帰化申請の条件7つを徹底解説
帰化申請とは,国籍を変更する手続きです。
国籍を変更する手続きである以上,国籍変更の許可を得るためには厳しい条件に沿った審査がなされます。
本コラムでは,帰化申請の条件として必要となる7つの条件について徹底解説していきます。
例外的なケースについても可能な限り触れていきますので,最後までご覧ください。
Index
1.帰化申請とは
帰化申請とは,国籍を変更する手続きを言います。
言い換えると、「日本人になるための手続き」です。
帰化申請が許可されれば日本人となるので,日本の戸籍を持ち,ビザを更新する事なく日本に住み続けられます。
また,世界でもトップクラスの信用度を誇る日本のパスポートを持つ事もできます。
他方で,日本では二重国籍を認めていないので,帰化申請をすることにより,母国の国籍を失う事になります。
2.帰化申請7つの条件
帰化申請をするための条件は,国籍法に明記されており,条文上は6つの条件があります。
しかし,実は条文では明記されていない条件が1つあります。
それは,日本語能力の条件です。
日本人となるのですから,日本語が書けて,かつ,日本語でコミュニケーションが図れることが必要だと考えられています。
そのため,実際には帰化申請は7つの条件が必要とされているのです。
まずは,この基本となる7つの条件について見ていきましょう。
①住所条件(国籍法第5条第1項第1号)
1つ目の条件として,申請時点で引き続き5年以上日本に住んでいる必要があります。
この条件は,日本人となるためには,日本との結び付きが強くなければならないという理由から必要とされています。
ここで重要なのは,「引き続き」という部分です。
合理的な理由のない長期出国がある場合や在留資格が途切れてしまった場合には,今までの在留がリセットされてしまいます。
なお,合理的な理由のない長期出国の具体例として,プライベートでの海外旅行が挙げられます。
他方,合理的な理由のある長期出国の具体例として,仕事での海外出張が挙げられます。
この場合ですと,合理的な出国であったことを証明するため,会社からの出張証明書が求められることが多いです。
また,就労系の在留資格を持っている方は,3年以上就労していることが必要となります。
ここでいう就労とは,正社員や契約社員という雇用形態で判断するのではなく,フルタイムで働いているかどうかが重要となります。
そのため,アルバイトは含みません。
住所条件として,引き続き5年以上日本に住んでいる必要があり,就労系の在留資格を持っている方は3年以上就労していることが必要と記載しました。
しかし,実は住所条件には例外規定が存在します。
そのため,「来日から5年経過していないから帰化はまだ無理か,,,」と諦めるのはまだ早いです。
下記3.帰化申請の条件の例外パターン5選をご覧ください。
原則の住所条件に当てはまらなくても,例外のパターンに当てはまれば帰化申請が出来るか可能性があるのです。
②能力条件(国籍法第5条第1項第2号)
2つ目の条件は,能力条件と呼ばれ,帰化申請をする申請人に行為能力が必要とされています。
聞きなれない行為能力という言葉ですが,簡単に言うと法律行為を単独で確定的に有効に行うことができる能力と説明されます。
そして,ここで重要となるのが,日本だけでなく本国の法律でも成人していないといけないという点です。
例えば,18歳の韓国人が帰化申請をしようとした場合のケースで考えてみましょう。
日本では2022年4月1日から施工されている改正民法により18歳が成人年齢となったため,日本では成人です。
しかし,韓国の成人年齢は19歳ですので,本国法上では成人しておらず,能力条件をクリアしません。
その結果,この方が単独で帰化申請するためには,19歳になるのを待つ必要があるのです。
日本だけでなく本国の法律でも成人していないといけないという点について,ご理解いただけたでしょうか。
このようなお話をすると,両国で成人しないと帰化申請が出来ないということは,未成年だと帰化申請できないのかと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし,未成年の帰化申請についても例外があります。
例えば,未成年であってもご両親と一緒に帰化申請をしたり,下記3.帰化申請の条件の例外パターン5選に当てはまれば申請することが出来るのです。
③素行条件(国籍法第5条第1項第3号)
3つ目の条件は素行要件といって,素行の良さが求められます。
