藤澤 勇來

帰化と永住の違いを徹底解説!メリット・デメリット,どちらを選ぶべき?

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帰化も永住も,どちらも日本に長く住むための手段ですが,許可の要件や申請の手続きは異なります。本コラムでは,それぞれの違いと,メリット・デメリットについて,専門行政書士がわかりやすく解説します。
帰化と永住,どちらにするか悩んでいる方はぜひ最後までお読みください。

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1.帰化と永住の基本をチェック

まずは,帰化と永住について基本的な内容を整理しておきましょう。

(1)帰化とは

「帰化」とは,外国人の方が日本国籍を取得して日本人になることです。
日本国民としての権利が行使できるようになり,日本国のパスポートが取得できます。外国人ではなくなりますので,在留カードも返納する必要があります。

(2)永住とは

「永住」とは,国籍は外国のまま変えずに,無期限で日本に住めることです。
外国人のままなので,日本国民にしか認められていない権利は行使できません。
「永住者」という在留資格になり,在留カードも引き続き交付されます。

長く日本に住めるという点は,帰化も永住も同じです。日本人になるか,外国人のままか,が大きな違いです。

2.帰化と永住の違い

ここからは,帰化と永住の違いについて詳しく見ていきましょう。
比較しやすいように表にまとめました。

  帰化 永住
国籍 日本 外国のまま変わらない
戸籍 作られる 作られない
参政権
(選挙権・被選挙権)
ある ない
退去強制処分(強制的に国外へ退去させられる処分) 適用なし 適用あり
住所要件の原則 5年(そのうち就労3年) 10年(そのうち就労5年)
申請手続きをする役所 法務局 入管

3.帰化と永住のメリット・デメリット

帰化と永住には,それぞれメリットになることと,デメリットになり得ることがあります。
下の表で,代表的なものを列挙しています。

  帰化 永住
メリット
  • 日本の戸籍を作ることができる
    ⇒夫婦で同じ戸籍に入ることができる
  • 日本の氏名を持つことができる
    ⇒不当な差別を少しでも予防できる
  • 日本のパスポートを取得できる
    ⇒ビザなしで渡航できる国が多い
  • 参政権が認められる
    ⇒選挙で投票,議員に立候補など
  • 国家公務員になれる
    ⇒試験の受験資格が得られる
  • 日本国民としての権利を享受できる
    ⇒社会保障制度など
  • 強制的に国外へ退去させられることはない
    ⇒母国が日本となるため
  • 在留期限がなくなる
    ⇒ビザ更新の申請も不要になる
  • 就労制限がなくなる
    ⇒業務の内容に制限がなくなり単純労働もできるようになる
  • 現在の国籍はそのまま変えなくていい
    ⇒母国へ自由に行ける
  • ほかのビザよりローン審査などが緩和される
    ⇒日本でマイホームを買いやすくなる
デメリット
  • 現在の国籍を放棄する必要がある
    ⇒元の国籍に戻すことが難しい国もある
  • 母国へ行く場合はビザ(査証)が必要になる場合がある
    ⇒母国の国側から「外国人」扱いになる
  • 永住が取り消されることもある
    ⇒税金の滞納や長期間の出国など
  • 強制的に国外へ退去させられる可能性がある⇒退去強制手続き
  • 参政権が行使できない
    ⇒選挙で投票できない,立候補もできない

次のチャプターで,メリット・デメリットのうち,いくつかピックアップして解説します。

(1)パスポート

帰化すると,日本のパスポートを取得できるようになります。
日本は多くの国とビザ免除協定を結んでおり,協定国にはビザなしで渡航することができます。
海外旅行が好きな方は,この点はメリットと言える部分でしょう。
一方で,日本は二重国籍を認めていません。帰化が許可された場合は,本国の国籍を放棄しなければならず,いままで持っていたパスポートは失効します。
母国と日本がビザ免除協定を結んでいなければ,そのような事情がない場合には,親族に会うため帰省するたびに,ビザを取得する必要があります。

(2)参政権

日本国憲法によれば,国政選挙への外国人の選挙権・被選挙権は認められていません。
そのため,永住を取得しても,日本の選挙に議員として立候補することも,投票することもできません。
一方で,帰化をすれば日本人となるので,日本人に認められる権利は平等に認められることになります。選挙で投票することができますし,帰化した元外国人が国会議員になることも可能です。

(3)再入国許可

永住を取得しても法的には外国人ですので,海外から再入国する際には必ず再入国許可(みなし再入国許可を含む)を得なければなりません。
再入国期限までに再入国できなかった場合は,永住資格を喪失することになります。
一方で,帰化をすれば日本人になるため,どれだけ長く海外に住んでいても,自由に日本に帰国することができます。

4.帰化と永住どちらがいい?

