コロナ禍での渡航制限もなくなり,以前のように国際的なスポーツイベントも多く開催されるようになりました。外国からスポーツ選手やコーチなどを日本に呼び寄せるには,日本での活動内容に応じた在留資格(ビザ)の取得が必要です。短期間だけなのか長期滞在するのか,お金を稼ぐのか,などによって取得するビザの種類が変わります。
本コラムでは,外国人スポーツ選手とコーチなど指導者の方が必要となる在留資格について,ビザ専門の行政書士が解説していきます。

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スポーツ選手はプロかどうかでビザの種類が変わる

外国人スポーツ選手は,プロ選手なのかどうかでビザの種類が変わります。

選手の種類 報酬 該当するビザ
①プロ契約しているスポーツ選手 あり:興行収入 興行(基準2号)
②企業などの実業団に所属する選手 あり:給与収入 特定活動(告示6号)
③上記①②以外の選手 なし 短期滞在

ここで言う「プロかどうか」は,技術レベルの話ではありません。
お金を稼ぐのかどうか,稼ぐならどうやって稼ぐのか?という話です。
上記①②③について,詳しくみていきましょう。

①プロ契約しているスポーツ選手=興行ビザ(基準2号)

プロスポーツ選手とは,企業や団体とプロ契約を結び,プロチームに所属してチケットやスポンサーから興行収入を得ている選手のことです。
興行ビザを取得するにあたって,プロとしての実績は特になくてもかまいませんが,報酬額は日本人が契約する場合と同等以上でないといけません。
興行ビザに該当する例としては,日本のプロ野球選手,Jリーグに所属するプロサッカー選手,Bリーグに所属するプロバスケットボール選手,ゴルフトーナメントに出場するプロゴルファーなどです。

【興行(基準2号)ビザの取得要件】

  • 報酬額が日本人の場合と同等以上であること。

興行ビザについては,別コラム 興行ビザのポイントを徹底解説! もぜひお読みください。

②企業などの実業団に所属する選手=特定活動ビザ(告示6号)

実業団チームに所属して活動する選手のことです。企業の広告塔として,契約先企業から選手に報酬が支払われる場合は,興行ビザではなく「特定活動(告示6号)」ビザになります。

【特定活動(告示6号)ビザの取得要件】

  • 本邦の公私の機関内のクラブチームが,興行を事業の目的とせず,自社の宣伝や技術を競う目的で行うスポーツの試合に参加させるために契約(雇用)したものであること。
  • クラブチームの所属機関が,スポーツの試合を事業として行っていないこと。
  • オリンピックや世界選手権など国際的な大会に出場経験があること。
  • 日本の公私の機関に雇用され,月額25万円以上の報酬を受けること。

③それ以外の選手=短期滞在ビザ

賞金がない大会に出場するために,短期間だけ日本に滞在する場合は,興行ビザや特定活動ビザではなく「短期滞在」ビザで十分足りることもあります。
短期滞在ビザは海外にある日本国大使館・領事館での申請となります。賞金や報酬が発生する場合は,短期滞在ビザでは来日できない点に注意が必要です。

監督やコーチなどの指導者は「技能」ビザになる

選手ではなく,監督やコーチなどの指導者は「技能」ビザが必要です。
ただし,活動内容によっては選手同様に「興行」ビザが必要になるケースもあります。ますは「技能」ビザのケースから見ていきましょう。

指導者の「技能」ビザ取得要件

技能ビザを取得するには,大きく2つの要件があります。

①スポーツ指導の実務経験が3年以上ある,またはオリンピックや世界大会などの出場経験があること。
②そのスポーツ指導に係る技能を要する業務に従事すること。

①の実務経験は,企業や団体に所属して,業務として給料をもらって指導していた経験のことです。ちなみに,外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間があれば,その期間も実務経験に含まれます。
②は日本の企業や団体と契約を結ぶ必要があります。海外企業に雇われて日本で活動することはできません。

コーチなど指導者でも興行ビザになるケース

コーチなど指導者でも,選手と同様に「興行」ビザが必要になるケースがあります。

【興行ビザが必要になるケース】

  • プロスポーツ選手やプロチームと一体となって出場して,共に行動する場合。
  • 指導者自身も試合などの興行活動に出場する場合。

ざっくりとしたイメージとしては,プロチームの監督やコーチは「興行ビザ」,実業団の監督やコーチは「技能」といったところです。ただ,実際に「技能」ビザなのか「興行」ビザになるのかは,当該スポーツの種目自体の興行的要素がどれぐらいなのか?ということを,多角的に見て個別に判断されることになります。

