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インターンシップビザ(特定活動ビザ)の取得方法,メリット,条件,必要手続きなどを解説

1.海外の大学生が対象となる「インターンシップ」とは? インターンシップとは,実際に大学生が仕事を体験する制度のことです。「就労体験」や「就業体験」と言われることもあります。 6月頃から始まる「サマーインターンシップ」と,10月頃から始まる「秋冬インターンシップ」が一般的ですが,開催時期は企業によって異なります。 海外の大学生が行うインターンシップについては,入管のガイドラインで以下のように定義されています。 インターンシップとは,一般的に,学生が在学中に企業等において自らの専攻及び将来のキャリアに関連した実習・研修的な就業体験を行うものであることから,インターンシップ生を受け入れる企業等においては,産学連携による人材育成の観点を見据えた広い見地からの対応が求められるとともに,適正な体制を整備した上で,インターンシップ生が所属する大学とも連携しながら,教育・訓練の目的や方法を明確化するなど,効果的なインターンシップ計画を立案することが重要です。 参考:出入国在留管理庁「外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン」 海外の大学生にとってのインターンシップ制度は,仕事の内容や自身の適正を理解することが目的です。 インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる企業は,きちんとした教育体制・実習計画の元,目的に沿った対応が求められます。 2. インターンシップビザを取得して海外の大学生を受け入れるメリット 海外の大学生におけるインターンシップには,学生側にも企業側にもメリットがあります。 ①学生側のメリット インターンシップ先の企業が,将来の就職先になる可能性がある 日本の文化や生活,働き方を体感できる 大学生のうちから,社会人としての教養や常識を身につけることができる インターンシップビザを取得すれば,報酬を得ながらアルバイトではできない社会経験を積むこともできます。 大学以外での社会活動を通して,日本の文化や生活などにも触れられるという点でも,インターンシップのメリットは大きいです。 ②企業側のメリット 海外の人材を受け入れる企業の体制作りや,社員の育成に役立つ 在学中の優秀な海外の大学生などに自社をアピールできる 部下のマネジメント能力,多言語での語学力など,社員教育の一環として役立つ インターンシップビザを取得して,多くの海外の大学生を受け入れることで,優秀な人材を将来雇用できる可能性が高まります。 また,インターンシップビザを取得するための準備を通じて,外国人の受入れ体制を整えたり,学ぶことができるのは,今後増加が予想される外国人雇用について,企業の大きな強みになるはずです。 3. インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる条件を確認 インターンシップビザで海外の大学生を招く場合,インターンシップの法令上の条件を満たしている必要があります。 インターンシップを労働力の確保として利用したり,不十分な指導体制にも関わらず多数の学生をインターンシップビザで受け入れたりという事例が発生しているため,厳格に審査が行われています。 しかし,恐れる必要はありません。 適切な受け入れ体制を準備すれば,インターンシップ制度を有効活用することはできます。 ここからは,インターンシップビザの入管の審査基準を見ていきましょう。 ①対象となるインターンシップの条件 (1)海外の大学の学生であること インターンシップビザを取得するためには,海外の大学に在籍している大学生であることが大前提です。 学位の授与される教育課程であれば,「短期大学」「大学院」の学生も対象になります。 また,日本入国時に18歳以上であることも必要です。 注意が必要なのは,通信教育を行う大学に在籍している場合はインターンシップビザの対象とはなりません。 この点,誤解が多いのでご注意ください。 (2)インターンシップの業務内容が大学の専攻に関係していること インターンシップは,あくまで大学の教育課程の一部です。 そのため,業務内容が大学の専攻に関連していることが必要になります。…

