仲野 翔悟

【特定技能ビザ】飲食料品製造業の協議会と試験概要

飲食料品製造業は,需要の変動が少ない業界であるなどの理由で,新型コロナウイルスの感染拡大などの影響下でも,一定の人材需要を保っています。
また,特定技能の試験合格率も高水準であるため,特定技能外国人が他業種から,転職してくることも多い業界です。
本記事では,飲食料品製造業で,特定技能外国人を受入れする際に加入必須の協議会や,特定技能の技能試験についてご紹介していきます。
飲食料品製造業で,特定技能外国人を受入れする際に,参考にして頂ける内容ですので,ぜひ最後までお付き合いください。

1. 特定技能「飲食料品製造業」について

まずは,飲食料品製造業の特定技能で従事可能な業務内容について紹介します。

次の表では,特定技能制度と技能実習制度のそれぞれで認められている業務内容を比較しています。

1-1従事可能な業務内容

特定技能(業務区分) 技能実習(職種) 技能実習(作業)
飲食料品製造全般
(畜産食料品製造業,水産食料品製造業,野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業,調味料製造業,糖類製造業,精穀・精粉業,パン・菓子製造業,動植物油脂製造業,その他の食料品製造業,清涼飲料製造業,茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く),製氷業,菓子小売業(製造小売),パン小売業(製造小売),豆腐・かまぼこ等加工食品小売業)
缶詰巻締 缶詰巻締
食鳥処理加工業 食鳥処理加工
加熱性水産加工 食品製造業 節類製造
加熱乾製品製造
調味加工品製造
くん製品製造
非加熱性水産加工 食品製造業 塩蔵品製造
乾製品製造
発酵食品製造
水産練り製品製造 かまぼこ製品製造
牛豚食肉処理加工 業 牛豚部分肉製造
ハム・ソーセージ・ ベーコン製造 ハム・ソーセージ・ ベーコン製造
パン製造 パン製造
そう菜製造業 そう菜加工
農産物漬物製造業 農産物漬物製造

参照:出入国管理庁(特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領)

表からも分かる通り,特定技能の飲食料品製造業分野では,業務区分が細分化されていません。そのため,飲食料品製造に関連する職種・作業にて「技能実習2号を良好に修了」した場合は,特定技能ビザを取得することで従事可能な業務範囲が大幅に広がります。

また,表内の業務以外にも,同じ職場の日本人が従事している関連業務に付随的に従事することが認められています。

加えて,特定技能の業務区分では,技能実習では許されていなかった,清涼飲料製造業や菓子小売業(製造小売)などの業務が認められたことで,技能実習生の受入れができなかった機関でも,外国人受入れの選択肢が広がっているのです。

1-2外国人の要件

飲食料品製造業で特定技能ビザを取得するためには,外国人が次のいずれかの要件を満たす必要があります。

〇技能実習2号を良好に修了
飲食料品製造に関連する職種・作業にて,技能実習2号を良好に修了すると特定技能ビザの取得要件を満たします。

なお,技能実習の移行対象職種に含まれていない職種・作業にて技能実習を修了した外国人については,技能実習2号を良好に修了できないため,技能試験と日本語試験に合格する必要があります。

〇技能試験と日本語試験に合格
飲食料品製造業の特定技能1号技能測定試験の合格と,日本語能力試験N4または国際交流基金日本語基礎テストでのA2レベル以上の結果を取得することで,特定技能ビザの取得要件を満たします。

1-3受入れ機関の主な要件

○協議会への加入
特定技能外国人を受入れする機関は,受入れ後,4ヶ月以内に飲食料品製造業の特定技能協議会へ加入する義務があります。

○日本人と同等程度の報酬の支払い
特定技能外国人に対しては,雇用している日本人従業員との賃金格差を設定することは認められず,同程度の経験をもつ日本人従業員と,同等以上の賃金を支払う必要があります。

○安定した経営状況
特定技能外国人が,雇用契約期間内に失業することを防ぐため,決算状況の情報を開示して安定した経営状況を証明する必要があります。

○5年以内に法令違反なし
過去5年間に,日本の全ての法律に対する違反履歴がある場合は,特定技能外国人の受入れが認められません。

○1年以内の非自発的離職者・行方不明者なし
1年以内に,外国人を含む全ての従業員が非自発的離職をしていないことや,受入れ機関に帰責性のある行方不明が発生している場合,特定技能外国人の受入れができません。

