藤澤 勇來

台湾人の帰化申請

1800年代後半から台湾は日本とは深い関係があり,台湾から日本に移り住む方もたくさんおられました。
その子孫の中にはすでに日本に帰化した方も多いです。
台湾にルーツを持つ方は,ご自分のアイデンティティーを「中国」とは異なる「台湾人」だと認識している方が多い印象を受けます。
それを象徴するかのように,帰化申請の手続きは中国とは大きく異なります。
本コラムでは,そんな「台湾人」の帰化申請の特徴を解説します。

1.帰化申請とは

日本への帰化とは,外国の国籍を持つ方が日本の国籍を持ち「日本人」の身分を得ることです。
帰化申請とは,そのために行う手続きの総称です。
ご自分がもともと持っておられた母国の国籍は喪失しなければなりませんので,「自分のルーツ国ではなく日本で日本人として暮らす」と決めた方が行うのが帰化申請手続きです。

日本に在留する「台湾人」の方の中には,「永住ビザ」を取得して「台湾人として」日本で暮らすことを目指す方もおられるでしょう。
帰化手続きは「永住ビザ」取得とは全く別の手続きです。
窓口もビザ取得を管轄する出入国在留管理庁ではなく,各地の法務局・支局です。

2.日本に滞在する台湾の方の人数

台湾には親日の方も多く,旅行先として選んだり,ワーキングホリデーを使うなどして日本に来る方は多いです。
日本に在留する外国人の国籍別では,おおむね上位8~10位をキープしています。
ことに都道府県別では,私たち行政書士法人第一綜合事務所のオフィスがある東京在住の方がダントツで多いです。

現在,日本に滞在する台湾の方はどれくらいいるのでしょうか。
日本の法務省の外局である「出入局在留管理庁」が公表している,2022年6月末の日本在留の「台湾人」の数は5万4213人でした。
この数はあくまで,日本での「在留カード」などを持っている「台湾人」方の人数です。

先に書いた通り,「祖父母や両親や親族がすでに日本に住んでおり,日本人になると決意して帰化した」人たちもいます。
「台湾ルーツ」を持つ日本人も含めると,この人数の倍以上はおられるのではないかと思います。

日本と台湾は正式な国交はありませんが,民間・経済活動のレベルで交流を深めようと,2009年に「台日特別パートナーシップ」が始まりました。
2012年の在留「台湾人」は2万2千人台でしたが,その後増加し続け,2019年には6万4773人にのぼりました。

ところが,この2019年に新型コロナウィルス感染症が発生しました。
台湾では抑え込みのため,厳しい渡航制限対策をとったことも影響したのか,2021年には5万1千人台まで減少しました。
現在は,台日両方で渡航制限が緩和される傾向にあり,上記のように2022年からは再び増加傾向にあります。

3.帰化申請の一般的な条件

日本への帰化とは,外国籍の方が「日本人になる」「日本人の身分を得る」ことです。
「その人を『日本人』として受け入れるか」にはいくつかの条件があります。

帰化申請を審査する日本国政府(法務局)の立場に立って考えると分かりやすいと思います。あなたが審査するとしたら,どんな外国人に日本人になってもらいたいでしょう?
その人は何年くらい日本に住んでいるの?(住所条件)。
日本で犯罪は犯していないよね?(素行条件)。
その人はこの先日本でお金を稼ぎ,生活して行けるの?(生計条件)などが代表的な条件です。

その他に条件ついては,以下のページで詳しく解説しています。
>>帰化申請 条件 はコチラ

4.台湾人の帰化申請は「台湾戸籍」に注意

台湾の方に限らず,日本に帰化するためには申請者の身分関係(例えばいつどこで生まれたか,両親は誰かなど)を特定し,日本の戸籍に記載する必要があります。
このため,通常の外国人の帰化申請手続きでは,本国が発行する国籍証明書や出生証明書,死亡証明書,結婚証明書など,いろんな書類を集めなければなりません。

その点,台湾の場合は,日本の統治時代(1895年~1945年)の名残として世界でも珍しく戸籍制度が存在します。
ですから,他の外国人であれば別々に集めなければならない各種証明書の代わりに,「戸籍謄本(以下「台湾戸籍」といいます。)」を提出すれば足ります。