上陸特別許可を専門行政書士が解説

1.上陸特別許可についての入管法の規定 外国人が日本に上陸しようとする場合,上陸しようとする空港または海港で必ず上陸審査を受けて上陸許可を受けなければなりません。上陸許可の要件は大きく分けて4つ法定されており(入管法7条1項),そのなかの一つに上陸拒否事由に該当していないことが定められています。 Aさんの場合,入管法第5条第1項9号ロの上陸拒否事由に該当するため,5年間日本への上陸を拒否されることになります。上陸拒否事由には,代表的なものとして薬物事犯,売春防止法違反,1年以上の懲役刑の有罪判決(執行猶予付判決を含む)を受けたことなどが定められています。 (参考条文) ・入管法第7条第1項4号 入国審査官は,前条第二項の申請があつたときは,当該外国人が次の各号…に掲げる上陸のための条件に適合しているかどうかを審査しなければならない。 四 当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないこと(以下略) ・入管法第5条第1項9号ロ 次の各号のいずれかに該当する外国人は,本邦に上陸することができない。 九 次のイからニまでに掲げる者で,それぞれ当該イからニまでに定める期間を経過していないもの ロ 第二十四条各号…のいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者で,その退 去の日前に本邦からの退去を強制されたこと…のないもの 退去した日から五年 もっとも,上陸拒否事由に該当する場合でも,法務大臣が相当と認める場合には,上陸を許可することができるとされています。法務大臣の裁決の特例として,入管法では以下のように定められています。 (参考条文) 入管法第12条第1項 法務大臣は,前条第三項の裁決に当たって,異議の申出が理由がないと認める場合でも,当該外国人が次の各号のいずれかに該当するときは,その者の上陸を特別に許可することができる。 一 再入国の許可を受けているとき。 二 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に入ったものであるとき。 三 その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき。 実務上,もっとも多く上陸特別許可が認められる類型が,3号の「法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき」です。 このように,入管法は上陸を認めることができない事由を定める一方で,特例として上陸を認める場合があることを定め,個別の事案で救済を図っているのです。 上陸拒否事由については,入管法の上陸拒否事由とは? で解説していますので,ご参照ください。 それでは,次のチャプターで,どのような場合に上陸特別許可が認められているか見ていきましょう。 2.上陸特別許可が認められるケース では,どのような場合に,上陸特別許可が認められるのでしょうか。 上陸拒否事由を定めておきながら,あまりにも広く特例を認めてしまうと,上陸拒否事由を定めた意味がありません。そこで,実務上は,人道上配慮すべき特別な事情がある場合に限り特例を認めるという,かなり限定的な運用がされています。しかも,この要件を満たしていれば特例を認めるというように要件が法定されているわけではなく,法務大臣の相当広範な裁量によって決定されます。 ただ,入管当局も上陸特別許可の運用を明確にするために,毎年1度,許可事例と不許可事例を公表しており,また,実務運用の積み重ねによってある程度の基準が明らかになってきています。それが以下の4つの基準です。 ①日本人,特別永住者,永住者,定住者と法的に婚姻が成立しており,婚姻の信憑性の立証が十分になされていること ②在留資格認定証明書交付時において,婚姻後1年以上が経過していること ③在留資格認定証明書交付時において,退去強制後2年以上経過していること ④執行猶予付き有罪判決を受けた後に退去強制された場合は,執行猶予期間をおおむね経過していること…

就労ビザの取得要件|企業の注意点や必要書類,審査期間を解説

1.就労ビザとは? 就労ビザとは,正式には「就労できる在留資格」の事を意味しており,外国人が日本で働くために入管が許可する資格の事を言います。 ビザ(査証)とは別のもので,ビザ(査証)は,日本が発行する入国許可証で,在留資格を意味するビザは,日本に滞在することを許可する資格です。 「就労できる在留資格」すなわち就労ビザは,日本で就労を希望する外国人は取得する必要があります。 一方,文化活動や研修,短期滞在や留学,家族滞在等を目的とした外国人は,就労不可のビザに該当します。 就労系の在留資格は,外国人が日本で行う活動内容によって19種類に分類されています。 >>就労ビザ 種類 はこちらをご覧ください。 2.就労ビザの取得要件 就労ビザの取得要件は,簡単に説明すると,以下のとおりです。 ビザの種類に適合するような業務に就く 業務に関連のある学部や学科を卒業している 日本人と同等以上の報酬を得られる 就労先の企業に継続性や安定性がある 就労ビザの代表格となる技術人文知識国際業務ビザでは、理学,工学その他の自然科学に関する業務、法律学,経済学,社会学その他の人文科学に関する業務、’国際的な分野に関する業務などに従事することが可能です。 技術人文知識国際業務ビザの要件には学歴要件、実務経験、資格などがそれぞれ必要となりますので、申請の際は、事前に確認しましょう。 詳しくは,技術人文知識国際業務ビザ に記載しておりますので,ぜひあわせてご覧ください。 3.就労ビザを取得するための必要書類 就労ビザの取得には,多くの書類が必要になります。 また,必要な書類は,勤務する会社の属するカテゴリーによって変わります。 提出書類は、勤務する会社の事業概要や職務を証明する書類、外国人の学歴や実務経験を証明する書類になります。 以下は主な書類です。 申請書 申請人の写真(4×3センチ) 返信用封筒または返信ハガキ 採用・招へい理由書・職務内容説明書 申請人の履歴書 最終学歴の証明書(卒業証書) 職歴を証明する文書 などになります。 勤務する会社の属するカテゴリーの詳細については,以下の記事をご覧ください。 >>就労ビザ カテゴリーはこちら 4.海外から外国人を呼び寄せて採用する場合の就労ビザの取得方法…