素行の良さとは,簡単に述べると「ルールを守って真面目に生活している」ということで,犯罪行為や交通違反などのマイナス行為を行っていないことはもちろん,納税の義務を怠っていないか,年金の未払いはないか,住民票の変更をするにあたり14日以内に届出の義務を果たしているか,不貞行為を行っていないか等が審査されます。
しかし,素行不良があれば永久に帰化許可のチャンスを失うという訳ではありません。
社会通念(一般的な感覚)に照らし合わせ,期間を置かずに申請を進められる場合もあれば,一定期間が経過した後に,その後の更生の状況や反省の念を示して帰化が許可になる場合もあります。
④生計条件(国籍法第5条第1項第4号)
4つ目の条件は「生計条件」と呼ばれるもので,お金に困らずに日本で暮らしていけるかという条件です。
この条件は帰化申請の本人だけでなく,一緒に住んでいる家族や同居している恋人や友人についても判断されます。
帰化申請の本人だけが審査されるわけではない点は,誤解が多いので注意してください。
逆に言うと,ご自身に収入がなかったとしても,生計を一つにするご家族に安定した収入や資産がある場合,この条件をクリアすることが出来るということです。
⑤重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)
5つ目の条件は,「重国籍防止条件」です。日本は二重国籍を認めていないので,帰化申請で許可が得られた場合は,本国の国籍を喪失して下さいという条件です。
この条件で問題になることがあるとすれば,各国の国籍法によっては,兵役を終えてない場合や租税債務がある場合には,国籍を喪失できない可能性があるということです。
このような場合には,たとえ審査が終わり帰化許可がほぼ確実であっても,国籍喪失ができなければ日本への帰化は許可されません。
そのため,帰化申請を進める前に必ず本国で事前の確認が必要です。
⑥憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)
6つ目の条件は,憲法遵守条件です。
簡単に述べると,日本の法の中で最上位は憲法であり,その他の法律は憲法の内容に従って施行されています。
そのため,民法や刑法はもちろん,日本の中で最上位の法規範である憲法を守りますという誓約をする条件のことです。
そのため,クーデターによる暴動や国会襲撃を行うような日本国にとって危険な思想を持つ団体に所属している人は日本に帰化できないとされています。
ただ,こちらは,実務上はほとんどの方にとって無縁の話になっている印象です。
⑦日本語能力条件(+α条件)
最後に,国籍法上明文化されていませんが,実務上確立している条件として,日本語能力条件があります。
これは,日本人となる以上,日常生活に支障のない程度の日本語能力(読む,書く,話す)が必要であると考えられた結果必要とされる条件であり,一般的に小学校3年生レベルの語彙が必要と言われています。
家族全員で申請したけれど,日本語能力が十分と認められずに1人だけ帰化申請が不許可になるというケースもありますので,日本語能力条件を甘く見てはいけません。
なお,日本語能力のテストはすべての申請人に対して実施されるものではなく,審査官に必要と判断された人に対してのみ行われます。
近年では,日本語能力試験N1などの日本語に関する資格を有していると,日本語能力条件について,有利に判断される傾向にあります。
3.帰化申請の条件の例外パターン5選
ここからは,日本と特別な関係を有する外国人について定められた,帰化申請の条件の例外パターンをご紹介していきます。
ご自身の実情にあった項目のみご覧頂ければ大丈夫です。
①日本生まれの方(住所条件緩和)
1つ目に紹介するパターンは,「日本生まれの方」です。
日本生まれの方の場合,国籍法第6条第1項第2号に以下の規定があります。
は母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
これは,日本生まれであり,かつ,「日本に継続して3年以上在留している」か「実夫もしくは実母が日本生まれ」のどちらかに当てはまれば,日本での在留期間が5年未満でも帰化許可の可能性があることを示しています。
特に知られていないのが,日本生まれ,かつ,実夫もしくは実母が日本生まれのパターンです。
例えば,日本生まれの外国人が,海外駐在から帰任したばかりで引き続き3年以上の継続在留が無くても,その方の実親のいずれかが日本生まれであれば,理屈上は在留0年でも帰化申請が可能という例です。
ただし,実務上は,日本での在留実績を作ってから帰化申請を求められる可能性が高いです。また,生計に関する資料の提出が必要ですので,実際には,帰国したその日に申請,という訳には行かず,帰国後6か月くらい経ってから帰化申請するのが実務慣行です。
