【解決事例】観光ビザから配偶者ビザへの変更事例
観光ビザで日本にいる韓国人の奥様のビザを配偶者ビザに変更したいと考え,情報収集を始めたご主人様。しかし,インターネットの情報を見ると,観光ビザから配偶者ビザへの変更申請は許可されると書いているもの,反対に観光ビザから配偶者ビザへの変更申請は許可されないと書いているものがあり,不安になったご主人様は奥様と一緒に当社に相談に来られました。
観光ビザから配偶者ビザに変更したいというご相談数は,当社の相談の中でも上位に入ります。ご相談者様が特に不安に思われているのは,そもそも観光ビザから配偶者ビザに変更できるのかという点と,通常の配偶者ビザの審査より厳しくなってしまうのではないかという点です。
このページでは,観光ビザから配偶者ビザへの変更申請について,上記の疑問解消に向けて解説をしていきます。
Index
1.観光ビザから配偶者ビザへの変更可否
インターネット上では,ビザから配偶者ビザへの変更申請はできない,できると相反する情報が見られます。また行政書士事務所のサイトなどでは,観光ビザから配偶者ビザへの変更申請の料金を示しているものもあり,実は当社もその一つです。なぜなら,後述するように,観光ビザから配偶者ビザへの変更は,決して不可能ではないからです。
入管法の規定には,観光ビザから配偶者ビザへの変更申請を拒否するような規定はありません。ビザの変更申請を規定する入管法第20条第1項は,「在留資格を有する外国人は…(略)」とし,ビザ変更をできるのは正規在留者である外国人に限定はしているものの,観光ビザの変更申請を拒否する旨の規定は存在しません。
では,なぜ観光ビザから配偶者ビザには変更できないといわれるのでしょうか。
2.観光ビザから配偶者ビザの変更はできないといわれる理由は?
日本で一緒に生活するため,海外にいる配偶者を招へいする方法としては,在留資格認定証明書交付申請という手続きをとる必要があります。
この場合,まずは入管へ在留資格認定証明書交付申請を行い,認定証明書の交付を入管から受けます。その後,これを海外の配偶者のもとへ送り,在外の日本公館に査証(いわゆるビザ)の申請をし,査証発給を受けてようやく日本への入国が適います。
上記一連の手続きでは,在留資格認定証明書交付申請の審査はもとより,査証申請の局面においても,慎重な審査が行われています。
他方,観光ビザは,日本への滞在期間も短期間であり,就労等が予定されないことから,比較的簡便な審査により査証が発給されます。
そのため,観光ビザから配偶者ビザへの変更を認めると,在留資格認定証明書交付申請とそれに続く査証申請における慎重な審査をすっ飛ばして,簡便な審査により日本での滞在が認められてしまうことになってしまいます。
このことから,容易に観光ビザから配偶者ビザへの変更を認めるべきではないと言われているのです。
3.観光ビザから配偶者ビザの変更についての入管法規定
では,観光ビザから配偶者ビザの変更について,入管法の規定はどうなっているのでしょうか?
入管法第20条第3項但書には,次のような規定があります。
「短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については,やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。」
この規定の存在が,観光ビザからの変更が許可される,あるいは許可されないという間逆の2つの情報を生じさせている根源です。
言い換えると,入管法第20条第3項但書の「やむを得ない特別の事情に基づくもの」かどうか,この点を明らかにする事が正確な理解に繋がります。
次項では,「やむを得ない特別の事情」を検証していきます。
4.観光ビザから配偶者ビザへ変更する場合に必要な“やむを得ない特別な事情”とは?
ここにいう「やむを得ない特別の事情」とは,入国後の事情変更により,当初の在留目的が変更したことに合理的理由があり,かつ,いったん本邦から出国して新たな入国手続をとらせるまでもなく引き続き本邦在留を認めるのが相当であると認められるような事情をいう(『出入国管理及び難民認定法逐条解説<改訂第4版>』坂中英徳/齋藤利男著)とされています。
つまり,観光ビザで入国した後,ビザを変更することに合理的な理由があること,そして引き続き在留を認めるのが相当であること,この2点が必要と解されます。
この一例として,日本人と結婚し,引き続き日本での居住を希望する場合があげられています。
5.観光ビザでも結婚をすれば必ず配偶者ビザに変更できる?
では,観光ビザで日本に在留している間に,結婚をすれば必ず配偶者ビザへの変更が認められるかというと,決してそういうわけではありません。
上記4のやむを得ない特別な事情が存在するのはもちろんのこと,配偶者ビザの変更許可の要件を満たさなければ,観光ビザから配偶者ビザへの変更は認められません。
したがって,観光ビザ自体に特別な要件を課すわけではないのですが,観光ビザから配偶者ビザへの変更については,通常の配偶者ビザの要件に加え,やむを得ない特別な事情の有無を問うことから,難しいという印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。
6.今回の事例の結論は…
原則どおり,通常の配偶者ビザの許可要件に加え,やむを得ない特別の事情の検証・立証を行っていきました。
今回のケースは、奥様の観光ビザの在留期限が迫っており,急を要する案件でした。そのため,全体を俯瞰して見ながら,時間的ロスの無いように手続きを進めていきました。
90日の観光ビザで入国されていたため,特例期間の適用はありましたが,結果的には特例期間には入ることなく,早期に配偶者ビザの許可受領をする事ができました。
帰国を覚悟していたお客様ご夫妻には,とても喜んでいただけました。
※特例期間とは・・・入管法第20条第5項に規定があります。今回のケースでいうと,観光ビザの在留期間内に配偶者ビザへの変更申請を行えば,在留期間満了日までに入国管理局から申請結果を受領していない場合であっても,在留期間満了日から最長2ヶ月の期間(それまでに入国管理局から結果を受領した場合には,受領日)は,もともとある在留資格(短期滞在)を有効として取り扱うというものです。
(注)但し,特例期間の適用は,30日以下の在留期間を持っている外国人を除外しています。
7.本ページのまとめ
本ページでは,当社でも特にご相談の多い観光ビザから配偶者ビザへの変更事例を取り上げました。
入管の審査では裁量があり,一般の方にとって不明確な部分も多いことから,ご不安に感じられるかも知れません。上記2でも記載した通り,容易に観光ビザから配偶者ビザへの変更を認めるべきではないという考えもあります。
しかし,正しい情報を入手した上で,求められているポイントを主張立証できれば,観光ビザから配偶者ビザへの変更申請は,決して不可能ではありません。
観光ビザから配偶者ビザへの変更をご希望の方は,ぜひお気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。