配偶者ビザの更新!必要書類や不許可にならないためのポイント解説

1.配偶者ビザの更新期間 配偶者ビザの更新は,在留期間が満了する3ヶ月前から,住所地を管轄する入管に申請することができます。ただし,入院や長期出張などの特別な事情が認められる場合は,3ヶ月以上前から更新申請することができる場合もあります。 一般的に在留期間の更新申請を行った際の審査期間は,2週間から1ヶ月程度とされており,その後に付与される配偶者ビザの在留期間は,「6月」,「1年」,「3年」,「5年」と定められています。 「6月」の在留期間は,離婚調停又は離婚訴訟が係属している方が該当するので,初回の配偶者ビザの更新申請では,付与される在留期間は「1年」となる方が多い印象です。 一方,提出された書類を総合的に判断して初回から「3年」や「5年」の在留期間を付与される方もいらっしゃいます。 初回から「3年」や「5年」の在留期間を付与される方は,婚姻後の同居期間が3年を超えている方や,既にお子様がいらっしゃって小学校及び中学校に通われている方など,婚姻の実体が安定・継続している方が対象となります。 配偶者ビザの更新については,前回の申請時と生活状況等に変更がある場合には,更新申請の必要書類や審査の難易度が大きく異なる事になるので注意が必要です。 2.配偶者ビザ更新時の審査ポイント 配偶者ビザの更新は,婚姻が継続している事実のみをもって当然に許可されるわけではありません。 本チャプターでは,配偶者ビザの更新時の審査ポイントについてご説明します。 ①婚姻生活が安定・継続していること 夫婦が同居・扶助・協力して,生計を共にしていることが必要です。 しかし,やむを得ない事情で週に1回しか同居していない場合や,外国人である配偶者が長期間日本に不在であった場合でも,理由によっては,配偶者ビザの更新が許可されることもあります。 では,配偶者ビザの更新許可をもらえる理由とは一体どのような理由なのでしょうか。 それは,単身赴任等の仕事上の理由や,病気,本国にいる両親の介護等が代表例です。 ここでご注意いただきたいのは,例にあげた合理的な理由があったとしても,それを入管に立証できなければ,配偶者ビザの更新許可はされないということです。 たとえば,自宅と単身赴任先を行き来していることを証明できる資料(高速道路を利用した領収書や,新幹線のチケットや領収書など)や,両親の介護が必要であることを明らかにする書類(医師の診断書など)や,日本人夫が服役中の場合は在監証明書を必要書類と共に提出することが,入管審査の観点からは重要な書類となります。 ②素行が不良でないこと 法律を犯すことなく,また税金の支払い等の公的義務を履行していることが求められます。 よくあるのが,住民税などの税金に関して納付期限を過ぎても支払いをしていないケースです。 配偶者ビザの更新前に,公的義務の履行状況は確認するようにしてください。 ③婚姻生活を営むための経済的基盤があること 扶養者である配偶者の収入が低かったり,夫婦どちらも無職の場合には,配偶者ビザの更新申請が不許可になってしまう可能性があります。 しかし,上記のような状況にあっても,例えば日本にいる両親や親族から生活費の援助を受けている場合や,夫婦どちらか一方の就職先が決まっており安定した収入を見込める場合は,配偶者ビザの更新申請前に,生活費の援助を受けていることが分かる資料や,内定先の雇用契約書や内定通知書等を必要書類と共に提出することで,配偶者ビザの更新申請が認められる可能性もあります。 収入については,直近の1年間の収入額が,本人に被扶養者を加えた人数に78万円を乗じた金額(国民年金の基礎年金の年間受給額が参考とされています。)以上であるか否かが,目安とされています。 ④入管法に定める届出等の義務を行っていること 中長期在留者は,在留カードの記載事項に係る届出,所属機関等に関する届出などの義務を履行しなければなりません(入管法第19条の7から第19条の13まで,第19条の15及び第19条の16)。 配偶者ビザをお持ちの方も中長期在留者に該当するので,引っ越しにより住居地に変更が あった場合などは,住居地を定めた日から14日以内に従前の住所地を管轄する役所への転出届と,引越先の住所地を管轄する役所に転入届を提出する必要があります。 以上が,配偶者ビザの更新時の審査ポイントとなります。 なお,配偶者ビザの更新において不利な事情があるからといって,虚偽の内容を記載することは絶対にしてはいけません。 実務上では,虚偽申請を行ったことの一事をもって不許可になる事例が多く発生しています。 例えば,配偶者と婚姻後日本で同居の事実がないにも関わらず,その事実を隠して入管に更新許可申請を行い不許可になる,といったものです。 配偶者ビザの更新申請にご不安のある方は,まずは弊社の無料相談をご利用ください。 ご相談は無料です。お気軽にご相談ください。 3.配偶者ビザの更新申請する際の必要書類 申請人の方が,日本人の配偶者である場合には, 在留期間更新許可申請書 1通 証明写真(縦4cm×横3cm) …

