就労ビザの取得要件|企業の注意点や必要書類,審査期間を解説
外国人雇用の経験がない企業にとって,外国人の就労ビザ取得要件は不明点が多いのではないでしょうか。
本コラムでは,これから外国人の雇用を検討されている企業のために,外国人の就労ビザ取得要件について,なるべく噛み砕いてご説明致します。
もし外国人の雇用でトラブルを起こしてしまうと,最悪の場合には重大な罰則が科せられてしまう恐れがあるため,コンプライアンスの観点からも重要です。
本コラムをご覧いただく事で以下の事項がわかります。
- 就労ビザの取得要件
- 就労ビザの必要書類
- 外国人の雇用フロー
- 外国人を雇用する際の企業側の注意点
Index
1.就労ビザとは?
就労ビザとは,正式には「就労できる在留資格」の事を意味しており,外国人が日本で働くために入管が許可する資格の事を言います。
ビザ(査証)とは別のもので,ビザ(査証)は,日本が発行する入国許可証で,在留資格を意味するビザは,日本に滞在することを許可する資格です。
「就労できる在留資格」すなわち就労ビザは,日本で就労を希望する外国人は取得する必要があります。
一方,文化活動や研修,短期滞在や留学,家族滞在等を目的とした外国人は,就労不可のビザに該当します。
就労系の在留資格は,外国人が日本で行う活動内容によって19種類に分類されています。
>>就労ビザ 種類 はこちらをご覧ください。
2.就労ビザの取得要件
就労ビザの取得要件は,簡単に説明すると,以下のとおりです。
- ビザの種類に適合するような業務に就く
- 業務に関連のある学部や学科を卒業している
- 日本人と同等以上の報酬を得られる
- 就労先の企業に継続性や安定性がある
就労ビザの代表格となる技術人文知識国際業務ビザでは、理学,工学その他の自然科学に関する業務、法律学,経済学,社会学その他の人文科学に関する業務、’国際的な分野に関する業務などに従事することが可能です。
技術人文知識国際業務ビザの要件には学歴要件、実務経験、資格などがそれぞれ必要となりますので、申請の際は、事前に確認しましょう。
詳しくは,技術人文知識国際業務ビザ に記載しておりますので,ぜひあわせてご覧ください。
3.就労ビザを取得するための必要書類
就労ビザの取得には,多くの書類が必要になります。
また,必要な書類は,勤務する会社の属するカテゴリーによって変わります。
提出書類は、勤務する会社の事業概要や職務を証明する書類、外国人の学歴や実務経験を証明する書類になります。
以下は主な書類です。
- 申請書
- 申請人の写真(4×3センチ)
- 返信用封筒または返信ハガキ
- 採用・招へい理由書・職務内容説明書
- 申請人の履歴書
- 最終学歴の証明書(卒業証書)
- 職歴を証明する文書
などになります。
勤務する会社の属するカテゴリーの詳細については,以下の記事をご覧ください。
>>就労ビザ カテゴリーはこちら
4.海外から外国人を呼び寄せて採用する場合の就労ビザの取得方法
就労ビザの取得方法は,「外国人が海外にいるケース」と「外国人が既に日本にいるケース」で異なります。
まずは,外国人が海外にいるケースから見ていきましょう。
①就労ビザの取得が可能かどうか事前調査で確認
はじめに行うことは,そもそも外国人が就労ビザの取得が可能かどうか事前に調査しましょう。
なぜなら,外国人が先述の「就労ビザ取得要件」を満たしているかどうか確認する必要があるからです。
就労ビザの取得要件のうち,まずは学歴要件と職務内容について調査することになります。
まず学歴要件については,履歴書に書かれた学歴を裏付ける卒業証書や卒業証明書などで確認をおこないます。
卒業証書には本人氏名や大学名,発行日,取得した学位,専攻が記載されています。
それにより学歴要件を満たしているかどうかの確認ができるため,履歴書とともに提出してもらいましょう。
次に,日本企業で行う予定の業務内容が法に適合しているかどうかを確認します。
なぜなら,入管法に規定する就労ビザの活動内容にも該当しない場合には,就労ビザが取得できないからです。
そのため,業務内容の検討は慎重に行う必要があります。
次に,業務内容を確認した後,学歴と業務内容の関連性を確認します。
例えば,就労ビザの代表例である技術・人文知識・国際業務ビザを取得する場合,分野ごとによって必要となる学歴が異なります。
技術分野,人文知識分野については,海外大学卒業者は日本で行う業務内容と学歴の関連性が一定程度求められますが、その判断は柔軟に審査されるのが入管実務です。
他方で,国際業務分野については,その人材の必要性が求められます。
②雇用契約の締結
外国人が適法に就労資格を有しているという判断ができたら,就労ビザ取得申請の前に雇用契約を締結します。
なぜ雇用契約の締結を先に行うのかというと,就労ビザ取得のための申請を行うには,正式な雇用契約が前提となっているためです。
そのため,雇用契約の締結の前に就労ビザの取得はできないのです。
しかし,就労ビザは取得できない場合もあり,雇用側と外国人の間でトラブルになる可能性もあります。
したがって,労使トラブル防止のために,雇用契約書には「本契約は,申請人が就労ビザを保有して,日本に上陸許可が出来ない場合は無効とする。」といった文言を入れておかれることが推奨されます。
③在留資格認定証明書の申請
雇用契約の締結まで完了したら,管轄する出入国在留管理局で「在留資格認定証明書」の交付申請をします。
在留資格認定証明書とは,海外にいる外国人が,出入国在留管理庁により日本への上陸許可が審査済みであることを証明するためのものです。
在留資格認定証明書を取得しておくことで,在外公館での就労ビザの取得手続きが早くなりスムーズに手続きを運ぶことができるのです。
