仲野 翔悟

【特定技能ビザ】転職の要件と必要な手続き

外国人の転職を認めない技能実習ビザが問題視されてきた中で,一定の要件を満たせば転職が可能な,特定技能ビザが新設されました。
本記事では,今後増加することが想定される特定技能外国人の転職について,必要な手続きや要件をご紹介します。

1.特定技能外国人が転職できる要件

まず始めに,特定技能外国人が転職できる要件について紹介します。

1-1技能要件

特定技能外国人は,要件さえ満たせば,特定技能の他分野への転職も認められています。

転職を希望する場合は,必ず転職先の「分野・業務区分」で求められる技能要件を満たしている必要があるため,事前に必要な技能要件については,確認をしておくことが肝要です。

例えば,農業分野で特定技能ビザを取得して就労していた外国人が,宿泊業分野へ転職する場合は,事前に宿泊業の特定技能の技能試験に合格している必要があります。

また,製造業分野など,分野内に複数の業務区分が設置されている場合は,業務区分ごとに特定技能の技能試験が設置されています。
そのため,同じ分野内でも他の業務区分の業務へ従事,または転職する場合は原則として特定技能の技能試験に合格する必要がある点は,誤解が多いところになりますので,注意が必要です。

加えて,介護分野へ転職する際には,介護分野における日本語能力を証明するために「介護日本語評価試験」についても合格しておく必要がある点は,留意して下さい。

1-2在留期間

特定技能(1号)ビザでは,外国人が日本で在留可能な期間は,最長5年間と定められています。
最長5年間の在留期間に関しては,転職前に特定技能ビザにて就労していた期間も含まれます。

そのため,特定技能外国人と締結する雇用契約の期間を決定する際には,残りの在留可能期間を確認しておく必要があります。

なお,既に残りの在留期間が数ヶ月のみのような場合は,転職先で就労するためのビザの切り替えができない可能性もある点には注意が必要です。

2.入管への必要な届出手続き

2-1特定技能外国人

  • 在留資格変更許可申請(ビザ切り替え申請手続き)

〇在留資格変更許可申請(ビザ切り替え申請手続き)
特定技能外国人が転職をする場合は,特定技能ビザの切り替え申請をする必要があります。

申請には多くの書類を準備・作成する必要があり,1ヶ月以上の審査期間も想定する必要があるため,早めの準備が必要です。

また,転職先の機関にて特定技能外国人として就労できるのは,特定技能ビザの切り替え申請後,新しい特定技能ビザを取得してからとなります。
この点,間違いがないようにしてください。

なお,特定技能外国人が同じ受入れ機関で就労を継続しながら,従事する業務区分を変更・追加する場合は,「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」の提出のみで
足りる
点は,誤解が多いところになりますので、注意が必要です。

特定技能ビザの切り替え方法について詳しい内容は,特定技能ビザ 切り替え のページをご確認ください。

2-2受入れ機関

受入れ機関は次の4つの届出を,入管へ提出する必要があります。

  • 特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出
  • 特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
  • 特定技能所属機関による支援計画変更に係る届出
  • 特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出

〇特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出
受入れ機関または特定技能外国人の都合により,特定技能外国人の受入れ継続が困難となった際に提出義務のある書類です。

受入れ継続が困難となった日から14日以内に入管へ提出する義務があり,特定技能外国人が転職する場合は,次の内容について入管へ報告します。

  • 転職する特定技能外国人の情報
  • 転職理由
  • 特定技能外国人の現状
  • 特定技能外国人の今後の活動予定

参照:出入国在留管理庁(特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出)

〇特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
特定技能外国人と受入れ機関との雇用契約内容について,変更または新たに雇用契約を締結する際に提出義務のある書類です。

雇用契約の変更などがあった日から14日以内に入管へ提出する義務があり,特定技能外国人が転職する場合は,次の内容について入管へ報告します。

  • 雇用契約を終了した年月日
  • 雇用契約を終了した理由

参照:出入国在留管理庁(特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出)

〇特定技能所属機関による支援計画変更に係る届出
特定技能外国人の支援計画内容に変更がある際に,提出義務のある書類です。

支援計画内容に変更があった日から14日以内に入管へ提出する義務があり,特定技能外国人が転職する場合は,次の内容について入管へ報告します。

  • 転職する特定技能外国人の情報
  • 支援計画を変更した年月日
  • 変更後の支援計画の内容

参照:出入国在留管理庁(特定技能所属機関による支援計画変更に係る届出)

〇特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出
登録支援機関に特定技能外国の支援を委託している場合に,支援委託契約を新たに締結,変更または終了した際に提出義務のある書類です。

支援委託契約の内容に変更などがあった日から14日以内に入管へ提出する義務があり,特定技能外国人が転職する場合は,次の内容について入管へ報告します。

  • 支援委託契約を終了した年月日
  • 支援委託契約を終了した理由

参照:出入国在留管理庁(特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出)