興行ビザのポイントを徹底解説!

1.興行ビザとは? 「興行」とは,特定の施設において公衆に対して演劇,演芸,演奏,スポーツ,サーカス,その他のショー等を見せ又は聞かせることをいい,バー,キャバレー,クラブ等に出演する歌手等としての活動もこれに含まれます。 興行ビザは,外国の文化に接する機会を提供し,文化交流を促進することにより,国際理解を増進し,また,日本の文化,スポーツの振興・向上等に寄与するために設けられたビザです。 興行ビザは就労ビザの一つで,エンターテイメントビザや芸能ビザと呼ばれることもあります。 テレビなどのメディアで目にする俳優やモデル,歌手,プロスポーツ選手の多くが興行ビザで活躍しています。 興行ビザは,これらの職業の外国人が,コンサート講演やテレビ出演,映画の撮影や音楽のレコーディング,宣伝活動などを報酬を得て行う場合に必要となるビザです。 2.興行ビザに該当する職種 以下に,興行ビザに該当する代表的な職種をご紹介します。 ミュージシャン 俳優,モデル 演奏家,オーケストラ プロスポーツ選手,e-スポーツ選手 振付師,演出家 出演者が興行を行うために必要不可欠な補助員 (舞台の演劇の照明係,カメラマン,マネージャー,サーカスの動物飼育係,スポーツ選手のトレーナーなど) 幅広い活動で,興行ビザが認められています。 3.興行ビザは3つのカテゴリー どのような活動を行うかにより,興行ビザは以下の3つのカテゴリーに分類されます。 どのカテゴリーに該当するかにより,興行ビザの取得の要件や必要書類も異なります。 3-1.興行ビザ1号 演劇,演芸,歌謡,舞踊,演奏等の興行活動が「興行ビザ1号」に該当します。 興行ビザ1号に分類される例として,小規模なライブハウスやクラブなどで行われる興行のほか,規模が大きく,かつ,短期間で行われるコンサートやフェスなどの興行も該当します。 また,テーマパークで行われる演劇等も興行ビザ1号に含まれます。 ※飲食の提供を伴う施設で興行活動を行う場合や,実際に飲食の提供を伴わなくても,提供できる設備で興行活動を行う場合には,興行ビザ1号に該当する可能性があります。 3-2.興行ビザ2号 プロスポーツや格闘技の大会,サーカスなどが該当します。 また,監督,コーチ,トレーナーなど選手と一体不可分な関係にある者の活動も,興行ビザ2号に該当します。 3-3.興行ビザ3号 ファッション・ショーに参加するファッション・モデルとしての活動,番組・映画に出演する芸能人,俳優,歌手等の活動が該当します。 興行ビザ3号は,興行ビザ1号及び2号と異なり,興行の形態で行われない芸能活動を規定しています。 4.興行ビザを取得するための要件を解説 興行ビザは上記のように3つのカテゴリーの活動内容に分類されます。 今回の改正により,「興行ビザ1号」の要件が大幅に変更されました。 以下では,興行ビザ1号を中心に,それぞれの要件についてご説明いたします。 4-1.興行ビザ1号 興行ビザ1号は,演劇等の興行活動に従事しようとする場合が対象となります。 かねてから演劇等の興行活動は,その性格上生じうる不法就労や金銭的な搾取が問題とされていました。 そのため,今般の改正では, (1)適正に実施している実績がある招へい機関が受け入れる場合, (2)新たに受け入れる場合であっても問題が生じるおそれが少ない場合…

