【特定技能ビザ】自動車整備分野の協議会と試験概要
自動車整備分野は,少子化や若者の車離れなどにより,また自動車整備士を目指す日本人が減少している背景もあって,人手不足が深刻化している業種です。
本記事では,自動車整備分野の協議会と特定技能の試験概要を中心にご紹介します。
Index
1.自動車整備分野で特定技能外国人を受入れる要件
自動車整備分野で,特定技能外国人を雇用するための外国人と受入れ企業の要件について,紹介していきます。
1-1外国人の要件
〇技能実習2号を良好に修了
自動車整備職種の技能実習2号を良好に修了した外国人は,特定技能ビザ申請の際の技能試験と日本語試験が免除されます。
技能実習2号を良好に修了とは,技能実習を2年10ヶ月以上修了した外国人を指し,特定技能ビザ申請の際には,証明書類として専門級の合格証書(実技試験のみ可)または技能実習生の評価調書を提出する必要があります。
〇技能試験と日本語試験に合格
自動車整備分野特定技能評価試験または自動車整備士技能検定3級と,日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テストA2レベル程度の結果を証明することで,自動車整備の特定技能ビザを申請するための要件を満たすことが出来ます。
技能試験については,自動車整備分野特定技能評価試験と自動車整備士技能検定3級の2つの選択肢がある点については,他分野と異なる点ですので注意して下さい。
なお,日本語試験については,開催回数が多く試験結果も当日に分かる国際交流基金日本語基礎テストがお勧めです。
1-2受入れ機関の主な要件
〇地方運輸局長の認証(限定認証や二輪のみも含む)を受けた事業場であること
特定技能外国人を受入れる事業所は,道路運送車両法第78条第1項に基づいた認証工場である必要があります。
そのため,特定技能ビザの申請までに許可を受けていない事業所での受入れは認められません。
〇日本人と同等額以上の報酬の支払い
特定技能外国人を安い労働力として雇用することは認められません。
そのため,特定技能外国人へ支払う報酬は,同じ職場で同程度の経験をもつ日本人従業員と同等額以上である必要があります。
〇特定技能外国人への支援体制確保
生活相談や行政の手続き補助などを含めた,特定技能外国人への支援業務を実施できる環境を整える必要があります。
なお,受入れ機関で支援業務を実施する体制を整えられない場合は,登録支援機関へ支援業務を委託することで特定技能外国人の受入れをすることが可能です。
〇非自発的離職者・行方不明者が1年以内にいないこと
1年以内に非自発的離職者と行方不明者が発生している場合には,特定技能外国人の雇用ができません。
非自発的離職者には外国人のみでなく,日本人従業員も含まれる点については,注意が必要です。
〇5年以内に法令違反をしていないこと
特定技能ビザ取得のためには,受入れ機関が直近5年以内に,入管法や労働法の違反が無いことが求められます。
また,受入れ機関の役員・支援責任者・支援担当者に関しても同様に,違反していない必要があります。
〇特定技能外国人と違法な契約が無いこと
特定技能外国人と締結する雇用契約に関しては,日本人と同様に労働基準法が適応されます。
そのため,労働基準法に抵触する契約内容は認められません。
また,契約満了前の退職に対して違約金や保証金の契約なども認められません。
2.特定技能外国人が従事可能な業務
自動車整備分野の特定技能外国人が従事可能な主たる業務は次の通りです。
- 自動車の日常点検整備
- 定期点検整備
- 分解整備
また,主たる業務とは別に次のような業務が関連業務として想定されており,付随的に従事することが可能です。
- 整備内容の説明,及び関連部品の販売
- 部品番号検索
- 部内発注作業
- 車枠車体の整備調整作業
- ナビ・ETC等の電装品の取付作業
- 自動車板金塗装作業
- 洗車作業
- 下廻り塗装作業
- 車内清掃作業
- 構内清掃作業
- 部品等運搬作業
- 設備機器等清掃作業
参照:出入国在留管理庁(特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領)
なお,技能実習では,「地方運輸局長から認証を受けた自動車分解整備事業場(対象とする装置の種類が限定されていないこと)」での作業のみが認められており,自動車整備の対象とする自動車の種類が二輪自動車のみの自動車整備事業場は該当外とされています。
一方で,特定技能では,地方運輸局長から認証を受けた自動車整備事業場の中でも,対象とする装置の種類が限定されている事業場や自動車の種類が二輪自動車のみの事業場における業務にも特定技能外国人を従事させることが認められています。
3.特定技能「自動車整備」の協議会
次に自動車整備分野の協議会について紹介します。
