松原 桃子

香港の方が帰化申請するには?

香港の政治情勢もあり,海外に居所を移すことを検討する香港の方が今後は増えるようです。
香港の方が他の外国と比べて特殊なのは,香港は単一の国として扱われないケースが多いということです。
香港はイギリスの統治下に置かれており,1997年に中国に返還。
現在は「一国二制度」のもと,「中華人民共和国の特別行政区」という扱いとされています。
このような背景から,香港の方の帰化申請は中国本土の方とは大きく異なります。
本コラムでは,香港の方が日本への帰化申請をする際の手続きの流れや注意点を解説します。

1.帰化申請とは

日本への帰化申請とは,簡単に言えば「外国人が日本人になる(日本国籍を取得する)」ための手続きです。
帰化すれば日本の戸籍を持ち,ビザの更新なく日本に住み続けられます。
また,日本のパスポートを所有し,日本人として海外へ渡航することができます。
しかし,それは同時に母国の国籍を喪失することを意味します。
なぜなら,日本が二重国籍を認めていない関係上,日本国籍を得た際には,母国の国籍を持っておく事はできないからです。

2.日本に滞在する香港の方の人数

日本に在留する香港の方の人数は何人か?
法務省は「在留外国人統計」で日本に在留する外国人の国籍別の人数を公表しています。
ただ,2012年7月に外国人登録制度が廃止され,外国人登録証から在留カードでの管理に統一されたために,現在では「中国国籍(香港含む)」の人は何人という形で公表されています。
そのため,いま,日本に在留する「香港人」が何人かということは,残念ながら公表はされていないのです。

かつては,法務省民事局が「中国」のうち「本籍地(出身地)別」の外国人登録者数を発表していました。
それによると,中国国籍を持つ人のうち,香港出身者は1990年代には1900人前後でしたが,2006年には3256人に。
2010年には4196人と,20年間で2倍強に増えています。

もちろんこれは中国国籍のうち「本籍が香港」の方に限っての数字ですので、実際にはより多くの「香港人」の方が日本に在留していたと考えられます。

日本政府観光局によると,2022年の訪日観光客数は,香港は中国・台湾・韓国に次いで第4位の約18万人強。

リピーターも多く,香港の方の日本への興味・関心は強いです。
冒頭に述べたように,香港を巡る厳しい政治情勢を体感し,「香港にとどまるか,海外に脱出するか」悩む方も少なくないと考えられます。

今後,日本政府の対応いかんでは,香港から日本に来る方,そして日本へ移住する方は増加する可能性があると考えられます。

3.帰化申請の一般的な条件

香港に限らず,外国籍の方が日本に帰化するにはいくつかの条件があります。
帰化申請の前に,自分が帰化の条件を満たしているかを知っておきましょう。

帰化の条件を要約すると,国籍法に基づく7つの要件を満たしているかという条件です。
>>帰化申請 条件 はコチラ

すでに日本に何年以上住んで居るとか,ある程度日本語ができるかとか,日本で生計を維持するに足る収入があるか――など。
あるいは「日本政府として,あなたを日本人にしてよいかどうか」を問う条件。
また,交通違反などの犯罪を犯していないか? 日本国民として納税しているか?――などを問う条件があげられます。

4.香港の方の帰化申請の流れ

香港の方の帰化申請手続きの流れは,おおむね以下のようになります。

香港の方の帰化申請手続きの流れ図

以上がおおまかな帰化申請手続きの流れです。

帰化手続きは提出・作成する書類が多く,何度も法務局や国内外の役所に足を運ぶ必要もあります。
何度も法務局や役所に行くのは面倒,確実に日本国籍を取得したいとお考えの方は,帰化専門の国際行政書士に相談するのも一つの方法です。

5.香港の方の帰化申請に必要となる書類

香港の方が日本への帰化申請をする場合,様々な書類を集める必要があります。
香港の方の帰化申請に限らず,帰化に必要な書類はその人の家族構成や仕事(収入源)によって異なります。

一般的に外国人の帰化申請に提出が必要な書類は,

  • 国籍証明書
  • 出生証明書
  • 死亡証明書(申請者の親が死亡している場合)
  • 結婚証明書(離婚したことがある場合はその証明書も必要です)
  • 家族(親族)関係証明書

などです。

香港の方が帰化申請の際に提出すべき書類も概ね同じですが,原則として日本ではなく,香港にある香港政庁で発行してもらって取得する必要があります。
香港に居住する親族に頼んで取得することもできなくはありませんが,香港の窓口担当者によっては「本人でないと出せない」という場合もありますので,事前にしっかり法務局へ必要な書類を確認することが肝要です。

このほか,日本国内の役所で取得したり,ご本人が自筆で作成したりする書類もあります。
申請者がご両親やごきょうだいと一緒に日本に住んでいる場合は,世帯全員の住民票はもちろんのこと,それぞれの身分(収入や就学状況)を示す必要があります。
また,日本人と結婚されている場合は戸籍謄本が必要になります。