永住ビザの要件を解説!必要書類や審査期間などのポイントを掲載

1.永住ビザとは? 永住ビザとは,安定的,長期的に日本に滞在するビザのことを言います。 永住ビザを取得した外国人は,日本に無期限に滞在することができるようになります。 また,永住ビザを取得することで就労制限が無くなり,これまで以上に日本で幅広い活動をすることができるようになります。 良いこと尽くめの永住ビザですが,永住ビザを取得するためには多くの要件を満たす必要があります。 2.永住ビザの原則的な要件 永住ビザの要件は,入管法22条2項と,入管庁が公表している「永住許可に関するガイドライン」によって規定されています。 (入管法22条2項) 法務大臣は,その者が次の各号に適合し,かつ,その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り,これを許可することが出来る。ただし,その者が日本人,永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては,次の各号に適合することを要しない。 一 素行が善良であること 二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。 これらを読み解くと,永住ビザの要件は,①「素行が善良であること」,②「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」,③永住申請者の「永住が日本国の利益に合する」と認められることの3つに分けることができます。 そして,これらの永住ビザの要件は,それぞれ次のように省略して呼ばれます。 ①素行善良要件 ②独立生計要件 ③国益適合要件 永住ビザを取得するメリットの一つとして,無期限の在留が可能ということは触れました。入管側も今後無期限に日本に在留をする方の審査となるので,今まで以上に慎重に審査を進めます。 以下,ガイドラインの内容も踏まえ,それぞれの永住ビザの要件と実務上の運用について解説します。 ①永住ビザの要件①「素行善良要件」 「素行善良要件」とは,法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることを指します。 分かりやすく言い換えるとすると,普段の生活の中で,人に迷惑をかけずに生活していますか?ということです。 具体的には, 日本の法律に違反して,懲役,禁錮又は罰金刑を受けていないこと。 過去の在留の中で多数回の交通違反をしていないこと。 留学生や家族滞在等のビザの方が入管から資格外活動の許可を得て仕事をしていること,あるいはオーバーワークをしていないこと。 等があげられます。 この他にも,素行善良要件のケースはたくさん考えられますが,実際にはケースバイケースで判断されるため,明確な基準は存在しません。 もっとも,素行善良要件は高いハードルを課すものではありません。 この素行善良要件については,日常生活において法律に違反するような行動をしていなければ,特に心配する必要はありません。 ②永住ビザの要件②「独立生計要件」 「独立生計要件」とは,日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることを意味します。 つまり,永住者として自立して生活することができる能力をチェックするための要件です。 具体的には,永住ビザの申請する方が自分で生計を立てるための収入源を持っていること, または,その方と同居している家族が世帯全体の生活を支えられるほどの収入源を持っていることです。 独立生計要件を考える上で重要となるのは,年収と対象期間の2つです。 年収について,入管は明確な基準は公表していませんが2人世帯までであれば300万円以上,3人世帯の場合は350万円以上,4人世帯の場合は400万円以上の年収が許可・不許可を分けるボーダーラインとされています。 独立生計要件は世帯の年収で審査されるため,同居している家族の中で,申請人以外にも収入を得ている家族がいる場合は,そのご家族の収入は永住ビザの審査対象となります。 なお,家族滞在ビザの方の年収は含まれない傾向が強いため,世帯の年収で申請を考える際には注意が必要です。…