②日本人の配偶者の方(住所条件+能力要件緩和)
2つ目にご紹介するパターンは,「日本人の配偶者」です。
こちらのパターンについては,以下のページにて詳細をご確認ください。
>>日本人の配偶者 帰化申請 はコチラ
念のため、本コラムでも簡単に説明をしておきますと,現に日本に住所を有している外国人で,「 日本に3年以上在留している + 日本人と結婚している」もしくは「 日本人と結婚して3年以上 + 日本に1年以上在留している」方は,5年の在留が不要です(住所要件の緩和)。
さらに,成年を迎えていなくても帰化申請をすることが出来ます(能力要件の緩和)。
ちなみに,外国人同士のご夫婦であっても,片方の配偶者が帰化許可相当であれば,他方の配偶者も「(みなし)日本人の配偶者」として,同時に帰化申請が可能です。
③日本人の実子の方(住所条件+能力条件+生計条件緩和)
3つ目にご紹介する例外パターンは,「日本人の実子」です。
こちらは国籍法第8条第1項第1号に規定があり,「日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの」は,「住所条件」,「能力条件」,「生計条件」を満たしていなくても帰化許可になり得るとされています。
つまり,日本人の実子であって,現在日本に住んでいれば(住所条件の緩和),未成年であっても(能力条件の緩和),世帯として収入が低くても(生計条件の緩和),帰化が許可になる可能性があるということです。
ただし,生計条件においては,緩和にも限度があります。
例えば,生活保護で生活費を賄っており,それが単に働きたくないという理由での生活保護受給で,更に脱却する意欲もないといった場合であれば,帰化許可の取得は難しいでしょう。
④日本人の養子の方(住所条件+能力条件+生計条件緩和)
4つ目に紹介するパターンは,「日本人の養子」です。
緩和される帰化の条件は,既に説明した「日本人の実子」と同じですが,適用のための条件が「日本人の実子」と異なります。
具体的にどこが違うかというと,1つは,「日本人の実子」が日本に住んでいればよかったのに対し,「日本人の養子」では、1年以上日本に在留している必要があります。
もう1つは,「日本人の実子」の場合,年齢に関して特に規定はありませんが,「日本人の養子」の場合,養子縁組の時に本国法によって未成年であったことが必要となります。
このパターンの具体例を挙げると,次のようなケースが考えられます。
ベトナムで駐在員として勤務していた日本人男性が,ベトナム人女性と結婚し,同時にベトナム人女性の連れ子(当時6歳)と養子縁組をした。
その後,駐在が終わり家族3人で日本に移住し,ベトナム人の養子は「定住者」の在留資格を持って日本在留を開始した。
そして,日本在留開始から1年を経過した後,帰化許可申請に及んだ場合などのケースです。
⑤留学生の頃から日本にいる方(住所要件緩和)
5つ目のパターンは,在留資格「留学」を持って在留している留学生です。
留学生の方ですと,最初は留学生として日本語学校に入学し,その後4年生の大学へ入学・卒業,場合によっては大学院に進学し,5年以上留学生として在留している方が多くおられるかと思います。
このような方たちについて,結論から申しますと,留学の在留資格での在留は住所条件にカウントされません。
理由は,留学という在留資格が,所属する教育機関を卒業すると,本国へ帰国することを前提とする在留資格だからです。
しかし,実務上,留学の在留資格を持って在留していた方でも「留学2年+就労系の在留資格で在留3年」のトータル5年引き続き日本で在留していれば,留学期間の2年を住所条件にカウントするという運用がなされています。
4.帰化申請の条件についてよくある質問
Q 私は5年以上日本に住所を持って生活しています。しかし,半年ほど前に会社都合で4ヶ月ほど海外出張に行っていました。このような場合,住所条件をクリアしますか。
A 合理的な理由のある出国であれば,例外的に「引き続き」という条件をクリアします。
ただし,実務的には1回の出国が3ヶ月以上,年間の合計出国日数が180日以上となると,「引き続き」の要件をクリアできないとされています。
今回の出国は会社都合での海外出張なので,合理的理由のある出国ですが,4ヶ月以上の出国となるので,会社より出張証明書などの資料がないと帰化申請で不許可になってしまうリスクはあるとお考えください。
Q 私は過去に年金の未納がありますが、帰化申請できますか。
A 年金は原則として過去2年前までであれば,遡って納めることが出来ます。