日本国内の公的文書は,有効期限がある場合もありますので取得する時期にも注意が必要です。
日本国内で働いておられる場合は,給与明細書や在勤給与証明書などの書類も提出しなければならない場合があります。

6.香港の方の帰化申請で注意すべき5つのこと

「香港人」の帰化申請には中国本国の方の帰化申請と比べると複雑で,時間もかかるという印象です。
それは,繰り返しになりますが,香港が単一の国として扱われないケースが多い事に起因しています。

その点を踏まえ,以下では香港の方が帰化申請をする際に注意すべきことをお伝えしていきます。

①「中国」であって中国本国ではない香港の特殊性
先述のように政治的な背景から香港を「国」として扱うことができません。
中国の一部でありながら中国本国とは異なる行政制度の元で,中国・イギリス・その他の多様な外国籍の方が「香港人」として暮らしています。
パスポートの種類も,「中国人としての香港人」「イギリス人としての香港人」などの種類があります。

申請当事者の国籍がどこであるかで帰化申請の手続きに必要な書類等も変わってきます。
そのため,帰化申請を考えている方は,事前にご自分がどこの国籍から日本に帰化するのかを確認する必要があります。

②帰化申請の相談から許可までに時間がかかる可能性がある
香港の方の帰化申請に限ったことではありませんが,帰化申請の手続きには手間と時間がかかります。
事前相談から帰化の許可・不許可の通知まで,年単位で時間がかかることも珍しくはありません。
ことに,香港人の帰化申請は①のような事情があって複雑になる可能性があります。

申請者が結婚や出産を控えている場合など,早く「日本人」になりたいと思っておられる方は,早めに準備して法務局・支局に相談することをお勧めします。
その際には私達のような行政書士を有効にご活用ください。

③領事証明の取得がややこしい
先述したように,香港の方の場合,本国書類は香港政庁にて取得できます。
ただし,香港政庁より取得できない書類があります。
それが国籍証明書です。

正確にいうと,香港の方も国籍は中国なので,「領事証明」という書類になりますが,こちらは,日本にある中国大使館・領事館で取得する書類となります。
ただし,香港の方の場合,大使館・領事館に行っても取得できない場合がありますので,その際は法務局の相談員の方に事情を説明してください。

④国籍喪失のタイミングは「帰化許可前」に行う
帰化申請が許可され日本人になったら,基本的に母国の国籍を喪失する手続きを行うことになります。
問題は,「いつ」国籍喪失の手続きをするかです。

国によって異なり,日本政府が帰化の許可を出してから,つまり「日本人」になることが確定してから国籍喪失手続きをする国もあります。
一方で,まだ帰化の許可がされていないのに,国籍喪失手続きをする国もあるのです。
香港の場合はというと,「帰化の許可が降りる」直前に国籍喪失手続きを行います。

法務局・支局による面接を終え,法務省の審査で「この人は帰化していいな」と判断されたタイミングで,日本の法務局の担当者から「国籍喪失手続きをしてください」と連絡があります。
③で書いたように,原則的には申請者本人が,香港本国で行います。

くれぐれも,この連絡がある以前には国籍喪失手続きをしないでください。
万が一日本の国籍を得られない場合,先走って手続きするとご自分の本国の国籍も失うことになります。

⑤事前確認・準備が重要
香港の方は固有のアイデンティティーを持っておられる方もいらっしゃいます。

ところで,帰化申請に必要な書類は香港本国で取得しなければならないものも多いです。
また,申請者ご本人以外に,親やきょうだい・親族などの状況・帰化への同意状況を示す書類もあります。

そのため,香港におられる親族の方が,自分の娘や息子・姉や弟が日本に帰化すると決心した場合にどう感じるのか。
申請者は帰化を希望していても,その他親族の方が反対している場合,帰化許可申請の審査に影響を及ぼす可能性があるため,周囲の反応や気持ちを,できれば事前にフォローしておいた方が結果として手続きがスムーズにいくでしょう。

7.香港の方の帰化申請のまとめ

本コラムでは,香港の方が日本に帰化する際の帰化申請手続きの流れや注意点を紹介しました。

まずは香港という地域の特殊性。帰化申請の流れや必要な書類をご紹介し,国籍喪失のタイミングと,その際に注意が必要なことをまとめています。

香港の方は統計的には,台湾に比べると,もともとの日本の在留人数は少ないかもしれません。
しかし,今後は訪日する方,あるいは日本に定住する方が増える可能性は高まる事が予想されます。

香港の方は日本文化に興味があり,親日の方も多いという印象です。
香港の方の帰化申請手続きに関してのご相談は,行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。
帰化申請のご相談は,無料で承っております。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

松原 桃子

・令和元年度行政書士試験合格
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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