就労ビザ更新手続を,行政書士がわかりやすく解説!
就労ビザの申請には,主に「在留資格認定証明書交付申請」「在留資格変更許可申請」「在留期間更新許可申請」の3つの手続きがあります。
この記事では,上記のうち在留期間更新許可申請について解説します。
Index
1.就労ビザの「更新申請」とは?
就労ビザには,永住ビザとは異なり,在留期限があります。
そのため,在留期限が切れる前に就労ビザの期限を延長しなければなりません。
この手続きの事を「在留期間更新許可申請」と言います。
もし就労ビザを更新せずに日本に滞在し続けた場合,不法滞在として退去強制手続きの対象となり,引き続き日本で働くことができなくなってしまいます。
気をつけなければならないのは,不法滞在の影響はその外国人だけではなく,雇用主である企業も不法就労助長罪に問われるということです。
不法滞在の外国人を雇用主である企業は,3年以下の懲役・300万円以下の罰金もしくはその併科が科せられてしまうのです。
詳しくは,知らなかったでは通用しない不法就労助長罪とは? に記載していますのでご確認ください。
2.就労ビザ更新の条件となる8つのポイント
就労ビザ更新の要件は,以下のとおりです。
①行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
就労ビザ更新のためには,申請人である外国人の今後の活動が,入管法で定められている活動の範囲内であることが必要です。
そのため,入管法で定められた範囲外の活動をおこなっている場合には,就労ビザの更新で許可は取得できません。
②法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
法務省令で定める上陸許可基準とは,外国人が日本に入国する際の上陸審査の基準です。
入管法別表第1の2の表又は4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動をおこなおうとする外国人については,上陸審査基準の適合性が求められています。
本来,上陸許可基準は入国する際の基準とされていることから,就労ビザの更新申請の際には不要と考えられる方がおられますが,在留期間更新許可申請の際にも,原則として上陸許可基準に適合していなければなりません。
③現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
就労ビザの更新申請をする場合は,現に有する在留資格に応じた活動をおこなっていたことが要件のひとつとされます。
例えば技術・人文知識・国際業務ビザを所有している場合は,これらに該当する業務に従事していなければなりません。
もし在留資格外の活動をおこなっていたことが判明した場合,就労ビザの更新手続きが不許可になる可能性があります。
また,資格外の活動が専ら,かつ明らかに行われていると判断された場合にて,退去強制手続きを取られる可能性もありますので,注意が必要です。
④素行が不良でないこと
就労ビザの更新申請をおこない許可を取得するためには,素行要件も満たす必要があります。
つまり素行が悪かったり,前科があったりすると,就労ビザの更新申請の審査においては非常に不利になってしまいます。
⑤独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
就労ビザの更新申請で許可を取得するためには,申請人である外国人の生活状況が,日本の公共の負担となっていない(生活保護受給などをしていない等)ことが必要です。
また,現在だけではなく,将来的に安定して生活できることが見込まれなければなりません。
そのため,充分な資産や安定した収入があることが要件となります。
ただし,上記の要件を充足しない場合でも,感染症拡大による休業措置を取っていたなど,正当な理由がある場合は,その理由を十分に勘案して判断されることになりますので,ご不安がある方は事前にご相談ください。
⑥雇用・労働条件が適正であること
日本で就労している(しようとする)場合には,雇用・労働条件が,労働関係法規に適合していなければなりません。
これは正社員や契約社員などのフルタイム労働者だけではなく,アルバイトの場合も同様です。
もし労働関係法規違反により勧告等がおこなわれたことが判明した場合は,申請人である外国人に責任はないため,この点を十分に勘案して判断されますが,事前に雇用・労働条件が適正であるか確認の上,就労ビザの更新申請をおこないましょう。
⑦納税義務を履行していること
日本に在留している限り,外国人であっても納税の義務があります。
もし納税義務を果たしていない場合は,就労ビザ更新の審査に不利に働きます。
仮に過去に未納分がある場合には,直ぐに追納するようにしましょう。
⑧入管法に定める届出等の義務を履行していること
就労ビザを更新申請で許可を取得するためには,入管法に定める届出等の義務を履行している必要があります。
必要な届出は,以下のとおりです。
- 19条の7 新規上陸後の住居地届出
- 19条の8 在留資格変更等に伴う住居地届出
- 19条の9 住居地の変更届出
- 19条の10 住居地以外の記載事項の変更届出
- 19条の11 在留カードの有効期間の更新
- 19条の12 紛失等による在留カードの再交付
- 19条の13 汚損等による在留カードの再交付
- 19条の15 在留カードの返納
- 19条の16 所得機関等に関する届出
上記の中でも,所属機関等に関する届出は届出忘れが多い印象です。
所属機関等に関する届出を忘れていた場合,更新申請時に届出の提出が求められると共に,付与される在留年数にも影響しますので,忘れずに手続きを行うようにしてください。
3.就労ビザの更新申請に必要な書類とは?
就労ビザ更新に必要な書類については,就労ビザの必要書類|技術・人文知識・国際業務の場合について で紹介していますので,ぜひご覧ください。
4.就労ビザの更新申請に必要な印紙代とは?