帰化と永住,どちらにすべきか悩む方もいらっしゃると思います。
どちらがいいか?は,人によって判断が変わってきますが,参考になるポイントをご紹介します。

【帰化よりも永住がおすすめ】

  • 母国に帰国する回数が多い方
  • いずれは元の国籍に戻そうと思っている方

故郷の国に,年に何度も帰国する方は,永住のほうがいいでしょう。
帰化すると,母国に行く場合は「外国人」として入国することになります。国によっては毎回ビザを取得する必要があり,回数や期間に上限を設けている場合もあります。年に何度も行き来する場合は,国籍は変えてしまうと自由に行き来できなくなる可能性があります。
また,いずれは元の国籍に戻そうと考えている方も,帰化より永住のほうがおすすめです。一度国籍を変更すると,元に戻すことが難しくなるケースが少なくありません。国籍取得のルールは国によって様々で,現在の制度がそのまま数十年後も同じとは限りません。
国籍を変えるということは,それほど大きなことです。後悔のないようじっくり検討してください。
永住ビザの要件 はこちらからご確認ください。

【永住よりも帰化がおすすめ】

  • 母国に帰国することがほとんどない方
  • 日本国籍を取得したあと,戻すつもりがない方
  • 日本国民でないとできないことをやりたいと思っている方

続いて,永住よりも帰化がおすすめできる方は,さきほどと基本的に「逆の方」になります。
母国に行くことがほとんどない,国籍を戻すつもりはない,このまま日本人として日本で生涯暮らし続けたいという方であれば,永住よりも帰化がいいでしょう。
また,日本国民でなければできないことをやりたいと考えている方も,帰化がおすすめです。
例えば,国家公務員になりたい方,政治家になりたい方などは,日本に何年住んでいても日本国籍がなければなることはできません。

帰化の条件 はこちらからご確認ください。

5.申請の手順

ここからは,帰化申請と永住ビザ申請それぞれの手順について解説していきます。

(1)帰化申請の手順

まずは帰化申請の手順について解説します。
帰化申請は入管ではなく「法務局」に申請します。どこの法務局でもいいわけではなく,現在住んでいる住所地を管轄する法務局の,帰化申請を扱っている国籍課や戸籍課で申請します。

【帰化申請の手順】
STEP1:管轄の法務局で事前相談をする。※
STEP2:事前相談で渡されるリストに沿って,申請に必要な書類を集める。
STEP3:書類収集とへ並行して,帰化の申請書類を作成する。
STEP4:集めた書類,作成した書類を法務局でチェックしてもらう。※
STEP5:すべての書類が整ったら,法務局で申請して受理してもらう。※
STEP6:法務局から指定された日に法務局にて面接を行う。
STEP7:帰化が許可されると官報に掲載され,法務局からも連絡がある。
STEP8:帰化後の手続きを行う。★

※法務局での相談や点検,申請は事前に予約が必要です。法務局によっては,チェックした後でないと申請の予約が取れない場合があります。
★大使館で国籍離脱の手続き,市役所で帰化の届出などがあります。国によっては許可前に国籍離脱が必要な場合があります。
帰化申請をしても,現在のビザが自動的に延長されることはありません。帰化の審査中にビザの期限が到来する場合は,その前までに更新の手続きが必要です。

(2)永住ビザ申請の手順

続いて,永住ビザ申請の手順について解説します。
永住ビザは入管へ申請します。帰化申請と違って,事前の書類チェックや申請の予約は必要ありません。そこは,これまでのビザ更新手続きと同じですね。