3-1協議会員の遵守事項
協議会員になると,次の事項を遵守する義務があります。
- 受入れする特定技能外国人の情報の適切な保管
- 入管法やその他法律の遵守
- 特定技能外国人の引き抜き行為をしないこと
- 大都市圏での受入れ自粛要請があった場合に応じること
- 技能要件を満たしていない特定技能外国人を雇用しないこと
- 協議会の定める届出の履行
- 協議会の調査等への協力
3-2加入タイミング
協議会への加入は,初めて特定技能外国人を雇用してから4ヶ月以内に行う必要があります。
なお,2人目の特定技能外国人雇用時(初めての受入れから4ヶ月以内は除く)や,その後のビザ更新時に協議会へ加入できていない場合は,ビザ申請が不許可となる点については注意して下さい。
3-3加入手続き
国土交通省のサイトより,協議会加入申請に必要な書類をダウンロードして,必要事項を記入後に,特定技能外国人を受入れする事業所管轄の地方運輸局へ直接持参または郵送にて申請書類を提出します。
3-4注意点
〇申請内容に変更がある場合は届け出が必要
協議会に提出した情報に変更がある場合には,国土交通省のサイトより必要書類をダウンロードして,事業所管轄の地方運輸局提出する必要があります。
〇登録支援機関も協議会加入が必要
登録支援機関が初めて自動車整備分野で,初めて特定技能外国人の支援業務を開始してから4ヶ月以内に協議会へ加入する義務があります。
なお,登録支援機関が自動車整備分野で特定技能外国人の支援業務を行う場合は,次のいずれかの要件を満たす職員の在籍が必要である点には注意が必要です。
- 自動車整備士1級または2級の資格をもつ職員
- 自動車整備士の養成施設において5年以上の指導に係る実務の経験をもつ職員
但し,いずれの場合でも常勤・非常勤は問われません。
4.特定技能「自動車整備」の試験概要
自動車整備分野特定技能評価試験の内容について紹介していきます。
なお,自動車整備分野では,自動車整備士技能検定3級の合格でも特定技能の技能要件を満たすことができます。
4-1試験内容
タイヤの空気圧,灯火装置の点灯・点滅,ハンドルの操作具合,及びホイールナットの緩みなどの点検整備や,エンジン,ブレーキなどの重要部品を取り外して行う点検整備・改造を適切に行うことなど自動車整備に関わる知識全般が問われる試験内容です。
また,試験の合格に必要な技能や知識の程度は,自動車整備士技能検定試験3級と同水準程度に設定されています。
また,上記の試験問題に日本語を含めて10ヶ国の中から言語を選択して受験することができます。
〇学科試験
- 真偽法(○×式)
- 30問を60分以内に解答
- 構造,機能,及び取扱法に関する初等知識
- 点検,修理,及び調整に関する初等知識
- 整備用の試験機,計量器,及び工具の構造,機能及び取扱法に関する初等知識
- 材料及び燃料油脂の性質,及び用法に関する初等知識
〇実技試験
- 作業試験または図やイラスト等を用いた状況設定において正しい判別,判断を行わせる判断等試験
- 3つの課題に対して複数の問を20分以内に解答
- 簡単な基本工作
- 分解,組立て,簡単な点検,及び調整
- 簡単な修理
- 簡単な整備用の試験機,計量器,及び工具の取扱い
4-2申し込み方法
自動車整備分野特定技能評価試験の申込サイトより,受験場所と日時を選択後,必要事項を入力して申し込みをします。
選択できる開催地は現在のところ,日本とフィリピンのみで,合格発表については,試験日より30日以内に公表されます。
なお,合格証書の発行については特定技能外国人が受入れ機関と雇用契約を締結した後に,受入れ機関が申請人となり合格証書を発行する点には留意して下さい。
合格証の発行時には,受入れ機関が発行費用として16,000円を支払う必要があります。
4-3試験対策
自動車整備分野特定技能評価試験では,学習のためのテキストなどが公表されておりません。
そのため,日本自動車整備振興会連合会のサイトに掲載されているサンプル問題を試験の参考にして,販売されている自動車整備士技能検定3級のテキストなどでの学習が必要となります。
5.まとめ:【特定技能ビザ】自動車整備の協議会と試験概要
本記事では,協議会や特定技能の技能試験を中心に,自動車整備分野での特定技能の内容について紹介をしました。
自動車整備分野では,試験の実施場所や機会も少ないなどの理由で特定技能外国人の受入れ人数は2021年12月末時点で708人となっており,他分野と比べても少ないのが現状です。
新型コロナウイルス感染症が終息した後は,試験の受験機会も増えて,自動車整備分野で雇用される特定技能外国人が増えることは間違いないでしょう。
自動車整備分野で特定技能外国人をお考えの方は,行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にお問い合わせください。