配偶者ビザの不許可理由と対応策

1.配偶者ビザが不許可となる理由~交際に関すること~ 1-1.交際歴が短い 配偶者ビザを取得するためには,交際を経て,その関係が結婚にまで昇華したということを書面で立証していく必要があります。 自分たちは偽装結婚ではないから大丈夫!と考えられる方も多いのですが,交際歴が短い場合には,入管からあらぬ嫌疑を抱かれ,配偶者ビザが不許可になってしまうケースもあります。 では,どれくらいの交際歴が適正なのかという問いには,仮に身近なご友人が国際結婚をする場合,その交際歴で結婚をして大丈夫?と不安を感じるようであれば,配偶者ビザの不許可リスクは高まるとお考え下さい。 そのような場合には,通常よりも高度な婚姻実体の立証が必要となります。 1-2.年齢差が大きい 本来は,愛があれば年の差は関係ないはずです。 しかし,年の差婚の場合には,類型的に見ると日本人側が騙されてしまっている場合があり,入管もそういった事例を認識しています。 そのため,年の差婚で配偶者ビザを取得するためには,通常よりも慎重かつ丁寧な書面を作成し,夫婦としての実体を立証する必要があります。 1-3.コミュニケーションが取れていない 近時の配偶者ビザの審査で,入管が特に気にしているのが夫婦のコミュニケーションです。というのも,アプリを使ってコミュニケーションを図るケースや通訳者が別にいるケースは,夫婦のコミュニケーション不足から起きるトラブルも少なくないからです。 配偶者ビザの許可,不許可に関わらず,夫婦共通のコミュニケーション言語を持つことは,今後の夫婦関係はもちろんのこと,外国人配偶者の日本での生活を考えると非常に重要です。 1-4.親族が国際結婚をしたことを知らない 親,兄弟姉妹など,親族が結婚した事実を知らない場合には,配偶者ビザの不許可リスクが高まります。 実際,入管に提出する質問書という書類でも,親族が結婚の事実を知っているか否かは問われており,交際の信憑性を左右する一つの要素になっています。 そのため,両親に結婚を反対されていながらも結婚をしたケースなどでは,その経緯を丁寧に説明し,その他の交際実態の立証に注力することによって,真正婚であることを明らかにしていく必要があります。 1-5.一方の国でしか結婚をしていない 国際結婚は,当事者の双方の国籍国での手続きが完了していなければなりません。 そのため,一方国でのみ結婚を成立させた状態では,完全には国際結婚手続きを履践したとはいえず,婚姻の信憑性の判断において,不許可となる可能性があります。 「法務省における法令適用事前確認手続」(※注1)によれば,一方の国でしか結婚をしていない場合は,配偶者ビザが必ず不許可になるとは記載していないものの,相手国の婚姻証明書が提出されないことに起因して,婚姻実体の立証が不十分となることはあり得るとしています。 (※注1)法令適用事前確認手続とは,民間企業等が,実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して,その行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかをあらかじめその規定を所管する行政機関に確認し,その機関が回答を行うとともに,その回答を公表するものです(出典:法務省における法令適用事前確認手続~法務省におけるノーアクションレター制度について~)。 他方,日本人と外国人の結婚において,外国側の手続きが何らかの理由で履行できない場合であっても,婚姻届が受理され日本側の手続きを履行している場合には,入管に説明書を提出すれば,配偶者ビザの許可が下りる可能性はあります。 1-6.交際期間が前婚と重なっている 入管審査は,警察と同じく民事不介入であるため,たとえ交際期間が前婚と重なっている場合でも,配偶者ビザの審査上は問題ないとも考えられます。 確かに,入管の審査は,不貞行為の有無を明らかにする事を目的にするものではありません。しかし,社会通念で判断する入管審査においては,前婚期間中の交際は,信憑性がないと判断される可能性があります。 そのため,仮に前婚の婚姻関係が実質的に破綻をしていたのであればその具体的事実を,また前婚が破綻はしていなかった場合であっても,どのような経緯で交際を開始し,前婚が離婚に至り,そして再婚にまで至ったのかを明らかにする必要があります。 1-7.インターネットで出会っている 情報通信網の発達もあり,国際結婚の局面においても,出会いの形は多様化しています。それに伴い,偽装結婚の手口も,複雑かつ巧妙化しているのが現状です。 これらの状況に鑑み,出会いの経緯については,入管は特に慎重な審査をしています。インターネットで男女が出会うことは決して悪いことではありませんが,配偶者ビザの入管審査では通常よりも高いレベルで,婚姻に至るまでの経緯を明確にする必要があります。 1-8.結婚紹介所を介して出会っている 上記のインターネットで出会っている場合と同様,結婚紹介所を介して出会っている場合も交際の実態に嫌疑を抱かれやすく,配偶者ビザが不許可となりやすい一類型と言えます。 また,日本人側の婚姻意思が明らかであったとしても,外国人の方が国際結婚をビザ取得のための便法としていることもあるため,注意が必要です。 結婚紹介所を介して出会っている場合には,それぞれについて,なぜ結婚紹介所に登録するに至ったかなどを赤裸々に説明すると共に,二人の交際実態を明らかにしていく必要があります。 1-9.今のビザの期限直前に配偶者ビザ申請をしている 就労ビザを保有する外国人が離職中でビザの期限が迫っている場合や,留学ビザを保有する外国人が退学や卒業をして,次の進路が決まっていない状態でビザの期限が迫っている場合は,配偶者ビザの不許可リスクが上がります。 その理由としては,日本に滞在を続ける理由として,配偶者ビザを申請していると見られてしまう可能性があるため,通常に比べると配偶者ビザの審査が難化する傾向にあるからです。 このような場合には,就労ビザや留学ビザでの活動を離脱するに至った経緯を説明することはもとより,ご夫婦の交際実態の立証を慎重におこなった上,配偶者ビザを申請する必要があります。…