④在留資格認定証明書を外国人本人に送付し,就労ビザ取得の申請
在留資格認定証明書が交付されたら,当該証明書を外国人本人に国際郵便で送付し,在外公館で就労ビザ取得の申請をしてもらいましょう。
必要書類については,外国人が住んでいる在外公館のホームページの【在留資格認定証明書を使用した査証申請に必要な書類】に記載されていますので,そちらを確認してから申請を行ってください。
⑤入国後,住民登録などの諸手続を行う
3ヶ月を超えて日本に在留する外国人は,入国後,居住地を定めた日から14日以内に居住地を管轄する市区町村役場で住民登録を行う必要があります。
- パスポート
- 在留カード(なお,空港で交付されなかった場合は不要です)
空港で在留カードが交付されなかった場合は,居住地の役所で住民登録をすると,後日登録した居住地に出入国在留管理局から在留カードが郵送されます。
この場合の在留カードの交付までは,通常1週間から2週間程度の時間を要します。
5.既に日本国内にいる外国人を採用する場合の就労ビザの取得方法
外国人が既に日本にいるケースの就労ビザの取得方法について,順を追って解説します。
①在留資格の確認・業務内容との照合
外国人が適法に就労する資格があるのかどうかについて確認するために,現在の在留資格の確認と,業務内容との照合を行います。
もし外国人の在留資格が「留学」であった場合は,在留資格変更許可申請が必要です。
また,就労ビザを既に保有している場合も,転職前と転職後で職務内容が大きく異なる場合は,就労資格証明書交付申請などを行い,業務内容の照合を行うことが重要です。
就労資格証明書については,以下の記載をご覧ください。
>>就労資格証明書とは? はこちら
②雇用契約の締結
雇用契約の締結については,上記の海外から外国人を呼び寄せる場合と同様です。
③在留資格変更許可の申請
雇用契約の締結ができたら,必要書類を用意し,在留資格変更許可の申請を行います。
先述のとおり,留学ビザなどを保有している場合は,在留資格変更許可申請の手続きが必要です。
就労ビザ取得の申請は,書類を漏れなく提出すれば必ず申請が通るという性質のものではないため,就労ビザ取得要件をしっかり確認する必要があります。
6.就労ビザの取得までにかかる期間
就労ビザの申請から取得までにかかる期間は,おおむね1ヶ月から2ヶ月程度です。
多くのケースでは,就労ビザの申請にかかる準備に通常は1ヶ月程度であることを考慮すると,書類の準備を始めてから就労ビザの許可が出るまで,2ヶ月から3ヶ月は見ておいた方がいいでしょう。
入社式や新人研修等に遅れないように,計画的に就労ビザの取得申請を行うことが肝要です。
7.就労ビザ取得に関する企業の注意点
外国人の就労ビザ取得に際しては,外国人本人だけではなく,企業も気をつけなければならないことがあります。
最悪の場合,罰則を科せられる恐れがあるため,以下のポイントには細心の注意を払いましょう。
①業務内容が入管法に適合するか確認する
1つ目は,外国人の業務内容が入管法に適合するか確認することです。
外国人が適法に行う業務内容は,就労ビザによって異なります。
仮に,入管法で許容されていない活動を報酬を得て行うと不法就労に該当する可能性があるので注意が必要です。
②前職や学歴を確認する
2つ目は,外国人の前職や学歴の確認です。
取得したい就労ビザによって,必要となる学歴や経験が異なりますので,あいまいな知識のまま進めるのではなく,ご自身で調べていただくか,専門家に相談するようにしましょう。
③外国人雇用における最低限の知識を身につける
3つ目は,外国人雇用における最低限の知識を身に付けることです。
例えば労働関係法規や労災保険の適用,社会保険の加入,所得税・住民税などは,外国人も日本人と同じように適用されます。
外国人を雇用する場合は,日本人社員には必要ない入管法の手続きがありますが,それ以外は,日本人と同じように雇用管理を行ってください。
④不法就労助長に注意する
4つ目は,不法就労助長に注意することです。
ここで注意しなければならないのは,外国人雇用について意図的でなくとも,正確な知識がなければ不法就労に陥ってしまう可能性があるということです。
なお,不法就労には以下のケースが例に挙げられます。
- 正規の在留資格を持たない外国人が日本に不法入国して行う就労
- 在留期間を超えて不法に残留し行う就労
- 就労不可の在留資格を持つ外国人が資格外活動許可を受けずに行う就労
- 就労の在留資格を持つ外国人が与えられた在留資格の範囲を超えて行う就労
もし不法に在留する外国人を雇用したり,事業所等に斡旋したりすると不法就労助長罪(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科)に問われる可能性があります。
外国人雇用をする上で,企業が最も注意しなければいけない事項です。
8.就労ビザの取得要件のまとめ
外国人の就労ビザ取得については,企業側が知識をつけて外国人のサポートをする必要があります。
しかし,外国人雇用の法律関係は複雑化しており,手探りで準備されている方が多い印象です。
現在の入管法を正確に読めば,企業側に重い責任が課されていることを知ることができます。
仮に,この責任に気づくことなく外国人雇用でエラーをしてしまうと,上記で見たような不法就労助長に問われてしまうこともあるのです。
私たち行政書士法人第一綜合事務所は,外国人雇用の入管法リスクから企業様をお守りすることを重視しております。
ご相談は無料で承っておりますので,外国人の就労ビザ取得方法についてご不明,ご不安がございましたら,お気軽にお問い合わせください。