【永住ビザ申請の手順】
STEP1:管轄の入管で永住申請できるか相談する
STEP2:申請に必要な書類を集める。
STEP3:書類収集と並行して,永住の申請書類を作成する。
STEP4:管轄の入管へ申請して受理してもらう。
STEP5:審査が完了すると通知書が郵便で届く。
STEP6:入管窓口で新しい在留カードを受け取る。

ちなみに,永住ビザ申請をしても,現在のビザの期限は自動延長されません。永住審査中にビザの期限が到来する場合は,事前に更新の手続きが必要です。

6.帰化申請や永住ビザ申請にかかる費用について

帰化申請や永住ビザ申請には,どれぐらいの費用がかかるのでしょうか?
必要になる費用について見てみましょう。

(1)帰化申請にかかる費用

帰化申請をすることに対して,法務局や日本国に支払う料金はありません。ですので,帰化申請は「無料」ということになります。
ただ,申請に必要になる住民票や税金の証明書など,役所から取り寄せる書類はほとんどが有料です。現在のお仕事や家族構成によって,取得する書類の数が変わります。また,本国側で必要になる書類などを国際郵便でやりとりする場合もあり,人によっては数千円かかる方もいらっしゃいます。
帰化申請を専門に扱う行政書士にサポートを依頼する方も多くいますが,その場合は,行政書士へ支払う報酬分も費用としてかかります。

(2)永住申請にかかる費用

永住が許可になった際に,手数料として8,000円かかります。この8,000円は収入印紙で入管窓口へ納付します。
それ以外は,帰化申請と同様に,申請に必要となる公文書を取得するために役所へ納付する手数料,行政書士にサポートを依頼した場合の報酬などが費用としてかかることになります。

7.帰化申請や永住ビザ申請にかかる期間について

帰化申請,永住ビザ申請にかかる期間はどれぐらいになるか,解説します。
どちらも,提出する法務局・入管局によって差があるのですが,大阪や東京など大都市部だと「おおむね1年以上かかる」と思ってください。
それぞれ見ていきましょう。

(1)帰化申請にかかる期間

帰化申請は,事前の相談,書類の点検,申請でそれぞれ予約が必要です。帰化申請の希望が増えていることもあり,法務局によっては事前相談の予約が半年先まで埋まっているところもあります。このため,申請までの期間が長くなりやすいです。
また,集める書類や作成する書類が多いため,何度も法務局で点検することになり,なかなか申請までたどり着けないという方も多くいらっしゃいます。
申請した後も,法務局と法務省で審査を進めるので,1年ぐらいかかることが多いです。
申請までの準備に3~4か月,申請~許可までの審査に1年,合計1年3~4か月はかかると見込んでいたほうがいいでしょう。

(2)永住ビザ申請にかかる期間

永住ビザ申請は,帰化申請のような事前の相談や書類の点検がなく,申請の予約も必要ないので,早く準備できれば早く申請できます。準備~申請までの期間は,永住ビザ申請のほうが早くなる方が多いです。
しかし,申請~許可までの審査には時間がかかります。特に東京や大阪では,2023年以降,平均して1年以上かかっています。一方で,半年以内に結果が出る地域もあります。永住は,提出する入管によって審査期間に大きな差が生じています。
【審査が早い入管へ行けば申請できる?】
永住ビザ申請は,現在住んでいる住所地を管轄する入管へ申請しなければいけません。これは,ビザの更新と同じです。『東京は混んでいるので,空いていそうな四国まで行って申請しよう』といったことはできません。

8.帰化と永住の「違い」まとめ

本コラムでは帰化と永住の違いについて解説してきましたが,いかがでしたか?
帰化も永住ビザも,どちらもメリット・デメリットがあります。
“自分は帰化するべきか?それとも永住を取得すべきか?”
そのようなお悩みをお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
帰化申請や永住ビザの申請は,一生に関わる大切な問題です。

行政書士法人第一綜合事務所は,無料で帰化申請,永住ビザの申請に関するご相談を承っています。
英語,中国語,ベトナム語に対応のスタッフも常勤していますので,母国語でご相談いただく事も可能です。

帰化申請,永住ビザで困ったら,お気軽に弊社までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 藤澤 勇來

・日本行政書士会連合会(登録番号第24261751号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8992号)
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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