○特定技能外国人の支援体制
特定技能制度で定められた,生活相談や行政の手続き補助などの支援体制を整えている必要があります。

なお,支援業務については,登録支援機関へ委託することも認められています。

2. 特定技能「飲食料品製造業」の協議会

次は,飲食料品製造業の協議会について見ていきましょう。

2-1活動内容

飲食料品製造業の特定技能協議会は,特定技能制度の適切な運用などを目的として,次の活動を行っています。

  • 特定技能外国人の受入れにかかわる制度の趣旨や優良事例の周知
  • 受入れ機関等に対する法令遵守の啓発
  • 就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
  • 地域別の人手不足の状況把握・分析
  • 人手不足状況,受入れ状況等を踏まえた大都市圏等への集中回避に係る対応策の検討・調整(特定地域への過度な集中が認められる場合の構成員に対する必要な要請等を含む)
  • 受入れ機関の外国人労働者引き抜き防止の申合せ
  • 受入の円滑かつ適正な実施のために必要なその他の情報・課題等の共有・協議等

参照 : 農林水産省(食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について

2-2加入対象機関

特定技能外国人を雇用する受入れ機関は,協議会への加入が必須です。

加えて,受入れ機関が登録支援機関に,特定技能外国人に実施する支援業務の委託をした場合は,当該登録支援機関にも協議会加入義務が発生します。

2-3加入タイミング

受入れ機関は,初めて特定技能外国人の受入れを開始してから4ヶ月以内に,協議会へ加入する必要があります。

登録支援機関については,受入れ機関より支援委託を受けた特定技能外国人の受入れ開始日から,4ヶ月以内の加入義務があります。

2-4加入手続き

初めての特定技能外国人の受入れ開始後,食品産業特定技能協議会のホームページより加入申請の手続きをします。

ページ内に設置された,入会フォームのページに必要事項を記入したら登録したメールアドレス宛に協議会よりメールが届きます。

その後,特定技能ビザ申請時に,入管へ提出した「飲食料品製造業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の写しをメールに添付して返信します。

メール返信後,2週間から1ヶ月程度の審査期間を経て,問題が無ければメールにて加入証が届きます。

2-5注意点

飲食料品製造業の協議会へ加入する際には,大都市圏などに特定技能外国人が過度に集中することや,大企業への偏在が生じることを防ぐため,特定技能外国人の引き抜きを自粛することに同意する必要があります。

積極的な引き抜き行為が発覚した場合には,協議会から除名処分を受け,特定技能外国人の雇用ができなくなる可能性がある点について注意が必要です。

3. 特定技能「飲食料品製造業」の試験概要

最後に,飲食料品製造業の技能試験について見ていきましょう。

3-1試験内容

飲食料品製造業の技能試験(特定技能1号能力測定試験)は,日本の飲食料品製造業にて1~3年程度の従事経験がある方が,試験に特化した学習用テキストなどで事前学習せずに受験して5割程度が合格する内容に設定されています。

試験では,学科試験と実技試験(判断・計画立案)について,次の項目より出題されます。

  • 食品安全・品質管理の基本的な知識
  • 一般衛生管理の基礎
  • 製造工程管理の基礎
  • HACCPによる衛生管理
  • 労働安全衛生に関する知識

合計40問の試験問題に,満点(150点)の65%以上の点数で合格することができます。

3-2申し込み方法

一般社団法人外国人食品産業技能評価機構のホームページより,「マイページ」に登録します。
※マイページの登録には,5日程度の審査期間がかかります。

マイページの登録完了後に,受験したい会場と日時を選択して申し込みをします。

申し込み後,抽選が実施され当選した場合のみ受験が認められ,当選者は受験料の支払いをした後に,マイページより受験表の取得ができます。

3-3試験対策

一般社団法人外国人食品産業技能評価機構のホームページより,学習用テキストを無料でダウンロードすることができます。

3-4注意点

〇受験は抽選制で落選回数の多い人が優先される
飲食料品製造業の技能試験は,特定技能の他分野と比べても応募者が多く,試験会場の定員に達した場合は,抽選で受験可否が決まります。

仮に,抽選で落選した場合は,次回申し込みの際に,優先して受験の機会が与えられます。
また,受験予定者がキャンセルした場合などに,二次募集が発表される場合もあるので,試験情報については,随時確認をして下さい。

〇イラン国籍の外国人は受験不可
日本からの退去強制執行に協力しない国籍を有する者として,イラン国籍の外国人は,受験が認められていません。

〇重複申請の禁止
受験機会を増やすために,1人でマイページ登録を複数回行うことは認められません。

発覚した場合は,最大で5年間の間,飲食料品製造業の試験を受験できなくなる可能性がある点に,注意が必要です。

特定技能ビザの試験については,【特定技能ビザ】全14分野の試験内容のページもご確認ください。

4.まとめ:【特定技能ビザ】飲食料品製造業の協議会と試験概要

本記事では,飲食料品製造業の協議会や,特定技能の技能試験を中心にご紹介しました。

飲食料品製造業の特徴として,大企業が一度に数十人の特定技能外国人を募集するケースなども多く,協議会加入時に引き抜き行為をしないことへの同意が必要な理由にもなっています。

今後,特定技能外国人の受入れ需要が高まることが想定できる飲食料品製造業で,適正に特定技能制度を運用するためには,常に最新の情報を手に入れて,法律の改正などに対応していくことが求められます。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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