この台湾戸籍ですが,2つの特徴があります。
この2つの特徴を理解しないまま書類取得を進める,何度も戸籍謄本などの書類を取り直すことになりかねません。
台湾戸籍の取得のために注意しなければならない点を挙げます。

①「 全部謄本」と「部分謄本」の違いに注意
台湾戸籍には,全部謄本と部分謄本があります。
全部謄本とは,戸籍の「全部分の写し」を,部分謄本は戸籍の「一部分だけの写し」を意味します。

帰化申請では,原則として全部謄本が必要となります。

戸籍謄本の提出目的が「身分関係を確定すること」だからです。
帰化の許可・不許可を審査する側は,申請者本人の情報だけでなく,親の結婚の情報,兄弟の出生の情報など,申請人を取り巻く全ての情報を把握して判断する必要があるのです。

でも,実際にはいつでも全部戸籍が取れるわけではありません。
例えば,申請者であるAさんがBさんと結婚して離婚した場合,Bさんが戸籍の戸主の場合は,離婚後のAさんは「Bさんの全部戸籍」は取得できず,Aさんのみの情報が載った部分謄本のみという場合があるようです。

こういう場合は,部分謄本のみ取得して日本の法務局にどうしてそうなったかを説明することになります。
ただし,これはあくまで例外です。
原則は全部謄本が必要になるということは覚えておきましょう。

②戸籍同士の繋がり
台湾戸籍の取得で注意が必要な点は,「戸籍同士の繋がり」です。
台湾人の帰化申請では,通常は申請者の両親の婚姻時からの戸籍謄本の提出を求められます。
申請者の母親が未婚の場合など,担当官が必要であると判断した場合には,申請者の「母親の出生時から」など特に指定を受けることもあります。

台湾戸籍は日本の戸籍と同様,例えば婚姻して入籍すると,その方がもともと入っていた戸籍から抜けて(除籍)新戸籍が編成されます。
本籍地を移した(転籍)時も同じです。

このように,戸籍は世代や婚姻,戸籍の電算化等によって幾重にも重なり,現代につながっています。
ですから,単に1つの戸籍謄本を提出するだけですべての戸籍の変遷が確認できるわけではありません。

上記の「両親の婚姻時から」や「母親の出生時から」の戸籍謄本が必要とは,その当時から現在までの,連続した全ての戸籍謄本が必要ということです。
場合によっては何通もの戸籍謄本を取らなければならない
のでご注意ください。

例えば,申請人Aさんの両親が結婚した当時の戸籍を「戸籍①」とします。
Aさんが生まれ,「戸籍①」に記載されました。
その後,Aさんは2回の引っ越しで本籍地を移しました(転籍:戸籍②,③)。
さらにAさんは結婚して,結婚相手の「戸籍④」に入籍。
その後離婚し,現在は自身で新たに編成した「戸籍⑤」に入っているとします。

この場合,おそらく戸籍⑤には,以前入っていた戸籍や,婚姻の情報など,これまでの戸籍の変遷が概ね記載されているはずです。
しかし,帰化申請では戸籍①~④に入っていたことが記載された戸籍⑤の謄本1通の提出だけでは不十分で,戸籍①~⑤全ての戸籍謄本(計5つ)が必要になります。

5.台湾人の国籍喪失申請タイミングは帰化許可「前」

日本に帰化して日本国籍を取得するためには,申請者はそれまでの国籍を放棄する(国籍喪失)手続きをしなければなりません。
この国籍喪失手続きのタイミングは,申請者の(喪失前の)国籍国の法律によって異なります。
台湾人とよく比較される中国人の帰化申請では,帰化許可前に国籍喪失の手続は求められません。
これは,中国の国籍法に「外国に定住している中国人が外国籍を取得した場合,自動的に中国国籍を喪失する」という内容の規定があるからです。

台湾人の国籍喪失手続は原則として帰化許可「前」に求められます。
帰化申請をして面接,審査と進み,「この人には帰化を許可してもよいな」と判断されたタイミングで,法務局の担当官から「国籍喪失の申請をしてください」と連絡が入ります。