就労ビザ更新に必要な印紙代は,4000円です。
結果受領のタイミングで4000円分の収入印紙をご準備ください。
5.就労ビザ更新申請手続きの流れを解説
就労ビザ更新手続きの流れは,以下のとおりです。
1. 就労ビザの更新申請に必要となる書面を準備する
2. 住居地を管轄する地方出入国在留管理庁へ申請する
3. 地方出入国在留管理庁から通知書が送られてくる
4. 外国人本人が出入国在留管理庁に通知書とパスポートを持参する
なお,これらの手続きはオンラインでも可能です。
詳しくは,入管ビザ申請のオンライン化について解説! に記載していますのでご覧ください。
6.就労ビザの更新申請はいつから可能なのか?
就労ビザの更新申請は,在留期限の約3ヶ月前から可能です。
就労ビザの更新は在留期限を1日でも過ぎてしまうとできなくなるため,なるべく早めに更新申請することをお勧めします。
就労ビザを保有する外国人のみならず,外国人を雇用する企業も,在留カードのデータを適正に管理して,外国人従業員の在留期限を把握しておく必要があります。
7.就労ビザの更新申請の審査にかかる期間はどれぐらい?
就労ビザの更新申請の審査にかかる期間については,2週間から1ヶ月程度とされています。
ただし,入管の混雑状況,申請の内容によってはそれ以上時間が掛かるケースもありますので,お急ぎの方は早めに更新申請をおこなうようにしてください。
8. 就労ビザの更新申請の内容は転職の有無によって異なる
就労ビザの更新申請する際は,転職の有無によって入管審査の内容は異なります。
それぞれで違いがありますので,確認してください。
①転職又は業務内容に変更が「ない」場合
転職もなく業務内容についても変更がない場合の就労ビザの更新申請は,比較的難易度が低いです。
なぜなら,活動内容に変更がないため,他の更新の要件をクリアすれば良いからです。
②転職又は業務内容に変更が「ある」場合
転職又は業務内容に変更がある場合は,就労ビザの取得や変更と同じくらい難易度が高いです。
仮に前職と転職先の業務内容が変わらなかったとしても,同様に審査の難易度は高くなります。
なぜなら,転職先の企業の経営状態や,転職先での業務内容が現在の就労ビザに合致しているか,慎重に審査されるためです。
転職又は業務内容に変更がある場合には,就労資格証明書を取得することを検討してみてください。
不意打ちの不許可を防止することができます。
詳細は,就労資格証明書とは?メリットやデメリット,注意点などを解説 をご覧ください。
9.就労ビザの更新申請で注意する点とは?
就労ビザの更新申請をおこなう際の注意点は,上記で見てきたとおりですが,近時の入管審査の傾向として,「賃金」を厳しく審査している印象です。
具体的にいうと,入社前に企業側から提示された賃金と,実際に得ている賃金が大幅に異なる(少ない)ケースです。
このような場合には,入管の審査途中で追加資料を求められたり,最悪の場合には就労ビザの更新申請が許可されない可能性があります。
就労ビザの更新が不許可になってしまうと,再申請を行うことは可能ですが,不許可事由を充足しておく必要があることはもちろんのこと,改善に至った経緯などを説明する必要があるため,審査ハードルは上がります。
そのため,上記のような不安要素がある場合には,就労ビザの更新申請の際,予め理由書等を添付し,事情を説明しておくことが重要です。
10.就労ビザ更新申請が不許可となった場合
就労ビザ更新申請が不許可となった場合は,日本に継続して在留することが難しくなります。
入管から出国のための在留資格(短期滞在や特定活動など)を付与された場合は,その在留期限内に出国する必要があります。
もし指定された期限を過ぎても出国しなかった場合,退去強制の対象となってしまいますので,指定された期限内に出国するようにしましょう。
なお,一度帰国して就労ビザの再申請をご希望の場合には,早めにご相談いただけると解決までのご提案を差し上げることが可能です。
11.勤務先が就労ビザの更新手続きをおこなう際の注意点とは?
就労ビザの更新手続きは,原則申請人自身で手続きを行います。
企業の方は,就労ビザの更新申請に必要となる書類を雇用する外国人に渡してください。
機密情報については,「開封無効」として,雇用する外国人に情報を見せないことも可能です。
近頃の傾向としては,外国人を雇用する企業が増えてきたこともあり,お抱えの行政書士がいることも少なくありません。
そのような場合には,行政書士で就労ビザの更新手続きをおこなうことになります。
行政書士へ依頼した場合には,時間の削減,確実な許可受領という点に加え,機密情報を外国人従業員へ伝える必要がないこともメリットにあげられます。
他方で,行政書士へ就労ビザの更新手続きを依頼すると,報酬が掛かるのがデメリットです。
企業の人事の方からたまに聞かれるのは,“更新手続きに関する報酬”は,企業で負担するのか,外国人本人が負担するのかという点です。
この点については,特に法律上の定めがあるわけではありませんが,印象としては行政書士の手数料,収入印紙代は企業が負担しているケースがほとんどです。
12.まとめ:就労ビザの更新とは?手続きの流れ・審査期間・注意点など
本ページでは,就労ビザの更新申請について見てきました。
就労ビザは転職を伴わない更新手続きであれば,それほど難易度は高くありません。
しかし,転職を伴う場合は途端に難易度は高くなります。
就労ビザの更新申請で不許可になるというケースは,実際にはあまり多くありませんが,
企業の判断ミス,特に活動内容について誤った人事配置をしていたケースでは,安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。
そのような事態を回避するためには,入管法の正確な理解はもとより,その理解に基づく人事配置が不可欠です。
もし就労ビザの更新申請にご不安があったり,在留期限が迫っていて時間がなかったりする場合は,行政書士法人第一綜合事務所に就労ビザの更新申請手続きの代行をお任せください。