結婚ビザと配偶者ビザの違いとは?

1.結婚ビザと配偶者ビザに違いはある? これまでに,結婚ビザと配偶者ビザの違いを尋ねられることが何度かありました。 はたして結婚ビザと配偶者ビザに違いはあるのでしょうか。 実は,いずれも国際結婚したことにより取得するビザであり,違いはありません。 もっとも,結婚ビザや配偶者ビザがどのビザを意味するかについては,一方配偶者の方のビザの種類や国籍によって異なります。 例えば,日本人と結婚した場合には,日本人の配偶者等というビザ,永住者と結婚した場合には,永住者の配偶者等というビザという具合に,結婚ビザや配偶者ビザといっても,実際に取得するビザの名称は異なることがわかります。 つまり,結婚ビザや配偶者ビザと言われるものは,国際結婚をしたことによって取得するビザの総称であって,具体的なビザの種類は,一方配偶者のビザや国籍により異なるということです。 次のチャプターでは,国際結婚の組み合わせと取得できるビザの種類をみていきましょう。 2.結婚することで取得できるビザは意外に多い!? 現在,入管法には大きく分類すると,33種類のビザがあります。 さらに,その中の1つである特定活動ビザでは49種類に,定住者ビザも8種類に分類されています。 ここでは,国際結婚をすることによって,取得できるビザをみていきます。 配偶者の属性 取得できるビザ 日本人 日本人の配偶者等ビザ 永住者 永住者の配偶者等ビザ 定住者 定住者ビザ(定住者告示5号) 教授,芸術,宗教,報道,高度専門職,経営・管理,法律・会計,医療,研究,教育,技術・人文知識・国際業務,企業内転勤,介護,興行,技能,特定技能2号,文化活動,留学(※1)のいずれかのビザをお持ちの方 家族滞在ビザ 外交 外交ビザ 公用 公用ビザ 高度専門職 家族滞在ビザ又は特定活動ビザ(特定活動告示33号) 特定活動 特定活動ビザ(※2) ※1 但し,基準省令第1号ハは家族滞在ビザの対象になりません。 ※2 但し,特定活動告示3号,4号,7号,18号,19号,23号,24号,30号,31号,38号,41号,45号,47号,49号のいずれかに該当する場合に限ります。 上記の表からもおわかりのとおり,国際結婚をすることで取得することができるビザの種類は多岐に亘ります。 上記の表に関連して補足をすると,同性婚のパートナーが取得できるビザもあります。 その内容については,同性婚のパートナーはビザを取得できる? で詳しく記載していますので,ぜひ参考にしてください。 次に,たとえ国際結婚をしても,家族滞在ビザを取得できないビザがあることには注意が必要です。…