そのため,年金の未納があっても,遡って納めることが出来る期間の間に未納がなければ,帰化申請をすることが出来ます。
Q 私は毎年軽微な交通違反を繰り返ししています。このような場合でも帰化申請はできますか。
A 近年の実務の帰化の審査基準に照らすと,5年のうちに1回,2回程度であれば,そこまで大きなリスクとなりません。
しかし,軽微な交通違反であっても毎年繰り返しているのであれば,不許可になる可能性があります。
そのため,帰化申請の許可を得るという点からアドバイスをすると,1,2年は運転をしないなど違反をしないように心がけて頂くことをお勧め致します。
Q 私は,日本人の友人と同居しています。この場合,友人の収入は帰化申請で見られますか。
A たとえ友人であっても,同居していればその友人の収入も帰化申請では審査されます。
そのため,申請人と友人1人の2人暮らしであれば,2人の合計の収入を持って生活できるのかという点が帰化申請で審査されることになります。
Q 自分の日本語能力で帰化申請の許可が得られるかわかりません。どうすればいいですか。
A 日本語能力試験を受験したり,過去問を解いてみたりして,少なくともN2レベルの日本語能力を持っていることを確認されることをお勧めします。
また,ご自身で一度,お住いの地域を管轄する法務局へ足を運んで頂き,法務局の方とお話されるのも一つの方法です。
法務局によっては,事前に日本語のテストを実施してくれるところもあります。
法務局へ行くお時間のないという方は,当社にお問い合わせいただいた際に,日本人スタッフにより日本語で帰化申請の条件に沿ってヒアリングを行います。
その際に日本語能力について,帰化申請の許可レベルにあるかをお伝えさせていただくことも可能です。
5.帰化申請手続きの流れ
帰化申請の手続きの流れは、次のようになります。
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②必要書類の収集、申請書の作成
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③法務局で書類確認
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④法務局で帰化申請の受付
(帰化申請書類一式を提出)
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⑤法務局で面談
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⑥帰化申請の結果
一般的に④から⑤までの間が訳3ヶ月,⑤から⑥までの期間が訳6ヶ月から8ヶ月かかると言われていれるため,法務局に帰化申請書類一式を提出してから帰化申請の結果が出るまでは約1年の時間を要します。
ただし,帰化申請にかかるトータルの期間でいうと①から③の準備期間もあるので,帰化申請の準備を始めてから結果が出るまでとなると,確実に1年以上かかります。
そのため,帰化申請を短期間で終わらせるためには,①から③の準備期間をいかに短く終えるかという点が重要になるのです。
この点,ご自身で帰化申請のご準備をされる場合,申請書類の内容の確認や収集した書類の確認のために何度も足を運んで頂く必要があります。
また,法務局は平日しか業務を行っていないですし,現在はどこの法務局も予約制を採用しているので,日中にお仕事をされている方ですと,なかなか帰化申請のための時間をとることが出来ず,取得した書類の再取得が必要になるなど,準備期間が下手をすると1年以上になってしまうというお話も聞きます。
しかし,行政書士法人第一綜合事務所にお任せ頂ければ,お客様に法務局へ行って頂くのは④法務局で帰化申請の受付と⑤法務局で面談の2回だけです。
また,法務局との交渉は全て弊社で行いますので,その点もお客様からすると大きなメリットです。
6. 帰化申請の条件のまとめ
本コラムでは,帰化申請の7つの条件について解説しましたが,いかがだったでしょうか。
帰化申請は,1つ1つの条件を見ると簡単そうに思えますが,実際に条件に沿った書類を集めてみると,確定申告していなかった,住民票の届出義務を法定期間内にしていなかった等,様々な問題に直面することが多くあります。
行政書士法人第一綜合事務所では,豊富な知識と経験からお客様が最短で帰化許可を得るためのルートをご提案・サポートさせて頂くことが可能です。
そのため,1日でも早く帰化申請をしたい,確実に帰化許可を得たいとお考えのお客様は,まずは弊社の無料相談をご利用ください。