3.各機関への必要手続き

特定技能外国人が転職をする際には,入管への申請や届出以外にも,必要な手続きがあります。

3-1特定技能外国人

  • 役所への転出・転入手続き
  • 郵便局への住所変更の届出
  • 役所から納税・課税証明書の取得
  • 医療機関での健康診断の受診

〇役所への転出・転入手続き
転職の際に引越しをする場合は,役所で転出と転入の手続きが必要となります。

転出手続きについて,通常は本人が役所に出向いて行う必要がありますが,仮に転出手続きが間に合わなかった場合は,特定技能ビザの写しを本人確認書類として役所へ送付することで,郵送での実施が可能です。

正し,転入手続きについては,役所で転入先の住所を特定技能ビザに記入するため,郵送で行うことはできません。

〇郵便局への住所変更の届出
住所変更をした際には,郵便局へ住所変更の届出をしておくことをお勧めします。
転職前に住んでいた住居へ退職関連書類が届いた場合でも,新しい住所へ転送されるため,書類や荷物の紛失を防ぐことができます。

〇役所から納税・課税証明書の取得
特定技能ビザの切り替え申請をするためには,納税・課税証明書を入管へ提出する必要があります。
そのため,特定技能ビザの切り替え申請をする前に,役所にて次の書類を取得して下さい。

  • 納税証明書(全ての納期が到来している直近年度)
  • 課税証明書(直近年度)

なお,取得する納税証明書の「未納税額の項目」や「納期未到来税額の項目」に金額の記載がある場合は,納税証明書の取り直しが必要となる点には注意して下さい。

〇医療機関での健康診断の受診
特定技能ビザの切り替え申請をするためには,健康診断結果を入管へ提出する必要があります。

健康診断結果については,直近1年以内に受診した際の結果であれば,特定技能ビザ切り替え申請の際の提出書類として使うことができます。

そのため,転職前の受入れ機関で受診した健康診断結果があれば,再度受診する必要はありません。

なお,必要な健康診断の受診項目について最低限必要な項目については,出入国在留管理庁のホームページを参照して下さい。

3-2受入れ機関

受入れ機関が,特定技能外国人の転職時に実施する必要のある特別な手続きはありませんが,実施義務のある日本人と同様の退職手続きの履行は必須です。

特に,源泉徴収票については,特定技能ビザ切り替え手続きでも必要となるので,必ず発行して,事前に特定技能外国人へ渡しておく必要があります。

4.転職時の注意点

特定技能外国人が転職する際に,注意するべき点は次のとおりです。

4-1転職実現までに一定の期間がかかる

特定技能外国人が転職をする際には,特定技能ビザの切り替え申請が必要です。

特定技能ビザの切り替え申請手続きには,申請に係る事前準備や審査に1ヶ月以上の期間がかかることを考慮して,十分な余裕をもって進める必要があります。

そのため,転職を円滑に進めるためにも,余裕をもって準備を始めることが大切です。

4-2特定活動(4ヶ月)ビザを使う場合

特定技能外国人が転職をする際に,選択できる可能性のあるビザとして特定活動(4ヶ月)ビザがあります。

特定活動(4ヶ月)ビザは,保有している特定技能ビザの期限までに,特定技能ビザの切り替え申請をする準備が間に合わない場合に選択できるビザです。

特定技能ビザよりも申請の際に必要な提出書類が少なく,審査期間も短いため転職先が在留期限の直前に決まり,すでに退職日も決定してしまった場合などには,就労不可の待機期間を短縮することが可能です。

なお,特定活動(4ヶ月)ビザは,特定技能外国人の転職を円滑に実施するためのビザではない点については注意して下さい。

特定活動(4ヶ月)ビザの申請に,必要な書類は次のとおりです。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 転職先の受入れ機関が作成した説明書
  • 雇用契約書と雇用条件書等の写し
  • 転職先の分野・業務区分での技能要件を満たす証明書類
  • 特定技能の日本語要件を満たす証明書類

なお,特定活動(4ヶ月)ビザにて就労する期間は,特定技能ビザで就労するのと同じ待遇・業務内容での就労のみが認められます。

4-3引き抜き自粛要請への抵触

特定技能外国人に引き抜き行為をして,転職させることは認められていません。

特定技能外国人への引き抜き行為をしないことが,特定技能協議会へ加入する際の条件となっているため,特定技能外国人がスカウト行為などを受けて転職することが発覚した場合には,転職先の機関が協議会から除名処分を受ける可能性もあります。

転職してくる特定技能外国人を受入れする側となる場合には,引き抜きなどはしないように注意して下さい。

5.まとめ:【特定技能ビザ】転職の要件と必要な手続き

本記事では,特定技能外国人が転職する際の手続きや要件,注意点についてご紹介しました。

地域別の賃金格差なども影響して,特定技能外国人の転職は今後も増加して行くことが想定できます。

また,特定技能の協議会加入時に,引き抜き防止のための誓約はありますが,本人の意思で転職をする場合には,職業選択の自由が保障されていることからも,止めることはできません。

特定技能外国人を雇用する際には,転職が決定した際の手続きについても事前に知っておくことで,手続き上のミスや必要書類提出の遅延を防ぐことができます。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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