興行(基準2号)ビザの取得申請で必要な書類

ここからは,プロスポーツ選手の来日で必要になる「興行(基準2号)」ビザの新規取得手続き(在留資格認定証明書交付申請)について,必要になる書類を解説していきます。

  • 在留資格認定証明書交付申請書 1通
  • 証明写真(縦4cm×横3cm) 1葉
  • 返信用封筒 1通
  • 申請人の経歴書及び活動に係る経歴を証する文書
  • 招聘機関の概要を明らかにする書類
  • 興行を行う施設の概要を明らかにする資料
  • 招聘機関が興行を請け負っているときは,請負契約書の写し
  • 申請人の日本での具体的な活動の内容,期間,地位及び報酬を証する文書
  • その他参考となる資料

申請人本人だけでなく,招聘機関と開催施設についての資料も提出が必要になる点に注意が必要です。
申請人・招聘機関・開催施設の3つに分けて改めて整理して説明します。

申請人本人が用意するもの

まず,申請人本人が用意するものは以下の通りです。

  • 経歴書(スポーツの種目やこれまでの実績によって,書き方が変わります)
  • 経歴書の内容を証明するもの(種目や実績によっては必要です)
  • 証明写真(無帽,無背景で6か月以内に撮影したもの)

招聘機関が用意するもの

次に,招聘機関(チームの運営会社など)に関する必要書類は以下の通りです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書(これがビザの申請書です)
  • 招聘機関の法人登記事項証明書
  • 直近期の決算書(貸借対照表,損益計算書,販売費及び一般管理費の内訳書,株主資本等変動計算書)
  • 招聘機関の従業員名簿
  • 雇用契約書またはそれに準ずる文書(日本での活動内容の詳細,契約期間,報酬額の記載があるもの)
  • 請負契約書(招聘機関が興行を請け負っている場合に必要)
  • 滞在日程表
  • 興行のスケジュール表
  • 興行内容を告知するチラシ,WEBページのコピーなど

開催施設に関する必要書類

最後に,開催施設(スタジアムなど)に関する必要書類についてです。

  • 開催施設を運営する法人の登記事項証明書
  • 開催施設を運営する法人の決算書類(直近1年分)
  • 営業許可証(許可が必要となる施設の場合のみ)
  • 開催施設の平面図
  • 開催施設の概要がわかる写真
  • 開催施設を運営する法人の従業員名簿

スポーツの種目や過去の実績によって,用意する書類の内容や作成方法が変わります。

興行ビザ(基準2号)でのよくあるお問い合わせ

ここからは,興行ビザ(基準2号)に関するよくあるお問い合わせをご紹介します。

【Q】呼び寄せる選手は,どれぐらいの実績があればいいですか?

【A】実績がなくても許可を取ることはできます。
もちろん,実績があるほうがスムーズに審査が進みますが,実績がないからと言って許可が取れないということはありません。

【Q】報酬額が低くても,日本人と同等なら問題ないですか?

【A】許可が取れない可能性が高いです。
日本人の場合と同等以上の報酬額だとしても,そもそもの報酬額の水準が,業界全体の水準よりも大幅に低い場合は許可が取れない可能性が高いです。

【Q】選手に帯同する通訳はどのようなりますか?

【A】この場合,通訳も「興行」ビザになります。
必要な書類は選手の場合と同じです。開催施設に関する書類など,同じ内容で重複する書類は1部だけ提出してほかは省略できます。

外国人のスポーツ選手の在留資格まとめ

本コラムでは,外国人スポーツ選手と,監督やコーチなど指導者の方が必要となるビザについて解説しました。
ビザは申請から取得まで数週間~数か月かかる場合もあります。イベント開催日までに確実にビザを取得できないと,延期または中止せざるを得ない事態になりかねません。少しでもご不安な場合は,ぜひ専門家にご相談いただくことをおすすめします。ビザ申請を専門に扱っている行政書士法人第一綜合事務所では,興行2号ビザ・特定活動ビザ・技能ビザに関するご相談も無料で承っております。お気軽にご連絡ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

特定行政書士 今井 幸大

・日本行政書士会連合会(登録番号第18080677号)
・東京都行政書士会(会員番号第11843号)
東京都出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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