国籍喪失申請の大まかな流れとしては,

①台湾の在日大使館・領事館にあたる「台北駐日経済文化代表処」に必要書類を提出します。
②書類が台湾に転送され,申請から2ヶ月~4ヶ月後に「喪失国籍許可証書」が交付されます。
③「喪失国籍許可証書」を申請時の窓口となった法務局に提出します。
④日本の帰化許可申請が許可となり,官報にて氏名等が公示されます。

なお,具体的な国籍喪失申請の必要書類については,台北駐日経済文化代表処横浜分処の資料が分りやすいので,そちらのURLを転載いたします。

台北駐日経済文化代表處横浜分處Webサイト「中華民国籍喪失申請に必要な書類について

6.台湾人の帰化申請のポイント

ここまで書いて来たように,台湾人の帰化申請は,中国人とも他の外国籍の方とも大きく異なります。スムーズに帰化申請をするためのポイントを紹介します。

①「台湾戸籍」を知る
台湾人は台湾戸籍を取得することで,他の外国籍の方が集めなければならない多様な本国書類を集める労力が省けます。
逆に言うと,日本政府が求める台湾戸籍をスムーズに,完璧に取得できるかどうかで帰化申請にかかる時間と労力が大きく違います。
ところが台湾戸籍に関しては,台湾人でも深い理解を持たない方が多いのです。
是非,台湾戸籍とその取得方法について事前に情報収集してください。

②台湾本国で取得しなければならない書類が多い
帰化申請に必要な全範囲の戸籍謄本を取得することは,想像以上に大変です。
というのも,台湾戸籍は原則として台湾現地でしか発行できないからです。
ただし,申請人本人が台湾に帰国しなくても,申請人のご家族を代理人として取得することが出来ますので,ご安心ください。

これから帰化申請をお考えの台湾人の方はもちろん,すでに申請準備を始めているけれど,法務局からの取得指示の意味が分からない,書類不足を何度も指摘されてうんざりという方もぜひ,私どものような帰化申請専門の行政書士への相談を検討してみてください。

③国籍が「中華民国」かどうかに注意
台湾は歴史的に複雑な背景を持っています。
統治国はオランダから清朝,日本,中華民国へと移り,最近では中国(中華人民共和国)が「中華人民共和国統治下の台湾省」になるよう求めているのはご存知の通りです。

ここで,帰化申請をする方の原国籍がどこか? という問題があります。
本コラムでこれまで書いて来た情報は,台湾人のマジョリティーである「中華民国」国籍を持っている方に関するものです。

日本統治時代に台湾から日本に渡って来た方の子孫(日本で生まれた)の一部,あるいは何らかの別の事情を抱える方は,ご自分や親が「中華民国」国籍を持たないことがあります。この場合は台湾戸籍の取得が困難であったり,国籍喪失のタイミングが「中華民国」国籍の方とは異なったりします。
ご自分がどの国籍を持っておられるかは,帰化申請の前に把握しておいた方がよいでしょう。

もちろん,中華民国国籍を持たない台湾人の帰化申請も全力でサポートしますので,特にそのような事情がある方は私達にご相談ください。

7.台湾人の帰化申請のまとめ

本コラムの内容を簡単にまとめます。

まず,台湾人の帰化申請は,中国人を含むその他の外国籍の方とは大きく異なります。
台湾戸籍を取得することで,他の外国籍の方の帰化申請よりスムーズに本国書類を集められます。
だからこそ,これから帰化を考えている方は台湾戸籍のことを知っておいてください。

また,台湾人の帰化申請においては,国籍喪失のタイミングは帰化許可前です。
これは中国人の帰化申請手続きとの大きな違いですので,ご注意ください。

帰化を申請する方の国籍がどこであるかも事前に調べておいた方がようでしょう。
「中華民国」国籍以外の国籍を持っている方,あるいはいろんな事情でご自分や親が国籍を持たない方もおられます。
そのような場合にはぜひ帰化申請の専門家にご相談ください。

本コラムでは,台湾人の帰化申請の概要を掴んで頂くため,情報を簡略化してわかりやすいものにしています。
しかし実際には,翻訳の問題や,戸籍の繋がりの見方の問題,国籍の問題など,台湾人の帰化申請は他の国と比べて複雑な要因がたくさんあります。

私たち行政書士法人第一綜合事務所への相談は初回無料です。
台湾の方の帰化申請の事例もたくさんありますので,お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

藤澤 勇來

・令和3年度行政書士試験合格
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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